7月の読書会は、野上弥生子[1885-1985]の随想『まきは一本では燃えない』
作者はストーブに薪をくべながら考える。
《どんな良い薪でも一本では燃えず、枯れ枝や細い薪ほど燃焼を助けることから、
国、社会、集団、家庭に於ても、有能な人物がいたにしても、一人では事は出来ない。
最も必要なのは、取るに足りないほど弱々しげな力の加勢である。》…と。
今回も3班に分かれてのディスカッションの後、意見をまとめて発表です。
いや、ディスカッションというほど高度のものではなく、口々に感じたことを言い合う訳ですが、
これが結構盛り上がるんですよ!
生徒はほぼ同世代ですから、カマドや七輪で煮炊きの経験があるんです。
それで『鮭色にほんのり色づくほどに乾いた新しいまき』とかの描写がすんなり理解できるのです。
昔はマッチも貴重だったから、直ぐ火が着くように焚きつけに松ヤニを使ったとか、
経験談がどんどん飛び出しました。
作者は、『まことに、まきは一本では燃えない。』と結んでいます。
人間の社会に於ても小さな力が必要ということですね。
薪ひとつの描写で作者の生き方、思想までも感じさせるのはさすがだ、という意見も多かったです。
で、今、blog書いていてハッとしたのですが、作者は明治18年生まれの女性。
男尊女卑の時代を生きて来られたのではないかしら?
とすると、横柄な男社会も弱々しげな女性あってこそですよ、と言いたかったのでは?
まあ、深読みし過ぎかもしれないけど、ふとそう思いました。