ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『ランボー/怒りの脱出』1985

2024-09-15 20:55:14 | 外国映画

1980年代、ハリソン・フォード氏と並んで飛ぶ鳥を落とす勢いだったハリウッドスターが、『ロッキー』(’76) でアメリカンドリームそのものを体現したシルヴェスター・スタローン氏。

そう言えばフォード氏がブレイクを果たした『スター・ウォーズ』 第1作 (新たなる希望) が公開されたのは『ロッキー』第1作の翌年だし、『ランボー』第1作が公開された’82年は『レイダース/失われたアーク』(インディアナ・ジョーンズ第1作) 公開の翌年。

ほぼ同時期に2大スターがそれぞれハン・ソロとインディ、ロッキーとランボーという2大ヒーロー役を射止め、必然的にシリーズ第2弾がほぼ同時期に公開されることにもなりました。

『ランボー/怒りの脱出』が公開されたのは『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』そして『ターミネーター』も公開された1984年の翌年であり、同じ年に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『グーニーズ』、更に翌年には『エイリアン2』『ハスラー2』『トップガン』等も公開され、新しいスターが続々と生まれてハリウッド映画界は絶好調!

中でもスタローン氏にとって最大のライバルとなったのは言うまでもなくアーノルド・シュワルツェネッガー氏だけど、私ならではのアンテナによると「本当はハリソン・フォードが演ってるような役が欲しいんだ」ってな発言もスタローン氏は残してます。

そのインタビュー記事が世に出たのは’90年代半ばだから、おそらく『逃亡者』(’93) の外科医=リチャード・キンブルや『今そこにある危機』(’94) のCIAアナリスト=ジャック・ライアンあたり(つまり知的なヒーロー像)を指してたと思うんだけど、さすがにそれは無理。逆にフォード氏がロッキーやランボーを演じたくても無理なのと同じことで。

ついでの余談ですが、このブログで私が「ハリソン君」を名乗ってるのは、『逃亡者』が大ヒットした人気絶頂期のフォード氏が携帯電話“ツーカーホン関西”のCМで日本のビジネスマンに扮し、上司から「ハリソン君」呼ばわりされて地下鉄“御堂筋線”の淀屋橋駅で「ハイ、ワカリマシタ。」とか言いながら何度もお辞儀する姿が話題になったから。

シュワルツェネッガー氏を「シュワちゃん」呼ばわりした栄養ドリンクのCМも確かその頃で、我らがニッポンも絶頂期でほんと調子に乗ってました。(本国じゃ例えジョークでも有り得ないそうです)



さて、『ターミネーター』で名を上げたのはシュワルツェネッガー氏だけじゃなく、のちに『タイタニック』や『アバター』で天下を取るジェームズ・キャメロン監督もそう。その氏が本作『ランボー/怒りの脱出』の脚本をスタローン氏と共同執筆された事実もアクション映画ファンの間じゃ有名な話。

いや、正確にはキャメロン氏が書いた脚本にスタローン氏が後から手を入れる形だったようで、キャメロン氏には「自分の作品」っていう意識は無いみたいだけど、今あらためて観ると随所に“キャメロン色”みたいなものが感じられます。

お陰で監督のジョージ・P・コスマトス氏はすっかり影が薄くなっちゃいましたw

前置きが長くなりましたが、ストーリーはサクッと行きます。なにせ派手さが売りの’80年代ドンパチ映画を代表する作品です。

ただし、オリジナルである第1作が「ベトナム戦争が終わって帰郷した途端、自国民たちから酷い差別と虐待を受ける“帰還兵の悲劇”」だったことを忘れちゃいけません。

つまり主人公=ジョン・ランボーを「殺人マシーン」たらしめたのはアメリカという国そのものであり、大量殺戮は因果応報とも言えるんだぞ?っていうテーマが根っこにある。

それを象徴する存在が、かつてグリーンベレー(特殊工作員)だったランボーの元上官である、サミュエル・トラウトマン大佐(リチャード・クレンナ)。

ランボーが信頼を置く唯一の人物として善人扱いされてるけど、ランボーの殺人マシーンぶりを「私の最高傑作だ」なんてドヤ顔で自慢する姿には(いま観ると)強烈な嫌悪感を覚えます。

この『怒りの脱出』が創り手の目論見どおり大ヒットしながら「ゴールデン・ラズベリー(最低映画賞)」にも輝いた事実に、アメリカ国民の良心と分断ぶりが伺えますよね。

単純に「燃える要素満載のアクション映画」として楽しんだ’85年当時の日本人(少なくとも私)は完全に平和ボケしてました。その反省も踏まえてのレビューです。

トラウトマン大佐により刑務所から連れ出され、タイのアメリカ軍キャンプにやってきたランボーは、ベトナムにある捕虜収容所への潜入と、未だ囚われたままらしいアメリカ兵捕虜たちの「証拠写真を撮る」という奇妙なミッションを依頼されます。

それを指揮するのがCIA所属のマードック司令官(チャールズ・ネイビア)で、今回一番の悪役。

露骨に不信感を示し、ろくに返事もしないランボーを見て「大丈夫なのか、彼は?」と訝しむマードックに、今回もトラウトマン大佐がドヤ顔で言います。

「ジャングルで彼と戦って勝てる男はいません。敵に勝つことしか頭に無い、純粋な戦闘マシーンです」

いや、あんたに比べりゃよっぽどマトモな“人間”だよ!って言いたくなるし、そんなガイキチに飼い慣らされたランボーもアホに思えて来ちゃう。1作目はそれを悲劇として描いたから評価もされたけど、今回みたいに無敵のヒーロー化しちゃうと最低映画賞まっしぐら。今となってはよく解ります。

そして単身ベトナムのジャングルに降り立ったランボーは、案内役として派遣された現地諜報員のコー・パオ(ジュリア・ニクソン)と合流。

女性スパイが映画に登場し、主人公の相手役を務めるのは『007』シリーズでもよく見られたけど、それを自らマシンガンを撃ちまくるスーパーウーマンに設定しちゃうあたりがキャメロン色!

