醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより 120号   聖海

2015-03-14 12:47:55 | 随筆・小説

 「ロシアの声」からのコピー
 元首相・鳩山由紀夫氏のクリミヤ訪問での発言 
 
 モスクワで3.13日、クリミアを訪問した日ロ協会の指導者である鳩山由紀夫元首相のブリーフィングが開かれた。鳩山氏が率いる5人からなる代表団は13日、ロシアを出国する。鳩山氏はMIA「ロシア・セヴォードニャ」で開かれたブリーフィングで、ロシアのジャーナリストたちを前に、残念ながら日本のマスメディアはクリミアの状況を欧米の立場から伝えていると指摘した。
鳩山氏はクリミアで、地元の人々や、クリミアで暮らす日本人、モスクワ大学セヴァストーポリ分校の学生と会い、クリミアの住民が自発的に実施した住民投票の結果、クリミアがロシアに加わったことを個人的に確信した。
ブリーフィングには、ロシア側からクリミア共和国のゲオルギー・ムラドフ副首相が出席した。ムラドフ氏は、鳩山氏一家が露日関係の発展に大きく貢献し、鳩山由紀夫氏が、自国・日本の愛国者としてクリミアで露日の友好関係を確立するために膨大な活動を行ったと指摘した。なぜならムラドフ氏によると、ロシアとの友好関係を「望んでいないのは、ロシアを敵で囲もうとしている人々だけ」だからだ。
 鳩山氏は日本に帰国した後、国民やマスコミ代表者にクリミアの真の状況に関する情報を伝える予定。また鳩山氏が、クリミア訪問について書籍を執筆する可能性もある。
 ラジオ「スプートニク」が、露日関係発展にあらゆる可能性を与える鳩山氏のブリーフィングの様子をお届けする。

 鳩山氏は冒頭、次のように挨拶を述べられた。

‐ありがとうございます。こちらにお招きをいただいて感謝を申し上げます。私どもは日本から5名の団体でクリミアを訪問してまいりました。私たちは西側、とくに米国中心の情報によって日本の多くの報道がなされています。そのことが必ずしも日本の国民に正しい報道がなされていないのではないかと大変心配しておりました。私がクリミアに参りましたのはいくつかの理由がございますが一番の理由は、正しい歴史的な事実をこの目で見て、そして、クリミアの皆さん方がどのように暮らしておられて、どのような未来を持とうとしておられるかを直接拝見することでございました。しばしば日本では、米国と西側諸国にならいまして、経済制裁というものをロシアに加えております関係で、残念ながらこの経済制裁によって日本とロシアの関係も必ずしも正常な状況ではなくなってしまいました。日本の政府が制裁を加えるということに関しては、それは日本政府の立場でありますが、それが正しいものであるかどうかということを私たちは判断する必要があろうかと思っています。ロシアの軍事的なパワーによって住民投票がなされたのではないかと、そのような報道も日本ではなされております。従って、住民投票も正当なものではなかったから、制裁を加えるという論理が成り立っております。それが果たして真実かどうかということを知りたくて、クリミアを訪れました。多くのリーダーの皆さん、ベレヴェンツェフ大統領全権代表をはじめ、多くのリーダーの皆さんにお目にかかってまいりましたし、クリミア連邦大学と、また、モスクワ大学のセヴァストーポリ分校において、多くの学生さんたちとディスカッションをしてまいりました。そして分かったことは、住民投票が決してロシアの圧力でなく、自分たちクリミアの住民の皆さん方の自発的な行動の中から正当に行われたものである、結果として、民主主義に基づいて、ロシアへの編入というものを、自ら求めたものであるということがわかりました。国際法違反とか、ウクライナ憲法違反である、などといった批判もなされておりましたが、決してそうではなく、ウクライナ憲法も忠実に守りながら、国際法を違反することなく、住民投票がなされたことも、様々な方々の意見を伺いながら、事実として知った次第でございます。このような中で日露の関係が、たとえば領土問題を含めて、いまだに解決がされていない状況の中で、果たして日本がロシアに制裁をこれからも続ける意味というものがあるのかどうか、大変、私は、疑わしく思っています。早く正常な日露関係に戻して、そしてプーチン大統領閣下の日本への訪問を早期に実現して、日本とロシアの交流がもっともっと盛んになることを期待しております。

質疑応答:

―日本が対ロ制裁を解除する可能性はあるでしょうか?もしあるとすれば、いつ行われるでしょうか?もう一つの質問があります。鳩山氏は、日本での情報封鎖を打ち破ることができると述べられましたが、それをいつ、どのような方法で行うことができるでしょうか?

「私として、出来る限りのことをしてまいりたいと思います。まず、私は東アジア共同体研究所という研究所の理事長をしています。その立場から、たとえばインターネットなどの報道によって、国民の皆様方に正確な情報をお伝えしてまいりたいと思いますし、また、ウクライナ問題、クリミア問題に対して、ブックレット、本などを書き著すことなどを行いながら、国民の皆様に正確に情報をお伝えしてまいりたいと思っています。できれば政府関係の方々にもお伝えする努力をしたいと思っています。」

―鳩山氏は、クリミアと日本は経済面で協力が可能だと述べられていますが、具体的にはどの経済分野での協力が可能でしょうか?

