1分で読める小さなお寺の法話集

子育て、人材育成に関する法話を実話と歴史から紐解いて書いております。

【住職の法話。考え方を少し変えるだけで、苦しい人生が、楽しい人生に】 石川五右衛門さんが「浜の真砂が尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」と。いじめも虐待も、人間が存在する以上は、絶えることは。

2023-07-23 08:14:08 | 法話

【7月25日投稿分】


檀家の男性が「神戸で6歳の男の子が、虐待されて殺された事件ですが、凶器で激しく殴られた打撲痕が10箇所以上もあったとか。警察に複数の鉄パイプが部屋内から押収されたんだってね。加害者は、母親とその弟と双子の妹だってよ。産みの母親と、叔父と叔母だよ。押し入れに断続的に押し込め、虐待し続けていたと。この様な話を聞く度に、この事件と同じとまでは言わないが、虐待されて育った子供時代の、私の事が脳裏を過ります。子供は生まれる時に、何の選択権もなく『これがあなたの親』と有無も言わさず、押し付けられる。生まれた途端に、いきなり目の前に地獄、極楽が。私も子供の頃は『何でこんな親の元に』と、定を恨んだ事もありましたが『そんな事を言っても仕方がない。親は親、子供は子供』と社会に出てからは、自分の人生だけに心を向ける様に努めました」と。


更に、この檀家男性が「虐待されて育った子供が、親になってわが子を虐待するは、統計上から見ても、少なからずと。子供の頃は『こんな親には、絶対にならんぞ』と親を否定していたにも関わらず、知らず知らずにそれが身に付いていて、いつしか親と同じ様な事(虐待)をわが子にする様になると。住職が度々法話の中で『親が作った家庭環境で、その親が育てる。親と同じ様な人間になる確率が高いは、当然の流れ』と。何か、わかる様な気がします。『自分も1歩間違えたら』と感じる事が偶にあります。私は常にその事を心に言い聞かせながら、子育てをしております、虐待に限らず、知人達を見ても、お金にルーズな親の元で育った子供は、やはりお金にルーズが多いですもんね。当に『躾(しつけ)は、する物ものではない。躾は、見せるもの』ですよね。良い事も、悪い事も」と。


対し、拙僧「そうだよね。自分は自分、人(他者)は人、だもんね。『常識じゃ、考えられん』と嘆いたって、一定数こんな人間(虐待する親)は、必ず存在しております。問題の根本は教育ですが、法律で厳しく規制していくしかないですよね。人の命の話ですもんな。英国人に嫁いで25年以上、ロンドンに住んでいる妻の妹が言っておりましたが、英国では、3歳以上の子供と親が、一緒に風呂に入っていると、性的虐待を疑われ、近所から通報され、警察が有無も言わさず、家の中に乗り込んでくると。妻の妹も1度、子供と一緒に風呂に入っていて、近所から通報され、警察が乗り込んできたと。が、母親が日本人だとわかると、日本の習慣を理解されている様で、引き上げて行かれると。子供に対する虐待に関しても、国が速攻介入し、親から子供を引き離し、施設に保護すると。妻の妹が言うには『子供は、神の子』という考え方から『あなたは親として相応しくない』という徹底した考えの元で、国家は動いているのではないか、との見解を」と。


この檀家男性が「英国の様に、ドカドカと家の中に、乗り込んで来るが良いとは言いませんが、この度の神戸の様な残忍な事件が頻繁に起こっている以上、日本もある程度は、その様な権限を、警察に与えるも必要なのではないか、と思うんですよね。恐らくニュースになっているは、氷山の一角ではなかろうかと。無抵抗の幼児、無抵抗のご老人、の命の存続の問題にて、政治家さんには真剣にこの問題を討論して頂きたいものですね。死んだ(殺された)後で議論するでなく、死なないで(殺されないで)済む方策を、考える方が先ではないかと、そう思うんですけどね」と。


更に、この檀家男性が「住職の法話の受け売りですが、釈尊が2500年前に『人間、生まれを問うな、育ちを問え』と、教育の大事さを世間に説かれたでしょ。教育、教養なきが故に、様々な問題が引き起こされていると。当に、世の安定、安穏は教育ですよね。それと法律に関しては、紀元前1700年頃、古代バビロニア帝国の初代国王、ハンムラビ王が『目には目を、歯には歯を』の法典を。無法者を取り締まる為に。この法律は『やられたら、やっちまえ』と復讐を煽っている様に勘違いされてますが、実は『同じ程度の復習をするにとどめなさい』と制限(抑止の意図)を施しているもの。という事は、されただけは、して返してよい、と。虐待されて、無惨に殺された無抵抗の幼児、ご老人の報道がある度に『その人にした(虐待)様に、まったく同じ事をして返してやれ。されば、虐待しながら、捕まったら今度は、俺がこんな目に遭わされるのか』と、少しは考える様になるんじゃないかと」と。


