アルルの女(11)
L'ARLÉSIENNE
アルルの女
———————————【11】———————————————————
La fille passait pour*¹ coquette*², et ses parents n'étaient pas
du*³ pays. Mais Jan voulait son Arlésienne à toute force*⁴.
il disait:
——Je mourrai*⁵ si on ne me la donner pas.
Il fallut*⁶ en *⁷passer par là. On décida de les marier après la
moisson*⁸.
———————————(訳)———————————————————
その女は男たらしとの評判でした。そして彼女の両親は
土地の者ではなく、よそ者でした。それでもジャンはその
アルルの女を是非とも(嫁に)のぞみました。
ジャンがいうには:
——あの女をもらえなければ、死んでやる。
そうする以外にありませんでした。取り入れ時期がすんだら
ふたりを結婚させることに決めたのです。
———————————《語句》———————————————————
*1) La fille passait pour coquette: [passait pour ~] は「~と考えられている」、
「~という評判だ」.la fille とcoquette は主語と属詞の関係.
つまり、On disait qu'elle était coquette. だといっています.
passer やêtre のように「主語と属詞の関係」を作る動詞は
「繋合動詞(けいごうどうし)」と呼ばれます.
乱暴な言い方ですが、主語=属詞の関係を作る動詞はこの
繋合動詞に当たります.
*2) coquette: 辞書によって日本語に幅があります.現代フランス語は
「おしゃれな」
という意味ですが、この作品の時代背景では、「浮気娘」
「男を渡り歩く女」などのようです。
*3) ses parents n'étaient pas du pays.:両親はその土地の出身ではなかった.
du における de は <起源・出身>を表す.
Ex. Il est de Tokyo. 「彼は東京出身だ」.
*4) à toute force:「是が非でも」
*5) mourrai: 1人称単数の単純未来は、しばしば、「意志、意向」
を表わします。
*6) il fallut: falloirの単純過去、非人称構文
< il faut + 不定詞 ~しなければならない
*7) en passer par ~: 「(あきらめて)それに従う」、「(あきらめて)それをがまんする」
「~に甘んじる」se résigner とか céder àと同じ意味.
尚、en passer par における(en) は虚辞 (gallicisme, ガリシズム).意味は
あまりなく、飾り.全然ないわけではなく、de cela という気持ちが
こもります.第9回の学習で出てきたen savoir long
「よく知っている」のen も、この虚辞(ガリシズム)です.
*8) moisson: (f)(穀物、特に小麦の)取り入れ、収穫期