ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『五番目の刑事』#14

2024-03-24 21:21:03 | 刑事ドラマ'70年代

『五番目の刑事』は1969年10月から'70年3月まで、NET (現テレビ朝日) 系列の木曜夜8時枠で全25話が放映された、NET&東映の制作による刑事ドラマ。

原田芳雄さんが『太陽にほえろ!』よりも先に“ジーパン”スタイルでジープを乗り回す、型破りなキャラクターの若手刑事=原田康二を演じ、それこそマカロニ刑事(萩原健一)やジーパン刑事(松田優作)に多大な影響を与えたであろう重要作です。



『五番目の刑事』っていうタイトルは、原田が東新宿署・捜査係の先輩たち四人(中村竹弥、常田富士男、工藤堅太郎、殿山泰司)に続く五番目の刑事だからというそのまんまの意味。



味わい深い役者さんが揃ってるだけに、チームワークも描かれるし原田刑事があまり活躍しない回さえあるけど、これからご紹介する第14話はほぼ原田さんの一人舞台。


☆第14話『夜霧に散った女』(1970.1.8.OA/脚本=西条道彦/監督=北村秀敏)

刑務所で集団脱獄事件が発生し、脱走囚のほとんどは捕獲されたんだけど、根岸竜二(高田直久)という若い男だけが行方不明のまま。

竜二は、2年前にとある大企業の汚職事件で濡れ衣を着せられ、飛び降り自殺を装って消された根岸係長(立川雄三)の弟なのでした。

そのときに逆上し、大企業の幹部らを襲撃した竜二を逮捕したのが東新宿署の原田刑事。今度こそ兄の無念を晴らすべく竜二は脱獄したんだろうと原田は睨みます。

恐らく竜二は、暗殺された根岸係長の元妻、すなわち義理の姉であるみゆき(佐藤友美)と接触するに違いない。



みゆきは浅草の高級クラブでホステスを務めており、常連客には夫を殺した大企業の幹部たちも含まれてる。そう、みゆきもまた復讐……というより暗殺の決定的な証拠を掴もうとしてる。



原田はまず、管轄外の浅草でみゆきを見つける為、浅草署の名物刑事・権藤(伊藤雄之助)に協力を仰ぎます。



“特別出演”とクレジットされた名優・伊藤雄之助さんは前年6月に脳出血で倒れて闘病し、本作が復帰第1作。

コワモテでよそ者に冷たいベテラン刑事と、相手が誰であろうと物怖じしない原田は当然のごとく対立するんだけど、実は似た者どうしな両者の距離が縮まっていく過程は、殺伐としたストーリーの中で(名優2人の味わい深い演技もあって)絶妙な息抜きになってます。



さて、原田が睨んだ通りみゆきのマンションに潜伏してた竜二は、義姉に銃を向けて逃走! 原田がジープで追跡を始め、助手席にみゆきが飛び乗ります。



その瞬間、佐藤友美さんの白いパンティーが意図せずチラリ。フィルム撮影の(つまり現場で映像をチェック出来ない)昭和ドラマじゃよくある事で、それを見逃さないが為に我々(昭和世代)は正座してテレビにかじりついたワケです。ましてや当時はミニスカートが大流行で、女優さんたちも覚悟の上でしょう。



もちろん『西部警察』ほど派手じゃないにせよ、けっこうなスピードで住宅街をかっ飛ばすカーチェイスは、まだ規制が緩かったであろう当時ならではかも知れません。

が、残念ながら竜二は再び行方をくらませちゃう。バカだけど可愛い義弟を殺人犯にしたくないみゆきは、原田をまいて大企業の幹部らに接触し、ホステス業でこつこつ集めた情報を駆使して、一気に黒幕のまた黒幕=松村代議士(河村弘二)へと近づいて行きます。



ところがあと一歩のところでアホの竜二が乗り込んで来ちゃう。



「男」に生まれただけでもアホなのに、その上「若い」というアホ条件まで兼ね備えた竜二はアホ中のアホです。


「やめて、竜ちゃん! あなたが殺らなくてもこの男は殺し屋に消されるのよ!」

そう、黒幕にそうさせるのがみゆきの狙いだった。


「根岸係長は、この世で私が選んだ、たったひとりの人よ。私はこの2年間、貴方たちに復讐するために生きて来たわ」


「本当は、殺したいぐらいじゃ飽き足らなかったわ! その皮を剥がして、私がどんなに苦しみ、悲しんで来たかを、生きながらに味わわせたかった!」


当然、みゆき自身もこうなることは覚悟の上、と言うより本望だったかも知れません。


「原田さん、このテープで……根岸係長の無実を……無実を晴らして」


原田刑事の怒り、爆発!



これぞ燃える展開! これこそ真の刑事ドラマ!

その足でラスボス=松村代議士の選挙事務所へと乗り込んだ原田は、令状なしで引っ張ろうとします。



「おい、若いの。首を大事にしろよ」と余裕をかます松村に、原田はこう返します。

「心配いらねえよ、オレの首は5~6本あるんでな!」

「ふっ、バケモノだな」

「バケモノが鬼の顔の皮をひん剥いてやるんだい! 来いっ!!」



萩原健一さんや松田優作さんが『太陽にほえろ!』の内容に不満タラタラだったのは、この原田刑事の八方破れさに比べるとマカロニやジーパンが「甘い」と感じたからでしょう。『太陽〜』が青春ドラマである以上、それは仕方ないことなんだけど。

特に松田さんが原田さんにどれほどカブレておられたか、今回の原田刑事のコスチュームを見れば一目瞭然。(のちにジーパン刑事もまったく同じ格好をします)

当時の原田芳雄さん、弱冠26歳。それでこの渋さに加え、俺ジナル溢れる演技。そりゃ憧れますよね。

今回はそんな原田さんの燃えるアクションが観られた上、伊藤雄之助さんに佐藤友美さんという豪華ゲスト、おまけにパンチラサービスまで!



