薄目の出し汁を、たっぷりと張った鉄鍋の中へ、太兵衛が持ってきた大根を切り入れ、これがふつふつと煮えたぎっていた。
「さ、おあがんなさい」
「これは、これは……」
「その小皿にとって、この粉山椒をふったがよい」
「こうしたらよいので?」
「さよう。さ、おあがり」
ふうふういいながら、大根をほおばった太兵衛が、
「こりゃあ、うまい」
嘆声を発したのへ、小兵衛が、
「そりゃあ平内さん、大根がよいのだ。だから、そのまま、こうして食べるのが、いちばん、うまいのじゃ」
これで酒。
出し汁、大根、粉山椒だけである。
こういうふうに書かれるとのどがなる。という年になったか。
池波正太郎『剣客商売』「天魔」の中、「約束金二十両」にでてくる。
大根がうまい季節となった。
昔の大根がよかったなどと言うのはやめよう。
「さ、おあがんなさい」
「これは、これは……」
「その小皿にとって、この粉山椒をふったがよい」
「こうしたらよいので?」
「さよう。さ、おあがり」
ふうふういいながら、大根をほおばった太兵衛が、
「こりゃあ、うまい」
嘆声を発したのへ、小兵衛が、
「そりゃあ平内さん、大根がよいのだ。だから、そのまま、こうして食べるのが、いちばん、うまいのじゃ」
これで酒。
出し汁、大根、粉山椒だけである。
こういうふうに書かれるとのどがなる。という年になったか。
池波正太郎『剣客商売』「天魔」の中、「約束金二十両」にでてくる。
大根がうまい季節となった。
昔の大根がよかったなどと言うのはやめよう。