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マーケティング研究 他社事例 527 「富士フィルムの思惑」 ~ゼロックス買収断念の裏側~

2020-04-01 09:35:53 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 527 「富士フィルムの思惑」 ~ゼロックス買収断念の裏側~


富士フィルムは2019年11月5日、かねてから進めていましたが難航していたゼロックス買収を断念すると発表しました。

さらにゼロックスに23億ドル(約2530億円)を支払い、同社が保有する富士ゼロックスを富士フィルムの100%子会社にすることも明かしたのです。

「向こうから言ってきた話を受け止めたが、それがダメというなら仕方がない」と富士フィルムホールディングスの古森重隆会長兼CEOは言います。

そもそも。2018年1月に公表したゼロックス買収話も、資金繰りに窮したゼロックスの要望を富士フィルムが受け入れる形で始まったのでした。

しかし、富士フィルムが資金を使わずにゼロックスと経営統合する特殊なスキームに、ゼロックスの一部株主が反発し、一方的に買収契約は破棄されたのでした。

手詰まりの状態が続きましたが、ゼロックスとの議論の過程で富士ゼロックス株の売却案が浮上し、ゼロックス問題は決着しました。

ゼロックスはこれを受けて即座に動きました。

2019年11月6日には、パソコン・プリンター大手のHPに買収提案したことが明らかになったのです。

キャノンや富士ゼロックス、リコー、コニカミノルタで分け合っていた事務機市場に、大きな動きが起きようとしていました。

富士ゼロックスがゼロックスに製品を提供する契約も2021年3月までとなり、ゼロックスとHPが連合を組みようになれば、キャノンなど富士ゼロックス以外から製品や供給を受ける可能性はあり得ます。

ゼロックスとの関係を見直した富士フィルムが不利な情勢に追い込まれたようにも見えますが、案外、その方がよかったのかもしれません。

そもそも、事務機市場はペーパーレス化の波もあって、大きな成長は見込めません。

価格競争が激しくなる事務機ビジネスが、これまで通り安定した利益を稼げるとは限りません。

富士フィルムは2017年に富士ゼロックスの海外販売会社で不適切会計が発覚すると、同社の経営への関与を強めて来ました。

今や同社の9人の取締役のうち、6人が富士フィルム出身者です。

管理強化もあって富士フィルムのドキュメントソリューション部門の営業利益は2019年3月期に前期比11.5倍の964億円まで膨らみました。

今となっては、ゼロックスと一体となって事務機のシェア拡大を狙うより、利益重視で事業を続け、稼いだ利益を成長領域のヘルスケアに注ぎ込む方がずっと理にかなっています。

問題はそのヘルスケア事業が思惑通りに収益の柱に育つかどうかです。

ゼロックスを見切って正解だったかどうかは今後数年の取り組みにかかっていると言えますね。


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