人気焼肉店の店主が教える、年末年始の買い物で得をする「輸入牛・国産牛の選び方」
12/22(金) 17:03配信
現代ビジネス
Photo by iStock
物価高でお財布は厳しいけれど、年末年始くらいは奮発して、ステーキやすきやき、ローストビーフなど、おいしい牛肉を味わいたい! でもいざ買い物に行くと、ずらーっと並ぶお肉の中から価格とお味が釣り合う「正解」を選び出すのは至難の業……。
【写真】年末年始の買い物に役立つ「おいしい肉」のポイント解説!
前編では、肉の購入でついついやってしまいがちな間違いをクイズ形式でご紹介した。後編ではより詳しく、お肉のプロとして「肉のプロフェッショナル」というYouTubeチャンネルでも活躍中の『焼き肉ホドリ 用賀店』店長の橋本宰さんがアドバイス。「柔らかくて臭みのない国産牛を選ぶなら、断然〇×牛!」「輸入牛のかたまり肉を買うならココを見て!」など、素人にもわかるおいしいお肉の選び方を伝授。さらに今回、国産牛選びの超強力助っ人アプリも発見! 年末年始の買い物に絶対役立つ情報、満載でお届けする。
国産牛と輸入牛では選ぶポイントが全く違う
「店で使う牛肉は、山形から一頭買いで仕入れていますが、妻の買い物に付き合ってスーパーの食肉売り場を見ていると、思わず『あー、それ買っちゃう? 』と心のなかでつぶやくような肉選びをしている主婦の方、けっこう見かけます。『そっちじゃなくて、その右にあるパックのほうが絶対、うまいのに』って」と語るのは、用賀にある人気焼肉店『焼肉ホドリ』店長の橋本宰さん。そんな橋本さんに、ごちそう度ナンバー1の牛肉の選び方をレクチャーしていただいた。
まず注意したいのは、国産牛と輸入牛では選ぶポイントが全く違うこと。輸入牛選びのひとつめのポイントは、「品質グレード」と「肉の締まり具合」。
「店で売られている輸入牛は、アメリカ産とオーストラリア産が多いですよね。オーストラリア産はグレード表示(※1)されていることは少ないのですが、アメリカ産は『プライム』『コマーシャル』『チョイス』などのグレード表示(※2)がされていることが多いです。当然、グレードが高いプライムのほうが、チョイスよりも価格が張りますが、おいしい肉を選ぶ目安のひとつにはなるでしょう。
ただし、脂身が苦手で肉らしい味わいや食感がほしい人は、プライムよりもコマーシャルやチョイスを選んだほうが本場のステーキっぽくガッツリ食べられるかもしれません」(橋本さん)
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※1:オーストラリア産牛肉(オージービーフ)にも消費者に向けた肉の品質を表すグレード(MSA等級区分)がある。主に食味要素と調理方法の組み合わせによって分類されており、最上級の軟らかさのものを「MSA 5」、上級の軟らかさが「MSA 4」、そして軟らかさ保証付きが「MSA 3」となる(ただし国内の一般スーパーでこのグレードをラベルに表示しているケースは少ない)。
■オーストラリア食肉ハンドブック 第7版より
https://www.aussiebeef.jp/b2b/oz_meat/4C548DDA-F430-11DA-8CD5-000A95D14B6E.html
※2:アメリカンビーフは、肉質等級を牛の種類、性別、熟成度、脂肪交雑などによって決定している。最上級の品質は「プライム」、次いで「コマーシャル」「チョイス」「ユーティリティ」とランク付けされている(日本のスーパーでも上位品質のものにはラベルに表示されていることが多い)。
■米国食肉輸出連合会 牛肉格付けシステムより
https://www.americanmeat.jp/trd/database/rank/r_001.html
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柔らかい質感よりもエッジが立ったものがアタリ!?
