<Yahooニュースより>
令和の金融恐慌
澤上 今年3月10日に米国のシリコンバレー銀行(SVB)が破綻して、すでに1ヵ月が経ちます。 櫻川 そのSVB破綻という衝撃からわずか2日後にシグネチャー銀行が連鎖破綻。さらに金融不安は欧州に飛び火して、19日にはスイスの銀行最大手、UBSが同2位のクレディ・スイスの買収を発表したことには驚かされました。 高橋 約100年前、1927年の「昭和金融恐慌」を想起させますね。あの時も、東京渡辺銀行で取り付け騒ぎが発生し、瞬く間に破綻しました。同じことが令和の世でも起こるとは。 澤上 米2行の銀行破綻では、FDIC(連邦預金保険公社)がすぐに預金の全額保護を表明しました。4月1日にはNYダウの上げ幅が400ドルを超えるなど、市場では「金融不安は沈静化しつつある」といった雰囲気も漂っています。 櫻川 一連の金融不安はあくまで各々の金融機関特有の問題と捉え、世界的な金融危機には繋がらないと考える人もいます。果たしてそうでしょうか。
ドイツ銀行にまで飛び火
高橋 確かにクレディ・スイスの経営危機は、直近の業績の赤字が拡大し、筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクが追加出資を断ったことが直接的な原因です。同社の経営が悪かったと言えば、それまでです。 澤上 ところが3月24日には、ドイツの最大手行、ドイツ銀行の株価が一時14%も下落した。同行は'19年から大規模リストラを敢行し、経営を持ち直していました。今年2月2日に四半期決算を発表した際には、予想を上回る大幅増益、通期では3年連続の黒字を記録したばかりでした。
櫻川 この大きなうねりは、個々の金融機関の問題ではなく、金融市場全体に横たわる問題に起因していると言えます。 高橋 まず前提にあるのが、今日の金利上昇局面です。コロナ禍によって経済に下押し圧力がかかると、各国の中央銀行は積極的な金融緩和策を打ち出し、市場の資金量を増やすことに注力しました。しかしサプライチェーン問題やロシアによるウクライナ侵攻によって、物価は一変しました。 櫻川 '22年はまさに世界的な物価上昇の年でした。これに対して、FRB(連邦準備制度理事会)は同年3月、ECB(欧州中央銀行)は7月に、利上げによる金融引き締め策に踏み切りました。 高橋 そして、金利が短期間で上昇したことで、今回の金融不安の根幹を成す問題が浮き彫りになった。それこそが、金融機関が抱える債券の「含み損」です。
深刻な金利問題
澤上 '08年のリーマン・ショック以降、低金利が続く中、ほぼすべての金融機関は資産の大部分を債券という形で保有します。特に欧米の金融機関は、債務不履行のリスクが大きいが、利回りが2~3%と相対的に高い社債や劣後債、AT1債などを優先的に保有するようになりました。 高橋 ところが相次ぐ金利の引き上げにより、金融機関が保有する債券の価値は下がる一方です。結果、巨大な含み損を抱えることとなってしまいました。 櫻川 債券が下がっても、「わずか数%だから、影響は微々たるものではないか」と考える人がいるかもしれませんが、それは間違いです。金融機関は債券の保有額が極めて大きいので、少しのマイナスでも経営を傾けるほどの影響力があるのです。 高橋 そう考えると、今回の金融不安が解消に向かうかどうかは、今後の金利の動向もカギになりますね。リーマン・ショック当時、中央銀行がどんなアクションを講じたか、あらためて振り返ってみましょうか。
もはや「切り札」はない
櫻川 '07年から不動産、特にサブプライムローンの金融商品の価値が急落し、さらに'08年に入ると、金融商品を保証していたモノライン(金融保証保険会社)の信用不安も露呈。わずか数ヵ月で一気に金融危機に発展しました。 澤上 そこで'08年10月8日、FRBを中心に主要6ヵ国の中央銀行が同時に、政策金利の引き下げに踏み切るという異例の措置が取られました。結果的に米国の株価は年内で底打ちし、反転。早期に経済停滞から脱しました。 櫻川 当然、各国の中央銀行は今回も金融緩和策で乗り切りたいというのが本音でしょう。しかし、リーマン・ショック当時と現在では、状況は全く違う。先に話した通り、インフレが加速しており、金利を簡単に引き下げることができない。 澤上 結局、どう転んでも金利は上がっていくでしょう。もはや金融危機を回避する「切り札」はないのです。 高橋 中央銀行は今、インフレを抑制しながら、同時に経済と金融を安定させるという難度の高い舵取りを要求されています。これが上手くいかなければ、リーマン・ショック級の危機が再来する可能性があります。 「週刊現代」2023年4月15・22日号より
<転載終わり>
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日本にいるとアメリカのことは分かりにくいですが、大雑把にいうと、アメリカは1980年代の日本のバブルのような感じです。
5000万円で買ったマンションが1億円で売れたという話がごまんとあります。
2008年9月のリーマン・ショック発生のときに、米国経済もEU経済圏もすでに破綻していたのです。ホントはリーマンで終わっていたということです。
FRB(米連邦準備制度理事会)は金融緩和と量的緩和とで、何とか、ごまかしながらここまでやってきました。ところがコロナやウクライナが始まったため、膿が現れてきたということですね。日本への影響も大きいですが、私たちの生活は続いていきます。50年ぶりに紙のお金から資源(エネルギー・食糧・ゴールド)へ、価値が転換されるということでもあります。