「クリミアの皆様方、特に指導者の方々と意見交換をして、日本の技術力に対して高い評価(をいただき、)協力の可能性というものを検討しております。さきほどお話がありましたように、水の供給問題、あるいは電力の問題、さらには、これはアファナシエフ駐日ロシア大使から発言をいただきましたが、ケルチ海にかかる橋の建設というものをいま進めているという話がございました。本来ならば、すなわち、制裁というものが無い状況であれば、このような技術というものを、すぐにでも協力させていただきたいと思っています。ただ、現在、政府がロシアに制裁を課しているという状況の中で、必ずしもそれぞれのプロジェクトがすぐに役に立つかどうか、採用されるかどうかは疑問であります。極力、民間の力で、そのような技術協力を行うことを求めてまいりたいと思っていますし、先端技術の、民間の技術力をクリミアの皆様方のために協力させていただくと。民間企業の進出というものを考えられないか。これから日本に戻ってから検討してまいりたいと思っております。」

―ポクロンスカヤさん(クリミア検事総長)のファンだというのは本当ですか?

「正直に申し上げますと、ポクロンスカヤ女史には、今回はじめてお会いいたしましたが、それまで必ずしも情報を存じ上げておりませんでした。魅力的な方だとは思っておりますし、ウクライナにおられながら、大変正しい判断をされた女性だと伺っております。しかし、何か特別な感情を持っていたとか、そういう話は噂の段階で、事実ではございません。」

―ウクライナ南部・東部を視察される計画はありますか?例えば、ドネツク視察などはいかがでしょうか?

「日本からの制裁を解除するという方向は、望ましいとは思いますが、現在、米国に追随する外交しか持ち合わせていない日本の政府は、なかなかその判断をしづらいと思っています。それだけに、少なくとも、「日本の皆様方には事実を知っていただきたい」という願いでクリミアを訪れました。私がこれから行動していくことによってクリミアの事情というものをより、日本の国民の皆さん方が知っていただくことによって、政府を動かしていくことは不可能ではないと思っておりますので、そのような草の根の活動をしてまいりたいと思います。また、現在のところ、やはり、ウクライナの東部に関しては、様々な悲劇が生じておりますが、その地域に直接伺うということを今は考えてはおりません。」

―自民党は鳩山氏のクリミア訪問を非難したそうですが、野党側、例えば民主党は鳩山氏のクリミア訪問に支持を表明していますか?

「残念ながら、民主党の方々からも、必ずしも好意的な反響が来ているわけではありません。「できれば行かないでほしかった」というような言葉が返ってきております。ただ、私は民主党を設立した人間ではありますが、残念ながら現在の民主党は、2009年の政権交代のときの民主党とは大変に変わってきてしまっておりますので、また、私も民主党の党員ではなくなっておりますので、民主党だから賛成してくれるだろうという期待は持ってはおりません。」

―鳩山氏のクリミア訪問の後、西側のプロパガンダの正当性を確かめるために日本から誰かがクリミアを訪れる予定はありますか?

「私は、その可能性はあると思っています。日本の外務省は私が訪問することに関して否定的、批判的でありましたけれども、しかし、制裁を課すということと、ではその地域に行ってはいけないかということは、全く別の次元の話だと思っています。むしろ、多くの日本の国民の皆さんがたに、クリミアの真実を見ていただくことが大切だと思っておりますので、色々と疑いを持っておられる、特にジャーナリストの方々に率先してクリミアに入っていただき、クリミアの事実を知ってもらいたいと思っています。そのような努力をしてまいりたいと思います。」

―日本に帰国してパスポートが取り上げられた場合、クリミアに住まわれるご予定はありますか?

「私は、日本政府は、賢明な判断をすると思います。一部では、過激な方から、そのような言動が見えておると思いますが、私は、パスポートを取り上げるなどということが行われるべきだとは思っておりません。これは、かつて駐日大使を務められたパノフさんの話ですが、ロシアでも、制裁は制裁として、誰がどこへ行ってはならないなどと政府が制限をつけるということは適当な判断ではない、と申しておられます。私もそのように思っております。」

―クリミア半島はとても美しいところで日本の伊豆半島に似たところがありますが、今回のご視察の印象について教えてください。

「伊豆半島と似ている部分もあるいはあるかと思いますが伊豆半島以上にクリミア半島はスケールが大きな地域だと思っています。黒海の海がたいへんきれいでありましたし、桃の木でしょうか、満開で、たいへん、木々は美しかったと思っております。さらに、急峻な山肌も見せていただきました。このような自然は、みどりの多い伊豆半島と似ているとも言えますが、しかし、よりスケールの大きな、地球というものを感じさせる地域であったと思っております。」

―ロシア訪問の枠内でロシア人の政治家の誰と会談しましたか?

「モスクワ滞在中には、ナルィシュキン国家院議長閣下にお目にかかりました。お会いした国会議員は、あと、スリペンチュク露日議員連盟会長が、そのナルィシュキン国家院議長との会談に同席されておりました。」

―今日の時点で、日本の企業からクリミア発展のために何らかの前提的な合意は出されていますか?

