醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1497号   白井一道

2020-08-22 15:22:42 | 随筆・小説



   
  近ごろ聞かない「死の商人」とは



侘助 長崎の観光名所というと何かな。
呑助 いろいろありますね。まず何と言っても、平和公園に立っている平和祈念像でしようね。
侘助 神の愛と仏の慈悲を象徴し、垂直に高く掲げた右手は原爆の脅威を、水平に伸ばした左手は平和を、横にした足は原爆投下直後の長崎市の静けさを、立てた足は原爆の恐怖を表し、軽く閉じた目は原爆犠牲者の冥福を祈っているといわれる像かな。
呑助 像の高さは10メートル近くあるそうですよ。
侘助 大きな像だよね。長崎というと隠れキリシタンとかのイメージがあるね。
呑助 浦上天主堂ですね。キリスト教が日本に伝わって以来、カトリックの信者が多かったのではないですか。隠れキリシタンの摘発も行われたのではないですか。江戸時代は長崎のみ開港していたので、欧米人が長崎港の南の東山手・南山手に居住区を作り、その一角に大浦天主堂が造られたようですよ。
侘助 だから長崎には異国情緒が漂っているようなイメージがあるよね。 
呑助 オランダ坂、グラバー邸がありますね。グラバー邸は蝶々夫人所縁の家と言われていますよね。
侘助 グラバー邸の持ち主は何をしていた人なのか、ノミちゃん、知っている?
呑助 まさか蝶々夫人のご主人さんでは無いのでしようからね。多分貿易商だったのじゃないですか。
侘助 そう、貿易商だった。何を日本に売っていたのかというと、武器、人殺しの道具、鉄砲、大砲などを討幕派にも佐幕派にも売っていた。このような武器を売る商人を「死の商人」と言う。
呑助 グラバーは徳川幕府側にも、薩長土肥の討幕派にも鉄砲や大砲を売っていたのですか。
侘助 死の商人に愛国主義者はいない。鉄砲を買ってくれる人には誰にでも売る。それが商売と言うものだからね。
呑助 アジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々では未だに内戦をしている国々がありますね。それらの国にあっては戦争をしている双方に武器を売っている商人がいるのですかね。
侘助 最近、死の商人という言葉を聞く機会がほとんどないということはそのような商人が存在する空間が無くなってきているのではないかと思っている。
呑助 発展途上国で内戦をしている国にあっては支持してくれている軍事大国から武器を購入しているということですか。
侘助 二、三年年前のことだったけれど、ロシア国営放送のテレビを見ていたら、ロシアは武器輸出高が世界一になったと放送していた。現在はやはりアメリカが第一位のようだけれどね。
呑助 発展途上国にあっては、アメリカから武器を買う側とロシアや中国から武器を買う側とが戦っているという事になりますか。
侘助 カラシニコフ銃というゲリラが装備している有名な銃があるでしょう。この銃は旧ソ連が開発した最も有名な銃のようだ。
呑助 ソ連で開発、造られた銃なのでしよう。
侘助 その通りだ。実戦の苛酷な使用環境や戦時下の劣悪な生産施設での生産可能性を考慮し、部品の寸法の許容範囲が大きく、性能が優れている。ここに卓越した信頼性と耐久性、および高い生産性を実現した銃のようだ。ミハイル・カラシニコフが設計し、1949年にソビエト連邦軍が正式採用した自動小銃かな。この特性から、本銃はソビエト連邦のみならず、全世界に普及した。基本設計から半世紀以上を経た今日においても、本銃とその派生型は、砂漠やジャングル、極地などあらゆる世界の地帯における軍隊や武装勢力の兵士にとって最も信頼される基本装備になり、『世界で最も多く使われた軍用銃』としてギネス世界記録に登録されている。
呑助 ロシアは今でもゲリラにこの銃を供給しているということですか。
侘助 アメリカは日本やサウジアラビア、オーストラリアなどに輸出し、ロシアはインド、中国、ベトナムに売っている。