続けて、この男性が「この私の考え方が、正しいとは思いませんよ。思いませんが、何の罪もない人が殺されていく姿を見ると、何かしら阻止する方策を見つけないとですね。日本は、事件が起こらないと、警察は動きませんもんね。こんな意見を言うと『虐待されて育ったが為に、そんな人間になった可哀想な人もいるんだぞ』とか『育児ノイローゼで、そんな行為に至った、可哀想な人もいるんだぞ』と反論してくる人達が必ず出てきます。確かに、加害者にも可哀想な境遇の人はおられるでしょうが、何の罪もなく殺された人の事を思いますとね。被害者(命を奪われた人)よりも加害者(命を奪った人、生きている人)の方が、人権を盾に擁護される世の中って、どう考えてもおかしいと思いませんか。殺された人はもう死んでいるので、人権を考える必要がないって事なのかな。それじゃ、あまりに、被害者とその家族が可哀想ですよね」と。


この檀家男性ですが、言いたい放題の事を言っている様に、聞こえている読者もおられるでしょうが、それは、それは、親からひどい虐待を受けてきた人でして。この男性は自らで心の闇を克服し、今では親のお墓参り、親の年忌法要も、滞りなく勤めております。ただ、ただ『虐待をしない、させない、の世界を作りたい』を常に。「私は自力で立ち直せましたが、そんな人ばかりでは。虐待されてきた人間にしかわからんものがありますよ、住職」と、時折溢すように言葉を。


石川五右衛門さんが辞世で「浜の真砂が尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」の言葉を、後世に残されましたよね。いじめも虐待も、人間が存在し続ける以上は、絶える事はないでしょうね。『人よりも優位に立ちたい』という意識は、大なり小なり誰しもが、必ず持っているもの。なれば、決め事(法律)で抑えていくしか。人の命(幸せ)の問題ですもんね。綺麗事で片付けられる問題では。


【教育とA I 】

この檀家男性が「住職、その教育についてですが、少し話はズレますが、実はA I の事です。先日、番組『そこまで言って委員会』で、旅客機のボーイング737MAX の墜落事故の話が。A I とパイロットが喧嘩した結果、A I の判断が優先させられて、2018年にインドネシア、2019年にエチオピア、と相次いで2機が墜落。合計346人が死亡されたと。センサーの異常(誤作動)とA I が信じた事で起こった事故だと。こんな時、人間がA I を止める事が出来ないのだと。なんか、怖くないですか。特に、原発なんかを全面的にA I に任せる様な事になったら」と。


対し、拙僧「そうだね。A I が普及したら、人間の職業が失われるなんて事が言われているが、意外にそうでもないかもですよ。所詮機械だから、誤作動(異常)は起こすし、最終判断はやはり、人間がしなくちゃ。いつでも軌道修正が出来る状態にしておく事が大事だよね。『知識は学問から。が、その知識を活かす知恵は、経験から』だもんね。A I は、これからどんどん進歩していくだろうが、今のところは、やはり、人間が最終判断をした方が。2018年にノーベル生理学•医学賞を受賞された本庶佑先生が『教科書に書いてある事を信じない』と言われましたよね。経験なき知識は、いかに豊富な知識を持とうと、ただの『物知りさん』に過ぎんですもんな。人間の古典的な対応が、まだまだ、必要ではないかと」と。


次回の投稿法話は、7月30日になります。





【住職の法話。考え方を少し変えるだけで、苦しい人生が、楽しい人生に】 昨今、戒名を付ける意味や、この戒名はどんな意味か、と問うてくる若者が増えてきましたね。それでは、とこの度、過去の法話から。

2023-07-23 07:03:48 | 法話
【この法話は、今年の2月15日に投稿させてもらった話です。ここ最近、度々方々から、戒名を付ける意味、この戒名はどういう意味、を問われる事が。7月施餓鬼盆、8月盂蘭盆、9月秋のお彼岸、と供養月が続くからでしょうかね。特に、若い人からの問い掛けが多いですね。そこで、再度その理由の1つを書いた以前の法話を 】

今日、2月15日(恐らくこの日)は、釈尊入滅の日。所謂、涅槃会。投稿写真は、わが寺の『釈迦涅槃像(青銅造、長さ5メートル)

檀家男性が「SNS の中の知人のチェックをしてると、他界された人達の名前が何人か。名前まで消去するは、寂しい感じがして。住職はその様な人達をどうされてますか」と。「そのまま消去せずに残してるよ。名前を見たら、その人達を思い出す事が出来るし、もしかしたら、向こう(浄土)から、メールや電話が来るかもしれないし」「んっ、えっ、メールが、ですか」「ロマンだよ。ロマン。拙僧にとっては、お墓や仏壇も、同じ意味合いなんだよな。その前に座ったら、故人を思い出す事が出来るでしょ。その場所に霊魂が『宿っている、宿っていない』などは、そう大きな問題ではないかな」と。

