伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

自主休校、学校にしっかり理由の説明を

2020年04月13日 | 学校教育
 市が9日、新型インフルエンザ等特別措置法に基づく対策本部を設置し、新たに定めた対応方針を紹介した。これをご覧になった方から、ツイッターでご意見をいただいた。

 子どもを学校に通学させているお一人は、「通学させるかどうか判断できずに悩んでいる」という。もうお一人は、「まん延防止の3つの密を、学校で避けることができるとお思いですか。感染者が出てからでは遅いのに、なぜ対策をとらないのか」という。

 本市は、安倍首相の小中学校等の自粛要請を受け、3月4日から小中学校等を休校とした。そのまま春休み入りし、新年度の4月6日から、「『3つの密』(密閉、密集、密接)を徹底的に避ける、発熱等がある場合には登校を控える、手洗いや咳エチケット等の通常の感染症対策を徹底する等」(福島県教育長のコメント)の対応を講じて学校を再開している。

 そもそも、私は、3月の小中学校の一斉休校には疑問だった。

 2月28日付けのブログ「安倍首相の小中高休校要請に思う」に、その趣旨を書いた。感染拡大の主役は大人と考えられる。その行動を制限せず、感染拡大に寄与していると思えない子どもたちの行動制限のため、感染者が確認されない地域まで休校要請する。この措置は感染拡大に役立つのだろうかという視点からの疑問だった。

 国が設置した専門家委員会は「子どもは感染が広がる原因にはほとんどなっていない」という認識を示し、国、県も、これを取り入れた。この認識はある意味当然すぎる。

感染拡大期で開校判断を地方自治体任せはなぜ

 では、休校宣言から1ヶ月以上が経過した現在をどう見るのか。
 感染者が増加している東京都で、3月10日時点のPCR検査陽性者数は累計で64人だった。しかし、1ヶ月過ぎた4月11日時点では1,902人でほぼ30倍に増加している。3月23日に、それまで確認された1日当たりの人数の2倍程の感染者を確認して以降、連日、拡大を続け、4月11日には1日の確認数が197人を数えるまでになっている。

 また、全国の感染者数を見ると、4月12日時点の陽性者数は6,748人となり、県内は4月12日現在38人、本市でも同日現在、大型クルーズ船下船者を含め2人が陽性となっている(うち1名は退院)。

 この経過を見ると、陽性者が局所的だった3月には小中学校等の休校を全国に要請し、一方、感染が全国に拡大する局面で、学校の再開の判断をそれぞれの自治体に任せる措置をとったということになる。問う考えてもタイミングが悪い。国の対応にはちぐはぐさ、あるいは、一貫性の欠如が見えてくる。

 感染が拡大基調にある現在は、児童・生徒が感染するリスクは大きくなっている。就学児を持つ保護者の感染への懸念は、3月の休校要請時に比べて格段に大きくなっているはず。報道等にもあるが、パチンコや飲食などで、首都圏から自治体の境を超えた移動もまだまだあるようだ。

 こうした現実を見ると、本市の陽性者の発生が2人にとどまっているとはいえ、無発症を含め感染者拡大を、多くの方々が懸念することも理解できる。特に、子どもを育てる世代には大きいものがあるだろう。

ドイツの感染状況

 ドイツ在住の日本人ジャーナリスト村上敦さんがツイッターで、「ドイツで最初の大規模な免疫獲得の中間報告が上がってきました」と、内容を紹介していた。以前、協同組合等による再生可能エネルギー普及の取り組みをドイツで学んだ際、ツアー企画及び現地ガイドでお世話になった方だ。

 ツイートでは、2月15日のカーニバルで感染が拡大されたとみられる、人口1万2,500人のガンゲルト町で町民1,000人を対象にPCR検査と同時に抗体検査を実施したことを紹介した。同町は、ドイツの初期にもっとも感染が集中したハインスベルク郡に含まれている。

 検査の結果は、PCR検査で陽性が2%弱、1,000人のうち500人で実施した抗体検査では、約14%が抗体獲得という結果になったという。合計約15%が感染を終えているという中間結果だ。

 これまで専門家は、症状が出た人や濃厚接触者に対するPCR検査の結果から、無自覚の人を含めおよそ5%程度が感染者と想定していたそうだ。現実は、それを上回っていた。ただし、研究者は、この数字をドイツ全土に適用できるものではないと警告しているという。

 当然、この数字を無条件に本市に適応することはできない。しかし、一方、この結果に、無症状の感染者が相当な割合で存在する可能性を見ることができると思う。日本国内にも同様の問題があり、報道等に見られる、専門家の検査対象により感染の広がりの実態をつかめという指摘は、この意味からも重要だと思う。

 さて、本市では陽性者は2人にとどまり、感染に至った原因も把握出来ているようだ。しかし、無発症の感染者がいないと断言できる人は誰もいない。現実に、他自治体間との人の往来はあるし、検査がされているわけではない。本市にも明らかになっていない感染者がいると仮定して、感染の予防措置の強化に努めることが重要になるだろう。

