【7月10日投稿分】
今月(7月)の8日は、父(金剛寺2世)の祥月命日(平成15年、行年73歳、立ち日)にて。平成14年の9月、腹痛を訴え、主治医の診察を受けに。その年の10月18日、大腸、膀胱、腹膜、肝臓、肺にまで転移している癌の応急手術(確認出来た病巣だけ摘出)を。既に、手遅れ状態。術後、父が「俺はあと、どのくらい生きるんだ」と。対し、拙僧「あと半年かな」と即答。暫くの間、父は無言で目を瞑ったあと「半年なら、やる事があるな」と残りの数ヶ月で拙僧に、お寺の運営の仕方を様々伝授。その間、好きな時代劇を見ながら、安らかな日常を。
病床の父に拙僧「父さん、えろうリラックスしとるが、死ぬのが怖くないんかい」と尋ねると「お前から『あと半年』と聞かされた時は、そりゃ、怖かったくさ。初めて体験する事は、何にしても不安なもんだ。が、何故か、一瞬の内に、その不安が消えた。『生きてる内に、お前にお寺の全てを伝授しとかにゃ』と思ったからかな。いいか、親が死んだくらいで、お寺の業務を滞る事はならんぞ。わしの命乞いの祈願もするな。人間、ジタバタしたって、死ぬ時は、死ぬ。死にとうても、死ねん。人間は病気じゃ、死なん。必ず寿命だ」と。数百人の葬式に携わり、その何倍もの人の『生き死に』に関わってきた、父の納得の言葉だった。
父の祥月命日の7月8日といえば、昨年(令和4年)他界された、安倍晋三元総理の祥月命日。今年が1周忌。思えば、演説を急遽奈良に変更した為に命を。あの時、奈良に行かなければ、とも思ったが、これもまた、寿命だったのかな。納得の出来る事ではないが。檀家のご主人は、家を出て、数十メートル先の横断歩道で車から突っ込まれて、絶命を。家を出る時、奥さんが「ちょっと、あなた」「なんや」の数秒があったら、ご主人をひいた車は通り過ぎていたはず。何故、ピンポイントで、そこにいなければならなかったのか。そう思える事例は、檀家、知人の中には、少なからずあります。なりゃこそ、人は『1日一生』と、この命は『今日1日の命』と思って、悔いのない生き方を。
安倍さんの命日に読者男性から、次の様なメールが。「7月8日は、安倍元総理の1周忌でしたね。住職が法話の中で偶に使われる言葉、映画『仁義なき戦い』で菅原文太さんが松方弘樹さんに『狙われるもんより、狙うもんの方が強いんじゃ』と放った言葉。安倍さんがテロに遭った時、この言葉が私の脳裏に。日本はこの事件を今後において、教訓に出来るのだろうか、住職」と。「映画『ゴットファーザーで、アルパチーノさんが『この世でただ1つ、確かな事は、人は殺せる』と。恐ろしい言葉ではあるが、この言葉は真実。狙われる(攻撃される)を前提に、対応策を講じておくしかないかな。人間は1度死んだら、2度と生き返れないですもんね。
話を戻しまして、実を申しまして父は、お寺の息子ではなく、俗人から住職に。新日本八幡製鐵所に勤務の20代の頃、心臓の病になり、医師から見捨てられ、ただ死を待つ状態に。その時、今のお寺(金剛寺)に縁があり、精神面を癒された事が、免疫向上に繋がったのか、奇跡的に心臓病が回復を。これが縁で、父は仏門に。初代住職(父の師僧)は息子、娘が数人いたにも関わらず、何の仏教知識もない、経験もない父に『このお寺は、お前が継げ』と。その頃、父には製鐵所本社(東京)栄転の話が。が、父は、お寺との両立の道を選択する為に、転勤しなくてもよい様に、レントゲン技師の免許を取り、八幡製鉄病院に残った。
父が他界した後に、初代住職(弘中和尚)の娘さん2人が「山本學(拙僧父の俗名)さんが後継を了承してくれたお陰で、ボロボロだった金剛寺が、今の様なお寺に。私達(初代住職の子供)が継いでいたら、間違いなくお寺を潰していたでしょうね。父(初代住職)はそれを、見抜いていたんだと思います」と。この娘さん2人は長年、月に1度は必ず、お寺の方に参拝を。が、2年前から全くお姿を。無理が出来ない年齢に、恐らく、もうお体が。
これは余談ですが、初代住職といえば、次の様な不思議な話が。拙僧の祖父が、83歳で他界した時、通夜も葬儀もお寺の本堂で。葬儀が終わり、出棺となった時、130石段の下の山門に霊柩車が横付けを。拙僧が爺様の位牌を持ち、運転席の隣に座ると、運転手さんが「ここのお寺の初代住職は、弘中、って言いませんでしたか」と。「そうですよ」と答えると「実は私、その弘中住職の孫なんです」と。これには驚いた。その男性曰く「5歳の頃まで、爺ちゃんのお寺(わが寺)には、度々遊びに来ておりましたが、今日は、かれこれ50年振りです。この石段を見て思い出しました。実は今日、私は非番で家で寝ていたところ、会社から『運転手が足らん』と電話があり、急遽こちら(わが寺)へ。偶然とはいえ、何という縁なんでしょうね。爺ちゃん(弘中住職)が『お前が迎えに行け』という事だったのかな、と。この時、拙僧「縁というものは、凡人には、計り知れんものだな」と、このご縁に不思議さと、感謝を。
次回の投稿法話は、7月15日です。
