瓶にさす藤の花ぶさみじかければたゝみの上にとゞかざりけり
正岡子規
明治三十四年『日本』連載の随筆『墨汁一滴』のなかの第一首目の作品。子規は翌年九月十九日に亡くなっている。
それがどうしたのという歌である。
しかし、不治の病の床にあって臥したまま瓶にさした藤の花を見ている。
子規という歌人と、ものとの関係でこの歌をみなければならないという。
近ごろなんとなくわかるような気がする。
これも歳のせいだろう。間違いなく。
健康な若者にはわからないかもしれない。
これは野生の藤、樹に巻きついて樹を枯らす。目の敵にされる。
今、盛りである。
こんな俳句もある
藤の花長うして雨降らんとす 子規