ゆめ未来     

遊びをせんとや生れけむ....
好きなことを、心から楽しもうよ。
しなやかに、のびやかに毎日を過ごそう。

「ゴーストマン 消滅遊戯」 そう、アウティスだ。つまり“だれでもない者”だ。

2018年04月23日 | もう一冊読んでみた
ゴーストマン 消滅遊戯/ロジャー・ホッブス  2018.4.23

    2018年版 このミステリーがすごい!
    海外篇 第9位 ゴーストマン 消滅遊戯


 【本書解説より】

 本書はロジャー・ホッブスの第二長篇Vanishing Games(Knoopf,2015)の全訳である。ホッブスは大学在学中に執筆した長編小説『ゴーストマン 時限装置』で二〇一三年にデビュー。邦訳も二〇一四年に刊行され、同年末の「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」の両者で第三位となり、......
 二十五歳で鮮烈なデビューを果たし、翌々年には本書を上梓してみせたロジャー・ホッブスは、昨年(二〇一六年)十一月十四日、その短い生涯を閉じた。死因は薬物のオーヴァードーズと報じられている。


殺し屋、ローレンスとゴーストマン、アウティスの最後の対決場面の会話が面白い。
生きるか死ぬかの場面で、ホメロスの『オデュッセイア』の話が出てきたりして、なかなか教養豊なのです。 この二人。
これ以外にも、このミステリでは世界情勢、東南アジア情勢、歴史、神話といろいろ興味深い話が随所にちりばめられていて、楽しく読むことが出来ます。

例えばこんな話です。

 彼女が使ったのはいわゆる“コールド・リーディング”と呼ばれるテクニックだった。まずは質問か、相手が頭にくるようなことばを投げかけて強気に出る。それに相手が答えると、その答えをもとに推測する。質問は個人的なものでなければならない。人は自分のことを話題にしてもらうのが大好きだからだ。うまくやれば、親友よりよく相手のことを理解しているように聞こえることもある。占い師はコールド・リーディングで生計を立てており、相手を困惑させることはそれに欠かせない技能だ。人というのは、何が起きているのか気づかなければ、どんなにいかれた嘘でも信じるようになる。

ブラックユーモアのような話しも。

 ローレンスが撃ったのは男の胸骨だった。それから駄目押しに腹部にもう一発。
 「落ち着いてくれ」とローレンスは言った。「逆らわないでくれ」
 「無駄だよ」とローレンスは言った。「あきらめろ。落ち着け。あんたにできることはもう何もない」
 「落ち着けって」とローレンスはまた言った。「落ち着くんだ。これからあんたはショック状態に陥るから、なんの痛みも感じなくなる。あったかい毛布をかけてもらうように身を任せるんだ。逆らうんじゃない。すぐにすべて終わるから。死んでいく人間はこれまで大勢見てきた。これも悪い死に方じゃないよ。長くはかからない。頭の中で映像が次々に浮かぶままにするんだ。あんたの人生にあった、いいことを全部思い浮かべるといい。いいことだけを考えることだ」
 そのあと急に動かなくなった。死んだのだ。


日本の話しも出てくる。

 三つ星レストランで食事をした。
 焼いたサンショウウオやラーメンを食べた。


「焼きサンショウウオ」と「ラーメン」が同列になっているのには、少々驚いたが。
焼きサンショウウオを食べさせるお店はあるのかなあ。

生きるうえでの智慧。

 “豊かさは見て楽しむものでなく、手に入れて愉しむもの” というキャッチフレーズ

 愚かさというのはいつでもつけ込めるものだが、知性というものは眼に見えにくい。見た目よりもずっと頭が切れることがあとになってわかったギャングを私は大勢知っている。


 『 ゴーストマン 消滅遊戯/ロジャー・ホッブス
                    /田口俊樹訳/文藝春秋



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする