伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

入遠野地内に風力発電。環境影響評価説明会で不安聞かれる

2015年07月29日 | 原発・エネルギー
 遠野町入遠野地内に3,000kwで最大18基の風車を建設し、最大出力5万4,000kwの風力発電所を建設する計画が持ち上がっています。

 計画しているのはユーラスエナジーホールディングス。東京電力が株式の40%、豊田通商が60%を所有する会社で、世界各地に合計243万5,000kwの発電事業を展開し、国内で風力発電所26ヶ所、県内では建設中も含め4ヶ所の風力発電所を運営しています。ちなみに市内では川前町小白井と田村市滝根町にまたがる風力発電所「ユーラス滝根小白井ウインドファーム」を運営しています。

 建設計画地は、遠野町と三和町を屏風のように仕切る三大明神と鶴石牧場にまたがる国有林で、道路や風車の建設でおおよそ20haが開発される見込み。建設後は独立した売電会社を設立して発電所を運営し、発電した電気は固定価格買取制度により全量を売電、20年間の事業期間を想定しているいいます。

 前提として、エネルギーの原発依存から脱却するためにも再生可能エネルギーに転換していくことは重要な課題だと思います。その中で太陽光発電に並んで風力発電の開発も否定するものではありません。しかし一方で、これが住民の生活に影響を与えるならば問題があります。住民生活に支障がないように計画されることが大切だと思います。



 その観点から、事業計画の概要を聞いていて心配になるのが事業の採算性。固定買い取り制度で20年間の買い取り単価は安定して担保されます。しかし、この単価は契約時に決定されます。現在1kw当たり22円という単価ですが、事業開始が最速で4年後の2019(平成31)年度ということを考えれば、もしかしたら現在の単価より下がっていることになるかもしれません。

 また、固定価格買い取り制度が始まって以降、太陽光をはじめ再生可能エネルギーの売電の契約をする事業者が増え、電力供給の過剰が予測されるようになり、今年になって、太陽光発電とともに20kw以上の風力発電も最大720時間の売電抑制ができることになっています。説明では、「抑制されることはないと考えている」という趣旨で説明をされるものの、それでもこのことによる事業の採算性に疑問符が浮かんでくることは避けられませんでした。

 さらに、事業運営はユーラスエナジーが直接行うのではなく、子会社を設立して行われるといいます。会社が倒産した場合の後始末を問われたことに「ユーラスが倒産したとしても、子会社が独立して発電所を運営するので、安定して事業を展開できる」という趣旨の答弁でしたが、先に書いたように、経営のマイナス要因もあります。売電の中断などが原因で子会社が経営に打撃を受けた場合、どうなるのだろうという不安は消えることがありませんでした。

 次に環境影響評価の問題です。この説明会は、環境影響評価の方法に関する説明会なので、これが主テーマ―です。

 これに関してはまず、低周波音の環境影響評価に関する質問がありました。低周波域の音は人間の耳に聞こえない音域であるが、頭痛などの健康被害も起こっていると認めながら、現時点では、計画地から一番近い民家で1km離れているので心配ないと考えていると説明されました。果たしてどうなのか。

 低周波について環境影響評価では最大基数の18基で評価を行うといいます。その評価結果については環境影響評価の準備書公表前にもまとまり次第、説明することもあるといいます。住民の意見を建設計画にしっかり反映するためにも、準備書前に影響について説明し、そこで出された意見を計画に反映することが望まれます。

 二つ目に水の問題です。説明では工事中に発生する沢や川の水の濁りなどへの懸念とその影響評価方法が説明されました。しかし、開発にともなう水への影響は、濁りにとどまらず、湧水の量ひいては沢水などの漂流水量への影響が懸念されます。

 開発の結果、降雨等の地下への浸透に影響がないのか。その結果、湧水や沢水等の量に影響がないのか。こうしたことが懸念されるのです。

 開発計画地は山の尾根沿いのようですが、その山裾にある集落の多くは水道の未給水区域であり、湧水あるいは沢水などに頼って生活用水を確保しています。これに影響があるとなれば、これらの集落の存続にかかわることになるのです。

 説明では工事のために林道の拡張などが行われ、また連絡用の道路や風車設置場所の確保などで20ha程度の開発等がされるといい、当然、湧水への影響なども評価されなければならないと思います。

 事業者は、このことは別の場所でも指摘もされており、当然、懸念されることなので、環境影響評価の具体的な方法も含めて今後検するといいます。この問題も、集落の存続かかわる問題だけに、準備書の前の段階での細かい説明が必要なように感じしました。

 環境影響評価の作業は今年度いっぱいすすめ、来年4月に準備書を公告縦覧・説明会を開催し、出された意見を踏まえて修正を加え評価書をまとめたいとしています。

 この準備書がまとまった段階で、発電した電力の固定価格買取制度での売電契約を締結する考えのようです。売電単価が下がる怖れがあるので、早期に契約を結びたいということなのでしょう。

 売電契約を結び、環境影響評価が終了した後、着工し、早ければ2019〔平成31〕年度から発電事業を開始する考えです。

 住民の中には一定の不信感のようなものがあるようです。「太い管を積んだトラックが走っていたから、もう事業が始まっているのかもしれないと思っていた」と話す人もいました。こうした不信感をもたれないようにするために、会社側に求められるのは環境影響評価の段階から住民に対する情報公開をしっかりと行い、住民理解のもとに事業をすすめることでしょう。

 会社側が住民の声にしっかり耳を傾け、この問題に取り組むことを切に願っています。


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