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■■■■■■■■■台湾物語(後記)■■■■■■■■■
北條俊彦
(経営コンサルタント・前 住友電工タイ社長)
■■英霊への感謝と報恩
⚫️コロナ禍の前,住友電工同期4名で台湾を訪れたが,旅の途上,台南
市にある民間信仰の廟“飛虎将軍廟”を訪れることになった.
廟は台湾風の厳かな造りであり, 大理石の柱には、“正義”,“護国”,
“英雄”、“忠義“,そして”大義“の五つの漢熟語が刻まれていた。
廟正面に「鎮安堂飛虎将軍」と書かれた額が掲げられている。“鎮安”
とは邪気を沈め民心を安んずること、“飛虎”は戦闘機のこと,そして
“将軍”は神として祀られる勇士の尊称を意味する。将軍廟正殿中央
には本尊“杉浦茂峰”の御神像,そして両側には分身2体が奉安されて
いる。
朝は日本の国歌“君が代”,夜には“海ゆかば”が流されるらしい。
今回は旅程の都合もあって,残念ながら拝聴できなかった。大東亜戦
争も末期、日本にとって戦局益々不利な状況下,台湾沖航空戦で海軍
航空隊杉浦茂峰兵曹長(死後,少尉に昇進)搭乗機が被弾、眼下に見
える住居地への墜落を避けるために 人家から離れた方へ飛行移動し
て 落下傘脱出を図った。しかし敵機の機銃掃射を受けて落下傘は破
れ,兵曹長は墜落死を遂げる。搭乗機は零戦であった。
杉浦兵曹長は,自分の命と引き換えに村人たちを守った英雄飛虎将軍”
として,1971年に鎮魂と感謝の気持ちを込めて祠が 村人たちによ
って建立された。
1993年には現在の廟に再建されているが,飛虎将軍はこの地方の
守り神として今も篤く信仰されている。
・飛虎将軍廟:写真右側向かって左端が恵三さん
⚫️台湾からの帰国後,旅仲間の一人である恵三さんから興味深い話を
聞くことになる。その恵三さんからのお話である。
「飛虎将軍廟に参拝し,香油錢として百台湾$を奉納しての帰り道, 何
か心の中に引っかかるものがあったが “奉納が充分ではないのでは“
と急に思い立ち,慌てて将軍廟に駆け戻り, 香油銭五百台湾$を改めて
奉納させて頂いた。
すると不思議なことに 心は充足感に包まれ、清々しくも晴れやかな
気分で君達と次の旅程に就くことができた。
台湾から帰国した後に叔父の訃報を受けとったのだが, 叔父が先の大
戦で予科練として台湾に派遣され飛虎将軍と同じ戦闘機乗りであった
事を思い出した。
叔父は台湾へ派遣されてからは, 学校で航空機関係の派遣教員をして
いたようだ。私の台湾旅行のことを 叔父は知る由もないことだった
が、今考えると,死期の近い叔父には台湾にいる私が見えていたのか
もしれない。そして“台湾で同じ戦闘機乗りとして戦った飛虎将軍の
供養を十分にしてくれ”と伝えてきたのだろう。」
飛虎将軍海軍航空隊杉浦茂峰少尉の御霊の安らかならんこと,そして、
恵三さんの叔父上のご冥福をお祈りしたい。
尚,次に訪台する機会があれば、もうひとり日本人で義愛公(森川清治
郎巡査)として祀られている 嘉義県東石郷にある「東石副瀬冨安宮」
に参拝させて頂きたいと考えている。
(出典:AAFP)
⚫️さて11月の統一地方選での民進党敗北を受けて蔡英文総統が党
主席辞任の表明をされた。コロナ感染拡大による失業や倒産,厳しい
防疫策と隔離,そして兵役期間の延長などが今回の与党敗北の原因だ
と言われている。
国政と地方政治の違いこそあれ,これを機に中共による台湾侵攻が現
実味を帯びてきている。
2024年1月に予定される総統選で,中共の軍事的脅威を前にした 台
湾国民がどういう選択をするのか,気になるところだ。
⚫️台湾問題は日本にとっても他人事ではない。尖閣諸島を含む南西
諸島の領土保全と国家安全保障,そして半導体サプライチエーンと経
済安全保障等,国家の浮沈に関わる重大な問題である。
防衛省による南西諸島離島防衛作戦は,遅ればせながらも進んでいる
ようで,奄美大島,宮古島及び石垣島への陸自増派(電子戦部隊, ミサ
イル部隊)と施設整備拡充等,沖縄本島を繋ぐ南西諸島防衛線が強化
されつつあるようだ。
国防費の増額と国民負担については当然のことと理解しているが,米
国の言いなりにハコモノ(兵器)だけにカネを消費するのではなく、
国防上本当に何が必要か,課題の総点検を実施し,その上で中長期的な
防衛力強化を図って欲しい。
先ずは自衛隊員の高齢化対策と絶対数不足をどう補うのか,また自衛
隊員の安全確保そして給与,福利厚生面での待遇改善なども喫緊の課
題であろう。
⚫️後藤新平が「国難を国難として気づかず、漫然と太平楽を歌って
いる国民的神経衰弱こそ,もっとも恐るべき国難である」と語ってい
