トニオ・クレーガー(15)
———————————【15】———————————————
Plötzlich schob Hans seinen Arm unter den
Tonios und sah ihn dabai von der Seite an, denn
er begriff sehr wohl, um was es* sich handelte. Und
obgleich Tonio auch bei den nächsten Schritten
noch schwieg, so ward er doch auf einmal sehr
weich gestimmt.
————————————(訳)——————————————
突然ハンスはトニオの腕の下に自分の腕を差し入れた.
その際に横からトニオをじっと見つめた.というのはハ
ンスは今何が求められているかをしっかり理解していた
のだ.トニオのほうも、次の歩調で尚も無口だったにも
かかわらず、気分は急転して晴れていた.
————————————〘語句〙—————————————
略号追加:1格=N、 2格=G、 3格=D、 4格=A
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begriff: <begreifen (他) Aを理解する、把握する
schob: (過去3単) <schieben (他)❶押して動かす、
❷押し込む
schieben / schob / geschobben
dabai: (副) その際に
an/sehen: (他) Aをじっくり見る
wohl: (副) よく
obgleich: (従属接)[定動詞後置]~にもかかわらず (obwohl)
gestimmt: ❶(形)[…の]気分の;
gut gestimmt sein / 気分がよい
schlecht gestimmt sein / 気分が悪い、
gleich gestimmt sein / 同じ気持ちの、気の合った
zu + D + gestimmt sein / …Dをする気になっている、
gestimmt:(過去分詞) <stimmen (他)❶(楽器⁴を)調律する
die Gitarre stimmen / ギターを調弦する
❷[A + 状態][Aを…の]気分にさせる
weich: (形)柔らかい、優しい、穏やかな
schwieg: (過去3単) <schweigen (自) 黙っている、黙る
schweigen、schwieg、geschwiegen
Schritten:(複) < der Schritt (Eタイプ)❶歩み、
❷一歩の距離
ward: [文語] werden の過去1単、3単 普通はwurde,
過去分詞はgeworden
Meine Mutter ist heute 60 Jahre alt geworden.
私の母はきょう60歳になった.
Mein Traume ist Wirklichkeit geworden.
私の夢は現実のものとなった.
bei den nächsten Schritten:次の歩みの際に →
歩いている次の瞬間に
auf einmal: 急転して、突然に、急に
Sie lachte auf einmal laut auf. /
彼女は突然笑い声をあげた.
* auf/lachen (自) (突然)笑い出す
—————————≪重要フレーズと解説≫———————————
um was es* sich handelte
es handelt sich um + A: Aが問題である、重要である.
Es handelt sich um das Kind. / その子のことが問題だ.
um was es sich handelte / 何が問題なのか
この小説の下りでは、少し読み手の方で行間を補う必要
があります.何が問題なのか、よくわかっていた.
これはどういうことかと言うと、
約束を忘れられていてつらかったトニオの気持ちがよく
わかっていて、その問題にどう対処するかをハンスは
しっかりわきまえていたということだと思います.
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