ゆめ未来     

遊びをせんとや生れけむ....
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九十歳。 何がめでたい

2019年04月15日 | もう一冊読んでみた
九十歳。何がめでたい/佐藤愛子  2019.4.15  

佐藤愛子女史の 『九十歳。何がめでたい』 を読みました。
味わい深く、クスッと面白い一話一話でした。

彼女が日々思ったこと

 折しも東海道新幹線の「のぞみ」の時速が十五キロアップで、東京新大阪間を二時間二十二分で走るようになった、とテレビが伝えている。ブレーキの性能を上げ、「三分」アップしたということである。
 3分アップ?
それがナニや、と私は思う。


 この循環を裁ち切るには、覚悟の実力行使が必要です。人はみな多かれ少なかれ、自分の人生を自分なりに満足いくものに作るために目に見えぬ血を流しているのです。当たりさわりのない人生なんて、たとえ平穏であったとしてもぬるま湯の中で飲む気の抜けたサイダーみたいなものです。

 「強く生きるコツ」とはこういうことなのですよ。まず『暴れ猪』になることが必要なのです。人に迷惑をかけ、呆れられたり怒らせたり憎まれたり、それにもめげずに突進する。強く生きるとは満身創痍になることです。だから強く生きるなんてことは考えない方がいい。

 ふりかかった不幸災難は、自分の力でふり払うのが人生修行というものだ。

「人気もあれば憎まれもする。正直で曲がったことを嫌い嘘のない人である。が、強情短気で一度怒心頭に発せばいかなるものも恐れず突進する。」 若き日から

 「文明の進歩」は我々の暮らしを豊かにしたかもしれないが、それと引き替えにかつて我々の中にあった謙虚さや感謝や我慢などの精神力を摩耗させて行く。

 若者は夢と未来に向かって前進する。
 老人の前進は死に向かう。


 私は新聞の「人生相談」の愛讀者である。僅かな字数の中に時代とそこに生きる人々の人生が垣間見え、また回答者の回答にもその人の人となり、価値観、生きて来た軌跡のようなものがそこはかとなく窺われて興味深い。

 私は思う。歳月は覚悟も勇気もなし崩しにしてしまう容赦ない力を持っている。

このような心境に至るまでの語録です。

 ああ、長生きすることは、全く面倒くさいことだ。.......

 かくなる上は、さからわず怒らず嘆かず、なりゆきに任せるしかないようで。

   ものいわぬ婆ァとなりて 春暮るる


御一読あれ。

          『 九十歳。何がめでたい/佐藤愛子/小学館 』
コメント
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