たぶんスタローン氏が「オレより強くしてどうする!?」とか言って控えめなキャラ(なにせ理想はエイドリアン)に書き直したせいで、サラ・コナーほど目立った活躍はしないけど、それでも本作における彼女の存在は大きい。演じたジュリア・ニクソンさんも良かった!

お互い天涯孤独の身どうし、徐々に心を通わせていきます。


「いつかはアメリカに渡って、静かに暮らしたい。あなたは?」


「オレは……ただの消耗品(エクスペンダブル)さ」

エクスペンダブル! 筋肉アクションの長い低迷期を経たあと、2000年代に『ロッキー』『ランボー』両シリーズの復活を成功させたスタローン氏が、かつては犬猿の仲だったシュワちゃんはじめ’80年代アクションスターたちを呼び集め、『エクスペンダブルズ』シリーズまで成功させる未来を知ってる今聴くと、実に味わい深いセリフです。

さて、問題の収容所まで辿り着いた2人は、想像を超えた捕虜たちの惨状ぶりを見て絶句します。

「証拠写真を撮る」という意味不明なミッションを無視し、とりあえず外で磔にされた1人の捕虜を救い出すランボー。

ュリア・ニクソンさんのおしり。

「ランボー、あなたは消耗品なんかじゃない」

ここでお役御免となるコーと別れたランボーは、ベトナム軍の容赦ない追撃から必死に逃れ……

味方と合流する筈だったのに、彼が捕虜を連れてると聞いたマードック司令官が急に顔色を変え、こう言います。


「直ちに作戦を中止して基地に戻れ!」

実はまだベトナムに捕虜兵がいるのを隠したかったアメリカ軍(その理由を書きだすと長くなるんで省きます)は、生き証人を連れて来られると非常にマズかった。

救出ヘリに同乗したトラウトマン大佐の抵抗も虚しく(ホンマ講釈垂れるばっかで何の役にも立たんな!💨)、ランボーはまたもや母国に裏切られるのでした。

炎天下でヒルだらけの沼に漬けられ、地獄の拷問を受けるランボーだけど、内心はやっと筋肉を見せびらかせて喜んでます。

さらにソ連軍も駆けつけ、拷問は夜通し続きます。

もっと拷問を続けてオレの筋肉を見てくれっ!!

そんなランボーの願いを無視し、1人の慰安婦が収容所にやって来ます。その正体は……


すでに任務を終えた筈のコー・パオ!


ジュリア・ニクソンさんのおっぱい!

コーの活躍により脱出成功! そうなったらもう、やることは1つです。


「ランボー、私も連れてって」

こないだ刑務所から出て来たばかりで、乱棒がズボンを突き破らんとしてるランボーだけど、ソ連軍&ベトナム軍が血眼で探し回ってる状況下じゃ我慢するしかない。

けど、彼もやっぱり人間だった。一瞬のスキを生んでしまい、潜んでたベトナム兵にコーが撃たれてしまう!


まだチョメチョメしてないのに!


チョメチョメしてないのに!!


チョメチョメしてないのに!!!

大軍VSひとりの戦争開始! ランボーがナイフや弓矢を武器に使うのは、音で自分の居場所を敵に察知させないため。言わば忍術です。

泥まで塗っちゃう忍者っぷりには笑いそうになるけど、ステルス戦法として実在しそうだし、何よりビジュアルがキャッチーで凄く印象に残ります。

さあ、もう後は解説不要でしょう。殺戮につぐ殺戮!

大量の火薬を仕込んだオレの乱棒を喰らえっ!!


ドッカーンッ!!


バリバリバリバリバリバリバリッ!!


「ふんぬあぁぁぁーっ!!」

バゴーンッ!!


ドッカーンッ!!


「シュラファイヤーッ!!」


ドッ


カーンッ!!


捕虜だけノー・ダメージ!


ソ連軍の新型ヘリに猛追撃されるも……


ソ連製バズーカ砲でズガーン!


そしてドッカーンッ!!

すぐさまタイの作戦本部に戻ったランボーは、マードック司令官ご自慢のハイテク機材をマシンガンで一挙掃射!


ズガガガガガガのズガガガガガッ!!


「エイドリアァァーンッ!!」


「捕虜はまだ大勢いる。救いだせ。さもないと貴様を殺す!」

まだ無邪気だった当時の私は燃えたけど、軍の操り人形に過ぎないマードックを脅したところでどうにもならんし、私憤でいったい何百人殺したねん?とも思う。最低映画賞も無理からぬことです。


「ランボー、よくやった。軍に戻らないか?」

トラウトマン、お前が真っ先にしねっ!

「確かにあれは間違った戦争だったが、国を憎むのはいかん」

「憎む? 命を捧げます」

「では、何が望みだ」


「彼らと同じことです! はるばる遠くからこの土地へやって来て、戦いに身を投じ、地獄の苦しみに耐えながら望んだこと! 彼らが国を愛するように、国も彼らを愛して欲しい……俺の想いも同じです!」

彼らとは無論、10年も放置されて来た捕虜たちのこと。結局、悪いのはアメリカでもソ連でもなく戦争そのものなんだけど、敵国の兵士だけあんなに殺しちゃメッセージがブレてしまう。受け入れましょう、最低映画賞。


「おい、ランボー! いい加減、シャツを着たらどうなんだっ!?

