1分で読める小さなお寺の法話集

子育て、人材育成に関する法話を実話と歴史から紐解いて書いております。

【住職の法話。考え方を少し変えるだけで、苦しい人生が、楽しい人生に】 正直者が馬鹿をみる、という言葉がありますが、いやいや、最後に土俵の上に立っているは、やはり、正直者かな。

2023-07-18 09:14:11 | 法話

 7月20日投稿分 


毎月1日に、安全祈願に伺う会社が数社ある。どの会社も、伺い始めてもうかれこれ、30年以上になるかな。拙僧が祈願中、社員は全員、拙僧の後方に整列。祈願文の中に社長の申し入れで「社員一同、身体健全、無病息災、家庭円満、の文言を。事業繁栄の文言は必要ない。社員が安泰なら、会社は自ずと繁栄するから」と。社員から「社長がお坊様を呼んでるは、私達の為だったんですね」と拙僧に。大半の社員が社長さんに感謝を。


毎月伺う企業の中の1社に、現社長が30代(専務)の頃、会社存続が危機的状況に。拙僧の法話の『犬も歩かにゃ、棒にも当たらん』の言葉が後押しとなり、全く縁のない大企業に乗り込み、玄関先で『仕事下さい』と大声で。その時、偶々そこに居合わせた重役が「ちょっと待っときなさい」と。30分後「この仕事(4億円)が出来るか」と差し出した。それが縁で定年後に、数多の引き抜きがあったこの重役さんが『この若いの(現社長)を育てる』と、他社の半分の給料しか出せないこの会社を出向先に選んだ。その重役さんが数年前、この会社を退いた後、コロナ、ロシア問題で、造船関係の仕事がストップを。熊本工場の仕事が殆んど皆無に。ここでまた、会社存続の危機が。


これは数年前の話ですが、この熊本工場に向かっていたある日の事、拙僧の息子(次男、東京理科大卒、同大学院卒)が「父さん。熊本に大規模な半導体の仕事が決定しそうだよ。何かしらの話が、この会社にも来るんじゃないの」とその当時、拙僧に。その息子の予想がこの度、偶然にも的中した。


7月1日に安全祈願に伺った時、コロナ、ロシアで、造船関連の仕事が殆ど皆無となり、熊本工場を閉鎖しようかどうか、2年近く迷ってた現社長(現在52歳)が「住職、実は、半導体関連の会社が20社以上、この1万5千坪の土地と倉庫を、貸してくれ、売ってくれ、との申し入れが」「何に使うって」「1万坪は、工場に。残りの5千坪は、社宅を建てるって。これだけ整備された土地が、どこにもないと」「売ったら、どうなるの」「現在ある借金が全て返済出来て、少しは残るかな」「それは助かりますよね。でも、残ったお金は、泡銭(なくなるお金)だね」「そこなんですよ。残ったお金は、数ヶ月分の社員給料分くらいです。土地、倉庫を貸した方が、将来に繋がるんじゃないかな、と悩んでるんですよね」「他に選択肢は」「共同で半導体関連の仕事をしないか、の誘いもあります。住職なら、どれを選択しますか」と。「ど素人の拙僧に、そんな大事な選択を聞かれてもね。拙僧に出来る事といえば、せいぜい、あなたの先祖に『あなた(社長の先祖)が、これは子孫の為になる、と思う方向に導いてやって下さい』と願う事ぐらいだよ。判断(決定)は、長であるあなた(社長)の仕事ですよ」「わかりました。じっくり考えてみます」と。


続けて拙僧「ただ、この度のこの半導体関連の仕事をあなた(現社長)は、棚から牡丹餅みたいに、突然巡って来たみたいに言ってますが、それはちょっと違うよ。基本、人間は『今の自分を苦しめているも、助けているも、過去の自分の行い。将来の自分を苦しめるも、助けるも、これからの自分の行い』だよ。わが父(拙僧の)は、拙僧が幼い頃より『自分の為だけに努力している人間は、自分が努力しただけしか実りはない。見返りなど求めず、人の為に働いてごらん。いざ、という時には必ず何処からか、助け船がやって来るから』と。あなた(現社長)の生き様は、当に、これでしょ。社員は大事にするし、会社関係者も大事にしてきたし、地元住民にもそれなりに心を尽くして来られたし。この新たな仕事の到来は、あなたが自らで、導き入れたんだと思いますよ」と。


更に拙僧、この社長に「世界には、100年以上続いてる企業が約80000社あるとか。その中の約40%の33000社が、日本にあるとの事。200年以上続いている企業となると、日本は1340社で、世界にある200年企業の65%に当たると。日本には本来、終身雇用制度などないと。ただ、社長と社員の信頼関係が、自然と終身雇用の形になっているだけだと。ところが昨今、東京商工リサーチ調べでは、2022年に倒産した企業の平均寿命は、23、3年と。厚生労働省の発表によると、就職後、3年以内の離職率は、高卒で約4割、大卒で約3割と。仕事がしっかりと身につく前に離職を。人材が育ってない事も、会社倒産の原因なのかな、と思えない事もないですよね。嘗て巨人軍が、お金の力に物を言わせて、他球団の主力を引き抜き続けたのと同じ様に、企業界も育てるという一手間を嫌って、経験者ばかりを。これじゃ、新たな人材は育たないよね。だけど、あなた達親子(会長と現社長)は、こつこつと人材育成を。


対し、この社長が「昨今の会社存続が短命なのは、礼節の問題もあるのかな、と思う。例えば、他社に祝い金を送るとするでしょ。が、お礼の連絡がこない会社が、結構に多いんですよね。別に、お礼を求めてる訳じゃないけど、自分らは先代社長(父親)から『礼儀だけは怠るな』と厳しく指導されていたので、なんか、信じられなくてね」と。「拙僧の周囲でも礼節を軽んじる人達が、昨今、目立つ様になってきたかな。大変お世話になった人のお通夜、葬式にも行かない、という若者達の声を、頻繁に聞く様になったよね。彼らに『何故、会葬に行かないの。お世話になった人でしょ』と問うと『だって、もうこの人(故人)からは、何もしてもらえないから』と、耳を疑う答えが返ってきた」と。対し、社長が「そりゃ、たまげた。私の周囲ではまだ、そんな話は聞かないな。が、その内、浸透して来そうだね。日本は将来、どんな国になっていくのかな」と。


更に、この社長が「ところで住職。住職の話には時に、とんでもない危な目な話がありますが、SNS の中では投稿されてない様ですが」と。「投稿すれば、間違いなく大炎上するでしょうね。だけど、そんな話(炎上するだろう話)の方が、間違いなく面白いし、教訓にもなるんだよね。人間は罪深く、泥臭い生き物でしょ。叩いて埃の出ない人間など、1人もいませんよ。綺麗事で固めて、何の参考になるのやら」「その様な話は、封印してるの」「活字にすれば、延々と残るから、延々と誹謗中傷がやってくるでしょ。鬱陶しいですよね。だから、活字に残らない講演会とか、お寺での法要とか、相談に来られた人に、例え話として使うとか。そんな時に話すかな。みんな、文句も言わず、無駄口も叩かず、興味津々で聞いてますよね。SNS の中でも、読み手が自分の胸の中だけで、感情を納めてくれるのなら、バンバン法話に書きますけどね。そんな泥臭く、面白く、教訓になる話を聞けないは、勿体無いというか、損をしてるというか。世の中には、そんな炎上するだろう面白い話を持っておられる方が、恐らく山ほどおられるのではないかと」「じゃ、住職の『炎上するだろう話』を聞きたければ、講演会か、お寺に行く事だね」「御意」と。