この檀家男性が「ところで住職。戒名(送り名)って、必要なんですかね」と。「例えば、拙僧の俗名は、山本博文でして、『山本博文位』では、どんな人生を歩んだ人か、さっぱりわからんでしょ。わが寺には、江戸時代後期から過去帳に戒名が残っている檀家が。これは、何を意味するかといえば、誰1人として代々の子孫が、親を粗末に扱わなかった、という証拠なんですよね。拙僧の山本家は、明治初期からの戒名しか、過去帳に残ってない。恐らくその頃に、親不孝者がいた、という事なのかな。戒名に使われている漢字を見ると、この人は、武士だったのか、百姓、漁師、車引き、坊主だったのか、とか、いつ頃、どの様に他界されたのか、までわかる事が。向こうには浄土があり『名無しの権平』で逝かせる訳にはいかないので、住職は戒名を授けている、が建前だが、そんな想像上の事よりも、私達の家のルーツを知る為の資料としては、これ程に参考になる物はないですよね。昨今は拙僧、遺族の人達に「故人(生き様)を漢字1文字で表すとしたら、どの漢字を当てはめますか」と伺う事が。その漢字を戒名の中に入れる事が」と。

更に、この檀家に拙僧「時折『家のルーツを知りたい』と若い人達が『過去帳を見せて下さい』とお寺に来られる事が。先祖の職業、その他様々を戒名から知る事で『本当に存在してたんだ』と、グッと先祖が身近なものに。拙僧は坊主の仕事で、何が最も好きかと言えば、戒名を付けてあげる事。その人(故人)の人生を熟考し、100年後の子孫にまで、先祖の生き様が想像出来る様な戒名付け(授戒)を。所謂『虎は死して皮を留め、人は死して名を残す』ですよね。戒名は、生き様を子孫に伝える役目も担ってるんだよね」と。

更に、この檀家男性が「ところで、戒名料って、高額過ぎると思いませんか、住職」と。「拙僧のお寺は、戒名は無料。全て『〇〇院〇〇〇〇居士(大姉、不生位)と授けているよ。お寺によれば、100万円、50万円は、ザラに。『こんな高額なら、戒名など貰わんでいい』と言う人達が増加しても仕方がない事だよね。ただ、戒名料が高額になったは、お寺側から出てきた話ではないんだよな。戒名の『院号、居士、大姉』は、昔は、お寺に貢献(お布施、米、野菜などの奉納、境内掃除、法要の奉仕など)された人達だけが貰えたもの。貢献されてない人達は、幾らお金を積んでも与えられなかった。ところがこの国は、経済繁栄(昭和の時代)と共に成金さん達が。その人達の子孫が『私の父は、社会的地位も財産もある人間。その人の戒名が、〇〇〇〇、の4文字では、葬儀の時に恥を』と、お寺側に申し立てを。昔は、戒名を見たら、欲得なしにお寺に貢献された人(人徳者)かどうかが、一目瞭然の時代。そこでお寺側が『そこまで、院号、を望むなら、お寺に貢献して、院号、の戒名を頂いた他家の檀家から文句が出ない様に、それなりの戒名料を払いなさい』が高額戒名料の始まり。つまり、在家の見栄っ張りから始まったもの。それを後々坊主が逆手を取って、お金儲けに走り出し、現在の様な高額戒名料に。それぞれのお寺さんの事情もあるでしょうが、まあ、そろそろ見直された方がいいかな。政界(憲法を含む)も、財界も、教育界も含め、そろそろ様々、見直す時期に来ている様に思えますな」と。

【余談】
檀家90代爺様が拙僧に「戒名は生きてる内に貰うが、本当なんだろ。戒名くれや」と。横にいた婆様が「住職。遠慮せず、名付けて下さいませ」と。「じゃ、『天寿院好色一代居士位』ってえのは、どうだい」と。爺様絶句、婆様爆笑。すると爺様「婆さん。今すぐにわしと別れて、またすぐにわしと結婚してくれ。やり直す。そげな戒名貰ったら、100年先の子孫にまで『この先祖、よっぽど、色ボケだったんだね』と笑い者に。どうにかならんか、住職。じゃ、今日から死ぬまでの爺様を見て、戒名を付けようかね。『天寿院伴侶一途居士位(生涯、奥様一筋の人生)』と付けられる様な晩年にせにゃよ」「任せとけ」と爺様が。

【追伸】因みに、高野山奥之院には、織田信長公の供養塔が。発見されたは、約50年前、1970年にて。見つけられた手立ては、戒名から。本能寺にある供養塔の戒名『総見院殿大相国一品泰巖尊儀』を参考に、高野山で『総見院泰巖大居士』の供養塔が発見されて。戒名は、その家のルーツを知る資料に。

次回の通常投稿法話は、7月25日になります。