BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

碧い空の果て 1

2025年02月20日 | 天愛×F&B×火宵の月 帝国クロスオーバーパラレル二次創作小説「碧い空の果て」

素材は、てんぱる様からお借りしました。

「FLESH&BLOOD」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

海斗とアルフレートが両性具有です、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

パチパチと、松明の火が時折爆ぜる音がした。
海斗は毛布にくるまりながら、暖を取っていた。
天幕の下でノートと教科書を広げ、勉強をしている海斗の前にナイジェルがやって来た。
「余り根詰めると、身体を壊すぞ?」
「ありがとう。」
ナイジェルから差し出された紅茶が入ったマグカップを受け取った海斗は、一口それを飲んで溜息を吐いた。
海斗は、何度も同じ数学の問題を解こうとしたのだが、解き方がわからず、鉛筆を持ったまま唸っていた。
「どうした?」
「この問題が解らなくて・・」
「あぁ、これならこの公式を・・」
ナイジェルに教えて貰ったら、その問題は簡単に出来た。
「ありがとう、ナイジェル。」
「今夜はもう休んだ方がいい。」
「わかった。」
海斗は教科書とノートを鞄の中にしまった後、ナイジェルと共に宿屋の中で休む事にした。
「遅かったわね。無理は禁物よ。」
「はい。」
翌朝、海斗は眠い目を擦りながら宿屋の厨房で一座の団員達の朝食を作っていた。
「カイト、あとはあたしがやるから、あんたは学校に行きなさい。」
「わかった。行って来ます。」
「試験、頑張りな!」
「はい!」
海斗が身支度を済ませ、学校に着くと、クラスの女子生徒が数人、彼女の方へと駆け寄って来た。
「あなた、あの一座の子?」
「そうだけど、それが何か?」
「そう。」
(何だったんだろ。)
海斗が教室に入ると、自分の机の上には“臭い子”と書かれた紙が置かれていた。
(馬鹿な事をしているな。)
昼休み、海斗は教室で一人、ナイジェルが作ってくれた弁当を食べていた。
試験を終えて学校から宿屋へと戻った海斗は、鞄を部屋に置いた後、溜息を吐いた。
「お帰り、試験はどうだった?」
「何とか出来たよ。ねぇナイジェル、俺って臭い?」
「臭くないぞ。どうして急にそんな事を言うんだ?」
「実は・・」
ナイジェルに海斗が学校であった事を話すと、彼はその話を聞いて酷く憤慨した。
「そんな連中の事は気にするな。」
「うん・・」
二人がそんな話をしていると、部屋のドアが誰かにノックされた。
「カイト、リアが大変なんだ!」
「すぐ行くわ。」
一座の団員・カイルと共に海斗がサーカスのテントの中へと入ると、そこには苦しそうに息をしているクマのリアの姿があった。
「急に苦しみ出して・・」
「俺に任せて。」
海斗はそう言ってリアの前にしゃがみ込むと、その身体を優しく擦りながら、呪文を唱えた。
すると、苦しそうに息をしていたリアは、安心したのか寝息を立てて眠り始めた。
「ありがとう、カイト。」
「レオン、リアはどうして苦しみ出したの?」
「あの子は、内臓に持病を抱えていてね。薬を飲ませて症状を抑えているんだが、中々良くならないね。」
「そうなの・・」
一座の獣医師・レオンは、そう言うと溜息を吐いた。
「それにしてもカイト、学校はどうだい?今日、試験だったんだろう?」
「全部完璧に出来たわ。」
「そう。友達は出来たかい?」
「いいえ。クラスの子は、俺の事を嫌いみたい。みんな、俺の事を臭いって思っているみたい。」
「そんな奴らの事は気にするな。学校には、色々な奴が居るからね。」
「俺、人よりも動物と仲良くなった方がいいや。動物は話せないけれど、気持ちは通じるもの。」
「それはそうだね。動物は人と違って見返りを求めない。」
リアの檻の前でそんな話を海斗とレオンがしていると、窓の外が騒がしくなった。
(何だ、さっきの音・・)
「レオン・・」
「カイト、動物達を頼む。わたしは暫く様子を見てくる。」
「うん・・」
海斗は騒ぎに気づいて興奮した動物達を落ち着かせていると、天蓋の中に銃で武装した男達が入って来た。
「あんた達、何者なの!?」
「この子だ、間違いない。」
「連れて行け。」
「はっ!」
「離せ!」
男達に羽交い締めにされ、天蓋の外へと出された海斗は、眼前に広がっている仲間達の死体を見て悲鳴を上げた。
「俺を、どうするつもりなの?」
「大丈夫だ、殺しはしない。」
「あんた達の目的は何?」
「ある方から、お前を連れて来るよう命じられた。」
男達の中から、長身の男が海斗の前に現れた。
「ねぇ、動物達はどうするの?もしかして、殺したりしないよね?」
「あぁ。」
「そろそろ行くぞ。」
訳がわからぬまま、海斗は男達と共に生まれ故郷の町を後にした。
同じ頃、王宮では一人の青年が病に苦しんでいた。
「皇太子様のご容態は?」
「余り芳しくありません。」
「そう。では、この薬を皇太子様に飲ませなさい。」
「わかりました。」
女は、侍女に毒薬を手渡した後、口元に笑みを浮かべた。
「王妃様、タルタン様がいらっしゃいました。」
「そう。すぐに行くと伝えて。」

(もうすぐ、この国はわたくしのものとなる。)

ここまで、長い道のりだった。

(玉座に座るまで、まだ油断してはいけない。“あの娘”を始末するまでは・・)
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蒼と翠の邂逅 1

