市の生涯学習の一環として、15年間続けられてきた古典文学講座が今日で終了した。
6月からの新年度は新規の講座を設けるそうだ。
で、最後の授業は芥川龍之介の『地獄変』
これは『宇治拾遺物語』の中の<絵仏師良秀、家の焼くるを見て悦ぶ事>を元に芥川龍之介が創作したものである。
元の話は、絵仏師良秀が自宅の火事の燃える炎を見て儲けものだと喜び、立派な不動尊の絵図を完成させて、
人々に賞賛されたというあらすじだが、『地獄変』のほうは元の話の何倍も恐ろしい。まさに地獄絵図である。
何しろ、実の娘が焼き殺されるのを恍惚と観察して炎熱地獄を屏風絵に如実に描写し、自らは首をくくるという話なのだから。
芸術家の芸術に対する執着。
芥川の時代というのは、芸術至上主義、即ち、この世で価値のあるものは人の命より芸術だという風潮が高まっていた時期らしい。
芥川自身、「ぼんやりとした不安」という言葉を遺して自殺していることを考えると、
この作品からは、芥川の小説家としての苦悩が浮かび上がって来るように思えてならない。