今こんな番組を取り上げて誰が喜ぶねん?って言われるかも知れないけど、私が喜ぶから良いのですw いや、楽しみにして観ておられた方も、きっとおられる筈です。
1979年10月から’80年9月迄の1年弱、日本テレビ系列で水曜夜8時に放映された学園ドラマです。殉職という形で『太陽にほえろ!』を卒業したばかりのボンボン刑事=宮内 淳さんの初主演ドラマでもあります。
そして本作は日テレ伝統の「青春シリーズ」最終作で、フィルム撮影による学園ドラマとしても恐らく最後の作品だろうと思います。
青春シリーズってのは夏木陽介主演『青春とはなんだ』に始まり、竜 雷太『これが青春だ!』、浜畑賢吉『進め!青春』、村野武憲『飛び出せ!青春』、中村雅俊『われら青春!』そして『青春ド真ん中!』『ゆうひが丘の総理大臣』へと続いて来た、『太陽にほえろ!』と同じ岡田晋吉プロデューサーの製作によるドラマ群を指します。
同じく岡田プロデューサーの手による森田健作主演『俺は男だ!』や、松田優作『俺たちの勲章』、中村雅俊『俺たちの旅』、勝野 洋『俺たちの朝』等の「俺たちシリーズ」も、この「青春シリーズ」のカテゴリーに入るかと思います。
昭和後期に幼少から青春期を過ごされた方なら、上記の番組の内1つも観た事が無いという事は、まず無いんじゃないでしょうか? 好き嫌いは別にして……
そう、警察官をヒーローとして描く刑事ドラマが嫌いな方がいるように、教師がヒーロー的な存在として描かれる青春ドラマを観て「けっ!」と思ってた視聴者も少なくないかも知れません。
私は好きでした。別に警察は好きじゃないけど刑事ドラマは大好きなのと同じで、学校も先生も全然好きじゃないけど、ドラマはドラマとして切り離して楽しんでました。
夏木さんや竜さんの頃は私もまだ赤ちゃんですからw、再放送もされないし一度も観たこと無いんだけど、村野さん、雅俊さん、健作さんのは(主に再放送で)よく観てました。
やっぱり生みの親が『太陽にほえろ!』と同じ人ですから、描かれる人物像とか道徳観がとても近いんですよね。プロデューサーの名前なんか当時は知らなくても、感じるものは一緒だったんだろうと思います。
共通のキャストも多くて、松田優作さんは本来『われら青春!』の先生役でデビューする予定が『太陽』のジーパン刑事役に変更、その優作さんの紹介によって雅俊さんが先生役に抜擢された、みたいな裏話も枚挙に暇ありません。
夏木さんや竜さんの時代は先生が人格者として描かれ、英雄視されても決してウソ臭くなかったワケですが、時代が進むにつれて先生という存在が身近なものになり、悪く言えばどんどん価値が下がっちゃった。
だから、私が観てた村野さんや雅俊さんの時代は先生自身も未熟者で、失敗を重ねながら生徒達と一緒に成長して行くという、二重構造の青春が描かれてたように思います。
で、いよいよ『ゆうひが丘の総理大臣』まで来ると、もはや生徒達が先生に対してタメ口ですからね。確かに、同時代に学生だった私の身の周りでも、先生に対する畏怖とか敬意は無くなりつつありました。
そんな世の中をドラマが反映したのか、逆にドラマが世の中を変えてしまったのか、とにかく先生がヒーロー然として描かれると嘘っぽく見えちゃう時代になったワケです。
『ゆうひが丘~』のソーリ(中村雅俊)は型破りな先生で、ヒーロー然とした伝統的教師像を自ら破壊するようなキャラクターでしたが、その続編となる『あさひが丘の大統領』の主人公=大西 元(宮内 淳)は更に破天荒でした。
なにしろ徒名が「ハンソク」で、規則に縛られるのが大嫌いな不良学生がそのまま大人になっちゃった人物なんです。