2025年02月20日 | 天愛×火宵の月 異民族クロスオーバーパラレル二次創作小説「蒼と翠の邂逅」


表紙素材は、てんぱる様からお借りしました。

「火宵の月」「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

両性具有・男性妊娠設定あり、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

「ハプスブルク帝国皇太子・ルドルフ様、ようこそ我が村においで下さいました!」
村長をはじめとする村人達から歓迎され、ハプスブルク帝国皇太子・ルドルフは山脈に囲まれた山村を視察で訪れ、そこで村人達の生活などを体験し、狩りなどを楽しんだ。
周囲には美しい山脈と自然があったが、山の麓にある町までは馬に乗って片道二時間半もかかり、更に主だった産業が無いというこの村の“弱点”に、ルドルフは気づいてしまった。
自分が暮らすロートリンゲンの、猥雑で混沌とした空気とは違って、山村の空気は冷たく澄んでいた。
「ルドルフ様、こちらにいらっしゃったのですか。」
侍従にそう声をかけられ、ルドルフは彼と共に滞在している村長の屋敷へと戻った。
「ルドルフ様、この村は如何ですか?」
「空気が澄んでいて、良い場所だ。ただ、交通の便が悪いのが気になる。」
「そうですか。ここは中々開発の手が届かない場所です。麓の町で働く若者が増えて、この村もやがて滅びるでしょうな。」
村長がそう言って酒を飲んでいると、彼らの前に一人の少年が現れた。
「村長様、そろそろ宴を始めても良いですか?」
「あぁ。」
「宴?」
「はい。毎年この季節になると、村の神である龍神様をもてなす宴を開いているのです。」
「ほぉ・・」
異民族の文化は興味深いな・・ルドルフがそう思いながら宴を見ていると、数人の巫女装束姿の舞姫達の中から、一人の少女が現れた。
彼女は美しい衣を纏い、艶やかな黒髪をなびかせながら静かに舞っていた。
その時、ルドルフの蒼い瞳と、少女の翠の瞳がぶつかった。
(この瞳を、わたしは知っている・・)
「ルドルフ様、どうかなさいましたか?」
「いや、何でもない。あの子は?」
「あぁ、あの子は紅牙族の村の者ですよ。龍神様へ捧げる舞は、あの子しか舞えないのです。」
「そうか、あの者を後でわたしの部屋へ来るようにと伝えてくれ。」
「は、はい・・」
人嫌いで知られるルドルフが初めて異民族の少女に興味を持った事に驚きながらも、彼に従った。
「え?皇太子様が僕を?」
「そうだ。アルフレート、皇太子様に失礼のないようにね。」
「は、はい・・」
龍神様へ捧げる舞を終え、村へと戻ろうとしたアルフレートは、村長に呼び止められ、彼と共にルドルフの部屋へと向かった。
「ルドルフ様、アルフレートをお連れしました。」
「入れ。」
「失礼致します。」
村長と共にルドルフの部屋に入ったアルフレートは、彼が自分に向ける熱い眼差しに気づき、思わず俯いてしまった。
「アルフレートと二人きりにしてくれ。」
「は、はい・・」
「あ、あのぅ・・」
村長が部屋から出て行ってしまい、ルドルフと突然二人きりになったアルフレートは、扉の近くから動けずにいた。
「どうした?もっと近くに来い。」
「は、はい・・」
アルフレートが恐る恐るルドルフの方へと向かうと、彼はアルフレートの右手首を掴むと、アルフレートの身体を寝台の上へと軽く突き飛ばした。
「な、何を・・」
「お前、わたしの妃となれ。」
「お止め下さい、何をなさいますっ!」
アルフレートは自分を押し倒したルドルフに向かってそう叫び、彼から逃げようとしたが、ルドルフはビクともしなかった。
「お前が欲しい。」
ルドルフはそう言うと、アルフレートの唇を塞いだ。
その瞬間、アルフレートの脳裏にある映像が浮かんだ。
―やっと見つけた・・
そう言って自分に微笑んでいる男性の顔が、ルドルフと重なった。
(今のは、一体・・)
「どうした?」
「お願いです、離して下さい!」
「嫌だ、お前はわたしの・・」
ルドルフがアルフレートの衣を脱がそうとした時、急にアルフレートの姿が消え、ルドルフは激しく動揺した。
「何処だ、何処に居る!?」
ルドルフはアルフレートの姿を捜すと、部屋の扉の前に一匹の黒豹が居る事に気づいた。
その瞳は、美しい翠をしていた。
「アルフレート、なのか?」
黒豹はルドルフの声に一瞬反応したが、彼に背を向け、部屋から出て行った。
「待て、アルフレート!」
ルドルフは慌ててアルフレートを追って部屋の外へと出たが、アルフレートは既に吹雪の中へと消えてしまっていた。
(アルフレート、必ずお前を見つけ出して、お前をわたしの妃として迎えてやる!)
同じ頃、ルドルフが滞在していた村から少し離れた紅牙族の村では、金髪紅眼の紅牙族の女達が、刺繍をしていた。
「それにしても遅いわねぇ、あの子。」
「あの子?」
「あ~、火月ちゃんはまだ会っていなかったわね。アルフレートって子なんだけれど、紅牙族の中では珍しい子なの。」
「珍しい子?」
火月は複雑な模様を黒い布に刺繍しながら、紅牙族の女達にアルフレートの事を聞いた。
「あの子はね、金髪紅眼のうちらとは違って、黒髪翠眼なのよ。涙が翠玉になるの。長によれば、あの子と同じような紅牙族の人達が居たけれど、人間に乱獲されて絶滅しちゃったみたいよ。」
「そうなんだ・・」
「火月ちゃん、雛ちゃんと仁ちゃんはどうしているの?」
「先生達と狩りに行っています。そろそろ帰って来る筈・・」
火月がそう言った時、部屋の扉が開き、中に彼女の夫である土御門有匡と、二人の子供達、雛と仁が入って来た。
「お帰りなさい、先生!」
「ただいま。」
「母様、ただいま!」
「ただいま!」
「狩りはどうでした?」
火月が夫にそう尋ねると、彼は首を横に振った。
「吹雪が止まぬ限り、当分狩りは無理だろう。」
「母様、狩り楽しかったよ!」
「そうだったの。じゃぁ皆さん、僕達はこれで失礼致します。」
「火月ちゃん達、また明日~!」
有匡と火月が双子を連れて女達の仕事部屋から出て、自分達の部屋へと戻ろうとした時、彼らの前に一匹の黒豹が現れた。
黒豹は、翠の瞳でじっと有匡達を見つめた後、人間の姿に戻って意識を失った。
「おい、しっかりしろ!火月、長を呼んで来い!」
「は、はい!」
黒豹―アルフレートは長の部屋に寝かせられたが、低体温症に罹って死にかけている状態だった。
「ねぇ、アルフレートに一体何があったの?」
「それはわからん。ただ、あの村にルドルフ皇太子様が視察に来たと聞いている。」
「じゃぁ、そいつがアルフレートに何かしたって事?」
「恐らく、そうだろうな。」

有匡がそう言った時、外から馬の嘶きが聞こえて来た。

(ここが紅牙族の村か・・)

まるで運命に導かれるかのように、ルドルフはアルフレートの元へと向かった。
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蜜愛~ふたつの唇~第1話

2025年02月20日 | 天上の愛地上の恋 昼ドラ転生遊郭パラレル二次創作小説「蜜愛~ふたつの唇~」

表紙素材は、このはな様からお借りしました。

「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

死ネタあり、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

雪がはらりはらりと舞い散る中、二人の少年達が女衒に連れられ、大門をくぐろうとしていた。

黒髪に翠の瞳をした少年は、隣で歩いている金髪碧眼の少年が蒼褪めている事に気づき、そっと彼の手を優しく握った。

「さぁ、ここだよ。」
女衒に連れられて二人がやって来たのは、男色専門の大店・華屋だった。
「女将さん、居ますかい?」
「何だい、またあんたかい。」
そう言いながら部屋の奥から現れたのは、煙管を咥えた六十近い女が腰を擦りながら出て来た。
「今日は良い掘り出し物を見つけたんですよ。」
「掘り出し物だって?」
「この子達ですよ。」
「へぇぇ、あんたも偶には良い仕事をするじゃないか。」
華屋の女将・お夏は、そう言うと舌なめずりをしながら二人の少年達を見た。
「あんた達、名前は?金髪の坊やは、身なりからして何処かの良い所のお坊ちゃんかい?」
「僕はアルフレート=フェリックス、十二歳です。こちらの方は、ルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ様で、僕がお仕えしている方です。」
「ルドルフ・・もしかしてあんたは、数日前に破産して一家離散した、ハプスブルク家の坊っちゃんかい?」
お夏の言葉に、今まで黙って俯いていた金髪の少年は、蒼い瞳で彼女を睨みつけた。
「僕は、お前のような女に憐れみをかけられる程、落ちてはいない。」
「生意気な子だねぇ。でも、仕込み甲斐がありそうだ。浜木綿、居るかい?」
「へぇ、女将さん。」
音もなく襖が開き、中に美しい着物を纏った一人の陰間が入って来た。
「今日からこの子達を躾けておくれ。」
「さぁ二人共、いらっしゃい。」
陰間―浜木綿太夫は、そう言ってアルフレートとルドルフを自分の部屋へと連れて行った。
「二人共、これからよろしくね。」
「よ、よろしくお願いします。」
「そんなに緊張しなくてもいいのよ。ねぇ、ルドルフ君はいつくなの?」
「九つだ。」
「そう。アルフレートとルドルフ君は、一体どんな関係なの?」
「僕は、ルドルフ様にお仕えしていました。」
アルフレートは、浜木綿太夫にルドルフと初めて会った時の事を話した。
流行病で両親を亡くし、真冬の路上で行き倒れになっていたアルフレートは、観劇帰りのルドルフ達に救われ、ルドルフの遊び相手として彼に仕える事になった。

幸せな日々は、長くは続かなかった。

流行病の影響を受け、その上ハプスブルク家が所有していた物流倉庫が火災で全焼し、多額の負債を抱えたハプスブルク家は倒産、ルドルフ達は一家離散した。
「そう・・ここは色々な事情を抱えている子達が沢山居るからね・・」
浜木綿太夫はそう言うと、アルフレートに微笑んだ。
こうして、ルドルフとアルフレートは、浜木綿太夫の禿として働く事になった。
「僕は、絶対にこんな肥溜めみたいな所から抜け出してやる!」
浜木綿太夫つきの禿としてその美貌と才覚故に引込禿としての教育を受ける事になったルドルフとアルフレートを待っていたものは、周囲の羨望と嫉妬の視線だった。
その日、ルドルフは家族に会いたいが為に足抜けしようとしたが失敗、楼主の弥七から折檻を受けた。
アルフレートは折檻されたルドルフを手当てしていると、彼の唇の端が血で滲んでいる事に気づいた。
「ルドルフ様、その時はわたしもお供致します。」
ルドルフとアルフレートが華屋に売られてから、十年の歳月が経った。
―おい、見ろよ、あれ・・
―今をときめく翡翠太夫と碧太夫の太夫道中だ!
―華屋の“天女太夫”を二人共見られるなんて、幸せだねぇ。
シャラシャラと、豪奢な簪を揺らしながら共に足で外八文字を描くのは、華屋の太夫として美しく成長したルドルフとアルフレートだった。
「やっぱり、あんたの目利きはあの時間違っていなかったようだねぇ、玄八。」
お夏は沿道で二人の太夫道中を見ながら、女衒にそう言って笑った。
「今や飛ぶ鳥を落とす勢いの二人が、未だに男と肌ひとつ重ねちゃいねぇってここいらの野郎共が知ったら、どうなるか・・」
「馬鹿だねぇ、あんた。あの二人の孤高の美しさが、この町を支えているのさ。」
お夏はそう言うと、女衒と共に店へと戻った。
「これ全部、あの二人宛の、ご贔屓様からの贈り物なの!?」
「あんたは新入りだから知らないけれど、あの二人はうちでは特別な存在なのよ。」
「へぇ・・」
禿達がそんな事を廊下で話していると、アルフレートはルドルフの髪を黄楊の櫛で優しく梳いていた。
「お前に髪を梳いて貰うと、何だか落ち着くな。」
「ルドルフ様、お客様の前では顰め面をしてはいけませんよ?」
「あれは、あの親爺がわたしの手をしつこく握って来たから・・」
「だとしても、顔に出してはいけませんね。」
「お前、小言を言うのは昔から変わらないな。」
「そうですか?」

アルフレートはそう言いながらも、櫛で髪を梳く手を止めなかった。
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Campus50周年。

2025年02月14日 | 日記
今年でCampusノート発売してから50年目なんですね。
近所の文具店で50周年記念デザインのシャーペンを買いました。
大切に使います。



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バレンタインチョコレート。

2025年02月11日 | 日記



職場の同僚の方からバレンタインチョコレートを頂きました。
GODIVAとリンドールのチョコレート、美味しかったです。
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薔薇と白百合 2

2025年02月01日 | 天上の愛地上の恋×ベルばら クロスオーバー二次創作小説「薔薇と白百合」

表紙素材は、湯弐様からお借りしました。

「ベルサイユのばら」「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

「お帰りなさいませ、お嬢様。」
「ただいま。」
馬車から降りたオスカルは、慣れないドレスの裾を摘みながら自室に入ると、そこには彼女の帰りを待っていたアンドレの姿があった。
「お帰り、オスカル。」
「アンドレ、寝ないでわたしの帰りを待っていてくれたのか?」
「あぁ。舞踏会はどうだった?」
「どうもしないさ。それよりもアンドレ、用が無いなら出て行ってくれ。」
「わかった。」
アンドレが自室から去った後、オスカルは溜息を吐きながら、ドレス姿のまま長椅子の上に横たわった。
「オスカル、入るぞ。」
「アンドレ。」
オスカルは、アンドレが様々な菓子が載ったワゴンを押して部屋に入って来るのを見た。
「それは何だ?」
「舞踏会では、あんまり食べられなかったんだろう?だから、こうして菓子を持って来たんだ。」
「そうか、ありがとう。」
オスカルはそう言うと、アンドレが運んで来た菓子のひとつをつまみ、それを口に放り込んだ。
「美味いな。」
「良かった、チョコのマカロン、初めて作ったからオスカルの口に合うかなと思っていたんだが・・気に入ってくれてよかった。」
「ありがとう、アンドレ。もうひとつ、くれないか?」
「あぁ、いいが・・それよりも先に、着替えないのか?コルセット、苦しいんだろう?」
「全く、女の格好は窮屈で動き辛いし、苦しくてかなわん。」
オスカルはそう言った後、結い上げた髪を解いた。
「コルセットを外すのを手伝ってやるよ。そんな窮屈な格好じゃぁ、菓子の味見が出来ないだろう?」
「そうだな、頼む。」
アンドレに鎧のようにきつく己のウェストを締め付けていたコルセットを緩めて貰ったオスカルは、解放感の余り思わず溜息を吐いてしまった。
「もう二度と、こんな物は着ない。」
「オスカル、そんな事を言ったら、ばあちゃんが嘆き悲しむぞ。今夜の舞踏会で、やっとお前にドレスを着せる事が出来たって喜んでたのに・・」
「ばあやには悪いが、わたしはもうドレスは着ない。」
オスカルはそう言った後、マカロンの隣に並べられてあったエクレアを一個摘むと、それをそのまま頬張った。
「うん、美味い。」
「ドレスを汚してばあちゃんに怒られる前に、早く着替えろ。」
「わかった。」
オスカルの部屋から出て行ったアンドレと入れ替わり、部屋に入って来た侍女達に手伝って貰いながら着替えを終えたオスカルは、寝室に入るとそのまま寝台の上に横になって泥のように眠った。
その後、彼女は不思議な夢を見た。
『撃て~!』
夢の中の自分は、軍の指揮官だった。
暫く指揮を執り、攻撃を続けていたが、オスカルは敵軍に撃たれ、その若い命を散らした。
―隊長、バスティーユに白旗が!
誰かがそう叫ぶのを聴いた後、オスカルは夢から覚めた、
頬を伝う涙が枕を濡らしている事に気づいた彼女は、手の甲で乱暴に涙を拭うと、寝癖を手櫛で整えた。
「おはようございます、お嬢様。」
「おはよう、ばあや。アンドレは?」
「アンドレなら、先程買い物に出掛けて、すぐに戻って来ますよ。」
「そうか。」
オスカルがばあやことマロン・グラッセとそんな話をしていると、アンドレが息を切らしながら二人の前に現れた。
「オスカル、ただいまっ!」
「アンドレ、‟オスカル様“とお呼び!」
「どうした、アンドレ?そんなに息を切らして・・」
「いや、さっき買い物の帰りに、途中で寄った店でこんな物を見つけてな、買って来たんだ!」
そう言ってアンドレがオスカル達に見せたものは、大きな箱に入ったケーキだった。
「何だ、これは?」
「昨日、話していたザッハートルテだ。いやぁ、いつも行列が出来ている店で、今日に限って空いていて良かった・・」
「そうか・・」
オスカルはアンドレからケーキが入った箱を受け取り、その蓋を開けると、美味しそうなチョコレートケーキが入っていた。
「まぁ、美味しそうなケーキ!さっそく頂きましょう!」
マロン・グラッセはダイニングテーブルの中央にケーキの箱を置くと、いそいそとした様子で厨房へと消えていった。
「頂きます。」
オスカルは、皿に載せられたザッハートルテをフォークで一口大に切り、それを頬張った。
「どうだ?」
「しっとりとした味わいでいい、気に入った。お前が作ったガトー・オー・ショコラには負けるがな。」
「お前が喜んでくれて良かったよ、オスカル。」
アンドレがオスカルに笑顔を浮かべた時、ジャルジュ邸の前に、一台の馬車が停まった。
「どうしたのかしらねぇ、こんな朝早くに。」
「さぁ・・」
ダイニングテーブルでオスカルがアンドレとザッハートルテを食べていると、そこに突然、オスカルの父・ジャルジュ伯爵が現れた。
「オスカル、早く支度しろ!」
「何事ですか、父上?」
「ルドルフ皇太子様がお前に会いたいとおっしゃっている、早くわたしとホーフブルク宮殿へ向かうぞ!」
「わかりました、すぐに参ります。」
オスカルはダイニングルームから出て自室に戻り、身支度を済ませると、ジャルジュ伯爵と共に、ハプスブルク家からの迎えの馬車に乗り、ホーフブルク宮殿へと向かった。
(一体、ルドルフ皇太子様がわたしに何の用だろう?)
一方、ホーフブルク宮殿内にあるスイス宮では、ルドルフが寝台の中で黒髪の天使、アルフレートと睦み合っていた。
「ルドルフ様、もうわたしは行きませんと・・」
「まだ大丈夫だ。」
「ですが・・」
「ルドルフ、開けろ!」
ドンドンという乱暴なノックの音が扉の向こうで聞こえ、アルフレートに口づけしようとしたルドルフは舌打ちをして彼から離れた。
「何だ、大公?朝からうるさいぞ。」
「ルドルフ、早く支度しろ、客人が間もなくホーフブルクに来るぞ!」
「客人?」
「お前、とぼけるのもいい加減にしろ!その格好はなんだ、さっさと着替えろ!」
「あぁ、わかった・・」
ルドルフはそう言った後、寝台の中で自分を見つめているアルフレートの額にキスをすると、寝室から出た。
身支度を済ませ、ルドルフがスイス宮の廊下をヨハン=サルヴァトールと歩いていると、一台の馬車がスイス門の前に停まり、中から一人の正装姿の‟男性“が降りて来た。
光り輝く金色の髪をなびかせ、堂々とした足取りでルドルフ達の方へと向かって来た‟彼“は、夏の蒼穹をそのまま写し取ったかのような美しい蒼の瞳で二人を見た。
「本日はお招き頂き、ありがとうございます、皇太子様。わたしは、レニエ=ド=ジャルジェ、そしてこちらは我が末娘、オスカルでございます。」
「お初にお目にかかります、皇太子殿下、サルヴァトール大公様。」
オスカルがそう言って俯いた顔を上げると、そこには長身の貴公子の姿があった。
―オスカル・・
何処からか、‟彼女“の声が聞こえて来たような気がしてオスカルは周囲を見渡したが、そこには誰も居なかった。
(気のせいか・・)
「どうかなさいましたか?」
「いえ、何でもありません。」
オスカルは我に返り、ルドルフの顔を見た。
すると、彼女は‟ある事“に気づいた。
ルドルフの何処かに、‟彼女“―マリー=アントワネットの面影を感じられるのだ。
「さてと、ここで立ち話もなんですから、お茶でも飲みながら話しましょう。」
「はい。」
「では、こちらへ。」
ルドルフ達と共にスイス宮の中へと入ったオスカルは、丁度階段から降りて来た一人の青年司祭と目が合った。
美しい闇夜のような艶やかな黒髪を揺らした彼は、翠の瞳でオスカルを見つめた。
(まるで、神がこの地に遣わした天使のような美しい人だ・・)
「オスカル殿、紹介致します。わたしの友人の、アルフレート=フェリックスです。」
「アルフレート=フェリックスです。」
「オスカル=フランソワ=ジャルジェだ、よろしく。」