だけどこの映画、決して嫌いにはなれません。いつも書くようにエンターテインメント(ストレス発散)としての暴力は犯罪抑止に繋がると私は思ってます。

アメリカ軍が一番の悪役として描かれてるし、これを観て軍人になりたがるヤツはおらんでしょう。 ザッツ’80年代! あくまでスタローン氏の筋肉と“マシンガン片手撃ち”を楽しむ為の映画です。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』1984

2024-09-07 06:20:07 | 外国映画

今はとにかく毎日ヘロヘロで、ブログ執筆への意欲はあってもエネルギーが湧いてこない。

だから前回の『ダーティハリー4』に続いて「1980年代に私を夢中にさせてくれたアクションムービー」のレビューをシリーズ化し、元気を貰うしかありません。(ただし膨大な時間と手間がかかるので、日記などは途中に挟んでいくつもり)

実際、ハリウッド映画が最も元気で、我らがニッポンも経済的な頂点に向かってた時期で、何より私自身が10代後半〜20代前半で青春ド真ん中だったのが’80年代。

当時に戻りたいとは思わないし、文化的には’70年代の方が好きだけど、弱ってるときに観たくなるのはヒーローが悪党どもを片っ端からぶっ殺す、カラッとした’80年代のアクションムービー。


1984年に公開された『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』は、もはや説明不要でしょう。『アメリカン・グラフィティ』『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカス氏が製作総指揮者として、『ジョーズ』『未知との遭遇』のスティーブン・スピルバーグ氏が監督としてタッグを組んだウルトラ・ヒットシリーズの第2弾。

そしてこれは、’80年代前半で私を最も夢中にさせ、いよいよ本格的にハリソン・フォード信者たらしめた記念碑的な作品でもあります。

私だけじゃなく、日本でこのシリーズを本格的にメジャー化させたのも本作だと思います。第1弾『レイダース/失われたアーク』(’81) は日本公開時、映画マニアには熱狂的に迎えられたものの、それ以外のマジョリティにはさほど認知されず大ヒットとまではいかなかった。

それがレンタルビデオやセルビデオ(たしか千円台で発売された業界初のブロックバスターVHSが『レイダース』でした)の普及とテレビ放映でじわじわとファンを増やし、満を持しての続編公開で大ヒット!っていうパターンが定着するのも’80年代。それまでの「二匹目のドジョウ狙い」と違って続編の質も向上しましたよね。

『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』を皮切りに『スーパーマン II/冒険篇』『マッドマックス2』『エイリアン2』『ハスラー2』『リーサル・ウェポン2』『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』等々、1作目に引けを取らないどころか凌駕しちゃう出来映えの『2』が’80年代は目白押しで、シリーズ物に対する我々の偏見をみごと払拭してくれました。



1935年、上海の高級クラブ「オビ・ワン」におけるディナーショーで華やかに幕を開けた本作は、全編アジアが舞台になってる(つまりナチスやソ連が一切絡まない)点といい、良くも悪くも演出が過剰な点といい、シリーズ中ではちょっと異色で「番外編」っぽい存在。

大ヒットしながら批評家たちには叩かれまくった点でも異色なんですよね。めっぽう面白くて私は大好きな作品だし、今となっては再評価もされてるけど、まあ叩かれても仕方ない要素は確かにある。該当するシーンの画像は載せづらいですからw



それはともかく、タキシード姿で登場する我らがヒーロー、インディアナ・ジョーンズ=ハリソン・フォードがすこぶるカッコいい!

もちろんハン・ソロに扮した『スター・ウォーズ』(’77) の時からずっとカッコいいけど、ここでまた一皮剥けたというか、スターとしてのオーラがいよいよ爆発したように私は感じました。



で、さっそく満洲系ギャング団相手に秘宝「ヌルハチ」を巡る争奪戦が始まり、スピルバーグ監督が残酷大将ぶりを遺憾なく発揮!



さらにアクションに次ぐアクション!



ワケあって歌姫のウィリー・スコット(ケイト・キャプショー)を伴ってクラブを脱出したインディを、相棒のショートラウンド(キー・ホイ・クァン)が出迎えます。



のちにケイト・キャプショーはスピルバーグ夫人となり、キー・ホイ・クァンは『グーニーズ』(’85) 出演を経ていったん裏方に回るも、アカデミー賞で主要7部門に輝く『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(’22) で俳優復帰し、プレミア上映イベントでハリソンと感動の再会を果たすことになります。



閑話休題、アクションは尚も続く。夜の繁華街を舞台にカーチェイス&銃撃戦を繰り広げ……



なんとか飛行場に辿り着いたインディらは、パイロットがギャングに買収されてるとも知らず「ドヤ顔」で飛行機に乗り込んじゃう。



そしてお馴染みのコスチュームに着替え、ようやく一息ついたのも束の間。



飛行機が国境を越え、ヒマラヤ上空に入ったあたりでパイロットたちが脱出!



もちろん燃料もパラシュートも無く、墜落必至の状況下でインディが選んだのは、ゴムボートに乗ってスカイダイビングという一か八かの賭け。




なんとか着地したものの雪山を猛スピードで滑降したゴムボートは、さらに断崖から川へと落下し、急流下りを経てインドの山村へと辿り着く。



上映開始から約20分間、まさにノンストップ!

『007』シリーズのスタイルを真似たとはいえ、これほどのスピード&スケールで描かれたアクションシークエンスは前代未聞。“ジェットコースター・ムービー”という新しいジャンルの誕生を映画館で目撃し、私はメチャクチャ興奮しました。

と同時に、冒頭からラストまで絶え間なく手に汗握り続けた結果、クタクタに疲れたのも事実で、そこんとこも批評家のエサになったかも知れません。



さて、辿り着いた村の人々に“救世主”と思い込まれたインディは、邪教集団に奪われた神秘の石「サンカラ・ストーン」と、拉致されてしまった大勢の子供たちを奪還して欲しいと懇願されます。

守護神と未来への希望を同時に失い、失意のどん底にいる村人たちを見捨てられないインディは、「やめた方がいい」というウィリーとショートラウンドの忠告をスルーし、邪教集団の巣窟と化したパンコット宮殿へと向かうのでした。



表向きは平和で煌びやかな宮殿で、インディたちはマハラジャの歓待を受けるんだけど、ここで最も批判の的となった“悪趣味”シーンが登場!



