木造(きづくり)の散策を終え、駅近くのコンビニで朝食とする。
かねてより食べてみたかった青森のご当地パン「イギリストースト」(製造元:工藤パン)を迷わず選ぶ。
ジャリっとした砂糖入りのマーガリンがサンドされている比較的よくあるパン(大好き)だが、
他よりやや甘めか。もちろん美味しい。
県内では数多くのバリエーションがあり、中でもチーズとトマトソースが挟まれた
「イギリスフレンチトーストピザ風」は「多国籍すぎる」とネタにされていた。
今回の旅行では見つけられず、ちょっと残念。
無料の高規格道路などを通り、午前9時ごろ、青森市中心部へと入る。
青森駅近くに保存されている青函連絡船「八甲田丸」を外観だけ見学し、姉妹船・摩周丸がある対岸の函館に思いをはせる。
津軽海峡の「あっち側」に車で来られたとは、なんとも感無量である。
そして、中心市街地にはぜひ立ち寄りたかった場所があった。
・アスパム(青森県青森市安方1丁目1-40)
青森港に面して建つこの建物、ずいぶんと特徴的な形をしているが、なんでも「AOMORI」の「A」をイメージしているとのこと(横から見ると薄い!)。
地上15階建て、高さ76メートルの正三角形。円形に飛び出した部分は360度展望台。
館内は「青森の観光と物産の情報発信基地」ということで、お土産屋や飲食店、観光情報コーナー、地域の交流スペースなどが入っている。
せっかくなので、ここで実家へのお土産を購入。
なお入口前には、「ねぶた」が載ったご当地ポストがあったのでパシャリ。
△こちらは青森港旅客ターミナルにあったねぶた
午前10時半。
この旅後半のメインである本州の北の果て、下北半島へ向けて出発する。
まず目指すのはむつ市、イタコで有名なかの霊場恐山だ。
ここ青森市から100キロほどか。まずは国道4号線をひた走る。
当初、中学の修学旅行で泊まった浅虫温泉で日帰り入浴したいなと思っていたのだが、時間の関係でパス。道の駅から温泉街を眺めるにとどめた。
宿泊時はなぜか「この旅館には『出る』らしい」と生徒間で騒ぎになり、同じ部屋の5人で布団をくっつけて怯えた。
薄暗い古びた旅館で、怖さでロクに眠れなかったのも今となっては懐かしい。
あの旅館は今もあるのか。
……陸奥湾をぐるりと回り、国道279号「むつはまなすライン」を北上。
車道が狭くなり、沿道の住宅群ののどかな雰囲気も相まって、果ての雰囲気が出てきた。
目指す恐山と、奇岩がつくりだす景勝地「仏ヶ浦」の看板が現れ、異界へ向かっている気分を高めてくれる。
午後0時半ごろ、むつ市中心部に到着。そのまま恐山霊場に続く一本道へと入る。
かなりの高低差がある細い山道がしばらく続き、何度坂を下って上ったか分からなくなった頃、突如視界が開けて湖が現れ、平坦な道に。
思わず速度を上げて進むと「三途の川」と書かれた橋をそのまま渡ってしまった。
急いでUターンして戻る。これはあまり気分がよろしくない。
恐山へ向かう者がまず通らなければいけないのが、現世と霊界を隔てるこちらの「三途川」。
正確には、霊場が面する宇曽利湖(うそりこ)から唯一流れ出ている正津川。
湖が強酸性のためか、川面を覗くと水色とも緑ともいえない不思議な色をしている。
赤色の太鼓橋はかつては渡れたようだが、現在は老朽化により閉鎖されている。
人が亡くなって三途の川までやってくると、「奪衣婆」(左)が身ぐるみをはがし、「懸衣翁」(右)がその衣類を木の枝にかけ、その垂れ具合で罪の重さを計るという。
その後、閻魔様の前へ出されて極楽か地獄か、行き先を決められるそうだ。
改めて気を引き締めて三途の川を渡り、入山受付所へ。いよいよ霊場へと足を踏み入れる。
・霊場恐山(青森県むつ市田名部字宇曽利山3-2)
約1200年前に、慈覚大師円仁によって開かれた霊場。「比叡山」「高野山」と共に日本三大霊場に数えられる。
火山ガスが噴出する一体の岩肌は地獄に、宇曽利湖畔の白砂の浜は極楽とされ、「人が死ねばお山に行く」という信仰と祈りの場として伝えられてきた。
今も故人をしのぶ信者が、日本各地から絶えず訪れる。
総門をくぐった瞬間から空気が変わり、参道の傍らには巨大な卒塔婆が何本も立つ。想像していた通りの由緒正しき霊場の雰囲気だ。
本尊安置地蔵殿を参拝し、順路に従って地獄めぐりへ向かう。
ここから旅は少しずつ、冥界へ足を踏み入れて行く事になる。
続く。