真空パックのものは、〇をつけたあたりを持ちあげて選び、硬さなどを確認するといい。写真/YouTube『肉のプロフェッショナル』より
真空パックのものは、〇をつけたあたりを持ちあげて選び、硬さなどを確認するといい。写真/YouTube『肉のプロフェッショナル』より
輸入牛は、大きめのかたまり(ステーキ、ローストビーフ用など)で販売されていることが多い。国産牛のようにプラスチックのトレーに入れてラップをかけてあるものと、分厚めの透明フィルムで全体を真空パックしてあるもの(コストコはこのタイプも多く販売している。大きめの輸入かたまり肉はこの梱包法が多い)がある。
「触っても破れにくい分厚いフィルム入りの真空パックに入っていたら、ぜひ手で持ち上げて、肉の硬さや締まりをチェックしましょう」と橋本さん。これが輸入牛のどの部位にも共通している第一のチェックポイントなのだとか。
「肉を持ち上げたとき、ぐんにゃりしているものは焼くと硬くなる肉なので避けて正解。よく見ると肉自体の形が崩れて切り口もはっきりわからない締りのない感じのものが多いはずです。逆に持ったときしっかり締まっていて切り口のエッジが立っているような肉は料理して美味しい肉です。売り場にある真空パックのブロックをいくつか持ち上げてみると、肉によってけっこう硬さに違いがあるのがわかるはず。トレー入りの場合は、切り口がしっかり立っているのものをよく見て選ぶといいですよ」(橋本さん)
大きなかたまり肉の場合、最初にグラム数を見て、目当ての肉を選びがちだが「せっかく奮発するなら、多少のグラム数の違いより、身が硬く締まっているかどうかで選んだほうが絶対、後悔しないはず」と橋本さん。
赤身輸入牛は適度なサシ(脂身)入りを選ぶ
こちらはロピアでみつけた赤身肉。これぐらいサシが入っているほうがおいしいと橋本さん。
輸入牛選び第2のポイントはサシ(脂身)の入り具合。
「ヘルシー志向の方やダイエット中の女性が好むのが、ヒレやもも肉などの赤身ですが、輸入牛も国産牛も赤身を選ぶときは、脂身のまったくないものを選んじゃダメ。『輸入牛を料理したら硬くてバサバサで、とても食べられたもんじゃなかった』という失敗は大抵コレです」(橋本さん)
赤身は適度にサシ(脂身)が入っているとおいしく食べられる。脂身ならではの旨味があるし、肉のジューシーさにも影響するという。サーロインやバラ肉、ミスジなどの場合は、赤身がちな輸入牛ならサシが入っているものを選び、国産牛の場合は逆にサシが控えめのものを選ぼう。
「輸入牛は肉質が硬いので、肉の内部にサシが入っているものを選んで買うとよいです。一方、国産牛は超高級牛でなくても赤身の内部にかなりサシが入っていることが多く、サシが多すぎると、ステーキなどで食べると『くどい』と感じてしまうかも」(橋本さん)
また真空パックされたかたまり肉は、冷蔵庫に保存するときの置き方にも要注意なのだとか。
「真空パックされた肉には、たいていドリップを吸い取るシート(ドリップペーパー)が敷いてあります。ペーパーを下にして保存することで、1度出てしまったドリップが肉の内部に回るのを防ぎます。なので持ち帰るときも、冷蔵庫で保存するときも、必ずシートの側を下にして置くようにしましょう。せっかく美味しい肉を選んでも、保存法を間違えると台無しです」(橋本さん)
セール価格の「雌牛」を見つけたら、逃さず買い!
国産牛のラベルには必ず「個体識別番号」が書かれている。スーパーによって表示の大きさは異なるが、例えばこんな感じ(赤く囲った部分)。
お次は国産牛選びのコツについて。
肉選びのヒントになるのは「牛の個体識別情報」だ。国産牛肉(こま切れ肉以外)のパックのラベルには、必ず「個体識別番号」が書かれており、これを「牛の個体識別情報検索サービス」というサイトで検索すると、その肉の情報が詳細に出てくる。
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牛の個体識別情報検索サービス https://www.id.nlbc.go.jp/top.html? pc
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「この情報の中で、初心者がまっ先にチェックすべきは、性別です。雄(オス)より断然、雌(メス)がおいしい。また、気にならない人は雄でもいいんですが、牛ならではの匂い(獣臭さや乳臭さなど)が苦手な人は、雌牛一択です!
雌牛は雄牛と見比べると、見た目にも微妙に違いがあります。肉肌がしっとりしていて色も鮮やかなピンク色、脂身は透明感が高く真っ白で、すっきりとしたおいしさです。雄雌並べて見比べると、雄のほうがたいてい少し黒みがかった肉色で、肉肌が乾燥しているんです。最初はなかなか見分けがつきにくいと思いますが、買い物するたびに識別番号を調べてチェックするようにすると、肉の表情がわかるようになって、わざわざ調べなくてもなんとなくわかるようになります」(橋本さん)
一般のスーパーでは圧倒的に雄牛が並ぶことが多いらしいので、お買い得価格の雌牛を見つけたら購入のチャンスというわけだ。ただ、ラベルの識別番号はとても小さいし忙しい買い物中に、わざわざスマホに番号を入力して調べるのは少々手間がかかるのが難点だ。
一瞬で雌牛かどうかチェックできるアプリを発見!