おもてなしのご馳走がヘビや昆虫、挙げ句にデザートが猿の脳みそという悪ノリぶりで、当時は笑ったけど今観ると「東洋人差別」と受け取れなくもない。



それでゲンナリしちゃったウィリーの部屋に、インディが果物を差し入れに来てチョメチョメムードになるも、互いのプライドが邪魔した結果ノー・チョメチョメ。

『スター・ウォーズ』のハン・ソロ&レイア姫を彷彿させる、ちょっと子供じみたロマンスが似合うのも俳優ハリソン・フォードの強みで、イーストウッドやスタローンだとたぶん成立しない。インディアナ・ジョーンズ役がハリソン以外には考えられない、最大のポイントもここにある気がします。



さて、ひと息ついたのも本当に束の間。自分の部屋に戻ったインディはさっそく刺客に襲われ、この宮殿に何かが隠されてることを確信。

そいつをぶっ殺し、慌ててウィリーの部屋に駆けつけたら……


「Oh~, Indy…♡」

やっぱり私が欲しいのね♡と呑気かつヤル気まんまんなウィリーに、日本の映画館じゃ珍しく爆笑が起きたのをはっきり憶えてます。

1作目で大刀を振り回す敵と対峙したインディが、面倒臭くなって即射殺しちゃうシーンとか、ヌンチャクかと思いきや実は組み立て式ハンガーだった!ってなシーンも場内バカウケ(死語?)でした。

そういう“ベタな笑い”も本シリーズの特長で、監督が交代しちゃった第5作『運命のダイヤル』にはそれが無くて寂しかったです。ルーカスが身を引いた『スター・ウォーズ』の新シリーズも然りで、スピルバーグ&ルーカス最大の共通点が笑いのセンスなんですよね、きっと。



さあ、ここから先は休憩なし。ラストまで本当にノンストップです。



1作目の“蛇の大群”に続いて今回登場したのが“虫の大群”。もちろんCGが無い時代ゆえ全部ホンモノ。昆虫嫌いの人には耐えられない映像で、残酷大将は批評家たちに喧嘩売ってますよねw

3作目はネズミ、4作目はCGの軍隊アリ、そして5作目は……何だったか忘れちゃう程度のもんで、グロ描写のインパクトでも『魔宮の伝説』はずば抜けてます。



さらにお約束のデストラップ! 串刺し寸前で何とか食い止めるも、間髪入れずにウィリーが再起動させちゃう畳みかけで場内また爆笑!

単にベタなだけじゃなく、緊張と緩和の落差で笑わせるのがスピルバーグ監督は抜群に上手い。この人に演出を委ねたルーカス御大も、あえてベタな笑いを控えた5作目のマンゴールド監督も、直感的に「真似できない」と悟ったんでしょう。



トラップ満載の隠し通路をくぐり抜け、地下の採掘場に辿り着いたインディ、ウィリー、ショートラウンドは、そこで邪神“カーリー”に生贄を捧げるクレイジーな儀式を目撃しちゃう。

拉致された村の子供たちは、全部で5個あるサンカラストーンの残り2個を発掘する過酷な労働を強いられ、逆らえば生贄としてマグマに沈められていた!

この辺りのダークさ、残酷さも批判の的にされたらしいけど、これは絶対に必要でしょう! さっき書いたとおり“緊張”があればこそ笑いもアクションも活きてくるワケで。

儀式が終わったあと、村から奪われた3つのサンカラストーンをこっそり回収するインディ。だけど、洞窟の奥から聞こえてきた子供たちの悲鳴で足が止まっちゃう。



そして捕まったインディは、邪神カーリーの血を呑まされ、洗脳されて敵の手先となり、なんと乳首を見せびらかしながらウィリーを生贄に捧げようとする!



最近のインタビューでハリソンは、俳優の仕事とは「カメラの前でアホを晒すことさ」と自虐的な発言をしてたけど、それはこの場面を指してるのかも知れませんw



ハリソン・フォード史上、最もアホな顔してますw この展開は「ショッカー」の「世界征服」を彷彿させて、私もさすがに気恥ずかしかった。



けれど相棒ショートラウンドの大活躍により、なんとか正気を取り戻したインディは、バーベキュー寸前のウィリーも取り戻します。

もう許さん!💢



ハリー・キャラハンの次に逆光がよく似合う、我らがヒーロー=インディアナ・ジョーンズ!



奴隷にされてた子供たちを解放し、シリーズ中で最も激しい立ち回りを見せるインディ! (ハリソン・フォード史上においても一番でしょう)

そしていよいよ、『魔宮の伝説』と聞けば誰もが真っ先に思い出す、あのチェイスシーンに突入!



パソコンやスマホの小さい画面、それも静止画像じゃ100分の1も迫力が伝わらないけど、あらゆる乗り物がチェイスに使われた本シリーズの中でも一番小さくてコントロールが利かない「トロッコ」によるノンストップバトル!



まさに文字通りのジェットコースター! そりゃ観終わったあとクタクタになっちゃうワケです。それを全部アナログ特撮で創り上げた’80年代ルーカスフィルムの底力!



さらに水攻めから逃れてのクリフハンガー!(“崖からぶら下がる”の意)

CGで何でもリアルに表現できる現在の眼で見れば稚拙な合成かも知れないけど、こっちの方が断然いいと私は思う。この手作り感こそ真の“ムービー”ですよ!

同じスピルバーグ監督が『ジュラシック・パーク』(’93) で切り拓いたCGの時代も私はそれなりに楽しんで来たけれど、何でも映像に出来ることが当たり前となり、サプライズがすっかり消え失せた現在の映画に、私の興味もまた消え失せつつあります。

映画はやっぱり’80年代が最高!



さて、クライマックス。人食いワニの大群がウヨウヨ待ち構える通称“水曜スペシャル川”を見下ろす吊り橋で、挟み打ちにされたインディは仕方なく、敵から奪った大刀でロープを真っ二つに分断!



