『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY     第6章  クレタ  61

2013-03-26 14:21:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 新天地!それは、彼らの希望を育むのか、圧しつぶすのか、彼らの期待に応えてくれるのか。大自然に対して受け身で生きていく彼らの大問題であった。古代のこの時代に生きる者たちが、持てる人智を尽くしての大問題であった。その大問題に対峙するアヱネアス、彼が率いる集団が挑み対処する問題であった。
 クレタに着いて、アヱネアス、そして、彼を取りまく主だった者たちも気を休ませることなく諸問題に対峙する姿がそこにあった。彼らは、そのことについて、どれくらい認識していたか、いなかったかは定かではない。人間が文明を開化させ、社会を築いていく黎明期であった。
 とにかく、アヱネアスは、クレタ島の上陸した浜をベースにして、トロイの民が生活を建設する土地を空間を含めて立体的に思考した。さらにその土地が有しているであろう未来にまで及んで思考した。そのうえ、あらゆる諸条件を考慮して、認められるか、認められないか、判じがたい小さな小さな一点をどこにするかを脳漿を搾って懸命に考えた。
 上陸した浜を船出して、風に抗い、櫂で海面に泡だてて、波頭のしぶきを浴びて北に向かった。アヱネアスは舟艇の上でも考えに考えた。沿岸に沿って舟艇は北上していく。東の方向へ舳先を転じる地点に至った。
 今日も西風である。ギアスはイリオネスに声をかけた。



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