佐藤友美さんはデビュー作にして主演作の映画『さそり』でも伊藤雄之助さん、そして我らが山さんこと露口茂さんとも共演し、『太陽にほえろ!』#123ではボス(石原裕次郎)とチョメチョメしそうでしない小料理屋の女将にも扮した女優さん。

2000年代まで活躍され、多くの作品に出られてるけど刑事ドラマは他に『秘密指令883』や『東京メグレ警視シリーズ』といった渋すぎる作品しかウィキペディアには記載されてません。


 

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『鉄道公安官』#01

2023-11-24 22:22:05 | 刑事ドラマ'70年代

ちょっと前に東映チャンネルさんが「鉄道特集」の一環として、『爆走!ドーベルマン刑事』の前番組である『鉄道公安官』を第1話のみ放映してくれました。

同じテレビ朝日&東映の制作による『さすらい刑事旅情編』の前身と言える作品だけど、その原型はもっと古く、1962年6月から’63年3月まで放映された『JNR公安36号』、それに続いて’62年から’67年まで全198話が放映された『鉄道公安36号』がたぶん始祖。

で、’72年にスタートした『太陽にほえろ!』の大ヒットにより巻き起こった空前の刑事物ブームを受け、’77年に制作された新たな鉄道公安官ドラマが西郷輝彦主演による『新幹線公安官』。

その第2シリーズが’78年9月に終了し、装いを新たに翌’79年4月から月曜夜8時枠でスタートしたのがこの『鉄道公安官』で、’80年3月まで全42話が放映されました。

東京鉄道公安室内の捜査部署「ゼロ課」に所属する主人公=ワカメ好き好き主任こと榊大介に扮したのは、後番組『爆走!ドーベルマン刑事』の主人公(黒沢年男)と同じく“アフロヘア”がトレードマークの、石立鉄男。



そしてゼロ課の紅一点=八木和子を演じたのは『兄弟刑事』の五十嵐めぐみ。なんとこのお方もアフロヘア!



杉サマの『大捜査線』でも本阿弥周子さんが途中からアフロになったし、そういや笑福亭鶴瓶さんが関西でブレイクされたのもこの時期だから、当時ちょっとしたアフロブームだったんでしょう。

続いて若手イケメン枠の星野刑事には『華麗なる刑事』『刑事犬カール』『西部警察』の加納竜。



ベテラン公安官の本間には『ザ・ガードマン』『大都会/闘いの日々』『刑事物語’85』『あぶない刑事』の中条静夫。



ゼロ課を統率する東京鉄道公安室の室長=瀬川浩三には『東京コンバット』『87分署シリーズ/裸の街』の三橋達也。



そして新米公安官の古賀に赤木良次が扮するほか、第22話からイケメン公安官2号として星正人がレギュラー入り。また、第7話からジャーナリスト役で夏目雅子もセミレギュラーとして参入します。




☆第1話『寝台特急(ブルートレイン)の少年』(1979.4.9.OA/脚本=小野竜之助/監督=小西通雄)

なにせ『さすらい刑事旅情編』の前身ですから基本は人情ドラマ。悪党をタコ殴りしたり750ccバイクで撥ね飛ばしたりする描写は見られません。まことに遺憾です。

初回のストーリーは、アホな船乗り(上條恒彦)が投資に失敗して多額の借金を背負い、悪党どもに利用されて麻薬の運び屋をやらされそうになる。

彼は拒むんだけど、ブルートレイン「さくら号」に乗って博多まで会いに来た幼い息子が、その道中で悪党どもに拉致され、人質にされちゃう。

息子を取り戻すため麻薬密輸に加担せざるを得なくなったアホ船長を、さくら号でたまたま彼の息子と知り合ったアフロ主任たちが救うワケです。



これって、悪党どもに拉致されるのを少年から赤ちゃんに、アホな父親を船乗りからバイク乗りに、運ぶのを麻薬から大物犯罪者に置き換えたら、まんま前回レビューした『爆走!ドーベルマン刑事』#01と同じ話になっちゃいます。

これは意図的に似せたワケじゃなく、たぶん偶然でしょう。創ってる人たちは1本1本の内容までいちいち憶えてないし、全ての刑事物からこれと似たストーリーを挙げていけば100や200じゃ済まないはず。

そもそも、物語のパターンなんか基本は5通りぐらいしか無いって云われてますもんね。だからこのブログでも「筋はどうでもいい」っていつも書くワケです。問題はそれをどう見せるかだって。

ほぼ同じストーリーで、どっちも主役がアフロなのに、『鉄道公安官』と『爆走!ドーベルマン刑事』じゃ味わいが全然違う。そこが私にとってはすこぶる面白い!



後の『さすらい刑事旅情編』では捜査官たちが拳銃を持たないけど、この当時(の刑事ドラマ)は皆が持ってて当たり前の時代。ただし刑事側の発砲は無く、立ち回りもアッサリしたもんでドーベルマン刑事とは実に対照的。



だからこれ、主役が石立鉄男さんでなければレビューする気になれなかったかも知れません。見どころはワカメ好き好き石立さんに尽きます!