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炎の巫女 氷の皇子 第1話

2025年01月31日 | 天愛 異世界ハーレクイン転生パラレル二次創作小説「炎の巫女 氷の皇子」

表紙素材は湯弐様(ID:3989101)からお借り致しました。

「天上の愛地上の恋」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

両性具有・男性妊娠設定ありです、苦手な方はご注意ください。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。


その昔、この帝国には闇の悪魔を封じ込め、国を護る聖女が居た。
聖女は浄化の力を持つ炎を操り、それ故に“炎の巫女”と呼ばれた。
聖女はやがて、帝国を統べる皇帝と恋に落ち、結ばれるが、戦いの最中命を落としてしまう。
死の間際、聖女は皇帝に誓った。
幾度も魂が巡り、姿を変えても生涯、皇帝(あなた)を愛し、守り続けると―

「アルフレート、これを。」

12歳となったアルフレート=フェリックスは、父親代わりに自分を育ててくれた孤児院の院長・
ユリウスによって、額に“守護の印”を授けられた。

「この“守護の印”は、特別な者にしか授けられないものだ。アルフレート、お前はこれから多くの困難に立ち向かう事になるだろう。だが、お前は生まれ持った力で人々を助けなさい。」
「はい、ユリウス様。」
「正直な事を言うと、お前をこの村に置いておきたいが、老人の我儘でお前を苦しめたくない。帝都で沢山学んでおいで。」
「はい。」
生まれ故郷である貧しい山村から、アルフレートは一路帝都へと向かった。
(帝都には、一体何があるんだろう?)
帝都へと向かう汽車の中で、アルフレートはそう思いながら、ユリウスから渡された手紙に目を通した。
『ユリウスへ、わたくしの愛しい天使をよろしくお願いします。』
ユリウスによれば、アルフレートはこの手紙とロザリオと共に、孤児院の前に捨てられていたのだという。
(この国の何処かに、僕を産んでくれたお母さんが居るんだ!)
期待と不安に胸を膨らませたアルフレートを乗せた汽車は、間もなく帝都に着こうとしていた。
同じ頃、帝都・ウィーンの中心部にある王宮では、一人の少年がバルコニーから見える外の街並みを眺めていた。
「ルドルフ様、こんなところにいらっしゃったのですね。さぁ、もうじきラテン語の先生がいらっしゃいますから・・」
「わかった。」
ルドルフはバルコニーを後にし、私室があるスイス宮へと向かった。
彼の名は、ルドルフ=フランツ=カール=ヨーゼフ=フォン=ロートリンゲン、ロートリンゲン=ハプスブルク帝国皇太子として生を享け、何不自由ない生活を送っていた。
だが、ただひとつ彼に足りないものといえば、両親の愛情だった。
父親である皇帝は政務に忙しく、母親である皇妃は窮屈な宮廷を嫌い、放浪の旅を繰り返していた。
彼の理解者は、愛犬のアレクサンダーと、姉のジゼルだけで、同年代の同性の友人は彼の周りには居らず、彼はいつも孤独だった。
「アレクサンダー、お前が人間だったらいいのに。そうすれば、寂しくないのに。」
愛犬の頭を撫でながら、ルドルフは苦しそうに咳込んだ。
「ルドルフ、どうしたの?」
「何でもありません、姉上・・」
そう言って姉に対して虚勢を張ったが、彼女には通用しなかった。
「あなた、熱があるじゃない!誰か、誰か来て!」
寝台に寝かせられたルドルフは、苦しそうに咳込みながら寝返りを打っていた。
―これで一体、何度目なのかしら?
―本当に、ルドルフ様は・・
微かに開いた、扉越しに聞こえる、女官達の心無い噂話。
頑健で、風邪ひとつひいた事が無い皇帝の一人息子でありながら、病弱でいつも寝込んでばかりいる自分の出自を、噂する者が多い事を、ルドルフは物心つく頃から知っていた。
誰か一人でもいい、熱にうなされて苦しむ自分の手を、握ってくれる者が居てくれたらいいのに―そんなルドルフの心に呼応するかのように、部屋は徐々に氷に覆われていった。
「ルドルフ様、どうかなさって・・」
女官達はルドルフの様子を見に彼の私室へと向かったが、その扉が氷で覆われている事に気づき、悲鳴を上げた。
「一体何事だ!?」
「陛下、ルドルフ様のお部屋が・・」
ロートリンゲン=ハプスブルク帝国皇帝・フランツ=カール=ヨーゼフは、氷で覆われているルドルフの部屋の前で、一人息子に向かって呼び掛けた。
「ルドルフ、部屋の扉を開けなさい。」
「はい、父上。」
扉を開けて部屋の中から出て来たルドルフの顔は、蒼褪めていた。
「ルドルフ・・」
「父上、僕は・・」
「恐れる事は無い。その力は、ハプスブルク家に神から授けられた特別なものだ。」
「はい・・」
「何ですって、ルドルフに“力”が?」
フランツの母・ゾフィー大公妃は、ルドルフの“力”が現れた事を知り、驚愕の表情を浮かべた。
「そう・・やはり、ルドルフが“皇帝”の生まれ変わりなのね。」
「母上・・」
「数日前、占術師から言われたわ。“皇帝の伴侶となる聖女が近々現れる”と。」
「まさか・・」
「あの子の運命は、神様の導きによって決まるものなのよ。」

ゾフィーは、そう言った後、降り始めた雪を窓から眺めた。

「寒いなぁ・・」

帝都に着いたアルフレートは、寒さで悴んだ手を暖める為に、掌に小さな炎を灯した。
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獅子と不死鳥 1