こんな感じにアプリを起動し、個体番号の数字部分にカメラをかざすだけで、メスやランクなどが表示される。これは絶対便利!
売り場にある肉のラベルに書かれた個体識別番号は、なにしろ数字が小さくて読みにくい。前ページで紹介した「牛の個体識別情報検索サービス」のサイトに入って、スマホで長い数字の羅列をポチポチ打ち込むのもこれまた手間だ。実際にスーパーで試してみたが、時間がかかるし、他のお客様の迷惑にならない形で行なうのは至難の業だ。
でも、おいしい雌牛と出会いたい、どうにかならぬものかと調べてみたら、お肉選びビギナーの私たちのための神アプリをついに発見した!
それが『Beef Lens』というアプリだ。なんと、商品のラベルに書かれている牛の個体識別番号をカメラで読み取れば、性別、品種、月齢などの情報と、それらを元にしたビーフスコアを見ることができる。これは画期的だ。
まだその真価を知る人が少ないようで、ダウンロード数は少ないが、実際に、先日友人と大手スーパーに行った際に使ってみることにした。取材で橋本さんに伺った内容をチェックして、他のお肉に比べて肉肌がしっとりしていて色も鮮やかなピンク色、脂身は透明感が高く真っ白(雌牛の特徴)な「これは」と思うパックを見つけ、他のお客様に迷惑にならないように、売り場の隅でショッピングカートに乗せた状態でスマホのカメラをかざしてみた。
すると、瞬く間に「メス、34.9ヵ月、黒毛和種」でスコア5.00と表記された。本当に一瞬でわかるので、目星を付けたものだけをチェックするなら買い物の邪魔にはならないはずだ。これはスゴイ!!
今まで紹介した購入ポイントとアプリの力を借りて、年末年始にぜひともおいしいお肉をみつけてみてほしい。
若尾 淳子(ライター)
国産牛のラベルには必ず「個体識別番号」が書かれている。スーパーによって表示の大きさは異なるが、例えばこんな感じ(赤く囲った部分)。
お次は国産牛選びのコツについて。
肉選びのヒントになるのは「牛の個体識別情報」だ。国産牛肉(こま切れ肉以外)のパックのラベルには、必ず「個体識別番号」が書かれており、これを「牛の個体識別情報検索サービス」というサイトで検索すると、その肉の情報が詳細に出てくる。
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雌牛は雄牛と見比べると、見た目にも微妙に違いがあります。肉肌がしっとりしていて色も鮮やかなピンク色、脂身は透明感が高く真っ白で、すっきりとしたおいしさです。雄雌並べて見比べると、雄のほうがたいてい少し黒みがかった肉色で、肉肌が乾燥しているんです。最初はなかなか見分けがつきにくいと思いますが、買い物するたびに識別番号を調べてチェックするようにすると、肉の表情がわかるようになって、わざわざ調べなくてもなんとなくわかるようになります」(橋本さん)
一般のスーパーでは圧倒的に雄牛が並ぶことが多いらしいので、お買い得価格の雌牛を見つけたら購入のチャンスというわけだ。ただ、ラベルの識別番号はとても小さいし忙しい買い物中に、わざわざスマホに番号を入力して調べるのは少々手間がかかるのが難点だ。
一瞬で雌牛かどうかチェックできるアプリを発見!
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売り場にある肉のラベルに書かれた個体識別番号は、なにしろ数字が小さくて読みにくい。前ページで紹介した「牛の個体識別情報検索サービス」のサイトに入って、スマホで長い数字の羅列をポチポチ打ち込むのもこれまた手間だ。実際にスーパーで試してみたが、時間がかかるし、他のお客様の迷惑にならない形で行なうのは至難の業だ。
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まだその真価を知る人が少ないようで、ダウンロード数は少ないが、実際に、先日友人と大手スーパーに行った際に使ってみることにした。取材で橋本さんに伺った内容をチェックして、他のお肉に比べて肉肌がしっとりしていて色も鮮やかなピンク色、脂身は透明感が高く真っ白(雌牛の特徴)な「これは」と思うパックを見つけ、他のお客様に迷惑にならないように、売り場の隅でショッピングカートに乗せた状態でスマホのカメラをかざしてみた。
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若尾 淳子(ライター)