再びクリフハンガー状態となり、ラスボスの司祭=モラ・ラム(アムリーシュ・プリー)とサンカラストーンを奪い合うインディ。

と、その時!



村人たちを救いにきたインディに手を貸すかのようにサンカラストーンが炎を発し、それを掴もうとしたモラ・ラムは「あーちっち、あっち!!」と叫びながら数百メートルの断崖を落下、自らワニの生贄となるのでした。



「やっぱり戻って来よったわい」と、村の長老がインディたちを出迎えます。もちろん、戻って来たのは神秘の石だけじゃなく、村の希望そのものである子供たちも!



ホンモノの親子たちに演じさせたであろう再会シーンには、その家族の背景がまったく描かれてないにも関わらずグッと来ます。こればっかりは説明不要なんですね。



いや〜、面白い。何度観ても面白い! 実際、数え切れないほどの回数観てるけど全然飽きません。

やっぱり’80年代アクション最高! ハリソンもスピルバーグもルーカスも、音楽のジョン・ウィリアムズもみんな最高! お陰でまた元気が出て来ました。さて、次はどの作品をレビューしましょうか?

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ダーティハリー4』1983

2024-08-24 20:20:06 | 外国映画

ふと本作のオープニングテーマ(シリーズ屈指のカッコ良さ!)を出勤時の車内で聴きたくなり、サントラCDを買ったら本編も観たくなり、DVDを観たら久々にレビュー意欲も湧いて来ました。

主演のクリント・イーストウッド御大が『ダーティハリー』シリーズで唯一、自ら監督も兼任された作品で原題は『SUDDEN IMPACT』。日本公開は1983年の4月。

その春、私は実家を巣立って上京し、北品川で新聞奨学生をやってました。

生まれて初めてのアルバイトと独り暮らしにようやく慣れた頃、新宿に出かけて最初に観た映画が『ジョーズ3D』。タイトル通り『ジョーズ』シリーズの3作目にして立体映画だったけど、“東映まんがまつり”と大して変わんないレベルの3Dで、印象に残ったのは頭抜けて可愛かった脇役の女優さんだけ。その2年後に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でブレイクされるリー・トンプソンさんでした。

そんな余談も含めて’80年代に観たアメリカ映画には、格別な思い入れがあるんですよね。実際、面白い作品が他の年代より多かった。名作じゃなくて、あくまで“面白い”作品が。

そりゃもう夢中になったし、レンタルビデオが普及し始めた頃で何回も繰り返し観たから、特に好きな作品は細かいセリフまで全部憶えてる。

その中の1本が『ダーティハリー4』です。イーストウッド作品独特の暗さはあるものの、クライマックスにおける“ヒーロー登場”シーンのカッコ良さはシリーズ随一!  いや、もしかしたら全アクションムービーにおいてもトップ1かも知れません。



冒頭、主人公=サンフランシスコ市警殺人課のハリー・キャラハン警部が裁判所に現れたときは「イーストウッドも老けたなあ」なんて思ったもんだけど、今となっては若い! というか、ちょうどいい!

で、名台詞が多いことで知られる本シリーズの中でも、この第4作はシビレる台詞のオンパレード!

まずは、せっかくとっ捕まえた犯人が「強引な捜査で得た証拠に信用性がない」という理由(実際は恐らく資産家の親による買収)で無罪放免となり、エレベーターでハリーと乗り合わせたそのボンが、よせばいいのに調子に乗っちゃう。


「警部さんよ、そう落ち込むなよ。また今度って事があらあな」

すると1秒も経たない内に首ねっこを掴まれ、青少年教育の手本みたいなお説教を賜るワケです。


「よく聞け、貴様は道端に垂れた犬のフンだ。犬のフンはどうなるか知ってるか? スコップで掬われてゴミ箱に捨てられたり、ひからびて風に吹き飛ばされたり、靴で踏み潰されるんだ。だから用心しろよ、犬のフン野郎!

最高ですw 罵詈雑言もこの域まで達すると崇高なポエム。是非あいみょんさんに楽曲化して頂きたい!

そしてシリーズのお約束。ハリーがファストフード店とかに立ち寄ると、なぜか必ず強盗グループと出くわしちゃう。名台詞も大抵そこで生まれるワケです。

「俺たちからは逃げられんぞ」


「俺たちだと?」


「スミス・アンド・ウエッソン、アンド・俺だ」



あっという間にスミス&ウエッソンM29=44マグナムが火を吹き、彼方へと飛んでくゴロツキども。そして当時の大統領=ロナルド・レーガンも会見で引用したという、あの有名なセリフがここで登場!


「Go ahead, Make my day」

DVDの字幕では「撃て。望むところだ」と訳されてるけど、公開当時の字幕(あるいはテレビの吹替版)では「さあ、早く俺に撃たせてくれ」だった筈で、私は後者の方がハリー・キャラハンらしくて好きです。

さらに、娼婦を殺しておきながら何食わぬ顔で生きてる犯罪組織の幹部を、でっち上げの告発状を使って揺さぶるべく、そいつの孫娘の結婚披露パーティーに乗り込んだハリーがゴッツい用心棒2人に囲まれるんだけど、涼しい顔で受付嬢にこのセリフ。


「すぐに電話して救急車を呼ぶといい。人相の悪いのが二人、腕をへし折られて呻いてるってな」

それで結局、ウソの告発状を真に受けた爺さんは心臓発作を起こし、その場で倒れてあの世いき。

後にイーストウッドを御大たらしめる名作中の名作『許されざる者』(’92) でも、主人公は顔を傷つけられた娼婦のために立ち上がりました。『ダーティハリー4』と『許されざる者』にはけっこう共通点が多いんですよね。それだけイーストウッドの作家性が強く反映されてる。