るが,何よりも大切なことは,我々国民が覚醒し“国を愛する心“を
取り戻し,国防意識を高揚させなければならない。
当然のことながら,自衛隊への深い理解と強い支持,そして感謝と愛情
をもって接することも必要ではないか。
グローバル化が進みボーダレスになった国際社会において,イデオロ
ギー(政治体制)や宗教、そして人種・民族問題など世界各地で紛
争や戦争が現実に起きている今,“自由と民主主義”を国是とする主権
国家台湾、そして我らが同胞台湾の方々のため自分に何ができるか、
我々も考えねばならない。
それは,“勇気の欠落が全ての悪“であることを肝に銘じて,あらゆる立
場を超えて“言うべきことを言う勇気”を持ち続けることである。
そして個人の限界を知り,発信し続けることで周囲を巻き込んでゆけ
ば,必ず大きな力となって、より抑止効果を高めることになるだろう。
正解ではないかもしれないが、一つの成解であると確信する。
■■「日本は内憂外患」
⚫️外にはロシア・中共・北鮮の脅威, そして何よりも 米国による支
配が続く。内には国家を私有財産視する財務官僚に操られる政治家
の腐敗・堕落による国難であろう。今回の防衛費の増税案は恐らく
財務官僚の意向であろうが,中共の指示を受け媚中派政治家は増税で
国民に厭戦観を煽り,中国脅威論を霧消させようとしている。
与党野党問わず我が国の政党は, “国家の現実と将来を公平無私に省
察せず“無意義な政争をいつまで繰り返すのだろうか。
このままでは,有事に石垣島が台湾からの避難民で溢れるであろう事
は想像に難くない。台湾の方々の平和と安寧を心から祈りたい。
⚫️“そもそも国家とは?”後藤新平は,国家について次のように解
いている。
『国家は,民族が共同生活する最も発達した有機体であって,ほんとう
に国家が健全な発達を遂げ,国家としての使命を全うするには、国民
の倫理的訓練を向上させ,その人格的修養により国民に正しい行動を
取らせることが要件となる。
すなわち,国民各自の品性を崇高にし,自治的訓練を普及し,国民の倫理
的良心の光を発揮させることが最も重要な要件である。
国民全体が正義に忠実,公道に熟誠となり,正しい人格的活動を行う事
ができるようになってはじめて,国家はその本来の光を発揮し,真正の
国家的理想に向かって歩を進めることになる。』と。
即ち,我々国民は日本人の矜持と国家の品格を取り戻し,正しい歴史観
と文明観を持ち、天皇制と我が国体を守り抜くという強い意志を持た
ないといけない。そのためにも神話に始まる日本文明を雄大な物語と
して日本の歴史を大きく捉え直すことが肝要である。そして国家的理
想に目覚め,歩み始めなければならない。
⚫️また正しい国家の倫理的基礎を確立するため 後藤新平は次の様に
も述べている。(出典:JIJI)
『国民各自が自発的,自律的,自制的に自己の人格を展開することに努
力し,正義と義務とに忠実になる精神を奮起する事が必要条件である。
したがって国家の政治も 国民に号令し,国民を強制する方法を取らず
に,むしろ国民の内心に訴え、国民の人格的自尊心を呼び起こして,国
民が自ら反省し自ら奮発興起する方法を取るべきである。
この国民各自が,自制・自尊して,倫理的訓練を全うできたとき,はじめ
て権威ある国家の人格的活動を遂げることができる。』と。
(出典;:JIJI)
まさにその通り,
・人には人格、
・国家に国格、
・国民にも民格(度)
があるように、我々一人一人も人道的正義と公徳を基礎とした道徳的
行動を実践してゆく事で、日本国民として民格(度)を向上させてゆ
かねばならない。
その結果,国格の備わった日本が国際社会の中で信用と共感を勝ち取り、
強固な防衛力の確保と共に、“東シナ海域の平和と安定”を国際社会に
広く発信すれば、我が国そして台湾の独立と平和が担保されるものと
心から信じる。
⚫️最後に,歌集「心閑歳月長」から一首紹介させて頂く。
作者は元陸軍パイロットで元陸軍第十飛行師団長・陸軍中将そして
歌人であった故近藤兼利先生である。
(写真)近藤兼利陸軍中将(出典:読売新聞)
(写真)飛行第53戦隊の二式複座戦闘機(出典:JIJI)
陸軍第十飛行師団は,第一航空軍司令官の隷下にあり,本土全体の防衛
を統轄する防衛総司令部指揮下で 主に 関東地区の防空を任務とした。
「めぐり来し 三十年目の 八月十五日 たゆたふ 複雑怪異の感懐」
*“たゆたふ“とはためらう、揺れ動くという意味。
戦後77年を経たが、感懐今も変わらずということだろうか?
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