伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

仲間内での忖度ばかりの政権は退いてほしいものだ

2020年05月23日 | 政治
 今朝の報道は、黒川弘務検事長が賭けマージャンをしたことを認め辞職したことと、これに関わり進退伺いを提出した森雅子法務大臣を安倍総理が慰留し、続投を指示したことが報じられた。

 しかし、この結末はいったい何なのだろう。

 もともと事の発端は、今年2月に誕生日を迎え、検事の退職年齢である63歳になったために退職するはずだった黒川検事長の退職を、安倍内閣が国家公務員法を適用し延長したことにあった。

 それまでの解釈では、検事の退職は検察庁法に定められ、国家公務員法は適用されない。検察庁法では、検事の退職年齢を63歳、検事総長の退職年齢を65歳と決めている。黒川氏は、現在の検事総長(63)が4月に開かれる国際会議を最後に引退するとみられている中、今年2月8日の誕生日で63歳になった。本来、ここで退職するしか道はなかったはずだった。

 しかし、政府が、それまでの検察庁法の適用解釈を変更し、黒川氏に国家公務員法を適用し、退職年齢を延長した。これによって、7月に63歳を迎える林真琴名古屋高検検事長(62)が検事総長に就くとの大方の予想を覆し、黒川氏の検事総長就任の道が開かれることになった。

 そして、国会に提出された検察庁法改正案には、安倍内閣の定年をめぐる法解釈変更を盛り込んだ規定が盛り込まれた。政府が余人を持って代えがたいと判断した人に関しては、定年を延長できるという規定を盛り込んだのだ。しかも、この検察庁法改正案は、退職年齢の延長等を内容とする国家公務員法をはじめ9件の関連法と一括した「束ね法案」として提出された。その背景を説明する報道には、森法務相の答弁が安定せず、審議を混乱させる恐れがあるため、他の法律改正案と「束ねる」ことで、森法相の答弁を回避したとするものがあった。

 たしかに森法相の答弁には危うさがともなう。
 検察庁法改正案に関しても、勤務延長が必要になった環境の変化に関する質問で国会を空転させている。
 森法相は質問にこう答えた。
「東日本大震災の時、検察官は福島県いわき市から市民が避難していない中で最初に逃げたわけです。その時に身柄拘束をしている十数人の方を理由無く釈放して逃げたわけです。そういう災害の時も大変な混乱が生じると思います」。
 実際の検察官の異動は、原発事故により地検いわき支部を閉鎖し郡山支部に集約したことにともなったもの、つまり本庁の指示によるもので、「検察官が逃げた」などという検察官が責任を負うものではなかったようだ。森法相の個人的な誤解にもとづく事実無根のこの答弁は、その職責から考えても、ふさわしい答弁とは言えない。

 森法相は、かつて安倍政権下で少子化担当相に任命されていたが、特定秘密保護法の担当大臣ともなっていた。この時の国会答弁が問題になっていた。
2013年11月18日の産経新聞は、以下のように報じた。

 産経新聞社とFNNの合同世論調査では、特定秘密保護法案について4割以上が中身を知らないとの回答が出た。法案についての理解を得る政府側の努力が不足していた上に、担当の森雅子少子化担当相の答弁が不安定であり、野党の「拙速」との批判を結果的に助長している面がある。

 森氏は審議入り前の10月29日の記者会見で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の内容が「特定秘密」に該当する可能性に言及。即座に菅義偉(すがよしひで)官房長官が打ち消す一幕があった。

 秘密保護法案の審議が始まっても、森氏の発言は迷走が続く。秘密指定の妥当性をチェックする第三者機関の設置について森氏は「検討したい」と答弁したが、岡田広内閣府副大臣が「適当ではない」と森氏の答弁を否定。報道機関に対する捜査をめぐっても谷垣禎一法相らと認識の食い違いが露呈した。

 18日の参院国家安全保障特別委員会では、森氏が過去の答弁で法成立後も改善に努める意向を示したことについて、民主党の白真勲氏が「法案自体が欠陥ありと認めたことになる」と詰め寄った。


 もっとも同記事は、「首相が森氏を指名したのは臨時国会まで1カ月を切った9月17日。すでに法案の内容は完成していたが、それまで森氏が法案の制度設計にかかわることはなく、森氏としては付け焼き刃の対応を迫られたことになる」と、その立場をおもんばかっているのだが、検察庁法改正案に関わる失言を考えても、森法相の答弁を回避するために、まとめ法案として、森法相の答弁をできるだけ回避しようとしたということにも説得力がある見方だ。


 それはともかくとして、検察庁法改正案をめぐる一連の経過には、政権内部で互いが「忖度」しあう「忖度」の積み重ねしか感じない。

1)政治家の要望を「検討します」と引き受ける技量をもった黒川氏を、検察トップである検事総長にすえるための安倍政権の忖度。最初の、検事の定年延長に無理無理、禁じ手の国家公務員法を適用させた「忖度」だ。その背景には、サクラ問題等の公選法に関する問題、森友・加計学園問題の斡旋利得の疑いなど、安倍首相が抱える数々の疑惑に対する、司直の追及をつぶす目的なのだろう。

2)賭けマージャンをしていた黒川氏を法的に根拠のある処分ではない「訓告」とした忖度。そもそも取り締まる側が違法行為をしていて、取り締まれる側の違法行為を断じることが出来るのだろうか。かけた金額が小さいから訴追の対象とならないという声もあるが、黒川氏にその基準を適用させることには問題があるだろう。何せ取り締まる側のトップの近くにいるのだから。安倍内閣は、黒川氏を、法的な処分ではない「訓告」とすることによって、6,000万円以上という退職金を満額受け取れるようにする、忖度を行ったように見える。安倍政権の都合で定年延長をした結果、不祥事が明らかになり、法律通りに退職していれば、満額もらえた。だから、その罪滅ぼしに退職金は満額払えるようにしたのではないか、そんな疑念が湧いてくる。

 検察庁法を含む定年延長の法案の採決を強行しなかった。世論の高揚があることは間違いが無い。同時に、週刊文春の黒川氏の賭けマージャン報道の影響を見ないわけには行かない。報道のタイミングは、採決強行断念とぴったり重なる。報道があることを知った政権が、採決強行に続き、賭けマージャンが発覚したときの世論の爆発を怖れて、できるだけ影響を小さくするために、法案を捨てたのではないか。そのようにしか思えない。

 マスコミ各社の世論調査は、安倍内閣の支持率が低下している。安倍首相が森法務相の慰留をしたのは、「スケープゴード」にする思惑との見方があるという。批判を安倍首相にではなく、森大臣に向けさせるためだというのだ。

 それもあるかもしれない。同時に思い出すのは、第1次安倍内閣で大臣が次々と連鎖的に辞任したことだ。特に農林大臣は不祥事で次々に替わった。森法務相の前任の川井氏は、妻安案里参議院銀の公選法違反の関連で辞任している。今度は、賭けマージャンの黒川氏の定年延長の提案者だったとし責任を取るとして進退伺いを出したという。慰留した安倍首相の頭の中には、第一次内閣の苦い思いも残っているのだろう。

 さくら疑惑も、森友・加計疑惑も、安倍政権の不祥事に、安倍首相はまともな説明を出来ない。そのような政権には、これ以上居座ってもらいたくはないものだ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