それはともかく、当然ながらハリーは天敵の本部長から大目玉を食らうんだけど、毎度のことで慣れたもの。階級の格差なんか屁とも思ってない。



嗚呼、カッコいい! こうなりたい!って、少なくとも男はみんな思うけど、現実にはなれっこありません。映画はあくまでファンタジー。それで良いんです。

その後、幹部を死なせた報復として犯罪組織の刺客たちに襲撃されるハリーだけど、勿論いつも通り44マグナムで皆殺し。

「死人が増える一方じゃないかっ!!💢」

さすがに堪忍袋の緒を切らせた本部長に“強制休暇”をプレゼントされたハリーは、仕方なく暇つぶしに新しい拳銃を蔵出しし、相棒のホレース刑事(毎回違う役で登場するアルバート・ポップウェル )に見せびらかします。



それが本作もう1つの主役と言える、.44オートマグ。

1作目で元祖44マグナム拳銃=M29が一気にメジャー化したのと同様、オートマグも本作で注目を浴び、M29ほどじゃないけどトレンド入りを果たしました。

ところで、オートマチック銃を撃つ人の右側に立つことはオススメ出来ません。なぜならアツアツの空薬莢が顔を直撃する可能性があるから。プロフェッショナルたるべき警察官なら尚のこと。



右側に排莢する銃ばかりとは限らないけど、火花も散るしとにかく危ない。ましてや44マグナムです。

そういうリアリティーにこだわり始めたのは後の『ターミネーター』(’85) や『リーサル・ウェポン』(’87) あたりだと思うけど、イーストウッド御大はけっこう大雑把。銃にあまり興味が無いんでしょう。



さて、ここからがメインストーリー。市警の管轄内で股間を38口径の銃で撃ち抜かれるという、男として考えうる最も悲惨な最期を遂げたオッサンのご遺体が発見されます。

我々観客にはもう、最初から誰が犯人なのか示されており、その動機も10年前に起きた田舎町サンパウロ(架空の町であることを今まで私は知りませんでした)における集団レイプ事件の被害者による復讐であることも徐々に判ってきます。



復讐者は、当時イーストウッドのチョメチョメ・パートナーで『ガントレット』や『ダーティファイター』シリーズでも相手役を務めて来られた、ソンドラ・ロックさん扮する画家のジェニファー。

一緒に犯された妹が精神病院に今も入院中で、守ってやれなかった後悔を引きずり続ける日々の中、シスコのバーでたまたま輪姦犯の1人を見つけてしまった彼女は、コルト・ディテクティブスペシャル.38を入手し、その弾丸をレイプ野郎の睾丸にぶち込んだ。

それを契機にジェニファーは輪姦犯全員への復讐を決意し、忌まわしの町サンパウロへと向かう。

一方、ハリーも半ば「厄介払い」でこの事件を担当させられ、死んだレイプ野郎の出身地であるサンパウロへ。

ハリーが現地に到着した途端、すぐさま強盗現場に出くわしちゃうのは、もはや天丼ギャグ。犯人追跡用に借りた車が老人ホームの送迎バスなのも、1作目の幼稚園バスを意識したセルフパロディーかも? 乗り合わせた老人たちは久々に刺激をもらって喜んでるしw

で、そこでもオッサンが股間を撃たれて死ぬ事件が連続発生。



いつも通りの暴力捜査で10年前の輪姦事件との繋がりを掴んだハリーは、ひょんなことから親しくなったジェニファーがその被害者であり、すなわち復讐者であることも察してしまう。

彼女の復讐を止めるため、まずは輪姦犯の残党を捕まえにいくハリーだけど、狭い田舎町=完全アウェイな状況下で待ち伏せに遭い、フルボッコされた挙げ句に愛銃M29もろとも運河に投げ落とされちゃう。


その上、わざわざハリーを励ましにやって来た相棒のホレースを惨殺され……


ジェニファーが拉致されるに至って、いよいよハリーの怒りが頂点に!



輪姦犯たちは10年前と同じ場所でジェニファーをレイプ&抹殺すべく夜の遊園地へと連れ込みます。

必死に逃げようとする彼女をさんざんいたぶり、追い詰めていく最低チンカス野郎どものシーンがちょっと長いように当時は感じたけど、いま観直すとちょうどいい。

この適度な“じらし”があればこそ、次に控える“ヒーロー登場”の場面に(絶対駆けつけると分かってても)鳥肌が立つ!


「おいっ、あいつは!?」



ラロ・シフリンによるBGMも含め演出自体が超絶カッコいいんだけど、同じことを他のアクションスター(たとえばスタローンやシュワルツェネッガー)がやっても、たぶん気恥ずかしい場面になっちゃう。



これはやっぱり、いわゆる“マカロニ・ウエスタン”でスターになり、数々のバイオレンスヒーローを演じて“レジェンド”イメージを築き上げたクリント・イーストウッドだからこそ成立するカッコ良さだと思います。



もちろん、蔵出しオートマグによりチンカス野郎どもは1人残らず木っ端微塵!

と言ってもたったの3チンカスに過ぎないけど、このカタルシスを超えるには数で勝負するしかない!とばかりにスタローンやシュワルツェネッガーらは、ぶち殺す敵の人数と銃のサイズをエスカレートさせて行く。

’80年代アクションムービーを結果的に物量作戦たらしめたのは『ダーティハリー4』だった! ……と結論づけるのは強引にせよ、オレもこうやって超絶カッコよくチンカスどもをぶっ殺したい、けど御大には敵わないから数で勝負したる!って、シュワちゃんやスタちゃんが考えた可能性は充分あると私は思います。



さて……チンカスのリーダー格が持ってたコルト・ディテクティブスペシャルは、ジェニファーを拉致したときに彼女から奪ったもの。つまり一連のキンタマ撃ちに使われた凶器であり、普通に考えればチンカスリーダーが犯人ってことになる。

「これで解決ですね」と現地の警官に言われ、ハリーは一瞬迷うんだけど、結局こう答えるのでした。


「そうだ、終わった」



つまり、犯罪者を捕まえる為なら手段を選ばない、あのダーティハリーが初めて意図的に殺人犯を見逃した。シリーズ第2作では、法で裁けない悪党どもを闇で葬る現職警官たちを、ハリーは迷わず処刑したのに!

