53年も前の思い出になりますが、北海道電力殿向けの、石狩川ほとりに奈井江火力発電所の設計を担当しました。発電所の水は石狩川の豊富な水の利用でした。
奈井江火力発電所が完成し、運転員や補修維持管理のお客様にある装置の運転、管理、維持の説明に呼ばれました。奈井江町は札幌から北に列車で1時間30分位の所にあり、当時東京から1日かかりの出張で奈井江町の旅館に宿泊しました。とても静かな雰囲気の旅館でした。
丁度冬の時期で、その旅館には薪ストーブがあり、薪で暖を取りました。薪は白樺で、ストーブの中で良く燃え、申し分のない薪でした。その時、北海道では白樺は薪に用いられる、冬の暖房の貴重な燃料であることを理解しました。
その発電所での技術説明会には、三菱重工の製品を使用していたので、広島市の三菱重工業のエンジニアにも同席していただきました。無事に私の技術説明会を終了し、旅館に帰って風呂に、三菱重工業のエンジニアの方と共に入りました。するとその三菱のエンジニアの方が、私の背中を洗わしてください、とおっしゃるので、びっくりしました。なぜ私の背中を洗うのか、お尋ねしましたら、私は40歳代半ば以上に見え、高校生位の子供がいるように見えるのだそうです。三菱のエンジニア(確か私より10歳年上だったと思います)よりずっと見かけは、年上に見えるゆえに背中を洗うことをさせてください、とおっしゃるのです。私は27歳の独身であることを伝えましたら、びっくりされました。当時、私はとても老けて年上に見られ、他社の人たちから40歳以上にみられていましたので、止むを得ないと思いました。私が年齢を明かすと、大笑いになって、共に北海道の奈井江町の旅館の風呂を楽しみました。
その三菱重工業のエンジニアは広島から北海道への列車での長旅なので、同僚たちと「水杯」を交わして、北海道への初出張になった、と話されました。以来そのエンジニアとは大の仲良しとなり、私が退職し郷里に帰る時には、三菱重工業殿の営業担当様から記念品を頂きました。北海道の奈井江町の旅館でのことが絆になって長いお付き合いができ、懐かしい思い出になって残りました。今は四国の郷里に帰り過ごす毎日ですが、北海道に行く機会を作り奈井江町に行って、当時の旅館を訪ねてみたいと思います。
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