「薄桜鬼」の二次創作小説です。
制作会社様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方はご遠慮ください。
「お宅の息子さんの所為で、うちの子は今度の大会に出られなくなったのよ!」
「それはうちの子も同じですが、何か?」
歳三がそう言って加害生徒の親を睨むと、彼女は一瞬怯んだが、彼を睨みつけながらこう言い放った。
「まともじゃない子は、親もまともじゃないのね!」
「はぁ!?じゃぁ何か、一方的に一人の人間を袋叩きにしたあんたの子の方がまともだってのか!」
「何ですって!?」
「言っておくが、あんたらのガキがしたのは犯罪だ!未成年だからって何でも許されると思うなよ!」
「二人共、落ち着いて下さい!」
「うるせぇ!先生、もしかして俺達をここへ呼んだのは、示談にしろとかいうんじゃねぇだろうな!?」
「そ、それは・・」
「もう警察に被害届は出したので、俺達はこの件を“なぁなぁ”で済ませるなんて思わないで下さいね!」
「は、はい・・」
「ちょっと先生、何納得しているのよ!?」
「うちの子の将来がかかっているのよ!」
「てめぇら、自分らの子が悪い事をしたのに、“ごめんなさい”も言えねぇのか!」
「ひぃ・・」
「トシ、もうその辺にしておけ。」
「帰るぞ、勝っちゃん!」
「待てって!」
呆然としている佐原達を教室に残し、歳三はその場から去っていった。
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
「学校に呼び出されたのは、僕の事件の事でしょう?」
「あぁ。」
「それよりも、さっきこんなFAXが来てたよ。」
「サンキュ。」
総司からFAXを受け取った歳三は、それを見て絶句した。
“店を閉めろ。さもなければ店を焼く。”
「何これ・・」
「総司、警察に連絡しろ。」
「わかった。」
警察が通報を受けて土方家に来た時、総司は少し不安そうな様子でレティシアの頭を撫でていた。
「総司、部屋へ行ってろ。」
「わかった。」
「このFAXの送り主について心当たりは?」
「いいえ。コロナも終息したっていうのに、気味が悪い・・」
「何かわかったら、こちらから連絡致しますので。」
「お願い致します。」
謎のFAXが送られて来てから、店の前に大量の吸い殻が捨てられるようになった。
「ったく、一体誰が・・」
「ねぇ、この吸い殻全部口紅ついているよ?」
「じゃぁ犯人は女か?」
「それは警察に調べて貰おうよ。」
吸い殻を店の前に捨てた犯人は、総司の同級生の母親だった。
彼女は今回の事件で自分の子どもが停学処分になった事を知り、逆恨みでやってしまったと、警察で自白した。
「何でうちの子が・・」
「まだわからないのか、お宅のお子さんは傷害事件を起こしたんだ。下手すりゃ被害者は死んでいたのかもしれないんだぞ!」
「うわぁぁ~!」
「良かったね、犯人捕まって。」
「そうだな。それよりも総司、怪我の具合はどうだ?」
「少し良くなったよ。でも、ギブスの中が蒸れて臭いのが嫌かな。あと一週間で取れるからいいけど。」
「そうか。」
「ねぇ、前はホームレスの炊き出しをしていたけれど、どうしてやめちゃったの?」
「実は、変なメールが届いてな。“これ以上炊き出しをするつもりなら、店に火を放つ”ってやつだ。」
「犯人は、まだ見つからないの?」
「あぁ。」
「変な人も居るんだね。」
「さてと、今日は弁当を作る日だから、手伝ってくれ。」
「わかった。」
一週間後、総司の左腕のギブスが取れた。
「あ~、辛かった。」
「良かったなぁ、とれて。」
「うん。これで、あの臭さとはさよならだ。」
「ただいま~。」
歳三と総司がそんな事を話していると、丁度町内会の会合を終えた勇が帰宅した。
「お帰り。」
「いやぁ~、久々にみんなに会って、色々と話が弾んでつい長居してしまったよ。」
「コロナの所為で中々会えなかったから、仕方ねぇよ。」
「明日のランチの仕込み、終わったよ~」
「総司、ありがとう。」
「どういたしまして。」
「コロナも終息したし、また無料弁当配布サービス、再開するか。」
「公園でもするの。」
「いや、知人の厚意で、都内のカトリック教会で出来る事になったんだ。」
「そうか。あの脅迫メール、まだ誰が送ったものなのかわからねぇのか?」
「あぁ。」
勇はそう言うと、歳三が淹れてくれたコーヒーを飲んだ。
「はい、お父さん。」
「お、ドーナツか。」
「この前、新しくオープンしたドーナツ屋さんのクーポン貰ったから、買って来たんだ。」
「そうか、ありがとう!」
「おい勝っちゃん、甘い物ばかり食っていると太るぜ?」
「すまん・・」
「この前病院の健康診断で“太り過ぎ”って言われたんだろ?」
「う・・」
「明日から、俺とウォーキングしよう!」
「わかった・・」
「僕も付き合うよ、リハビリがてらに身体を動かしたいし。」
「ありがとう、総司!」
こうして勇は、歳三と総司と共に毎朝ウォーキングする事になった。
「はぁ、はぁ・・」
「この位でへばるなんて、情けねぇな。」
「父さん、そんなに疲れます?」
「俺は、お前達と違って、運動不足だから・・」
勇はそう言うと、首に巻いているタオルで額の汗を拭った。
「それにしても、朝早くに身体を動かすのは気持ちがいいなぁ。」
「あぁ、そうだな。」
「さ、少し休憩して歩きましょう。」
「わかった。」
公園でひと休みした後、勇は歳三達と公園内を一周した。
「なぁ、何処かで声が聞こえないか?」
「気のせいだろう?」
「いや、あっちの方から・・」
勇はそう言った後、突然遊歩道の方へと走り出した。
「待てって!」
「どうしたんですか、父さん!?」
歳三と総司が慌てて後を追うと、彼は段ボール箱の前に座り込んでいた。
その中には、“誰か飼って下さい”という貼り紙と共にゴールデンレトリバーの子犬と、ファンシーラットが恐怖で震えていた。
「酷いな・・」
「あぁ。」
「とにかく、この子達を動物病院へ連れて行こう。」
「わかった。」
犬とファンシーラットの飼い主は現れず、歳三達は子犬を“きなこ”、ファンシーラットを“もちお”と名付けた。
「ハムスターは飼った事はあるが、ファンシーラットははじめてだなぁ。」
「それに、ハムスターと違ってケージも大きいやつが必要らしい。」
勇は帰宅途中で寄った書店で購入したファンシーラットの飼育本に目を通しながらそう言った後、溜息を吐いた。
「まぁ、今日は色々とペットショップに行ったりして忙しかったから、疲れただろう?後は俺と総司がケージの組み立てをやっておくから、あんたは休んでくれ。」
「わかった、お休み。」
勇が寝室に消えた後、歳三と総司は“きなこ”と“もちお”のケージを組み立てた。
「お~いもちお、きなこ、お前達も休め。」
歳三の言葉を理解したかのように、二匹はそれぞれのケージの中に入って休んだ。
「俺達も寝るか。」
「うん。」
その日の夜、歳三達が寝室で休んでいると、突然リビングの方から“きなこ”の鳴き声が聞こえた。
「どうした?」
「子犬って、夜泣きするんですよね。」
総司はそう言って“きなこ”を抱き上げると、自室へと引き上げた。
「暫くこの子、僕の部屋で寝かせます。」
「わかった。」
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