例えば男子生徒達を引き連れて女子のシャワールームを覗きに行ったり、他校の生徒達と殴り合いの喧嘩をしたり等、生徒がどんなにグレようがこの先生よりはマシという始末w
そこまで行っちゃうともう、主人公が教師である意味すら無くなっちゃう気もしますが、そんなハンソク先生を厳しく諫め、昔ながらの質実剛健な理想教育を目指して奮闘するのが、当時20歳の片平なぎさ扮する「タックル」こと今井涼子先生でした。
あくまで教師として真剣に生徒と向き合い、正しい道へと導こうとするタックル先生だけど、それは時に理想の押しつけにもなり、生徒が背負う現実とはズレてたりする。生徒と同じレベルだからこそ生徒の気持ちがよく解るwハンソク先生には、それが我慢ならない。
この両者の激しいぶつかり合いを軸に描いて、一見ハチャメチャなお笑いドラマなんだけど、実は教師と生徒の関係が大きく変わりつつある時代の中で、教育はどうあるべきか?を懸命に模索してたドラマ……なのかも知れません。
だけど、表面的な悪フザケの部分ばかりが目立ってしまい、一般的な作品評価は低かったみたいです。全36話って事は3クール分の話数で、恐らく予定より1クール早い終了だったんじゃないでしょうか。
真意が視聴者に伝わらなかったとすれば、そこはやっぱ作劇として失敗だったと言わざるを得ないけど、それより何より「青春シリーズ」で描かれる楽しい学校生活が、もはや現実とあまりにかけ離れてたのかも知れません。
その一方で、同時期に放映スタートして大ヒットしたのが、あの『3年B組金八先生』(TBS)ですからね! 作品としてどちらが優れてるかの問題じゃなくて、たまたま時代の流れに上手く乗れたのが『金八』だった。それだけの話だろうと私は思います。
『金八』の放映は金曜夜8時って事で、裏番組の『太陽にほえろ!』を一時期は存続の危機にまで追い詰めましたからね。しかも学園ドラマ対決で『あさひが丘~』を完膚なきまでに叩きのめした形ですから、私は『金八』を恨みましたよマジでw
従って『金八』でブレイクしたトシちゃんだのマッチだのは許せなかったし、だから今でも若いイケメンが大嫌いなワケですよ!w いや、彼らに罪は無い。時代の変化、引いては日本人の心変わりを私は恨みます。
それは半分ほどジョークだとしても、やっぱ『あさひが丘の大統領』って作品はどうも過小評価されてると、私は今でも思ってます。ちゃんと観たらとても面白いドラマですから、機会があれば是非とも観て頂きたいです。(CSとかBSでちょこちょこ放映されてます)
教師役は他に宍戸 錠、秋野太作、金沢 碧、谷 隼人、樹木希林、由利 徹、高城淳一etc、警備員役に名古屋 章、横谷雄二。
生徒役は青春シリーズの顔だった井上純一&藤谷美和子の他、岡村清太郎、長谷川 諭、大村波彦、北村優子、上田美恵、壇まゆみといった面々。
また、下川辰平(長さん)や木之元 亮(ロッキー)がゲストとして登場、宮内さんの独り立ちを支援されてました。特に木之元さんは刑事役でロッキーそのまんま。ボンとのコンビ復活がメディアで話題になりました。
宮内さんはコメディ演技に磨きがかかってたし、根っからの実直さや情熱がストレートに伝わって来る20歳の片平さんも光ってます。
青春シリーズ後期の顔・井上純一さん最後の学生役も見所だし、何と言っても当時が旬だった藤谷美和子さんのキュートさは絶品です。テニス部なんでピチピチの生脚も拝めます。
メインライターは鎌田敏夫さん、音楽は木森敏之さんで、主題歌「新しい空」は吉田拓郎さんの作曲です。
主題歌と言えば、青春シリーズはどれも主題歌がホントに素晴らしかった! 「太陽がくれた季節」「帰らざる日のために」「さらば涙と言おう」「俺たちの旅」「時代遅れの恋人たち」etc……
久々にカラオケに行きたくなって来ましたw