2025年01月31日 | 天愛×F&B ハーレクインクロスオーパラレル二次創作小説「獅子と不死鳥」

表紙素材は、mabotofu様からお借りしました。

「FLESH&BLOOD」「天上の愛地上の恋」の二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

海斗とアルフレートが両性具有です、苦手な方はご注意ください。

土砂降りの雨の中、ある貴族の葬儀が行われていた。

―可哀想に・・
―あの方は?
―ショックが大き過ぎて、お部屋に籠もられているそうよ。
貴族が入った棺が地中深く埋められている頃、ロンドン・イーストエンドでは一人の少年の遺体が発見された。
その少年の死に顔は、何故か天使のように微笑んでいた。
「聞いたかい?」
「あぁ、聞いたとも!何でも、死んだあの子は・・」
「しっ!誰かに聞かれでもしたらどうするんだい?」
「構いやしないさ。ここら辺の奴らは、“あの家”の事は知っている。」
テムズの泥ひばり達がそんな事を話していると、そこへスコットランド=ヤードのアーサー警部補がやって来た。
「君達、何を話しているんだい?」
「あぁ、おまわりさん、あたし達が話していたのは、あの子の事だよ。ほら、一昨日見つかった・・」
「あぁ、あの子か。」
アーサーは、テムズ川で発見された、“エンジェル・ボーイ”を思い出していた。
“エンジェル・ボーイ”は、美しい身元不明の少年の遺体だった。
着衣に乱れなどなく、寧ろ、“綺麗過ぎて”いた。
美しい糖蜜色の髪は櫛で整えられていた。
「あの子、もしかしたら貴族の子供じゃないかい?」
「そうだろうね。ソックスガーターなんて、ここいらの子供はつけないからね。」
「貴族の子、かぁ・・遺留品を探れば身元が判るかもしれないなぁ・・」
アーサーは泥ひばり達に礼を言うと、スコットランド=ヤードへと戻った。
「アーサー、何処へ行く?」
「“エンジェル・ボーイ”の遺留品は?」
「“エンジェル・ボーイ”の遺留品は保管庫だ。」
「ありがとうございます!」
アーサーは早速、“エンジェル・ボーイ”の遺留品を調べ始めた。
ソックスガーターなどの衣類、懐中時計、指輪などの装身具類・・隅から隅まで調べたが、“エンジェル=ボーイ”の身元に繋がる物は無かった。
(指輪に何があればいいんだが・・)
アーサーが溜息を吐きながら指輪を調べていると、その表面には、微かに紋章のようなものが彫られている事に気づいた。
(これは、獅子と不死鳥・・まさか・・)
アーサーはその指輪を持って、紋章院へと向かった。
「この指輪に彫られているのは・・」
「あぁ、これはバーモンド子爵家の紋章ですよ。」
「そうですか。」
バーモンドといえば、アメリカ西部で金鉱を発掘した事で三年前時の人となった青年が居た。
(確か、彼の名は、アーサー・・)
アーサー=バーモンドと“エンジェル・ボーイ”の関係を探る為、アーサー警部補はバーモンド子爵家へと向かった。
「失礼、こちらにアーサー様はおられますか?わたしは、スコットランド=ヤードのアーサー=ウィード警部補です。今日こちらに伺ったのは・・」
「アーサー坊ちゃまは、お亡くなりになられました。」
「それは、いつの事ですか?」
「一週間前の事です。狩猟中の事故で・・」
「そうですか。あの、この指輪に見覚えがありますか?」
「これは・・」
「ニール坊ちゃまの物だわ!」
客間に紅茶と菓子を載せたワゴンを押して入って来たメイドが、そう叫んでアーサーが持っている指輪を指した。
「ニール坊ちゃま、とは?」
「アーサー坊ちゃまの兄上様にあたられる、レイモンド坊ちゃまのご子息です。」
「そのニール坊ちゃまは、今どちらに?」
「申し訳ありません、わたくしの口からはこれ以上申し上げる事はありません。どうぞ、お引き取り下さい。」
「ですが・・」
「どうぞ、お引き取り下さい。アン、お客様をお見送りなさい。」
「はい。」
これ以上深入りはすまい―アーサー警部補がバーモンド子爵家から出て行こうとした時、彼は一人のメイドと擦れ違った。
「あのすいません、ニール坊ちゃまは・・」
「ニール坊ちゃまは、一週間前に行方不明になりました。」
「行方不明に?」
「はい。レイモンド坊ちゃまと奥様と共に、ロンドンにある救貧院をご視察中に・・」
メイドがそう言った時、彼女は突然何者かの視線に気づいた。
「どうされましたか?」
「すいません、わたしはこれで失礼致します。」
「は、はい・・」
何かがおかしい―アーサーはそう思いながら、バーモンド子爵家から去っていった。
「あの刑事はもう出て行ったの?」
「はい、大奥様。」
「ジョン、あの男が通った所を全て掃除なさい。下賤な者の臭いが消えるまでね。」
「かしこまりました、大奥様。」
老執事は、激しく咳込む女主人にハンカチを差し出した。
「ありがとう、ジョン。」
女主人―エリザベス=バーモンドは、大好きな薔薇の香水が染み込んだハンカチで鼻と口元を覆った。
「少し疲れたわ、部屋まで運んで頂戴。」
「はい、大奥様。」
「お前は良く出来た執事ね、ジョン。」
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鳳凰の系譜 一

2025年01月29日 | 火宵の月 異世界ロマンスファンタジーパラレル二次創作小説「鳳凰の系譜」

表紙素材は、装丁カフェからお借りしました。

「火宵の月」二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

「いらっしゃいませ~!」
鳳凰大陸の北に位置する町・紅牙では、今日も定食屋の看板娘・火月が、元気よく働いていた。
「火月ちゃん、ご飯おかわり!」
「は~い!」
厨房と店内を火月が忙しく行き来していると、通りの方から悲鳴が上がった。
(何だろう?)
火月がそんな事を思いながら店の外から出ようとした時、慌てて厨房の奥から出て来た女将さんに止められた。
「火月ちゃん、早く店の奥へ!」
「何があったんですか?」
「さ、早く!」
女将さんに言われるがまま、火月が店の奥へと避難すると、その直後数人の男達が店の中へと入って来た。
「何ですか、あなた方は!?」
「ここに火月という娘が居るだろう、出せ!」
「営業妨害で訴えますよ!」
女将さんは自分よりも体格が良い男達に向かってそう怒鳴ると、彼らに向かって塩を撒いた。
「クソ!」
「おぼえてろよっ!」
男達は女将さんに向かって悪態を吐きながら、店から出て行った。
「全く、迷惑な奴等だよ。皆さん、お騒がせしちゃってすいませんね!」
女将さんはそう言いながらお客さん達に謝った後、火月の元へと向かった。
「女将さん、あの人達は?」
「ごめんね、後で話すから。」
「は、はぁ・・」
話がわからず、火月は夜まで女将さんと共に店で働いた。
「火月ちゃん、今日もお疲れさん。」
「お疲れ様でした。」
店の二階にある住居部分で、火月と女将さんが互いを労っていると、下の方から誰かが激しく戸を叩く音が聞こえた。
「女将さん、僕が・・」
「いや、あたしが行くよ。」
女将さんはそう言って部屋から出て行ったが、火月は彼女の事が心配になり、階下へと降りていった。
「はいはい、そんなに騒がなくても今開けますよ。」
女将さんがそう言いながら店の戸を開けると、一人の男が覚束ない足取りで店の中に入って来た。
「え、あんた、一体・・きゃぁ~!」
「女将さん、どうしたんですか?」
火月がそう言いながら倒れた男の身体を揺さ振ると、何かが手に着いた感触がした。
「これって・・血?」
「火月ちゃん、お医者様呼んで来て!」
「は、はい!」
火月は店の裏口から外へと飛び出し、近所の町医者の元へと走った。
「こりゃ、酷い傷だ。この傷は、背後から槍で突かれたものだね。」
店に入って来た男の診察をした町医者は、そう言いながら男の傷の手当てをした。
「先生、この方は誰なのですか?」
「さあねぇ・・まぁ、暫く彼をこちらで入院させておくよ。」
「ありがとうございます、宜しくお願いします。」
町医者の診療所から店へと戻った女将さんと火月は、その夜は一睡も出来なかった。
「大丈夫だったんだろうね、あの人。」
「さぁ・・」
「今日は、店を閉めようかね。最近働き詰めだったし、偶には休むのもいいね。」
「そうですね。」
久し振りに店を閉めた火月と女将さんは、町の温泉旅館へと向かった。
「あら、いらっしゃい。」
旅館の玄関先で二人を出迎えたのは、その旅館の女将・雪子だった。
「雪ちゃん、久し振り。ねぇ、昨夜何かあったの?遠くから半鐘の音が聞こえて来たけど・・」
「あぁ、何でも、うちの近く―滝本のお屋敷街で火事があってね。それがどうやら付け火だっていうのよ。」
「付け火?」
滝本というのは、紅牙の町の外れにある、武家屋敷が建ち並ぶ所だった。
そこで火事が起きた事を、火月達は初めて知った。
「下手人は?」
「まだ捕まってないのよ。まぁでも、火元のお屋敷から逃げた人を見たって、そこの女中から聞いたわ。」
「どんな人?」
「さぁ・・でも、長身で黒い着物と袴姿だったと聞いていたわ。」
昨夜、店にやって来た男も長身で、黒い着物と袴姿だった。
「女将さん、もしかして・・」
「何の事情も知らずに、人を疑うものじゃないわ。」
「そうですね、すいません。」
「さ、昨夜の事は忘れて、ゆっくり過ごしましょう。」
「はい・・」
同じ頃、町医者の診療所で寝ていた男が、苦しそうに呻きながら布団の中から起き上がった。
「気が付いたかい?」
「ここは?」
「わたしの診療所さ。あんた昨夜、血と泥だらけになって定食屋の中に入って倒れたんだよ。」
「そうか・・」
男は背中に激痛が走り、思わず顔を顰めた。
「無理しない方がいいよ。あんたはどうやら訳有りのようだし、怪我が治るまで、ここでゆっくりと休んでおくといい。」
「かたじけない・・」
男はそう町医者に礼を言った後、目を閉じて眠った。
一方、滝本の中にある武家屋敷の中で、一人の女が険しい表情を浮かべながら扇子を己の掌に打ち付けていた。
「まだ、あやつは見つからぬのか?」
「申し訳ございませぬ、まだ・・」
「全く、我が殿は一体何を考えているのやら。あのような忌み子を引き取るなど、妾が忠告してやったのに・・恩を仇で返すような者を・・」
「奥方様、失礼致します。」
「何じゃ?」
「例の娘―火月を見つけました。」
「そうか。」
女は、口端を歪めて笑った。
「火月を必ず妾の元へ連れて来い。必ず生け捕りにせよ、よいな?」
「かしこまりました。」
自分の命が狙われている事など知らずに、火月は温泉を満喫していた。
「はぁ~、生き返った!」
「さ、久し振りにゆっくり出来たし、明日から頑張りましょう!」
「はい!」
火月達が定食屋へと戻ると、二階の住居部分が何者かに荒らされていた。
「お金は盗られていないわね。火月ちゃん、どうしたの?」
「ない・・母の形見の簪が、ない!」
「え!?」
「どうしよう、あれは、僕の母の唯一の形見なのに!」
「大丈夫よ、すぐに見つかるわ。」
火月の母の形見である簪は、女の手に握られていた。
「ご苦労だった。」
「ありがとうごぜえやす。」