『はぐれ刑事純情派』の藤田まことさんと同じで、ストーリーは人情系でも石立さんが演じると湿っぽくならない。ハードボイルドなんですよね!

その真骨頂が、今回のラストシーン。少年は無事に救出されたものの、麻薬密輸に関わった父親は逮捕され、母親は病気で既に他界しており、刑務所から父が帰って来るまで彼は独りで頑張らなきゃいけない。

で、泣きながら海を見つめる少年の傍らに腰掛け、アフロ主任が黙って懐から取り出したのが、これ。



絶対、石立さんのアドリブですよねw キャメラの後ろで必死に笑いをこらえる撮影隊の姿が目に浮かびますw これは『トミーとマツ』じゃない、シリアスタッチのドラマなのに!(大人になるんだぞ、っていう意味なら筋が通ってるけど)



そこが石立鉄男さんの魅力だと思います。かなり破天荒だったらしい御当人のキャラがどんな作品においても反映されてる。唯一無二! ワカメ好き好き!

加えて、紅一点=八木公安官役の五十嵐めぐみさん!



’76年放映のTBSポーラテレビ小説『さかなちゃん』のヒロイン役で知られる女優さんだけど、それ以前に『特別機動捜査隊』や『非情のライセンス』に複数回ゲスト出演されてたり、’77年〜’78年放映の『兄弟刑事』では主役兄弟(篠田三郎&岡本富士太)の妹役でレギュラー出演されるなど刑事ドラマにも縁のあるお方で、アフロヘアはどうかと思うけど好みのタイプです。


 

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『噂の刑事トミーとマツ』#02

2023-10-16 20:58:52 | 刑事ドラマ'70年代

いよいよ始まる「’80年代」という一大イベントの前夜祭みたいに、1979年10月からTBS系列の水曜夜8時枠で賑やかにスタートしたのが、『噂の刑事トミーとマツ』という伝説的なポリス・コメディー。

同時期にやはりTBS系列で始まった『3年B組金八先生』と並んでサプライズヒットを飛ばし、延長を重ねて’81年3月まで全65話が放映され、さらに’82年の第2シリーズ全41話も加えて通算106話。バディ物の刑事ドラマとしては『相棒』『あぶない刑事』に次ぐ成功作と言えましょう。

制作は、同じ放映枠であの坂上二郎さんを主役に迎えて『夜明けの刑事』『新・夜明けの刑事』『明日の刑事』をヒットさせた、あの大映テレビ。

国広富之&松崎しげるという意表を突いたキャスティングも、シリアス人情路線だった『夜明けの〜』シリーズから内容を180°転換させた大胆さも、大映テレビのアナーキーさと’80年代ジャパンの勢いがあればこそ、だったかも知れません。




☆第2話『トミーの初恋・夢見街』(1979.10.24.OA/脚本=長野洋/監督=井上芳夫)

クラブ「バッカス」のバーテンダー・田島(沖田駿一)が他殺体で発見され、富士見警察署・捜査課の刑事たちが捜査に乗り出します。

で、「バッカス」に務めるホステスたち(ホーン・ユキ、鶴間エリetc)への聞き込みを命じられたのが、女性を大のニガテとする新米刑事“トミー”こと岡野富夫(国広富之)。

若くてハンサムで母性本能をくすぐるタイプのトミーが、ギラギラしたオヤジどもの相手に飽き飽きしてるホステスたちの巣(マンション)に飛び込めば、当然こんな羨ましい状況に。



結局なにも聞き出せないどころか、ホッペやスーツにしこたまキスマークと香水の匂いをつけられ、仕方なく着替えようと自宅に戻ったら、その姿を姉の“サッチ”こと幸子(志穂美悦子)に見つかって……



「仕事サボって一体ナニしてたのっ!?」



言い訳するスキもなく、富士見署でインストラクターを務める武術家サッチの背負い投げを食らうハメに。そりゃこんな姉ちゃんと同居してたら女性が怖くもなるでしょう。



「あら、そういう事だったの。ごめんね、てへ!」

「そんなんだからお嫁に行けないんだよ!」

「言ったな、この!」

そんな牧歌的な姉弟喧嘩に昭和という時代を感じます。そしてお懐かしや林隆三さん演じる捜査課長=御崎警部が振るう愛のムチにも。

「もういっぺん行って来い! なにか掴めるまで戻って来るんじゃないっ!!」



「そっ、そんな……」

そんな羨まぴぃ〜!!って、先輩刑事で相棒の“マツ”こと松山進(松崎しげる)が聞いたら悶絶&激怒しそうだけど、今回はトミーが主役なんで出番少なめ。

番組が始まったばかりで、しかも刑事ドラマとしては前例が無いほど振り切ったコメディーなもんで、まずは人気も実力も保証済みの国広さんで様子を見ようって算段なんでしょう。(歌手の松崎さんはこれが連ドラ初出演)

てなワケで、今度は直接「バッカス」に赴くトミーだけど、結果は同じw



今度は高級酒をしこたま呑まされそうになったトミーが、ひときわ若いホステスを見て驚きます。

「マリちゃん!?」



「富夫さん……!」

トミー以上に驚き、その場から逃げ出したホステス=真理子(石原初音)は、かつてトミーの実家にいた“お手伝いさん”なのでした。

孤児で、中学を卒業してすぐ住み込みで働くなんて設定は、当時でもリアリティーが感じられなかったかも知れません。

が、創ってるスタッフの人たちにはまだ、貧しかった戦中戦後の記憶が残ってる。まさに当時が時代の転換期であり、過渡期だったんだと思います。



「富夫さんはずいぶん立派になりましたね……すっかり刑事さんらしくなって」

「どうして僕が刑事になったこと知ってるの?」

「風の噂かしら……うふふ」

故郷に戻ったはずの真理子がなぜか東京にいて、しかもクラブのホステスなんて似合わない仕事をしてる。

イヤな予感を覚えたトミーは、勇気をだして再びホステスたちの巣を訪ね、ホーン・ユキさんのおっぱい攻撃に耐え抜いて、殺された田島がユスリの常習犯だったという情報をついに引き出します。

