藤井聡太王将が初防衛 羽生善治九段の挑戦を4勝2敗で退け“世紀の一戦”決着 タイトル獲得数は12期に/将棋・王将戦七番勝負

3/12(日) 15:56配信
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藤井聡太王将
将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が、3月11・12日の両日に行われた囲碁将棋チャンネル 第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第6局で挑戦者の羽生善治九段(52)に88手で勝利し、王将位の初防衛を決めた。“世紀の一戦”と将棋界内外から大注目を集めたシリーズ成績は4勝2敗で決着。藤井王将はタイトル戦敗退なしで通算獲得数を12期に伸ばし、永世名人資格保持者の森内俊之九段(52)に並ぶ歴代8位へとまたひとつ階段を上った。
【映像】藤井王将が初防衛を飾った王将戦七番勝負第6局
藤井王将が、将棋界のスーパースター同士が激突した“世紀の一戦”を制し、王将位初防衛に成功した。本シリーズは前人未踏のタイトル通算99期を保持するレジェンド羽生九段を挑戦者に迎え、32歳差対決が実現。2023年1月の開幕から本局までの約2カ月で全国を遠征、大激戦を繰り広げた。
「令和の天才VS平成の天才の激突」と将棋界内外から大注目を集めた七番勝負は、開幕局から一手損角換わり、相掛かり、雁木、角換わり、横歩取りと様々な戦型が志向され、互いに先手番で白星を奪い合うシーソーゲームに。前局では羽生九段が後手番でのブレイクを狙い若き王者を追い詰めたが、棋界トップの終盤力を誇る藤井王将が圧巻の際回しで勝利。初防衛に王手をかけた。
決着か、フルセットか。運命の第6局は羽生九段の先手で「角換わり相早繰り銀」に。にらみ合いから、藤井王将が局面を落ち着かせて力を溜めたのち攻勢に出た。後手ペースで進行する中で羽生九段も陣形を整備し、いよいよ本格的な戦いへ。数々の難所をくぐり抜けてきた百戦錬磨の羽生九段も技を繰り出して絶妙にバランスを保ったが、防衛への意志を示すように藤井王将が強く踏み込みぐいぐいリードを拡大。圧倒的な指し回しを見せた藤井王将が、羽生九段の挑戦を退け初防衛を決めた。
藤井王将は、羽生九段との初めての番勝負について「8時間という長い持ち時間で6局指すことができて、羽生先生の強さだったり自分の課題を感じたところがあった」と振り返り、「自分にとって得るものの多いシリーズだった。今後に活かしていけたらと思います」と語った。また、初防衛については「挑戦か防衛かというのは、(対局が)始まってしまえばそんなに関係がなく、その点は意識はしていなかった。非常に難解な将棋が多く、大変なシリーズだった。その中で良い結果を出せたかなという感じです」と喜びを語った。
猛者ぞろいの挑戦者決定リーグを全勝で駆け抜け、20歳の王者に挑戦した羽生九段は、「いろいろな変化や読み筋がたくさん出てくるので対局していて大変なところでもあったが、勉強になったところもあったシリーズだった」と総括。タイトル通算100期はおあずけとなったが、「いろいろやってみたが、もうちょっと全体的に指し手の性格さや精度を上げないといけないなということを感じたシリーズだった。自分自身の至らないところや足りないところを改善して、また次に臨めたららいいなと思います」と未踏の地へと視線を向けた。
この結果、藤井王将はタイトル戦敗退なしで通算獲得数を12期に伸ばし、歴代8位の森内九段の記録に並んだ。
五冠を堅守したばかりの若き絶対王者だが、休まる間はない。現在は、平行して挑戦している棋王戦コナミグループ杯五番勝負に2勝1敗で初奪取に王手をかけており、3月19日には栃木県日光市で第4局が予定されている。
さらに、順位戦A級を制し名人初挑戦を決めており、4月5日に開幕する名人戦七番勝負もカウントダウンが始まっている。日に日に柔らかくなる春の風を背に、次の戦いの場所へ。藤井王将の飛躍は止まらない。
◆藤井 聡太(ふじい・そうた) 2002年7月19日、愛知県瀬戸市出身。中学2年生時の2016年10月に史上最年少で四段昇段、史上5人目の中学生棋士となる。2020年度の第91期棋聖戦でタイトル初挑戦。渡辺明棋聖(当時)を破り、17歳11カ月で最年少タイトルホルダーとなった。以降獲得と防衛を重ねて、竜王2期、王位3期、叡王2期、王将2期、棋聖3期の通算12期。棋戦優勝は8回。通算成績は315勝63敗、勝率は0.8333。趣味は鉄道、チェス。 (写真提供・日本将棋連盟)