宇曽利湖を中心に釜臥山、屏風山、剣の山など八峰が囲む霊場一帯は火山ガスの噴気活動が盛んで、硫黄臭の漂う荒涼とした風景が広がる。
あちこちから湯気が上がり、硫黄で黄色く色が付いた地面には草木が生えず、鳥などの生き物もほとんどいない。
火山岩を縫うようにして、1周3キロほどの参道が延びている。
至る所で回るカラフルなかざぐるまは、水子供養のため参拝者が立てたものだという。
無色の風景の中で鮮やかさが強調されているのが物悲しい。
また、これも参拝者によるものだろうか、大小さまざまな石が積み上げられて山のようになっている。
そんな参道に、「千手観音」「慈覚大師堂」「水子供養ご本尊」などがあり、参拝者は起伏に富んだルートを順番に回ってゆく。
岩のくぼみに置かれた賽銭は、火山ガスで変色してしまっている。
「八葉地蔵菩薩」と、水子供養の地蔵群。
なお、恐山と言えば「イタコ」だが、常駐している訳ではなく、恐山大祭と秋詣りのみにいらっしゃるそうだ。
今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため休止とのこと。
「血の池地獄」。池の底にある苔の変色によって、本当に真っ赤に見えることもあるそうだ。
この日は緑色だったため、予想していたほどおどろおどろしい雰囲気ではなかった。
参道は、早くして亡くなった子供が親を想う「賽の河原」を経て、宇曽利湖畔の「極楽浜」に辿り着く。
これまでの荒涼とした道中とは一変し、青々とした水面に白い砂浜の美しい風景が広がる。
参拝者もほっと一息、湖畔で記念撮影する人も多い。「極楽」とはよく言ったものだ。
湖を前に、東日本大震災の供養塔が建つ。
また、砂浜にもかざぐるまが何本か立っており不思議な光景。傍らに妊娠検査薬が置かれているものがあり、思わず「あぁ」と声が出てしまう。
カラカラと回るかざぐるまは輪廻の象徴であるという。
極楽浜から総門へ戻る道中は、仏教の世界に8つあるとされる地獄になぞらえた場所を通る。
「重罪地獄」「賭博地獄」、そして最も過酷とされる「無間地獄」。硫黄の臭いに耐えながら、火山ガスに気を付けて進まねばならない。
地獄めぐりを終えて総門へ戻り、車で「三途川」を渡り終えるとほっと一安心。
ツアー客などもおり、これまで恐山のイメージとして抱いていた恐ろしさ、不気味さはそれほど無かった気がする。
私が霊感が全くないためかもしれないが。
さて、本日の行程を終え、これから今夜泊まる宿へと向かうのだが……。
この宿こそ後半戦のクライマックス、というか、この旅で最も覚悟が必要な場所かもしれない。
まず、予約の電話で言われたのが下記の文言である。
「大丈夫?ちゃんと調べた?ここ普通じゃないよ??」
そしてこの宿、なんでも座敷わらしがいるというのだ。
いよいよ旅は佳境へ!
続く。