ということは、ユスられてた被害者たちの中に田島を殺した犯人がいる可能性が高い。

徹底的な聞き込みの結果、“おやっさん”こと高村刑事(井川比佐志)が有力すぎる情報を掴んで来ます。



どうやら畑中(江木俊夫)という運送会社のドライバーが半年前、配達中に田島をトラックで轢きかけたらしく、ほんのかすり傷だったのに田島がしつこく治療費を要求し、事故が会社にバレることを恐れた畑中は言われるまま払い続けた。

で、給料だけじゃ払い切れなくなり、畑中の妻が「バッカス」で働く羽目になったという。

「その奥さんの名前は?」

「ああ、たしか真理子とかいったな」

「!!」

だからマリちゃんがあんな仕事を……

妻まで巻き込んでしまった畑中が、いよいよ思いつめて田島を殺したに違いない!と推理し、きっとヤツはマリちゃんに会いに来るだろうと確信したトミーは、連日徹夜で彼女のアパートを張り込むのでした。



↑ここでようやく合流した松山先輩は、このありさまw スケベで粗暴で短足で顔が必要以上に黒く、そして何より不真面目。刑事ドラマの主人公としては画期的なキャラクターで、“アナーキー”大映テレビの面目躍如です。



で、昼間は一般企業の事務員として働く真理子を尾行し、ついに畑中の隠れ家に辿り着くのですが……

「あなた、逃げて!」



真理子に追跡を妨害された上、高所恐怖症のため階段を登れなくなったトミーは、あえなく撃沈。ここまで情けない主人公もまた画期的でしょう。

そんなトミーを責め立てるマツに、彼の後見人である本庁の相模管理官(石立鉄男)がいつものカミナリを落とします。



「目くそが鼻くそを笑うとはお前たちのこった、まったくいい勝負だな! ま、たまには失敗もやむを得んが……」



「そうですよね、失敗は成功の元って言いますからね!」



「バカヤローッ!! 俺はたまには失敗してもやむを得んと言ったんだ、お前たち一度でも成功したことがあるかーっ!?💢」

マツみたいな男には絶対なりたくないけど、その果てなきポジティブ思考には憧れを禁じ得ません。ウジウジ悩んでばかりの自分に心底ウンザリしてる今日この頃の私です。トミコトミコトミコォーッ!!💨



で、行方をくらませた畑中を誘き出すべく、真理子を泳がせるように指示されたトミーは、またもや寝ずの番。

畑中を捕える為というより真理子のことが心配で、雨に打たれても張り込みをやめないトミーを見かねて、真理子は彼をアパートに招き入れるのでした。



「富夫さんは、ご両親いっぺんに(交通事故で)失くしちゃったけど、まだお姉様がいらっしゃるでしょ? 私たちには誰もいなかった」

「…………」

故郷に戻っても身寄りはなく、孤独な日々を送ってた真理子にとって、同じ孤児である畑中との出逢いは特別なもので、お互いどうしても手放せなかった。

「私にはあの人しか、あの人には私しかいなかったんです」

「マリちゃん……」



「富夫さん……私、本当は……」



「え……なに?」



「本当はあなたが好きだったの! 抱いて! アレ見せて! しゃぶらせて!」



「ええーっ、ダメだよマリちゃん! 誰か助けてえーっ!!💦💦」

↑ていうのは実は冗談で、真理子が何か言いかけたところで畑中が現れ、追いかけたトミーは再び階段を駆け上がるハメになり……



まったく同じ轍を踏みそうになったところで、駆けつけたマツがあの台詞を叫びます。



「またかよ、この腰抜け! お前なんかトミーじゃねえ、トミコだ! トミコーッ!!」

「!!!」



トミーがトミコと呼ばれてハイパー激怒し、いきなりスーパーコップに豹変してあっという間に犯人を逮捕しちゃう。

これが毎回のお約束になるんだけど、メインライターの長野洋さんにそんなつもりは全然なく、第1話で気弱なトミーが犯人に立ち向かうキッカケとして、1回きりのつもりで使ったアイデアなんだそうです。

それが好評で回を追うごとエスカレートし、トミーの耳がピクピク動いたり、立ち回りもどんどんアクロバティックになって特撮ヒーロー化していっちゃう。

ストーリー自体もどんどん荒唐無稽になっていくし、キャスト陣の芝居もアドリブの応酬が増える中、井川比佐志さんお一人だけシリアス演技を貫いておられるのがまた可笑しくて、私も大いにハマったもんです。