男は女から金を受け取ると、屋敷から出て行った。
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囚われの花嫁 1

2025年01月28日 | FLESH&BLOOD 中世ヨーロッパ風パラレル二次創作小説「囚われの花嫁」


素材は、mabotofu様からお借りしました。

「FLESBLOH&OD」の二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

ディズニー映画「ノートルダムの鐘」風のパラレルですが、一部キャラ設定や時代設定が違っていたりしますが、それでもいいよという方のみお読みください。

海斗が両性具有設定です、苦手な方はご注意ください。

遠くで、狼の声が聞こえた。

「さぁ、急ぎませんと・・」
「わかっているわ。」
数人のロマ達は、森を抜け、川を渡りパリへと向かった。
だが、彼らは船頭に騙されていた。
「約束した金は払った筈だ!」
「あの金の五倍くらい払っていないと、話にならない。」
「そんな・・」
彼らの間に流れる険悪な空気を敏感に感じ取ったのか、ロマ女の腕に抱かれていた赤子が激しく泣き出した。
「泣かないで。」
「おやおやこれは、随分と賑やかだと思ったら・・」
蹄の音と馬の嘶き声が聞こえた後、一人の男が川岸に現れた。
「ウォルシンガム判事・・」
「この者達を牢へ。」
ロマの男達が鎖で繋がれているのを見たロマ女が赤ん坊を抱いたままその場から逃げようとした時、一人の兵士が目ざとく彼女を見つけた。
「あの女、何かを持っているぞ!」
「盗人だ、捕まえろ!」
ロマ女は、脱兎の如くその場から逃げ出した。
「誰か、助けて!」
彼女は、必死に大聖堂の扉を叩いたが、中から返事はなかった。
「待て!」
「やめて、離して!」
ロマ女と揉み合いになったウォルシンガム判事は、ロマ女を誤って突き飛ばしてしまった。
石畳の階段に頭を強く打ち付けたロマ女は、その場で死んだ。
ウォルシンガム判事は、ロマ女が腕に抱いていたものを取り上げた。

それは、灰青色の瞳をした赤ん坊だった。

だが、その右目には醜い火傷痕があった。

「何と醜い!」
彼は赤ん坊を井戸の中へと投げ入れようとした。
しかし、司教がウォルシンガム判事の蛮行を止めた。
「この子を、お前が育てなさい。」
こうしてウォルシンガムは、赤ん坊を“ナイジェル”と名付け、育てる事になった。
同じ頃、ある貴族の屋敷の前に、一人の赤子が捨てられていた。
その赤子には、男女両方の証があった。
「奥様、大変です!」
「まぁ、可愛い子ね。」
貴族に引き取られた赤子は「カイト」と名付けられ、愛情深く育てられた。
十年後、パリは道化の王を祝う祭りが開かれていた。
「お嬢様、余り遠くに行ってはいけませんよ!」
「わかっているわ!」
海斗はそう叫ぶなり、乳母の手を振り切り、広場に向かって走り出した。
その途中で、海斗は一人の少年とぶつかった。
「ごめんなさい、大丈夫?」
「うん、大丈夫。君の方こそ、怪我は無い?」
そう言った少年は、灰青色の瞳で海斗を見た。
「あなた・・」
「何をしている、早く来い!」
「すいません!」
少年は海斗に一礼した後、雑踏の中へと消えていった。
「カイト様、こちらにいらっしゃったのですね!」
「ごめんなさい。」
「奥様があちらでお待ちですよ、参りましょう。」
海斗は乳母と共に、広場の中央にある貴賓席へと向かった。
そこには、自分とぶつかった少年の姿があった。
「あら、ウォルシンガム判事、あなたも来ていたのね?」
「奥様、お久し振りでございます。そちらの可愛いお嬢さんは?」
「わたくしの一人娘で、カイトですわ。カイト、ウォルシンガム判事にご挨拶なさい。」
「はじめまして、カイトと申します。」
「美しいお嬢さんですね。ナイジェル、こちらに来なさい。」
「はい・・」
ウォルシンガム判事の背中に隠れていた少年は、海斗を見た途端、顔を赤くして俯いてしまった。
「まぁ、恥ずかしがり屋さんなのね。」
「申し訳ございません。」
「いえ、いいのよ。ナイジェル君、カイトと仲良くしてね。」
「はい・・」
はじめはぎこちなかったナイジェルと海斗だったが、次第に打ち解けていった。
「ねぇ、ナイジェルはどうして、右目に眼帯をしているの?」
「俺には、火傷痕があるんだ。」
ナイジェルはそう言うと、右目を覆っていた眼帯を外した。
そこには、醜い火傷痕が広がっていた。
「痛そうね・・」
「ううん、痛くないんだ。ただ、この火傷痕を見て皆が怖がるから、眼帯をつけているんだ。君は、怖がらないね?」
「わたしは、あなたの瞳の色が好きよ。」
海斗はそう言うと、ナイジェルに微笑んだ。
 その瞬間、ナイジェルの胸に天使が放った恋の矢が刺さった。
「どうした、ナイジェル?顔が赤いぞ?」
「いいえ、何でもありません・・」
ナイジェルはウォルシンガム判事と共に屋敷に帰宅すると、自室に入り溜息を吐いた。
「あら、まだ起きていらっしゃるのですか?」
「ええ、少し眠れなくて・・」
海斗はそう言うと、ハンカチに何かを刺繍していた。
「それは?」
「ナイジェルにあげるの。」
「きっと喜んで下さいますわ。」
「そうね!」
翌日、海斗はナイジェルにハンカチを贈った。
「ありがとう、大切にする。」
「喜んでくれて良かった!」
道化祭りで出会って以来、海斗とナイジェルは良く二人だけで遊ぶようになっていた。
「ねぇナイジェル、将来・・大人になったらわたしと結婚してくれる?」
「あぁ、勿論さ、約束だ!」
しかし、幸せは長く続かなかった。
海斗の養父母が流行病で亡くなり、彼女は孤児院に引き取られる事になった。
「カイト、これ・・」
別れ際、ナイジェルが海斗に贈った物は、中央にペリドットが嵌め込まれたロザリオだった。
「ありがとう、ナイジェル!」
海斗は、孤児院で生活を始めたが、そこは暴力に満ちた場所だった。
海斗達は早朝から深夜までこき使われ、粗末な食事で命を繋いでいた。
(お父様、お母様・・)
夜寝る前、海斗は亡き養父母の事を想い、泣いた。
ナイジェルも、養父の虐待に耐える日々を送っていた。
「可哀想に、鞭で打たれたんだね。」
「大丈夫だ・・」
白いハトのジャニスは、ナイジェルを慰めるかのように、彼の肩にそっと乗った。
「どうして、あの人は俺を殴るんだろう?」
「世の中には、人や動物を虐めて喜ぶ奴が居るのさ。」
「そうか・・」
ナイジェルは、粗末な寝台に横になると、目を閉じて眠った。
(カイトに会いたい・・)
目を閉じて浮かぶのは、海斗の笑顔だった。
また彼女に会いたい。
海斗といつか再会する日を夢見ながら、ナイジェルは孤独な日々を送っていた。
そして海斗もまた、ナイジェルと再会する日を夢見ていた。
それから、二人が出会って十年の歳月が経った。
「ナイジェル、もたもたするな!」
「はい・・」
雪が舞う中、道化の祭りはいつものように、賑やかに行われた。
―あれは・・
―ウォルシンガム判事の・・
―綺麗な方ね・・
―右目の眼帯がセクシーだわ・・
女達から熱い視線を送られている事など気づかずに、ナイジェルは祭りを眺めていた。
そんな中、一人の少女が自分の方へと向かって歩いて来る事に気づいた。

