未来日記(2)
———引退したのにどうして語学学習をしているの?
———実はな. ぼくは間違って大阪に生まれてきたんだ.
本当は南フランスに生まれるつもりだったんだ.
ぼくにはマリーという恋人がいた.ぼくたちはコートダジュールの
海岸でいつも一緒だった.白いヨットに乗っていた.南の風は強く
帆綱を軋ませていた.
———お前、大丈夫か?熱あんのか?
———まあ、そういうわけで、懐かしいフランス語を学んでいるのさ.
———はいはい、もう遅いから寝なさい!
未来日記(2)
———引退したのにどうして語学学習をしているの?
———実はな. ぼくは間違って大阪に生まれてきたんだ.
本当は南フランスに生まれるつもりだったんだ.
ぼくにはマリーという恋人がいた.ぼくたちはコートダジュールの
海岸でいつも一緒だった.白いヨットに乗っていた.南の風は強く
帆綱を軋ませていた.
———お前、大丈夫か?熱あんのか?
———まあ、そういうわけで、懐かしいフランス語を学んでいるのさ.
———はいはい、もう遅いから寝なさい!
Émile Zola
—Nana—
ナナ(22)
—————————【22】—————————————————
Puis, pour couper court, il présenta son
cousin, M. Hector de la Faloise, un jeune
homme qui venait achever son éducation à
Paris. Le directeur pesa le jeune homme
d'un coup d'œil. Mais Hector l'examinait
avec émotion.
..——————————(訳)——————————————————
それから、彼はこの話を手短に済まそうとして、連れ
のエクトルを紹介した.エクトル・ド・ラ・ファロワー
ズ.彼の従弟である.パリで学業を終えたばかりの青年
だ.支配人はこの青年を一瞥で値踏みした.しかしエク
トルのほうはこの支配人に感動して見とれていた.
..—————————⦅語句⦆———————————————
directeur(trice):(n) 館長、支配人、
頼りにしている訳本(新潮文庫)では「支配人」
なので、それに倣います.
pesa:(3単単純過去) < peser (他) ~の重さを計る
ここでは「人物を計る」「どれほどの人物か
品定めをする」
émotion:(f) 感動、動揺;
L'émotion l'étouffa. / 彼は感動で息が詰まった.
Der Zauberberg
魔の山
魔の山(ドイツ語)(4)
——————————【4】———————————————
Beim Orte Rorschach, auf schweizerischem Gebiet,
vertraut man sich wieder der Eisenbahn, gelangt
aber vorderhand nur bis Landquart, einer kleinen
Alpenstation, wo man den Zug zu wechseln
gezwungen ist.
——————————— (訳)—————————————————
スイス領ロールシャハの地では、再び鉄道に乗ることに
なる しかし、それもとりあえずラントクヴァルトまで
で、その小さな山岳の駅で列車を乗り換えざるを得ない
のである.
——————————〘語句〙————————————————
Orte: (複) < der Ort (E式) 場所
Rorschach: (地名) ロールシャハ(スイスのリゾート地)
schweizerischem:(強中3格)
< schweizerisch (形) スイスの、
スイス[人][方言]の、スイス風の、スイス式の
das Gebiet (E式)❶地域、地帯 ❷領土、領地
❸分野、専門分野
vertraut:(3単現) < vertrauen (他) ~を信用する、
信頼する
sich vertrauen わが身をゆだねる
die Eisenbahn: (EN式) 鉄道
man vertraut sich der Eisenbahn / 鉄道に身をゆだねる.
gelangt: (3単現) < gelangen (自/s)
[に]着く、到達する、届く
vorderhand:[フォーアデーアハント](副) さしあたり、当分は
Landquart: ラントクヴァルト
(スイスのグラウビュンデン州にある町)
wechseln:(他) 取り替える
gezwungen:(過去分詞) < zwingen
(形)❶〘zu et³〙(~³をすべく)強いられた
(zu et ³ ~ sein) ~をせざるをえない
Er sah sich zu _Konzessionen gezwungen.
彼は譲歩するほかないことを悟った.
Ich war gezwungen ihn einzuladen.
私は彼を招待せざるを得なかった.
———————————————————————————————————
———————————————————————————————————
———————————————————————————————————
The Magic Mountain
魔の山(4)(英語)
————————【4】——————————————
At Rorschach, in Swiss territory, you
take train again, but only as far as Land-
quart, a small Alpine station, where you
have to change.
————————(訳)———————————————
スイス領のロールシャッハで、再び列車に乗ることに
なるのだが、列車はランドクアルトまでしか行けない.
それは小さな山岳駅で、そこで列車を乗り換えるのだ.