だけど今回のレビューはまだ試行錯誤中の第2話で、ギャグもアクションも控えめだし、『夜明けの刑事』シリーズのヒューマニズムが残ってたりもします。

一件落着かと思いきや、ラストに哀しいどんでん返しが待ってました。



「田島を殺したのは、私です」



「えっ?」

「そんなバカな!」



「本当なの。マリちゃんがウチに来て何もかも話してくれた」

畑中夫婦へのユスリをエスカレートさせた田島は、独立資金として100万円を要求した挙げ句、許しを乞いに来た真理子をチョメチョメしようとした。



そりゃこんな形相で襲い掛かられたら、私だってこうしちゃうだろうと思います。



で、真理子はすぐ自首しようとしたけど、夫の畑中が全力で阻止した。なぜなら、二人で毎晩チョメチョメしてつくった子供が、彼女のお腹に宿ってるから。



たとえ正当防衛が認められたとしても、刑務所行きは免れない。二人の愛の結晶を、そんな場所で産ませたくない。だから畑中が罪を被ったのでした。



孤児どうし、温かい家庭をつくるのが二人の夢だった。それが、ちょっとした事故を誤魔化そうとしたばかりに……



「勘弁してくれ。みんな俺のせいだ」

「いいのよ。夢が破れても、その分だけ夢を見ることが出来たんですもの」



「そんな事あるもんか! これからだよ! これからお前たちの本当の生活が始まるんじゃないか!」 



「そうだよ! キミたちの夢は決して破れてなんかいない! これからだよ、これからキミたちの本当の夢が大きく広がるんだよ!」

もちろん決して容易な道じゃないだろうけど、まだこんなに若い二人なら、きっとやり直せることでしょう。



「お前、彼女のこと好きだったんじゃないか?」

「嫌いになる男がいますか?」

「まあ、そうだな。タバコ」

「今は吸いたくありません」

「オレにくれって言ってんだよ」

「タバコぐらい自分で買ったらどうですか!」

「いいじゃないかよ、オレは先輩だぞ?」

「イヤですよ、もう!」



こんなにシリアスなストーリーでも、最後はやっぱりバカをやって終わるのが『トミーとマツ』の流儀。そこはスタート時からブレてません。

かくも突き抜けた感じが大映テレビの個性であり、これに限っては’70年代も’80年代も関係無いのかも知れません。

この作品、初期の22話分しかDVD化されておらず、交通課婦警の“マリッペ”こと森村万里子(石井めぐみ)が頭角を表し、相模管理官が降格して課長に就任する第1シリーズの後半から第2シリーズが現在は観られない。

本放映時、第1シリーズは裏で『あさひが丘の大統領』をやってたもんで、私はリアルタイムで観てないんですよね。だから私にとっての『トミーとマツ』はマリッペがいる第2シリーズなんです。DVDマガジンでもいいから商品化熱望!



素晴らしい演技を披露されたゲストの石原初音さんは、1975年の『必殺仕置屋稼業』における「おはつ」役でデビューされた後、映画『杳子』や平凡パンチ、週刊プレイボーイ等のグラビアで素晴らしいヌードも披露。

刑事ドラマは『特捜最前線』第100話にもゲスト出演されてますが、芸能活動そのものが短かったようで、数少ない出演作の1本として本作は貴重なものになるかと思います。


 

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『華麗なる刑事』#04

2023-10-16 20:53:21 | 刑事ドラマ'70年代

 
日本テレビ系列で『俺たちの勲章』と『はぐれ刑事』が放映されてから2年が経過した1977年、フジテレビ系列の月曜夜8時枠で4月からスタートしたのが東宝制作による『華麗なる刑事』で、同年11月まで全32話が放映されました。

’70年代初期のトレンドとも言える“挫折の美学”がまだ残ってた『〜勲章』や『はぐれ〜』と違って、この『華麗なる刑事』にそういう暗さというか、ドラマ性はあまり感じられません。

ほぼ同時期、日テレでは火曜夜9時枠で石原プロの『大都会 PART II』がスタートし、『はぐれ刑事』以上にシリアスだった前作『大都会/闘いの日々』から打って変わって娯楽アクション路線にシフトしたのも、決して偶然じゃないでしょう。

つまり、日本という国が異様に豊かで明るかった、あの「’80年代」の足音がいよいよ近づいてきた感じ。

それに加えて『華麗なる刑事』は、どちらかと言えば男性向けのメディアだった(と私は思ってる)テレビのチャンネル権を、いつの間にか女性たちが握ってることにいち早く気づき、内容に反映させた先駆的な作品だったと言えるかも?



それを象徴するのが草刈正雄に加納竜という爽やかイケメン(田中邦衛さんはさておきw)、さらに檀ふみ、沢たまき、梶芽衣子といった“男ウケ”しない(と私は思う)女優陣の起用、そして44マグナムを使いながらも射殺は無く、アクションはあくまでスマートに見せるという演出コンセプト。



いや、置いといた田中邦衛さんにしたって女性人気は凄かった筈で、イケメンとはまた違った“男の色気”がほとばしってます。

要するに、とにかく“華麗なる”男たちを愛でるために創られたドラマであり、それ以上でも以下でもない。言わば女性向けアイドルドラマのはしりかも知れません。




☆第4話『標的は俺だ』(1977.4.25.OA/脚本=田波靖男/監督=児玉 進)

ストーリーは至ってシンプル。米国企業への闇献金が噂される商事会社の幹部たちが凄腕スナイパーに次々と暗殺され、警視庁・南口署の刑事たちが捜査に乗り出します。

で、そのスナイパーの正体がどうやら主人公「ロス」こと高村一平(草刈正雄)がかつてロサンゼルス市警(アジア特捜隊?)にいた頃、愛銃マグナム44で射殺したサムソンという殺し屋の弟子=清宮(三ツ木清隆)らしいと判明。



つまり、キラー清宮にとってディテクティブ高村は死んだマスターのエネミー。これはかえって好都合?

