定期の診察が済んだところで、かかりつけ医のK氏が話しかけてきた。
「ところで、マタギよう。〇月〇日と次の日、空いてない?」
「ん?・・・〇日は午前勤務だから夕方からなら空く。次の日は、OKだよ。」
「んじゃあよう、この日使って滑川温泉に行ってみないか?」
「はあ!?」
このところのコロナ騒動のため、外食はおろか、外泊なんてもってのほかという状況が続いてきたし、自粛もしてきたのだが、よもや、かかりつけ医からこんな話が持ちかけられるとは思ってもみなかった。
まあ、コロナも5類扱いに格下げされたし、お互いワクチン接種は万全なんだから、ちょっと出かけるぐらい問題ないかな。
「ところで、K氏の所では、コロナの診察ってやってるの?」
「うん、やってる。ただし、感染の恐れがある患者は、院内には入れないし、防護体制をとって対応してる。」
「そうか、大変だね。」
「やっぱり、死亡率は高くなくても、感染力は、インフルエンザよりずっと強いからね。他の患者さんに迷惑をかけるわけにはいかない。」
おお、ちゃんとお医者さんやってるじゃないの。
実は、K氏は、高校時代の同級生で、付き合いも非常に長く、半世紀にわたって一緒に釣りに出かけたり旅に出かけたりしてきた仲なのだ。
「奥さんは、行かないの?」
「こういうの全然興味ないから、誘わない。」
彼女とも、多少の面識があるから、さもありなんというところだ。
じゃあ、久しぶりに二人旅に出かけてみましょうか。
「OK、じゃあ、詳しいことは、近づいたら連絡しましょう。」
話がまとまったところで、帰宅して滑川温泉について調べてみた。
18世紀の前半に地元の郷士によって発見された秘湯で、一軒宿。海抜800mを越える高所に湧き出る源泉かけ流しの湯とのこと。豪雪地帯のため、11月から4月までは閉鎖される。
現在は、普通の観光客も受け入れるが、もともとは湯治場として栄えてきた場所で、今も自給自足で長期滞在する湯治客を受け入れることができるそうだ。
で、K氏は、湯治客コースを予約したんだって。つまり、自給自足で楽しむってわけね。
望むところよ!
そして、約束の日が近づいたころ、メールが届いた。
・山の上、谷間の温泉で、戸外で食事で寒いので、対策お願いします。
・夕食で食べる自分の分のご飯(白めし)は、持参お願いします。
・当日、買ってほしいもの。
〇牛タン300g 牛肉 カルビやサガリなど、合計600g
・アルコール 焼酎は用意します。ビールは途中、コンビニで買う予定です。
おお、いいじゃん!寒さ対策は何とでもなる。足りないものを強いてあげれば、日本酒とウィスキーを追加するぐらいかな。
そして、当日。
合流、積み込み、買い出し、全て済ませて滑川温泉に向かう。県南の米沢市までは、高速を使って、超簡単に辿り着けたのだが、そこからの山道が結構長い。
ワインディングロードだが、全て舗装されているので、普段通っている山菜採り場への道に比べれば、大したことはない。しかし、とにかく長い。それはそれとして、走っていて、少々驚いたのが、
森に響く歌声
ウグイスやツツドリの声は予想の範囲内だったんだけど、エゾハルゼミの大合唱が、早くも森中に響き渡っていました。やっぱり、今年の季節の進みは早い。
国道を離れてから30分ぐらい?延々と走り続けると、ついに見えてきました。
やっと着きました
なかなか整備が行き届いている感じ
温泉の目の前に、立派な滑滝
温泉の名前の由来はこれかな?と思ったんだけど、言い伝えでは、発見者が川で滑ったからということらしいです。
で、案内されるままに部屋に行くと、
灯りとテーブルだけの部屋
念のために言っておくけど、普通のお客さんのためのお部屋は、すごく綺麗で行き届いているらしいんですよ。我々は、湯治客用の『一番安い部屋』を予約したから、こういうレトロな佇まいに浸ることが出来るのです。更に、
これが、炊事場のガスコンロ
なんと、10円入れると、10分間だけガスが使えるんだって。結局、お湯を沸かすために1度だけ使ったけど、貴重な体験でした。
もちろん、部屋には何もないから、
コンビニで買ってきたビールと酒を飲むだけ
思い起こすと、K氏との旅は、いつも大体こんな感じ。何十年たっても変わんないんだよな、二人の習癖は(奥さん、行かないわけだ)。
ただ、夜だけは、特別バージョンになりました。今回買い出しした肉が活躍します。
炊事場では迷惑がかかるので、屋外で
BBQパーティー!
こういう湯治場の使い方もありっすね。これは、K氏のアイディアに拍手!
風呂場に行き交うお客さんたちが、非常にうらやましそうに見ていく姿が、印象的でした。
話が長くなってきたので、この辺にしておきますね。
続きは、また明日。