犯人を逮捕するんじゃなくて(正当防衛にせよ)射殺しちゃうことの是非はさておき、警察官としては第2作のハリーが正しい。けど、ひとりの人間として見れば今回のハリーに共感せずにいられません。皆さんもきっとそうでしょう。

けれどやっぱり、遵守すべき法を犯してしまったハリーは、今度こそ警察を辞めるに違いないと私は思ったのに、5年後には『ダーティハリー5』が何食わぬ顔で公開されるのでしたw

まだ無名だったリーアム・ニーソンやジム・キャリーが出てる見所はあるにせよ、内容的にはシリーズ中で一番パッとしないし、あれは完全に蛇足でした。

けど、そういう“何でもあり”なところが’80年代ムービーの魅力なんですよね、確実に。だからこそ忘れがたい!

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

2023-03-12 15:55:44 | 外国映画

久し振りに「これは観たい! 今すぐ観たい!!」と直感したので、大阪の映画館へ行って来ました。

絶対ヒットするし、アカデミー賞の目玉にもなるだろうから、流行りものと権威に弱いマジョリティどもが群がる前に!っていう目算もあり、公開されてすぐの平日(それもWBCの韓国戦当日)を狙いました。

もちろん私はヒットや賞に惹かれたワケじゃなく、ハリウッドのアクション映画でありながら物凄く新鮮なものが観られそうな予感と、主演女優=ミシェル・ヨーのファンであること、しかもその夫を演じてるのが『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』のショートラウンド(キー・ホイ・クァン)であることも大きな動機になりました。



長らく裏方に回ってたらしいキー・ホイくんが本作で俳優復帰し、そのプレミア上映か何かのイベントで別宇宙の私(ハリソン・フォードと名乗ってる)と感動の再会を果たした!っていうネットニュースも読んでましたから。

いや実際、この映画によるマルチバース(我々世代で言うパラレルワールド)の解釈だと、ハリウッドのトップスターになってる私だって有り得るワケです。

もしくは、プータローになって腎臓結石と頭痛と鬱症状に悩みながらマジンガーZのプラモを組み立てるハリソン・フォードも!

っていうか全てのハリソン・フォードが私であり、私がハリソン・フォードなんです。ご不満ならトム・クルーズかブラッド・ピットで我慢します。鬱病なんです。

まあ、それくらいバカげたストーリーってことですw



アメリカで冴えない夫のウェイモンド(キー・ホイ・クァン)と小さなコインランドリーを経営してる中国移民のエヴリン(ミシェル・ヨー)がある日、別宇宙からジャンプして来たメチャクチャ冴えてるウェイモンドに「キミは全宇宙をカオスから救える唯一の救世主だ!」と告げられ、その瞬間から恐ろしく壮大な戦いに巻き込まれていく。

……てなストーリーは『マトリックス』を彷彿させるし、マルチバースの概念を本格的に取り入れたアクションなら『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』をこないだ観たばかりだけど、それでも本作が新鮮に感じられるのは、御年60歳のミシェルさんが演じるエヴリンの「平凡中の平凡さ」と「ダメっぷり」に尽きるかと思います。



つまり、スパイダーマンは言うに及ばず『マトリックス』のキアヌ・リーブスも救世主になることを運命づけられたスペシャルな人だったけど、エヴリンは本当にただの平凡な初老女性。だから誰でも自己投影できちゃう!

そんなエヴリンが救世主に選ばれた理由が、あまりにダメすぎて何をやっても長続きせず、これまで職を転々として来たから。つまり経験豊富なワケですw

例えば、この宇宙にいる私は映画監督の夢を諦めたけど、別宇宙の私は何かの巡り合わせでスピルバーグ監督みたいな大物になってるかも知れない。役者もちょっと噛じったから、それこそハリソン・フォードみたいになってる私も別宇宙には存在する! っていうかハリソン・フォードがプータローになってマジンガーのプラモを作ってるワケです。

で、更にユニークなのが、今この宇宙にいる平凡なエヴリンが、別宇宙でカンフーの達人になってるエヴリンから、カンフーの技を吸収することが出来ちゃう設定。

そう、誰よりも多種多様な分岐点を持つエヴリンだからこそ、誰より多種多様な能力を得ることが出来る!

例えば、本来はルックスの良さだけが取り柄だった青年が、ホームランバッターになってる別宇宙の自分と、豪速球ピッチャーになってる別宇宙の自分からそれぞれ能力を吸収し、今の大谷翔平くんが出来上がった!みたいなお話。ていうか彼も私なんです。



観ながら私は、大地真央さんが出てらっしゃる「アイフル」のCMを連想しました。あれも毎回違った宇宙にいる大地さんが登場するようなもんだし、あのカンフー篇のバカバカしさがまさに本作の世界観とよく似てます。

けど、ただ斬新で面白いだけならアカデミー賞の候補にはならなかった筈。本作が評価された最大の理由は、縦軸となるストーリーが実は単なる親子喧嘩で、これまた誰にでも身に覚えがある話だから。

なもんで、私はアイフルのCMと同時に、この前レビューしたNHKの深夜ドラマ『超人間要塞ヒロシ戦記』も思い出しました。誰でも思春期に経験する恋の葛藤を「巨大戦艦の操縦」に喩えて描いたSFラブコメディーで、一見ぶっ飛んでるけど実はすこぶる普遍的で小さな話である点がよく似てます。

つくづく、映画やドラマで描けるストーリーなんか、指で数えるほどのパターンしか無いんですよね。肝心なのは、それを如何に新鮮なやり方で魅せられるか。

それはキャスティングにも言えることで、大手スタジオの製作じゃないからこそ可能だったであろう、アジア系の主演コンビがアカデミー賞候補になってる事実も歴史的な快挙。

まさに新鮮なものが観たい方、王道に飽き飽きされてる方にオススメしたいです。『ハロウィン』『ブルースチール』『トゥルーライズ』のジェイミー・リー・カーティスさんとも意外な形で再会できますから!


