昭和記念公園の橋の下のさざ波を描きました。
自然の風景でも、水辺はとても魅かれるものがあります。
老人と若者がいます。
年寄りが若者に威張って言います。
私は、貴方の三倍の人生経験がある。
若者は反論します。
私は、貴方より三倍長く早く走れるし、荷物だって貴方の三倍は持てますよ。
と負けてはいない。
若者は、いつしか疑問を持ち始めます。
学校では、勉強を教えてもらえる。
友達と温かいものを共有できる。
でも好きなことをやりつづけられない。
老人は、どうしてこうなったのか疑問を持ち始めます。
よかれと思って、一生懸命生きてきました。
会社に尽くし、家族と共に生きて来た。
今や、私は必要とされているのだろうか。
互いに接点がないように見える老人と若者です。
老人は、話している間も草取りをします。
若者は、その草を始めは蹴散らしていました。
自分にゃ関係ない。
若者は、小さな花に目が留まりました。
自分が好きな彼女に見せてやりたいと思いました。
老人は、構わず抜いていきます。
若者は、何をするんだと集めていきます。
荒れ地の草がきれいになりました。
若者は、一つの花束を手にしていました。
お互い顔を見合わせて、互いの満足な顔に見入ります。
何じゃろなと二人は笑顔になりました。
老人は、会社では人事部に勤めていました。
若者は、これからの自分の行く末を案じていました。
今どきの若者は、あれが足りないこれが弱いと嘆いて、
多くの時間を費やして、教育プログラムを作ってやらせてきました。
つまり企業戦士を作り上げてきた鬼教官だったのです。
若者に聞きました。
何がしたいんだと。
若者は、何がしたいか分からない。と答えました。
毎日学校に行っているけど、今やっていることの意味がわからない。
自分は、やりたいことがあるけど親は反対していると。
そうかと老人は若者に笑顔をむけました。
そうなんだと、若者は老人に少し拗ねるような笑顔をむけました。
やってみればいいじゃないかと、老人は無責任に若者に言いました。
でも、やりたいのは何で、どうしてか話してみれば良いと。
若者は、どうせわかりゃしないだろと、話し始めました。
老人は、黙って聞き入っています。
若者は、出来るだけ正直に今の心境と自分の描く未来像を話し始めました。
老人はうなづいています。遠い昔、自分も同じように悩んでいたなと目を細めます。
黙って聞いている老人に、何だこの爺いと興味を持ち始めました。
誰も聞いてくれなかった。両親も自分の考えを押し付けるだけで聞いてくれなかった。
どうして、やる前から出来ないと自分で壁を作るんだと若者に言います。
その壁がわからないんだと、若者は言います。
やってみれば、壁は見えてくるよ。そして一つづつ乗り越えるしかないんだよ。
と老人は、心の中でつぶやきます。
なんだか気持ちが少し楽になったなと若者は思いました。
老人は、若者の三倍の優しさがありました。
若者も、老人の三倍も夢がありました。
自分が持ち合わせないものを、老人と若者はそれぞれ持っていました。
山椒が ぎろりとにらむ ほたるかな
2016年2月24日