次の犠牲者が出る前に犯行を阻止すべく、高村は自らターゲットとなって清宮を誘い出すのでした。



挫折の美学はどこへやら?って感じだけど、どっちが観やすいかと言えば断然こっちだし、正直言ってレビュー記事を書くのもラクなんですw なにせ華麗なるアクションの魅力は文字じゃ伝えようが無いですから。

イメージビデオのレビューと同じで、切り取った1つ1つの場面を脳内でモンタージュし、若き日の草刈さんや邦衛さんの華麗なる姿を想像して頂ければと思います。



草刈さんの走るフォームは松田優作さんほど美しくはないにせよ、手足が長いだけにやっぱ画になります。サウスポーゆえ射撃スタイルも独特です。

そして相棒のゴローさんこと南郷五郎(田中邦衛)も「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」と言わんばかりに大活躍。



殺陣で魅せるタイプじゃない『華麗なる刑事』では珍しいかも知れない、ロス刑事の格闘アクション。



こうしてキメるときはキメるけど、普段の2人はこんな感じ。



過去の記事に再三書いてきたとおり、邦衛さんの味わい深い演技や存在感が羨ましくて仕方ない草刈さんが必死に三枚目を演じ、逆に邦衛さんが二枚目に徹してるのが『華麗なる刑事』の一番面白いところ。制作側は大いに困ったことでしょうw

そんな2人の脇を固める南口署捜査課のメンバーは、上条課長(佐野浅夫)にベテランの田島刑事(新 克利)、そして“坊や”こと真田刑事(加納 竜)。



『華麗なる刑事』のもう1つの魅力として、ロス刑事が駆る“ギャランΛ(ラムダ)”を筆頭とする、華麗なる三菱カーたちも挙げられるかも知れません。第29話では“フォード・マスタング・マッハ1”との対決も見られました。



さらにゴローさん専用車のランサーセレステ1400GL、“城西署の女豹”こと三杉刑事(梶 芽衣子)が愛用するランサーセレステ1400GSL等、私は詳しくないから解んないけど、お好きな方には味わい深いラインナップかも?



そして忘れちゃいけないレギュラー女優陣。まずは少年係の巡査にして南口署のマスコット的存在の、青井 空(檀ふみ)。



“南口署の生き字引”と呼ばれて嬉しいのかどうか分からない、署長よりも偉そうに見える園山巡査部長(沢たまき)。



実はシリーズ後半に5回登場するだけのセミレギュラーだけど、第三の“華麗なる刑事”として強烈なインパクトを残した“女豹”こと、城西署刑事の三杉理恵(梶 芽衣子)。



以上の女優陣が「男ウケしない」と書いたのは決して悪口じゃなく、チャンネル権を握ってる女性視聴者たちに嫌われないことが何より大事。

ところがそんな中、青井巡査の同僚婦警に扮した大塚悦子さんだけ「おっ、可愛い!」「この人は男ウケしちゃうのでは?」と思ったもんで調べてみたら、なんと本作での共演がきっかけで後に草刈正雄さんの妻となり、ダンサーの紅蘭さんやモデルの草刈麻有さんを産むことになるお方じゃないですか!



↑言うまでもないでしょうが左側の人です。

童顔ながらもボインぼいぃぃ〜ん!なボディで男性誌のグラビアを飾られた“グラドル”のはしりで、その結婚を後押ししたのは誰あろう、草刈さんの大親友らしい勝野洋さん! テキサスがロスの人生に多大な影響を与えたとはよく出来た話じゃないですか?

というワケで今回のセクシーショットは檀ふみさんでもなければ梶芽衣子さんでもなく、ましてや沢たまきさんでもない、草刈正雄夫人の大塚悦子さんです!


 

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『はぐれ刑事』#01

2023-10-16 20:40:20 | 刑事ドラマ'70年代

かつて、純情派じゃない『はぐれ刑事』というドラマがあったことをご存知でしょうか?

1975年(昭和50年)秋シーズンに全13話が放映された『はぐれ刑事』が“日本テレビ火曜夜9時のアクションドラマ”の系譜や“バディもの刑事ドラマ”の系譜から除外されがちなのは、主役のお二人(平 幹二朗&沖 雅也)にそれぞれジェンダーに関する疑惑があったから?

だとすればまったくバカげた話だけど、多分そうではなく、当時大ヒット中だった『太陽にほえろ!』を代表とする刑事ドラマの“型”からあまりにかけ離れた内容に視聴者がついて行けず、なんとなく“別もの”と認識しちゃったせいじゃないでしょうか?

少なくとも私は当時見向きもしなかったし、10年ほど前にCATVで初めて観たときもどう楽しめば良いやら戸惑い、続けて視聴する気になれませんでした。

ところが今回、『傷だらけの天使』に『俺たちの勲章』と日テレ“岡田晋吉ユニバース”のバディものを連続レビューした流れで、あらためて観直してみたら実に味わい深い!

