『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  120

2010-01-06 13:52:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、息子ユールスを胸に抱いて、我に帰っている自分に気づいた。彼は、ユールスを抱いたときに感じ考えることは、明日のことであった。昨日、明日の明日のことではなく、もうちょっと先の未来のことである。
 その未来の色は、夜明けであり、黎明の時であり、昇り来る朝陽に映える暁の輝く色であった。天空の高みは、深い藍色でありながら、こがね色に輝くオレンジ色のグラデーションであったり、真紅のグラデーションであったりするが、考える未来の始まりはそこからであった。ユールスに話しかける話の中には、大なるときもあれば、小なるときもあったが、明日があり、未来があり、希望と達成の感動が含まれていた。
 『ユールス、この地で採れる果物や野菜はうまいと思うぞ。それはトロイとは、土が違うからだ。』
 話に肯くだけのユールスだが、アエネアスの目には輝きがあった。
 『統領、まいりました。』
 オキテスの呼びかけにアエネアスは立ち上がり、
 『お~お、そうか、では頼むぞ。』 と言葉を返し、その場を去った。