彼女は、炎のような美しい赤毛をしていた。

「カイト・・カイトなのか?」
「ナイジェル、ナイジェルなの!?」
突然の再会に、ナイジェルと海斗は驚き、その後共に喜んだ。
「ナイジェル、元気そうで良かった!」
「カイトも、元気そうで良かった。」
海斗はそう言うと、ナイジェルが抱いているハトに気づいた。
「その子は?」
「ジャニス、俺の唯一の友だ。こいつにも、祭りを見せてやりたくてな。」
「そう・・」
「ナイジェル、何をしている、早く来い!」
「カイト、また後で会おう。」
「ええ。」
道化の祭りの後、ナイジェルはノートルダムの鐘楼でジャニスを看取った。
友を喪い、悲しみに打ちひしがれているナイジェルの元に、一匹のネズミがやって来た。
「お前は・・」
そのネズミの白黒模様を見たナイジェルは、そのネズミが数日前ナイジェルが水溜まりから助けたネズミだという事に気づいた。
「済まない、お前にやれる物はこれしかなくてな。」
ナイジェルはそう言うと、ひとかけらのパンを差し出した。
ネズミは嬉しそうに鳴き、パンを両手に持って、壁に開いた穴の中へと消えていった。
「カイト、どうしたの?」
「いいえ、何でもありません。」
「そう・・」
海斗はバルコニーから自室へと戻ると、寝台に横たわった。
彼女が今居るのは、二番目の養父母の家だった。
最初に海斗を育ててくれた養父母は海斗に莫大な遺産を遺してくれたが、その遺産は養父母の親族に奪われてしまった。
孤児院で辛い生活を送った後、二番目の養父母が海斗を生き地獄から救ってくれた。
「今日はお祭りだったわね。」
「ええ。そこで、昔の友達に会いました。」
「まぁ、それは良かったわね。」
二番目の養母・クララは、そう言って海斗の髪を撫でた。
「明日の舞踏会の為に、早く寝なさい。」
「お休みなさい、お義母様。」
(ナイジェルと、また会えるかな?)
海斗はそんな事を思いながら、眠りに就いた。
ウォルシンガム判事は、朝を告げる鐘の音で目を覚ました。
「おはようございます、旦那様。」
「朝食の後、出掛ける。馬車の支度を。」
「はい。」
同じ頃、ナイジェルは鐘楼から外へと抜け出し、誰も居ないパリの街を歩いた。
いつも鐘楼の上から見下ろしていた街は、雑然としていて、狭い世界に生きていたナイジェルの目には鮮やかに映った。
暫く街を歩いて、ノートルダム大聖堂へとナイジェルが戻ろうとした時、一匹のネズミが彼の前を横切った。
それは、あの時の白黒模様のネズミだった。
「よぉ、また会ったな。」
ナイジェルはそう言ってネズミを見ると、ネズミは嬉しそうに鳴いた。
「どうした?食い物が欲しいのか?残念だが・・」
「ナイジェル。」
背後から声がしてナイジェルが振り向くと、そこには海斗の姿があった。
「カイト・・」
「この子は、あなたのお友達なの?」
「あぁ。」
ナイジェルはネズミを肩に乗せると、ネズミは嬉しそうに鳴いた。
「こんにちは、ネズミさん。パンをどうぞ。」
海斗はネズミにパンのカケラを渡すと、ネズミはそれを受け取ってナイジェルの肩の上で食べ始めた。
「また、ここで会えるか?」
「ええ。」
海斗と噴水の前で別れたナイジェルは、それから毎朝噴水の前で会うようになった。
二人は、十年間―自分達が離れ離れになっていた間の事を話した。
「じゃぁね、ナイジェル。」
「あぁ。」
海斗はナイジェルと別れ、自宅へと向かっていると、突然彼女の前に数人の男達がやって来た。
「お嬢ちゃん、俺達と遊ばない?」
「通して下さい。」
「へへ、恥ずかしがるなよぉ~!」
男がそう言って酒臭い息を吐きかけた後、海斗の腰に手を回そうとした。
だがその前に、一本の矢が男の足元に刺さった。
「おや、失礼。大きな猪が居たから、今日の夕飯にしようと思ったんだが・・」
「てめぇ、誰が猪だ!」
「そのお嬢さんから手を離しな。」
「ひぃっ!」
酒臭い男は突然現れた謎の男に剣を突きつけられ、情けない悲鳴を上げて逃げていった。
「大丈夫か?」
「は、はい・・」
美しい金髪をなびかせた男は、蒼い瞳で海斗を見つめた。
「パリには最近、変な奴が流れて来る。若い娘の一人歩きはそういった輩に狙われるから、気を付けた方が良い。」
「あの、これを・・」
「礼は要らん、またな。」
真紅のマントの裾を翻しながら、謎の男は海斗の前から去っていった。
(素敵な人だったな・・)
「カイト、紹介するわね。こちらはジェフリー=ロックフォード様、お父様のご友人よ。」
「初めまして、カイトです。」
「美しい赤毛ですね。」
「ありがとう・・」
滅多に褒められたことが無い赤毛をジェフリーから褒められ、海斗はそう言った後、恥ずかしくて俯いた。
「ねぇあなた、あの二人、すぐに仲良くなったわね。
「あぁ。それよりもクララ、“例の件”はどうなっている?」
「それは、わかりませんわ。」
「そうか・・」
クララの夫・ユリウスは、そう言うと溜息を吐いた。
海斗は、自室で夜眠る前の祈りを捧げていた。
(ナイジェル、どうしているのかしら?)
月光を受け、ロザリオの中央に嵌め込まれたペリドットが美しく輝いた。
「クソッ、やられた・・」
怒りに震えながら、ビセンテ=デ=サンティリャーナは愛馬で賊を追っていた。
その途中、ビセンテは一人の少女とぶつかりそうになった。
「すまない、怪我は無かったか?」
「はい・・」
ビセンテは、少女と目が合った瞬間、彼女に一目惚れした。