制作は俳優座映画放送&国際放映だけど岡田プロデューサーも企画に名を連ねておられ、それだけでクオリティーの高さは保証されたようなもの。

逆に、その“志しの高さ”こそが仇になったんじゃないかと今は思ってます。ある程度レベルを落とさないとテレビ番組はヒットしない。古今東西、その法則は不変なんでしょう。

ちなみに本作の後番組が石原プロモーション初のテレビ作品『大都会/闘いの日々』で、一般的に“日テレ火曜9時のアクションドラマ”はそこが起点とされてます。




☆第1話『銃弾』(1975.10.7.OA/脚本=尾中洋一/監督=小野田嘉幹)

舞台は東京の下町・浅草。そして事件の発端は、おみやげ屋で働く若い女=まゆみ(桃井かおり)が、浩太郎(橋本 功)という同棲相手がいながら嶋本(磯部 勉)というハリソン・フォードそっくりな声をした男と1晩だけチョメチョメし、それがバレたせいで勃発した痴話喧嘩。



モデルガンの規制がまだ緩かった、当時ならばあり得そうな改造ピストルを浩太郎が持ち出したもんで、目撃者が通報して台東警察署・捜査課の刑事たちが現場に駆けつけます。



が、時すでに遅く、ハリソン・フォード声の嶋本を射殺した浩太郎は、今にもまゆみと心中しようとしてる。

温情派のベテラン刑事=風間史郎(平 幹二朗)は、血気盛んな新米刑事=影山健三郎(沖 雅也)に援護を命じ、ひとりで飛び込み、まずはまゆみを保護します。

で、浩太郎にピストルを捨てるよう説得するのですが……



ものの弾みで浩太郎が引金を引き、同時に影山ら刑事たちも一斉に発砲!

そして飛び交った何発かの銃弾のうち1発が、あろうことか風間の胸に命中してしまう!



その直後、浩太郎は自分で自分を撃って自殺しちゃう。一斉射撃しながら誰も犯人に当てられなかった刑事たちがヘボ過ぎますw

が、たぶん現実はそんなもの。飛行中のヘリからショットガンで敵の拳銃だけ弾き飛ばす団長がファンタジー過ぎるだけ。



皆が慌てて風間に駆け寄る中、影山は呆然と立ち尽くします。なぜなら彼は、後に七曲署で活躍するスコッチ刑事ほど射撃に自信がなく、しかも、撃った瞬間に眼をつむってしまった自覚があるから。

まさか、オレの撃った弾が……!?



もちろん、初回でいきなり主人公が死にやしません。風間は、遠のく意識の中で同僚刑事たちにワガママを言います。



「し、新藤外科へ連れてってくれ」

「新藤って、あの新藤か? ヤブだぞ、あいつは」

刑事たちにヤブ認定されてる外科医とは、風間と幼馴染みの町医者=新藤保太郎(田中邦衛)。



「保太郎……やられちゃったよ。タマ入っちゃった、タマ」

「なあに、タマの1つや2つ」

そう言いながらも保太郎は、レントゲン写真を見て弾丸の摘出をためらいます。



「どうして抜かないんですか?」

「黙ってろよ、若造」

そんなに難しいオペでもないのにと、助手の大辻医師(火野正平)がいぶかりますが、保太郎は相手にしません。理由は火野正平だから……ではなく、風間の肺スレスレで留まってる弾丸のサイズが気になったから。



保太郎から連絡を受け、風間&影山の上司である滝川課長(小沢栄太郎)も顔色を変えます。

なぜなら、死んだ浩太郎が使った改造ピストルは22口径で、刑事たちが使ってる制式拳銃(当時のドラマだと大抵MGCハイパト)は38口径。

そう、風間の体内に残ってる弾丸は38口径なのでした。



現在のところ、影山以外の刑事たち(望月太郎、片岡五郎、伊東辰夫ほか)の弾丸は現場で回収されており、影山と浩太郎の弾丸だけが1発ずつ行方不明。

つまり、風間の体内から弾丸を摘出する=それが38口径であることを明かせば、影山がパイセンでバディの風間を誤射したことも確定してしまう!



「ホシの弾は22口径だそうだ。オメェらのはいくつだ?」

「ええ?」

「警察官の口径だよ」



「38口径……!」

「オレは抜いてもいいよ。シカゴ帰りの凄腕なんだからよ」

「…………」

「どうした?」

「抜かんよ、弾は」

「そうか」

風間にせよ滝川課長にせよ、恐らく気にしてるのは警察のメンツじゃない。影山健三郎という有望な若手のキャリアを潰してしまうことを、未来を託すベテランとしてはどうしても避けたいんでしょう。

けど、影山をよく知らない鑑識課長(地井武男)にそんな情は通じません。



『太陽にほえろ!』じゃ入れ違いだったスコッチ&トシさんの“夢の共演”なのに、事態の不自然さをズバズバ指摘され、影山のモヤモヤもどんどん増していきます。



保太郎に尋ねても「知らんでいいの。そのほうがラクなの」とか「夜になったら眠るんです」とか「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」とか言いながら口を尖らすばかりで埒が明かない。

そして、事件現場をこっそり探索し、行方不明だった浩太郎の弾丸(すなわち、風間に当たったのが影山の弾丸であることを示す証拠)をついに見つけた滝川課長は……



その事実を闇に葬ることを決意するのでした。王道の『太陽にほえろ!』だと絶対にあり得ない作劇です。

そうとも知らず、影山は何とか事実を知ろうと奔走するも何も掴めず。当事者である先輩と上司と、主治医までグルになって隠蔽を謀ってるんだから、そりゃ何も出て来やしませんw

周りはそれで良くても影山自身は、まっとうな人間であるがゆえに苦しみ、酒に溺れます。

そんな影山に、“ラリパッパのお京”と自ら名乗るボインぼいぃぃ~ん!な酔っ払い娘(ホーン・ユキ)が絡んできます。



「あんたさ、眼つむって撃ってたじゃん」

「!?」

そう、あのとき現場に居合わせたお京は、すべてを見ていた。きっと若くてハンサムな影山に眼を引かれたんでしょう。

すぐさま呑み屋から逃げ出した影山を、ボインぼいぃぃ〜ん!とお京は追いかけ、つきまといます。



「小汚い町だよな、浅草ってとこは。オレは絶対、ジュクかブクロに移ってやるんだ」

ジュクは新宿、ブクロは池袋のことでしょう。七曲署は新宿にあるから望みは叶うワケです。



「ふふ、変わってらぁ、あんた。いいじゃん、此処も」

「許せないんだよ、あんなヤツらの為に……未練たらしい男、いざとなりゃ尻に帆かけて逃げる男、騙される女……小汚いんだよな、どいつもこいつも」



「騙されるからいいんじゃんか」

「…………」

下町=人情味にあふれた温かい場所っていう、固定されたイメージを完全否定しちゃうセリフを主役が言っちゃうのも凄い!

