我が家の鈍足ディグリーの状態は、チョークを引いてセル一発で始動。少しの暖気でアイドリングは安定。空ぶかしでは回転は滑らかに上昇。なのに、
・走行すると中回転域からの伸びが見られず徐々に加速
・最高速度80km止まり
でした。
これらの原因としては、
1.吸気系統
2.排気系統
3.燃料系統
の不具合が考えられます。
原因1ではエアエレメントの目詰まりが考えられますが、現在の総走行距離は8,000km(恐らく実走)で、メーカー推奨の交換時期2万kmには遠く及ばず、目視でも異常は見られないので除外します。
原因2ではマフラーの詰りが考えられますが、低回転域が完全に安定していることと、以前乗っていたセローの排気管に土蜂が巣を作ったときと比べると、明らかに抜けている感じがするのでこれも除外します。
以上から原因を「燃料系統」に絞りました。
まずは燃料供給量を疑ってみますが、アクセル全開でも息継ぎやエンストは起こらないので問題なしと判断します。
他に考えられるものは、
・メインジェットの詰り
・ニードルジェットの詰り
・ジェットニードル(ややこしいなぁ)の曲がりや段付き
・ピストンバルブの引っかかり
・ピストンバルブの動きを制御しているダイヤフラムの破れ
・ダイヤフラムを動かす負圧ラインの詰り
です。
いずれもキャブレターを分解しなければ確認できないものばかりですが、分解か組み戻しに失敗すれば旧車なので部品が手に入るかわかりません。そこはいざとなればITOさんでなんとかなるさ・・と安易な気持ちで分解をはじめました。
[スケルトンディグリー]
シートとタンクをはずし、キャブのドレンを緩めガソリンを抜き取ります。
次にエアークリーナーケースを後ろにずらし、キャブから分離します。実はここからが正念場でした。エンジン側のマニュホールドからキャブをはずすには結構な力とコツが必要でした。
後ろに下げたエアクリケースや車体フレームが邪魔になったりしてなかなか抜けません。最後はエアクリケースを後ろに固定し、キャブを90度左に回転してやっと抜き取りました。が、ここからもまだまだ試練が続きました。フレームの外に出ないのです。やっとのことで知恵の輪状態をクリアーして救出に成功しました。
[キャブ救出]
[エアクリ側から見た図]
黒い筒がビストンバルブで、その下に付いている針がジェットニードルです。
まずはメインジェットをチェックするためにフロートチャンバのねじを緩めます。ついでにフロートをはずしフロートバルブをチェック。段付きもなくまったく新品同様でした。
次にメインジェットを確認するのですが、あわせて一体化しているニードルジェットも取りはずしました。メインジェットとニードルジェット側面孔に詰りがないことを確認し、再び組付けます。相手は真鍮製なので固定するだけにして必要以上のトルクは厳禁です。
[フロートチャンバ内の図]
次にキャブ上部を開きます。
ここにはピストンバルブを上下するダイヤフラムが収められ、今回の症状の原因として一番怪しいと感じている部分です。最悪の場合ダイヤフラムの破損も覚悟しなければなりません。
最後のねじを緩めバネが飛び出さないように慎重にカバーを開けたところ、ダイヤフラムの破れはないものの、一部が変形して(真円状態ではなく)装着されていたようです。これでは負圧が隙間から逃げてしまい正しく上下作用が行われません。
ピストンバルブ、ジェットニードルの変形と異物付着を確認し、ダイヤフラムを噛まないように慎重に組付け直しました。
[今回の主役]
左から、メインジェット+ニードルジェット、真ん中上がジェットニードルを抑えているスプリングと座金、下がジェットニードル、右の黒い傘の部分がダイヤフラム、それに続く筒がピストンバルブです。
キャブを元通りに組み直し、車体に取り付けて燃料タンクを接続しコックON。なんとセル一発で始動しました(感動!)。暖気の後アクセルを煽ってみると以前とレスポンスがまったく違います。早速試運転してみましたが、中速からの伸びが怖いほどのバイクに生まれ変わりました。(オンロードマルチ並みの加速です!?)
[結論]
今回の症状は、エンジン回転の上昇とアクセル開度に伴いピストンバルブとジェットニードルを引き上げるダイヤフラムがうまくセットされず、本来の作用がなされないために発生したものでした。組付け時のほんのちょっとした油断が大きな不具合を引き起こした事例です。
[おまけ]
RUDさんおすすめのボンスター(スチールウール)で磨いてみました。驚くほどアルミの表面がきれいになって大満足です。内面のセッティングがおわり、これからの外装修復に強いアイテムが加わりました。でも、ボンスターから出る鉄粉の後始末が難儀ですね。