クリスマスや年末年始が近づいてきました。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出は控えめに、家族同士でパーティーを楽しむ人も多いかもしれません。
12/4/2020
ころで、家庭でイベントなどをすると、SNSでその様子を友人知人に伝えようと子どもが楽しんでいる様子を投稿するケースがありますが、それらの中には、個人が特定されて犯罪に巻き込まれたり、画像を不正に使用されたりすることを防ぐ目的で、子どもの顔にスタンプを張って顔を隠しているものもあります。
こうしたスタンプの加工は何らかの方法で解除できるようにも思えますが、SNSの投稿で、子どもの顔をスタンプで隠せば本当に安全といえるのでしょうか。ITジャーナリストの久原健司さんに聞きました。
安全性は“現時点では”高まる
Q.「SNSに顔出しで子どもをアップすると、個人が特定されて犯罪に巻き込まれたり、不正に画像を使用されたりする可能性があり危険だ」といわれます。具体的に、どのような危険性があるのでしょうか。
久原さん「SNSの投稿で、顔出しで子どもの写真をアップした場合、例えば、被写体である子どもの『瞳』に映ったわずかな情報からでも撮影場所が判明して、子どもの居住地などの個人情報が特定され、犯罪に巻き込まれることがあります。これは子どもに限ったことではありません。
また、本物と見分けがつかないような、高度な合成技術を用いて作られる偽動画(ディープフェイク)がネット上で急増しており、写真が加工されて、子どもの顔がアダルトサイト内で利用される恐れもあります」
Q.子どもの顔にスタンプを張って加工し、顔を隠してSNSに投稿する保護者もいます。スタンプで隠せば安全なのでしょうか。
久原さん「『スタンプで顔を隠せば安全』とは言い切れません。しかし、現時点では、そのまま顔出しするより、安全性は担保される可能性は高まります」
Q.なぜ、安全とは言い切れないのですか。
久原さん「今のところ、子どもの顔に張られたスタンプを容易に元に戻す技術は世の中に広まっていないため、『現時点では安全性が高まる』とはいえます。 しかし、画像加工アプリで有名な『SNOW(スノー)』では、加工された写真を、加工前の状態を予測して元通りに近い画像に戻す技術が開発されています。また、ITの技術は日々進化しています。
そのため、いずれ技術が進むと、顔に張ったスタンプも取ることができるようになる可能性があります。そして、将来的には、ITスキルがそれほど高くない人でも解除が可能になる可能性が十分にあります」
Q.投稿された子どもの顔以外の部分からも、個人を特定することは可能なのでしょうか。
久原さん「特定することは可能です。例えば、制服を着たまま撮影してSNSに投稿すると、制服のデザインや校章などから通っている学校が分かります。また、家の近くの風景を撮影したときに地域のランドマーク的建物が写り込んだり、家の近くのカフェで撮影したりした場合、居住地がある程度絞り込まれてしまう可能性があります。 また、家のベランダから外の景色を撮影してSNSに投稿すると、周囲の風景から、家の位置そのものが特定されることも考えられます」
Q.スタンプで子どもの顔を隠している親は本心では、顔出しで写真を投稿したいと思っているかもしれません。顔出しで掲載したい場合、どのようにすれば危険を回避することができますか。
久原さん「不特定多数が見ることができるサービスに写真を投稿する場合、当たり前ですが、顔も見たことがない他人もその写真を見ることができます。写真を投稿することで頭がいっぱいになるかもしれませんが、その写真が再利用されたり、犯罪に使われてしまったりする可能性があることをまずは十分に理解してください。
顔出しで掲載したい場合で、個人が特定されては困るとか、犯罪に巻き込まれるのは困ると思っている人は少しでもセキュリティーを高める必要があります。例えば、フェイスブックでは、投稿の共有範囲を設定できる機能があり、友達だけにしか見せない方法があります。
インスタグラムでも、写真を限定的に送りたい友達を選択し、LINEで画像を送るときの感覚で範囲限定公開を行うことが可能です。こうした機能を活用することで、通常投稿を行うより、個人が特定されたり、犯罪に巻き込まれたりする可能性は低くなります。もし、危険を回避したいという気持ちが特に強ければ、写真の投稿はしないことをおすすめします」
オトナンサー編集部