「基本的にはゼロからのスタートということになりますが、私どもの同行者の中に、LEDの技術を開発した企業に属している者も含まれております。たとえば、彼も、大変意欲的に、日本の先端技術を、クリミアで大きな花を咲かせることが出来るのではないかと、そのように考えております。具体的には、これからのスタートでございますが、大きな希望をもって臨んでまいりたいと思っています。」

おしまいに鳩山氏は、次のように述べられた。

「一言、最後に付け加えさせていただきたいと思います。日本のメディアなどでは、鳩山さんはどうやってクリミアの皆様方が住民投票を正しく実行したかということに対して、実際にそのことを見てきたのですかと、そういうふうに、批判的に質問をされています。それに対しては、まさに、さまざまな指導者の方々から、そして学生さんたちから、その事実を事実として受けとめさせていただきました。と、同時に、一年経って、皆様方が、ウクライナからロシアへ編入をクリミアの皆様が決めたという政治判断、住民投票、民主的な行動が、正しかったと、みなさんが幸せを享受しておられるということが何よりの証拠だと、そのように考えております。ある意味で、クリミアの皆さん方が、ロシア人、ウクライナ人、クリミアタタール人の皆さん方が、多くの民族が協力をしながら、それぞれ人権というものを守られながら、正しく生活をされている姿は、世界のモデルにもなるくらいではないか、そのように考えています。」


http://japanese.ruvr.ru/2015_03_13/283321900/

醸楽庵だより 119号  聖海

2015-03-14 10:13:51 | 随筆・小説

   存在責任。難しい言葉だ。存在責任は人にも、商店にも、企業にもあるとFさんは主張する

 東京下町の床屋さんは街の男たちがおだをあげる所だった。床屋さんには街の情報が集まった。そんな伝統があった床屋さんでFさんは育った。昭和四十年、Fさんは東京都立両国高校を卒業した。当時の両国高校は下町の名門高校だった。東大合格者数が日本全国の高校の中で十番以内に入る名門高校の中の名門高校だった。Fさんは高校を卒業すると床屋さんになった。大学には進学しなかった。彼には弟がいた。父親の死がFさんを床屋さんへの道を選ばせた。人は与えられた条件の中でしか生きることができない。
私にも思い出がある。高校三年の国語の授業であった。教師がクラスメートの兄の話を始めた。彼は我々と同じ高校を卒業し、早稲田大学に進学した。彼は大学を卒業すると家業の畳屋を継いだ。教師は家業を継いだクラスメートの兄を称えた。家業を継ぐという話を担任した卒業生から聞いたとき、担任であった国語のその教師は我々に話したように黙って彼を称えたようだ。この思い出がFさんと重なった。
 Fさんは家業を嫌がるのではなく、自分の存在責任として肯定的に引き受けた。単なる生活手段としての床屋さんではなく、自分が生活する地域の床屋さんとしての責任を果たす。地域に生きる。ここに床屋さんとして存在する責任がある。地域をつくる。ここに商店として床屋さんとしての責任があると自覚した。
 東京、墨田区鐘ヶ淵にFさんの床屋さんはあった。お店を改築し、昔通りに繁盛した。千葉県に住いを移し、鐘ヶ淵に通った。昭和五十年を過ぎると古い町並みを壊し、再開発が進むと地域の家々は歯が欠けるように少なくなっていった。東京の床屋さんを弟に任せ、自分は千葉県に床屋さんを開いた。
夫婦二人で一日中仲良く仕事する秘訣はなんですかと、訊ねると「真面目に仕事をしないことでしようか」と答えた。「仲が良いですね」「そうじゃないですよ」「細かいことを言わないことですよ」「気に入らないことがあっても奥さんを受け入れるということですか」「まぁー、完璧を求めるのではなく、八割がたで満足するということですよ」「良い加減ということですか」「自分の責任だと認識することです」
 家にあって自分の存在責任を自覚することが夫婦仲良く仕事ができる秘訣のようだ。
 商店会でイベントしようと提案すると「それでどのくらい売り上げがあがるんだ」という意見がよくでます。商店街のイベントは販売促進事業ではありません。地域社会における商店の存在責任を果たすということです。商店経営者は一日中ずっと地域の中で生活しています。ちょっと大袈裟に言うと商店は地域と運命を伴にしていますよ。地域の自治会と商店会が交流する。それがイベントですよ。朝、商店を開けた時、通学、通勤を急ぐ地域住民の方々と挨拶を交わす。この挨拶ができるようになることが地域に生きる商店の存在責任じゃないかと私は思っているんです。
 地域と共に商店は育っていくもの。商店会の販売促進は第一義的なことではない。地域をつくることが商店会の第一義的な存在責任だとFさんは述べる。地域が活力を持つことが商店の命を育む。シャッター街が広がり、地域が壊されるとそこに住む住民の心も壊されてしまうということなのだろう。
 販売促進事業は人間の心を破壊するのかもしれない。