自主休校、学校の対応は

 そのタイミングで、学校が始まった。動揺する保護者がいるのも無理はない。SNS等では、子どもを自主休学させるという保護者の投稿を見ることもある。

 では、現実に新型コロナウイルス感染の懸念から、学校を休んでいる児童・生徒はどの程度いるのだろう。いわき市教育委員会の担当課に問い合わせしてみた。把握していないという。しかし、現場とのやり取りの中で、そのような理由で休んでいる児童・生徒がいる感触はあるという。

 ここで懸念されるのが、感染の懸念から自主休学を選択した場合に、児童・生徒に不利益が生じないように対応されているかどうかだ。

 どのように対応しているのか聞いてみた。すると、学校では、学校長が欠席の理由を聞き、「出席停止」「欠席」の扱いの判断をするという。

 文科省の、「新型コロナウイルス感染症に対応した小学校,中学校,高等学校 及び特別支援学校等における教育活動の再開等に関するQ&A (2020年4月6日時点)」には、
「感染経路の分からない患者が増えている地域にあり、保護者から学校を休ませたいと相談されたが、どうしたらよいか」という設問に対する、回答が示されている。

 それによると、欠席させたい事情を保護者から良く聴取し、感染症対策を十分説明するとともに、学校運営の方針等の理解を得る努力をした上で、
「感染の可能性が高まっていると保護者が考えるに合理的な理由がある と校長が判断する場合には、指導要録上『出席停止・忌引等の日数』として記録し、欠席とはしない場合もありうる」としている。

 また、医療的ケアを必要とする児童生徒等や、基礎疾患等のある児童生徒等の中については、
「重症化のリスクが高いケースもあることから、主治医や学校医等に相談の上、個別に登校の判断をしてください」と求めている。

 このQ&Aの設問は、あくまでも「感染経路の分からない患者が増えている地域」とされている。「感染確認地域」とされる福島県であり、かつ、陽性者が2人にとどまっている本市はこの条件に該当するとも思われない。

 さてさて、、現場でどのように判断されているのだろうか。それぞれの学校長が判断することになるので、個別のケースで確認することが必要なようだ。

 もし、保護者の方で、新型コロナウイルスの感染への懸念で学校を休む選択をする場合は、まず、その事情を学校側に十分説明していただきたいと思う。そこが、この問題でより良い選択をする第一歩になりそうだ。

国の対応には疑問が残る

 ただ、新年度にあたって、学校の再開をそれぞれの自治体の判断とした国の判断には疑問が残る。先述したように、感染の拡大基調が明白だったからである。仙台市では、英会話の塾講師から児童4人への感染が確認されたという。同市は4月14日まで学校を臨時休業としていた。このため、学校を通じた感染拡大は免れた。学校が再開されていたなら、児童にどれだけの感染者が広がったか。身震いする思いだ。

 学校再開の判断のちぐはぐさだけではない。4月7日から5月6日までの1か月間、実施区域を、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、及び福岡県の7都府県として、政府が発した特措法に基づく緊急事態宣言があった。この現実の取り組みを見てもどこかちぐはぐ感がつきまとう。

 緊急事態宣言後、東京都が幅広い職種に休業要請をして、感染拡大の防止をしようとした。しかし、これに国が異論を唱え、職種の調整のために休業要請を遅らせてしまった。

 また、今朝の報道では、都内でパチンコ店等が休業したために他県まで出かける事例など、人が広範に移動している実態が報道された。休業補償がない、あるいは、金額的な問題があるために休業に踏み切れない事例もあるという。さらに、生活支援も遅れているために、東京都で仕事を失った人たちが地方に流れるケースもあるという。

 厚生労働省のクラスター対策班の北海道大学社会医学分野教授の西浦博さんは、感染の流行を止めるために人との接触を8割減らすことを提言した。にもかかわらず、安倍首相は、緊急事態宣言に関する記者会見で「人と人との接触機会を最低7割、極力8割、削減する」と、この提言を値引きしてしまった。

 また、446億円かけて、各世帯に布マスク2枚を配る施策が、避難の的となっている。同感だ。そのお金の一部でも使って、企業にマスク製造機設置の補助をして、国産マスクの製造能力を向上させることがよっぽどましな使い方になるのではないだろうか。その費用を新型コロナウイルス感染拡大で、生活に困る国民や事業者の支援に回したらいいのではないだろうか。

 感染拡大を防ぐためには、人との接触を防ぐことが必要とされる。その達成のための条件を整えることに政府の役割があるだろう。国民生活を維持するためにいち早く届けることができる方法での生活支援金の支給、事業者に対する休業補償など、生活と生業を支える事を明らかにして、2週間なら2週間、不要不急の外出をしなくても済む条件を、国民的規模で整える。それこそ政府のするべきことではないだろうか。

 政府の対応を見ていると、感染拡大防止にがっぷりと四つに組んで取り組む考えがあるのか、疑わしく見えてくる。

 安倍首相は、東日本大震災と原発事故に対応した民主党政権を「悪夢の民主党政権」と揶揄した。しかし、安倍政権が進める新型コロナウイルス感染拡大への危機対応を見ていると、天に唾した言葉にも見えてくる。政府には、諸外国の取り組みにもしっかり学んで、新型コロナウイルスの感染拡大防止に取り組んでいただきたいものだ。


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