(彼女は、わたしの守護天使なのかもしれない・・)
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寒い時は鍋。

2025年01月27日 | 日記

母が買ってきた「グランメゾン·パリ」の鍋スープの素。

野菜たっぷりで美味しかったです。


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ストロープワッフル

2025年01月27日 | 日記

業務スーパーで買ったストロープワッフル。
コーヒーの上で温めて食べたり、浸して食べたり、そのまま食べたりしても美味しい。

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決断。

2025年01月27日 | 日記
と言っても、大したことではないのですが。
ベルばら劇場版、観に行きたいけどインフルエンザやノロウイルスが流行っているので諦めます。

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ベルばらで平安パラレル。

2025年01月25日 | 日記
X(twitter)でも呟いていましたが、他作品とのクロスオーバーでベルばらの平安パラレルを書きたいなあと思っています。
オスカル様は、女でありながら男装の麗人として宮中で活躍されている「光る君」。
アンドレは、そんなオスカル様に影のように寄り添う。
18世紀フランスと日本の平安時代、全然違いますが、オスカル様は平安時代でも幕末でも現代でも格好いいと思います。

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宵闇に咲く華 第一話

2025年01月25日 | 薄桜鬼×F&B オメガバースクロスオーバーパラレル二次創作小説「宵闇に咲く華」
「薄桜鬼」「FLESH&BLOOD」の二次小説です。

作者様・出版社様・制作会社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが苦手な方はご注意ください。

海斗が両性具有です、苦手な方はご注意ください。


1858年、会津。

「ここでよろしいでしょうか、カイト様?」
「うん・・」
この日、海斗は付き人であるナイジェルと共に花見に来ていた。
冷たく厳しかった冬が終わり、美しく咲き誇る桜を見ながら海斗は春を感じていた。
「法事に出席されなくて良かったのですか?」
「うん。あんな醜悪な所に居たら、俺まで醜くなってしまう。」
「カイト様・・」
ナイジェルは、少し寂しそうな主の顔を見ながら、彼女が置かれている境遇に胸を痛めていた。
海斗は、東郷家の側室である実母が病死し、正室の元に引き取られたが、その正室は海斗を蔑ろにした。
海斗が赤毛で男女両方の性を持つ下級の丙種、即ちオメガであるからだった。
この世には、甲・乙・丙という第二性が存在する。
優秀であり、支配階級に多く属する甲種―アルファ。
人口の大半を占める乙種―ベータ。
そして、繁殖目的の為だけに存在する丙種―オメガ。
アルファとオメガとの間には、「運命の番」というものが存在する。
家族以上の強い絆で結ばれた番同士は、永遠に結ばれるという。
(運命の番、かぁ・・俺には、そんなの関係ないけれど。)
海斗がそんな事を考えていると、向こうから姦しい娘達の笑い声が聞こえて来た。
「ナイジェル、もう帰ろうか。」
「はい。」
ナイジェルと共に弁当が入った重箱を片づけていると、数人の娘達が二人の前に現れた。
「あら、誰かと思えば行き遅れの海斗様ではありませんか?」
娘達の中で一番美しく、背が高い娘が海斗の前に現れた。
「誰かと思ったら、この前わたくしに薙刀で一本も取れなかった美沙様ですね。一人だとわたしに敵わないから、徒党を組んでわたしに嫌がらせをしに来たのですか?随分と暇なのですね。」
「なっ・・」
「では、これで失礼します。」
怒りで顔を紅潮させている美沙に背を向け、海斗はナイジェルと共にその場を後にした。
家臣の娘同士でありながらも、美沙と海斗は会えば喧嘩ばかりしていた。
海斗の父・洋介が自分の父親の上役ということもあり、美沙は海斗の出自について人目のない所で良く嘲った。
しかし、海斗はそんな美沙の言葉など気にしなかった。
天地が逆さになろうとも、己の出自を変えられないのはわかっているし、そんな事で嘆くのは無駄だとわかっているからだ。
「只今戻りました。」
「海斗様、お帰りなさいませ。皆様、もう帰られましたよ。」
「ありがとう。」
海斗は女中の清に礼を言うと、足早に自分の部屋に入った。
「海斗は何処なの!?」
「奥方様、海斗様ならお部屋にいらっしゃいますよ。」
廊下で義母と女中の声が聞こえ、海斗は咄嗟に押入れの中に隠れようとしたが、その前に彼女達に見つかってしまった。
「海斗、お花見は楽しかった?」
「義母上・・」
「お前に、話があります。」
「わかりました。」
海斗が友恵の部屋へと向かうと、そこには幼馴染の森崎和哉の姿があった。
「和哉、どうしてここに?」
「海斗、あなたはまだ、番を見つけてはいないわよね?」
「はい・・」
「それなら丁度良いわ。海斗、あなたの縁談が決まりましたよ。お相手は、森崎家の親戚筋の方よ。」
「小母様、待ってください、海斗は・・」
「和哉君、状況が変わったのよ。ごめんなさいね。」
そう言った海斗の義母・友恵の目は笑っていなかった。
「海斗、僕は何があっても、君の味方だからね。」
「ありがとう、和哉。」
和哉を屋敷の裏口で見送った海斗が溜息を吐いていると、そこへナイジェルがやって来た。
「海斗様・・」
「ナイジェル、心配してくれてありがとう。」
「海斗様、お箏のお稽古のお時間ですよ。」
「わかった。」
側室の子でありながらも、友恵は海斗に武家の娘に相応しい教養を身に着けさせた。
はじめは友恵に反抗していた海斗だったが、ナイジェルのある一言で変わった。
「知識と教養は、一生の宝となりますよ。」
ナイジェルは、海斗が物心ついた頃から傍に居てくれた。
幼い頃病弱だった海斗に、ナイジェルは良くお粥を作ってくれたし、今でも辛い時ナイジェルは何も言わずに傍に居てくれた。
「ありがとうございました。」
「海斗様、何か悩みがあったら相談して下さいね。」
「先生・・」
「では、わたしはこれで。」
海斗の箏の師匠・山本は、そう言うと彼女の手を優しく握った。
―ねぇ、聞いた?海斗様が・・
―そうそう、まさかあの方の元に嫁がれるなんて・・
―噂によると、あの方は無惨絵を描くのが趣味だそうよ。
―厄介者を押し付けられたという事ね。
女中達の話し声が聞こえ、海斗は読んでいた本から顔を上げた。
「お姉様、失礼するわね。」
「洋・・」
海斗の妹で友恵の娘・洋は、袖口で口元を覆うと、こう言った。
「陰気臭いわねぇ、この部屋は。」
「何の用?」
「別に。ただお礼を言おうと思って。わたしの代わりに、あの厄介者を引き受けて下さってありがとう。」
「洋、それはどういう事?」
「母様なら何も聞かされていないの?まぁ、当然よね、あの厄介者が番欲しさに娘達を手籠めにしようとしたから、姉様に白羽の矢が立ったのよ。」
洋は意地の悪い笑みを海斗に浮かべると、次の言葉を継いだ。
「姉様が丙種でよかった。お陰でわたしは、和哉様の元へと嫁ぐ事が出来るわ。」
洋は言いたい事だけ言うと、海斗の部屋から出て行った。
(所詮、俺はこの家の厄介者でしかないんだ。)
オメガとして産まれた我が身を、海斗はこの時程呪った事は無かった。
同じ頃、会津から遠くにある江戸の道場では、一人の男が木刀を振るっていた。
「それまで!」
「ふぅ・・」
面を外し、汗で乱れた金髪を軽く払った男の姿を垣間見た女達が、黄色い悲鳴を上げた。
「ジェフリー、また腕を上げたな。」
「どうも。」
美しい金髪をなびかせ、蒼い瞳を煌めかせた男の名は、ジェフリー=ロックフォード。
この道場に通う旗本の嫡男で、アルファである彼を狙って、連日道場の外には女達が彼の姿を見たいが為に集まっていた。
「相変わらず人気者だな。」
「それ程でもないさ。」
ジェフリーはそう言いながら、道場を後にした。
「あの・・」
ジェフリーが町を歩いていると、一人の町娘が海斗に声を掛けて来た。
「ありがとうお嬢さん、気持ちだけを受け取っておくよ。」

ジェフリーに微笑まれた町娘は、その場で気絶しそうになった。
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