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マーケティング研究 他社事例 538 「荷室の6割は空気!?」 ~売らないで稼ぐ~

2020-04-16 11:18:34 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 538 「荷室の6割は空気!?」 ~売らないで稼ぐ~


日野自動車自ら物流事業に乗り出しました。

運営するのは同社の物流子会社ネクスト・ロジスティクス・ジャパン(NLJ)です。

アサヒグループホールディングスと江崎グリコ、物流会社の千代田運輸とユーネットランス、トランコムと共同で昨年12月から東名阪を結ぶ幹線輸送サービスを始めたのです。

荷主から依頼があると、荷室のトラックをマッチングし、荷室の積載効率を最大限高める組み合わせをはじき出します。

「菓子だけでは荷室のスペースをとってしまうが、重量のある飲料と組み合わせることで効率よく運べる」(江崎グリコ)

ドライバー1人で2台分の荷物を運べる日野製の連結トラックが神奈川県と兵庫県の物流拠点間を往復し、トラックはNLJが所有し、まず2台体制でスタートしました。

人手不足が深刻な物流業界では、効率向上が喫緊の課題となっています。

インターネット通販の「翌日配送」など迅速な配送を求められていることもあり、現在の積載率は4割程度です。

荷室の6割は空気を運んでいることになります。

こうした問題を解決しようと、2019年4月には味の素やハウス食品グループ、カゴメなど大手食品メーカー5社が共同物流を手掛ける新会社F-LINEを設立し、ビール大手4社や製紙4社も共同配送で提携しています。

一方、日野の物流サービスでは業界の垣根を越えた荷物のマッチングを担います。

既に自動車部品メーカーなどからも問い合わせが来ており、大きさや重さが異なる荷物の組み合わせを増やし、荷室内の状況をカメラで把握できるようにするなどで「積載率を6~7割に向上させる」(日野自動車)と言います。

新サービスで将来的にカギを握るのが、次世代技術の活用です。

NLJが導入する連結トラックではハンドル操作の補助など運転支援技術でドライバーの負担を軽減しています。

さらに新東名高速道路では隊列走行の実証実験が進められており、日野も参加しています。

市街地よりも自動車専用道路で先行する可能性が高い隊列走行や自動運転技術の活用が視野に入ります。

商用車メーカーの日野が自ら物流サービスに乗り出す背景にあるのが、物流業界の危機的な状況です。

NLJの梅村社長は「配送業者からドライバー不足などの悩みをよく聞く。現状のままでは2030年代に日本の物流は破綻する」と危機感をあらわにします。

1990年に約4万社でした配送業者はピークの2007年には6万3000社へと膨らみ、荷主から仕事を得ようと荷物の積み下ろしや検品、倉庫内の運搬など本来は配送料金に含まれない仕事も請け負うなど適度な競争に陥っているのです。

全日本トラック協会によれば、トラックでの輸送量は年間約43億トンと国内の貨物輸送量の91.5%を占めています。

一部は鉄道や船を使ったモーダルシフトが進んでいますが、トラックが生命線であることは間違いありません。

自ら効率的な物流サービスを提供すれば、既存顧客の物流会社の仕事を奪い、トラックの販売台数が減りかねません。

しかしNLJは代わりに荷主から配送料とプラットフォーム利用料などを得ることが出来ます。

トラックの販売・保守に加え、物流サービスを早期に新たな収益源に育てる狙いを持っています。

次世代移動サービス「MaaS(マース)」では、日野を傘下に持つトヨタ自動車やソフトバンクなどが出資するモネ・テクノロジーズが異業種を巻き込み多様な実証実験を進めていますが、本格的な商用化はこれからです。

日野の物流サービスは国内では先行事例となっています。

こうした取り組みは海外勢も積極的です。

商用車世界最大手のドイツのダイムラーは、トラックの走行距離に応じた従量課金制のリースサービスを今年アメリカで始めます。

本体から分社したMaaSと金融サービスを専門とする新会社が担い手となります。

物流サービスの進化の過程では、データ活用に長けたITプラットフォームに主導権が移り、商用車メーカーがその「下請け化」するとの予測も多くあります。

そうならないために、自ら「車を売らない」ビジネスを手掛ける動きはさらに活発になるでしょうね。


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成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣 

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