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ブレット・トレイン』etc…

2023-02-26 22:44:08 | 外国映画

今、時間だけは余ってるもんで、映画もちょこちょこ(レンタルDVDやCATVで)観てます。

基本的にハリウッドのアクション映画が一番好きなのは相変わらずで、シネコンがもっと近くにあれば確実に劇場で鑑賞したであろう近作から順番に観てます。

が、どれも良く出来てて面白いんだけど、だからこそ、あんまりレビューを書こうって気になれない。不特定多数の観客が楽しめるようにちゃんと創られてるから、私から口添えしたいことが何も浮かばない。みんなが「面白い」って言ってる作品をここで「面白い」って復唱しても仕方ないですから。



『トップガン/マーヴェリック』がその代表格。これは劇場で観たらもっと面白いだろうなあっていう、当たり前の感想しか浮かばない。

実は1作目も最近レンタルDVDで初めて観たもんで、約35年ぶりの再会!っていう感慨もなく、ホント良く出来てるよなあっていう感想しかありません。



『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』も、観た人が言うことはみな同じでしょう。歴代3シリーズのピーター・パーカーとヴィランたちが勢揃いしちゃうという、マルチバースって設定の面白さと便利さ。

結果、とんでもない豪華キャスティングになっちゃうのをホントに実現させちゃうディズニーって会社の凄さですよね。

日本でこういうのをやるとすれば(みんなご存命だと仮定して)映画とテレビ全ての金田一耕助が大集合!とか、大河ドラマ歴代の織田信長が勢揃い!みたいな……ってのも皆が言ってそう。



『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』もまさに同じ! 旧三部作と新三部作の主役たちが一堂に介する楽しさと懐かしさ。やってること(恐竜から逃げ回る)は毎回同じだから、そこしか取り上げようがない。

もちろん最初の『ジュラシック・パーク』から全部劇場で観てきた私は存分に楽しめました。けど、完結編だけ自宅鑑賞になっちゃったのはちと残念。『インディアナ・ジョーンズ5』は何があっても劇場に行きますから、思い入れがそれ程じゃ無かったワケですね。



『バッドマン/史上最低のスーパーヒーロー』はフランスのコメディー映画だけど、ネタは『バットマン』『アベンジャーズ』などアメコミ映画のパロディー。

普通の人がスーパーヒーローに「なりすます」パターンの話だけど、主人公が売れない俳優で、やっと掴んだヒーロー映画の撮影中に交通事故を起こし、コスチュームを着たまま記憶を無くしちゃう。

つまり、主人公が勝手に自分がスーパーヒーローだと思い込み、なんの超能力も無いのに凶悪マフィアに戦いを挑んじゃうw

周りの人々が勘違いして主人公をスーパーヒーローと思い込むパターンが多い中、当の本人が勘違いしちゃってる点が新しいし、小さな子供にもいっさい容赦しないブラックユーモアもアメリカや日本とはひと味違う。下ネタも満載でめっちゃ笑えますw



『ピクシー/復讐の女神』はイギリス映画で、母親を死に追いやった男どもにオリヴィア・クック扮する娘が復讐していくストーリーだけど、アクション映画じゃなくてこれもブラック・コメディー。

ヒロインも含め悪党しか出て来ないから感情移入しづらいけど、展開が全然読めない点でハリウッドの王道大作より面白いんですよね。(それにしても『復讐の女神』って邦題の外国映画がなんと多いことか!)

で、それと似た路線のブラックユーモアと、しっかりアクションも魅せてくれた『ブレット・トレイン』が、今回のラインナップの中で私は一番楽しめました。



『アトミック・ブロンド』『デッドプール2』のデビッド・リーチ監督による2022年公開のアメリカ映画で、主演はブラッド・ピット。

伊坂幸太郎氏の小説『マリアビートル』をハリウッド映画化した作品だから、舞台も我らがジャパン。決してリアルな日本じゃないけど、ストーリー自体がぶっ飛んでますから気になりません。



ブラピ扮する小悪党が、東京から京都に向かう新幹線の車内で、指定されたブリーフケースを盗むだけの簡単なミッションを引き受けるんだけど、そのケースを狙う殺し屋たちが次々と現れて……



襲ってくる殺し屋たちにもそれぞれ背景があり、それを面白おかしく見せる序盤で人がポンポン死んでっちゃうから、これも最初は感情移入しづいんだけど、我慢して観ていくと知らず知らず彼らを憎めなくなって来る。

ブラピ扮する小悪党がホントに小物でw、だけどすこぶるチャーミングで、ただ悪運だけで生き延びてく様が妙に可愛くて笑えちゃう。

バイオレンス度はかつてブラピがプロデュースした『キック・アス』と同じくらい。そう言えばキック・アス役のアーロン・テイラー=ジョンソンも殺し屋の1人として登場します。

あと、日本人スターのこの人も!



真田広之さんって、もっともっと動ける筈なのに、ハリウッド映画じゃいつも半分も実力を発揮させてもらえてない印象。どうやら実際に「もっと動きを抑えてくれ」って指示されてるみたいです。

ほか『スーサイド・スクワッド』の福原かれん、『デッド・プール2』のザジー・ビーツ、『CSI:科学捜査班』のジョーイ・キング、そして『オーシャンズ8』のサンドラ・ブロックがブラピの雇い主として登場します。



アクション映画はあくまでアトラクション、と割り切って観れば、豪華キャストにド迫力アクション、摩訶不思議なクールジャパン描写、そして先が読めない展開とブラックユーモアが存分に楽しめます。王道ファミリー路線がつまんなく感じてる方にオススメです。

 



セクシーショットは女子高生の殺し屋「プリンス」に扮したジョーイ・キングちゃん。ボインぼよよんです!


 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする