沖縄、辺野古新基地沿岸埋め立ての承認撤回を石井啓一国交大臣は執行停止を決定
2018年10月30日、石井啓一国交相(公明党)が沖縄県による辺野古新基地沿岸埋め立ての承認撤回について、執行停止を決定した。2018年8月30日に沖縄県が行った埋立て承認取り消しに対し、防衛省沖縄防衛局長は国交相に、行政不服審査請求と同時に執行停止の申立てを行った。
これに対し、沖縄県が国交相に執行停止申立てに対する意見書を提出したのが、10月25日。それからわずか5日後の執行停止決定である。
安倍政権は法治主義を捻じ曲げ、違法な行為をしている。
行政法学会の声明を紹介したい。
行政法研究者有志声明
周知のように、翁長雄志沖縄県知事は去る10月13日に、仲井眞弘多前知事が行った辺野古沿岸部への米軍新基地建設のための公有水面埋立承認を取り消した。これに対し、沖縄防衛局は、10月14日に、一般私人と同様の立場において行政不服審査法に基づき国土交通大臣に対し審査請求をするとともに、執行停止措置の申立てをした。この申立てについて、国土交通大臣が近日中に埋立承認取消処分の執行停止を命じることが確実視されている。
しかし、この審査請求は、沖縄防衛局が基地の建設という目的のために申請した埋立承認を取り消したことについて行われたものである。行政処分につき固有の資格において相手方となった場合には、行政主体・行政機関が当該行政処分の審査請求をすることを現行の行政不服審査法は予定しておらず(参照、行審1条1項)、かつ、来年に施行される新法は当該処分を明示的に適用除外としている(新行審7条2項)。したがって、この審査請求は不適法であり、執行停止の申立てもまた不適法なものである。
また、沖縄防衛局は、すでに説明したように「一般私人と同様の立場」で審査請求人・執行停止申立人になり、他方では、国土交通大臣が審査庁として執行停止も行おうとしている。これは、一方で国の行政機関である沖縄防衛局が「私人」になりすまし、他方で同じく国の行政機関である国土交通大臣が、この「私人」としての沖縄防衛局の審査請求を受け、恣意的に執行停止・裁決を行おうというものである。
このような政府がとっている手法は、国民の権利救済制度である行政不服審査制度を濫用するものであって、じつに不公正であり、法治国家に悖るものといわざるを得ない。
法治国家の理念を実現するために日々教育・研究に従事している私たち行政法研究者にとって、このような事態は極めて憂慮の念に堪えないものである。国土交通大臣においては、今回の沖縄防衛局による執行停止の申立てをただちに却下するとともに、審査請求も却下することを求める。
呼びかけ人(50音順)
岡田正則(早稲田大学教授) 紙野健二(名古屋大学教授)
木佐茂男(九州大学教授) 白藤博行(専修大学教授)
本多滝夫(龍谷大学教授) 山下竜一(北海道大学教授)
亘理格(中央大学教授)