12月1日(金) 晴時々曇
神の住む島
神の住む島
ひょっこり出て来た私の昔に書いた妄想の物語の序章です。
まだ氷河期が過ぎて間もないずっと昔のことです。
その小さな島はユーラシア大陸の東の果てにありました。うっそうとした緑と赤茶けた岩肌が霧に覆われ、突き出た山々の山頂からは噴煙が立ち上っていました。四方を海に囲まれ河口は沼地と化し、陸地から突き出た岩肌が海に迫り、およそ平地と言うものが見当たりませんでした。この島は一年を通して大雨にさらされるのが常でした。冬には冷たい北風が大雪をもたらし、春になると雪解けの水が川を氾濫させ、やっと暖かくなってきたかと思うと南からの暖かい風が梅雨をもたらし、雨が何日も続いて土砂崩れや河川の氾濫を招いていました。そして長い梅雨が終わって夏の太陽が輝き出す頃になると何の前触れもなく今では台風と呼ばれる嵐がやってきて海辺では高波が押し寄せ、山では樹木の倒壊、がけ崩れ、河川の氾濫を引き起こしていました。そのため秋の実りも大半は消えてなくなるのが恒例となっていました。
更に一年に数回起こる火山の噴火と大きな地震が起こり、地盤沈下や火砕流が大地の地形が常に変わるような島でした。
こうして一年を通して休まる暇のないほど自然の驚異にさらされている島だったのです。それでも山の草木は倒されても流されても豊富な水のおかげでたくましく成長していました。この島の自慢と言えばミネラルをいっぱい含んだ豊富な水とその恩恵を受けた数々の植物でした。
元々大陸続きだったのだが数百年前の火山活動による噴火が時期を同じくして数か所で発生し真っ赤な火柱と溶岩流が大地を覆い、その地響きで大地の至る所に亀裂が走ると共に地盤沈下が起こった。そして沈下した低地をめがけて海水が勢いよく流れ込んで4つの大きな島が連なった火の島が誕生したのです。そして噴火も納まって数年後には南や北からの渡り鳥の休息地となっていました。渡り鳥たちがもたらした虫の卵や草花の種がこの島独特の自然と融合して独自の進化した草木をはぐくんでいったのです。
こうして今のような緑豊かな 島々が深い霧に覆われ見え隠れする荒々しい岩肌が人を寄せ付けない様子を大陸の人たちは神の島と呼んでいたのです。
この物語はこの島にわずかに残された人と南の海から漂着した人がやがて倭人と言う人類となっていく話です。