醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1486号   白井一道

2020-08-10 14:36:24 | 随筆・小説



   東京オリンピックは実現するのかな



侘助 都知事に小池氏はオリンピックを実施したいと思っているようだがね。
呑助 東京オリンピックを実現してもらいたいと都民は思っていると小池氏は考えているのではないのですか。
侘助 そうなのだろうな。そんな都民を初め、日本国民の意向に従ってオリンピックを開催しようと思っているのではないかと思う。
呑助 何としても実現しようと思っているお偉方がいるのではないですか。
侘助 オリンピックを当て込んで投資している人々にとっては、もしかしたら生きるか死ぬかの問題だと思い込んでいる人もいるのだろうね。
呑助 そうですよ。小さなところではお土産屋さんとか、宿泊業者とかいろいろいるのでしよう。
侘助 大会運営を請け負うと投資している業者にとっては死活の問題なのかもしれない。
呑助 そのような人々の意向を受けて小池都知事は当選するとすぐ、「東京オリンピックはコロナの感染防止を考慮しながら簡素化してやっていけるようにします。都民のみなさん国民みなさんの納得いただけるようなかたちで、開催できるように進めていきたいと思っています」と発表した。
呑助 夏になるとコロナ禍は終息するのではないかという甘い期待を小池都知事は抱いていたのかもしれませんよ。
侘助 問題は「コロナの感染防止を考慮しながら簡素化」することが可能なのかということかな。
呑助 コロナの感染防止をするには「三密」を避けるということですよね。スポーツは三密そのもののように思いますけれどね。
侘助 コロナ禍が治まれば少しぐらい三密であってもやれるだろうと思っていたのだと思う。
呑助 ところがコロナ禍は治まるどころか第二波が来てしまった。東京は特に感染者が激増してしまった。見通しが甘かったと思っているのだと思いますよ。
侘助 「夜の街」を矢面にして不平を言っていたが、コロナ感染者が激増していくのはどうしようもない。非難すれば問題が解決するということではないからね。
呑助 「夜の街」に生きる人々は怒りぬいていると思いますよ。これは差別だと感じていると思いますね。
侘助 確かに「夜の街」という言葉には差別の意識が入っているように感じるね。差別感というのはいつも再生産されていくもののようだからね。
呑助 都民の中の不浄な者と言うようなイメージが「夜の街」と言う言葉にはあるように感じますね。
侘助 都知事自身がこのような発言をするのはどうかと思うな。
呑助 「小池都知事は『3密は避ける』と言っていますが、スポーツは3密そのものなんです。オリンピック精神というのは、言わば3密を礼賛しているわけです。選手たちの距離を縮めて、肉体的にも精神的にも世界中の距離を縮めましょうというのがオリンピック・ムーブメントです。そもそも新型コロナがあったらオリンピックなんかできるわけがない」とスポーツライターの小林信也氏は言っていますよ。
侘助 確かにそうなんだろうね。今も都内では1日200~400人単位で新型コロナウイルスの新規感染者が出ている。日本各地を豪雨が襲い、被災者も出ている状態だ。来年、東京五輪は本当に開催可能なのでしょうかね。
呑助 柔道、レスリング、ボクシングなど相手と密着する競技は安全性が確保できるのでしようね。接触しない競技といえばアーチェリー、ウェイトリフティング、カヌーなどでしよう。野球のようにボールを投げ合う競技も、感染者が発生した場合はクラスターになる危険性があるでしようね。だからできない競技がある。けれどIOCはコロナで競技を選別し、一部を除外することはできない。となると結局オリンピックはできないのではないでしようか。
侘助 小池知事の発言は政治的な発言であって、オリンピックが実際に可能なのか、どうかという発言ではなかった。ただ小池知事は都民の耳に心地よい言葉を告げただけなのかもしれない。