『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1493 

2019-03-13 05:06:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、思考の展開を追いかける、思考の展開の段取りを考える。
 まず己を知っているかである、次にやるべきことについて知る、己を知る前に己とはなんぞやについて考える。
 そのことを考える自分自身を見つめる、事を為していく己を見つめる。
 彼は、『一』を考える、己の『一』民族の『一』踏み出す一歩の『一』、『一』の持つ価値観の大きさと大切さに気付く。ただ単に『一』と軽んじる意識を退ける。
 アエネアスが腰をあげる、歩を進める、パン工房を訪ねる、建造の現場へ足を運ぶ、各部署の作業ぶりを丹念に見て回る。それを終えて会所に立ち寄る、イリオネスと言葉を交わす。
 『おう、イリオネス、今日は忙しいかな?俺はいろいろと考えることがあってな。宿舎の前庭にいる。用件のある時はそちらへ頼む』
 言葉を継ぐ。
 『おう、イリオネス、俺に木板と木炭をくれないか。考え事に使いたい』
 イリオネスが会所においてある木板と木炭をアエネアスに手渡す。
 『おう、ありがとう』
 それだけ言って会所をあとにする、浜へと歩を運ぶ、波打ち際に立って小島をのぞむ、小島の一同の漁に思いをはせる。傍らに立っているパリヌルスに気づく。
 『統領、小島を見ていられましたね』
 『おう、そうだ。解るか』
 『解ります。この時期、形のいい大きい魚が獲れています。小島の一同、元気にやっています』
 『おっ!そうか、それは重畳!ところでお前のほうはどうだ?』
 『いま、総員の半数が武闘訓練場のほうにいっています』
 『ほう、そうか、それはいいことだ、感心感心!』
 『はい、何かを追わせていないとろくでもないことを考えます』
 『ここ数日は続くと思うが、俺の今は考え事の真っ最中だ。暦の管理もあるが、この暦なしの時が物事の思考の時と考えている』
 『統領の大変が察しられます』
 『お前、俺のことを察してくれるのか』
 『私らが迷わずに前へ進めるのは、統領の統率によるところです。やれといわれたらそれをやる。為すべきことの全てを統領の考えられる『一』に全幅を信頼してついていくわけです』
 『俺の『一』にか、解った。『一』をおろそかにしない』
 『ありがとうございます』
 『今日はだな、その『一』のために各場、各部署のみんなと顔を合わせてきた。小島の連中には先ほどその念を込めて小島を見ていたのだ』
 『そうですか』
 アエネアスは、パリヌルスと言葉を交わし終える、宿舎へと歩を向ける。
 パリヌルスが去りゆく統領アエネアスの背中を見送る。
 彼は、近いうちに起こる大事を感じとっていた。