———————《語句》————————————————
Rorschach:スイス、ボーデン湖南側に位置する
ザンクト・ガレン州の自治都市
Landquart:スイス領グラウビュンデン州ラント
クアルト、主要鉄道駅となっている.
———————————————————————————————————
———————————————————————————————————
———————————————————————————————————
La Montagne Magique
魔の山(フランス語)(4)
———————————【4】————————————————
Une fois sur le territoire suisse, à Rorschach,
on a encore recours au chemin de fer, lequel
ne vous emmène qu'à la petite station alpestre
de Landquart, où l'on est obligé de changer de
train.
——————————— (訳)—————————————————
スイス領ロールシャッハに入ってしまうと、またも
鉄道に頼るのだ.その鉄道もランドクヴァルト駅という
小さな山岳駅までしか行ってくれない.そこでやむなく
列車の乗り換えをするのである.
———————————〘語句〙————————————————
recours:(m) [à に]訴えること、頼ること
avoir recours à ~ :~に訴える、~に頼る
chemin de fer:[シュマンドフェール](m) 鉄道
emmène:(直現3単) < emmner (他) を連れて行く
alpestre:[アルペストル](形) アルプスの、アルプス特有の
Landquart:仏和辞典不掲載ですが現地ではドイツ語式
[ラントクヴァート]で発音されるようです.スイス領で
あってもおそらくドイツ語圏なのでしょう.
être obligé de + 不定詞:~せざるを得ない
on est obligé de ~:~せざるを得ないのです.
changer de train:列車の乗り換えをする
.
未来日記
——なぜ、引退したのに、語学学習をしているのですか?
——はい、来世の手回しです.
——来世の手回しとは?
——はい、来世はフランス人に生まれるのです.
——お前がか?アホちゃうか.フランス人はもっと背が高いし、ハンサムだ.
——知らんがな.たとえばの話やんか. 来世はフランス語の先生するかもな.
——お前がか?アホやのに大学で教えるのか?迷惑やからやめてくれ.
——高校でもいいんだよ. そういう学校があれば.
——ふ~ん、それも生徒たちが迷惑するからやめたほうがいいんじゃない?
——例えばの話だよ. ぶっつぶすな!
——おこるな. お前、お坊様の修行はどうなったんだ?
——それは「さ来世」にするよ.
レ・ミゼラブル(24)
————————【24】—————————————
Ⅱ
M. MYRIEL DEVIENT
MONSEIGNEUR BIENVENU
Le palais*¹ épiscopal*² de Digne*³ était
attenant*⁴ à l'hôpital.
Le palais épiscopal était un vaste*⁵ et
bel hôtel*⁶ bâti en pierre au commence-
ment du siècle dernier par monseigneur*⁷
Henri Puget*⁸, docteur en théologie*⁹ de
la faculté de Paris, abbé de Simore,
lequel était évêque de Digne en 1712.
———————————(訳)—————————————————
II. ミリエル氏がビヤンヴニュ猊下となる
ディーニュの司教館は病院に隣接していまし
た.
司祭館は石造りの広く美しい邸宅で、前世紀
(18世紀) の初め、パリ大学神学部の神学博士、
またシモールの修道院長を兼任したアンリ・ピュ
ジェ猊下によって建てられました.彼はさらに
1712年、ディーニュの司教となった.
———————————《語句》—————————————————
*1) palais:(形) 宮殿、官邸、大建築
*2) épiscopal:(形) 司教の;
*3) Digne:(地名) ディーニュ;
Alps de Haute-Provence の県庁所在地
(アルプ・ド・オート・プロヴァンス県)
ミリエル司教のモデルとなったは、この
街で実際に司教を務め
ていたフランソワ・メルキオル・シャルル・
ビヤンヴニュ・ドゥ・ミオリスだったとのこと.
*4) attenant:(形) 隣接の;
cimetière attenant à l'èglise / 教会の隣の墓地
*5) vaste:(形) 広い、広大な
*6) hôtel:(m) ❶ホテル、
❷(領主、貴族、司教などの)私邸、館、大邸宅、
❸公共建築物、 Hôtel de ville / 市役所
*7) monseigneur:猊下、[大司教、枢機卿の尊称]
*8) Henri Puget:実在の人物Henri du Pujet
(1655-1728)のことか?
Henri du Pujet, ou de Puget, né en 1655 à Toulouse
et mort le 27 janvier 1728 à Digne, est un prélat fran-
çais du XVIIIe siècle.
アンリ・ピュジェ:1655年トゥールーズ生まれ、
1728年ディーニュに没.18世紀フランス・カト
リック教会の高位聖職者.
*9) théologie: (f) 神学
*10) évêque :(m) (カトリック)司教
abbé:(m) ❶[カト] 大修道院長、 ❷神父