回が進むにつれ意識が変わっていくにせよ、現在ならコンプライアンスとやらで絶対NGでしょう。



「朝だね……タバコちょうだい」

「……オレな、生身の人間を撃ったの初めてだったんだ。ざまぁねえよな」



「……デカってさ、ほんと好きじゃないんだよな。カッコ悪くて」

「…………」

「だけど最高にカッコよかったよ。眼つむって撃ったアンタ」



つまり、それが人間らしい人間ってことでしょう。お京は影山のルックスだけに惹かれたワケじゃなさそうです。



味わい深いこの第1話の中でも、特にこの影山とお京のやり取りが良かった!

それはホーン・ユキさんのおっぱいがチラチラするからじゃなく(それもあるけど)、きっと本作が“刑事ドラマ”じゃなく“人間ドラマ”であることを最も端的に示したシーンだからだと思います。

テレビ視聴者(ことに刑事ドラマのファン)が求めがちな“理想的ヒーロー”がここにはいない。そりゃ従来型の系譜から“はぐれ”ちゃうワケです。

だから影山は、真相なんか知る由もないまゆみを署に連行し、意味のない取調べを繰り返すという醜態まで晒します。



「アンタにはアンタの言い分ってものがあんだろう? それを聞かせてくれって言ってんだよ。そうでなきゃいつまでも吹っ切れないからさ。なあ!」



「だからあ! なんで死ぬのぉ? なんで撃つのぉ!? ねえ、なんでぇ!? 浮気したんじゃないんだもん! そういうのじゃないんだもん!」



かおり節が炸裂したところで風間が、胸に弾丸を食い込ませたまま帰ってきます。

「テメエに腹立てて、ヒトに当たる奴はクズだぜ?」



急所にはギリギリ達してないとはいえ、鉛弾には毒があるから生きちゃいられない筈だけど、わたしゃ医者じゃないので何とも言えません。

とにかく風間は胸に爆弾を抱えたまま、捜査という激務を続けていく。自分の為じゃなく、生意気な後輩の為に。

そこがこのドラマの肝であり、描かれるのは“事件”じゃなくて“人間”。謎解きもへったくれもありません。



取調室から解放されたまゆみは、影山のライターを借りて、1枚の写真を焼却します。それは一晩だけチョメチョメした嶋本とのツーショット。



みやげもの屋で働いてると、よく観光客が一緒に写真を撮ろうと言ってくる。大抵はその場かぎりの交流なのに、嶋本だけは撮った写真を送ってくれた。

「みやげもの売場ってさ、毎日通過されるだけの暮らしじゃない? なんか、あの写真を持ってるとさ、何かが私を待ってるみたいなさ……そんな気がしたのよね」



「だからね、嶋本さんと会った時さ、とっても嬉しかったけど……浮かれたけどさ、好きとか嫌いとか、そういうのじゃなかったのよね」



「だから浮気したんじゃない。そういうのも浮気?」

「どこまでがホントで、どっから先がウソだなんてことはさ、簡単に決められることじゃないんだよ」

「痛い?」

「まあな」

「ごめんね」

ゴメンで済めばほんと警察は要らないワケだけど、風間は笑って許しちゃう。撃ったのは彼女でも浩太郎でもないしw



「その胸の弾は……オレの弾じゃ?」

「自惚れんなよ。お前の弾が当たるほど、まだモウロクしちゃいねえよ」



「川だよ、川ん中。お前のへなちょこ弾はさ。どうしても探したかったら、一生かけて川でもさらえ。そのうち分からあ、刑事ってもんがさ」

謎解きどころか、犯人を逮捕するシーンもなく第1話が終わっちゃう。あの勝新太郎さんのカルト作『警視ーK』でさえ「投げ手錠」という見せ場があったのに!

そういうクライマックスがあるのが当たり前で、それを見せるために刑事ドラマが存在すると我々は思い込んでますから、そりゃ戸惑うワケです。

けど、腐るほど刑事ドラマばかり見倒してきた、今の私には痛いほどよく解る。たまには王道からかけ離れたことをやってみたい創り手の気持ちも、それを実際にやらせてもらえた昭和という時代がいかにクリエイティブだったかってことも。

10年ほど前は楽しめなかった純情派じゃない『はぐれ刑事』だけど、レビュー続行中の『太陽にほえろ!』ではスコッチが退場しちゃったことだし、これからおいおい観て行こうかと思ってます。



この作品を彩るレギュラー女優陣は、新藤医師の嫁さんの妹でナースの美智子を、そして翌々年には『太陽にほえろ!』でスコッチの元婚約者を演じる、夏純子さんと……



滝川課長の若妻=淳子を演じる、浅茅陽子さん。



そしてボインぼよよ〜ん!な“ラリパッパのお京”こと、ホーン・ユキさんです。


 

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