「久しぶりに奥の二股、行ってみっだいやあ。」
確かに、S川上流の奥の二股は魅力的な山菜採り場だ。しかし、前回のパラダイスほどの感動を味わうことは難しいだろう。むしろ、心配なのが熊。
「前によう、T氏と山菜採りに山に入ったのよ。」
このエピソードは、M氏にも話しておいた方が良いだろう。
「俺の足元の竹林でガサガサやってるもんだから、「何が出ったかあ?」って声掛けたらよ、「なんだあ?」って頭の上から返事が返ってきてよ。ビックリして下の林見たら、黒い塊が猛スピードで山の奥に逃げてったのよ。」
黙って話を聞くM氏。
「そんで竹林に入ってみたら、タケノコ食い散らかした跡が残ってたんだ。熊もタケノコ好きみだいだがらな。あん時、声出さねがったらと思うとゾッとする。んだがら、鈴の音は絶やしちゃダメなんだ。向こうだって人間のこと怖いんだから。とにかく、出会い頭でパニックにさせないことな。」
「そうか。気を付けねんねな。」
これから行く二股は、それくらいの場所だということを意識してもらえたようだ。なんてったって、2年間、多分人が誰も入っていなくて、近くに熊がいることが明らかな場所なのだから。下手をすると、山菜じゃなくて熊のパラダイスだ。
「・・・あそこで熊にあったら、逃げ場ないな。」
M氏も、考え込んでいる。これは、山遊びをする仲間として、いいことだろう。とにかく、慎重であるに越したことはない。
さて、それはそれとして、今回でS川探訪(春の部)が最終回となるだろう。なんだかんだ言っても、本命のタケノコのピークは間違いなく過ぎているのだろうから。
しかし、この採り場の懐は、底なしに深い。我々山仲間が、『山菜のデパート』と呼ぶこの山域では、絶対に満足のいく収穫ができるのだ。さあ、今日の目玉商品は、なんでしょうか?
例によって渓底に降りると、
ムシカリかな?
真っ白い装飾花が森のあちこちに目立つようになってきた。
ホウの花も見ごろかも
されど、
雪渓は、まだまだ健在
谷底の北東向き斜面は、まだまだ冬、もしくは早春です。だから、雪が消えたところから、
新しい春が始まっています
そんでですね、『法華の太鼓』とでも言えばいいのでしょうか。ウドが遅くに出てくる場所は、落雪の溜まったあと。ここには、当然、崖の上から落ちた土砂も積もります。すると、
白根ウドになります
だから、この時期は、非常に上等なウドの季節になるんです。
画像で分かるかな? 白い = 日に当てっていない ということなんです。この先端、もしくは『ウドガラ』(去年のウドの茎)を見つけて、掘り始めると、
おおおっ、出てきた出てきた
これが、ウド掘りの最大の楽しみと言っても過言ではないと思います。
土に埋もれていたものだから、洗うと
真っ白な姿に。これをハケゴやリュックに入れて、今夜の晩酌を想像しながら先に進むのです。
続いて、タケノコ林へ。
コゴミのジャングルを行く
だいぶ伸びてしまいました
ちょうどいいものもあるけど
やはりピークは過ぎたようですね。
一応、付け足しておくと、かなり伸びても、上の方は柔らかいので十分に美味しく食べられます。我々は、商売人ではないので、その辺にはこだわりません。
ウドとタケノコとで、ズッシリ重たくなりました。
「どうする?二股まで行く?」
「いいびゃあ。これだけ採れたんだから。」
「んじゃ、戻るか。」
「あいよ!」
まあ、無難な選択でしょうか(熊の話が効いたかな?)。十分満足できたんだからね。
帰り道、
池の上にモリアオガエルの卵
この池でモリアオガエルの産卵が始まれば、春も終わりです。この森でも、春が過ぎ、初夏を迎えようとしているようですね。
S川の山の神様、今年も、たくさんの恵みをありがとうございました。
願わくば、この豊かな自然が末永く保たれますように。