積極的平和主義とは
侘助 2020年8月15日、安倍総理は全国戦没者追悼式で次のような挨拶をした。
「今日、私たちが享受している平和と繁栄は、戦没者の皆さまの尊い犠牲の上に築かれたものであることを、終戦から75年を迎えた今も、私たちは決して忘れません。改めて、衷心より、敬意と感謝の念をささげます。
いまだ帰還を果たされていない多くのご遺骨のことも、決して忘れません。一日も早くふるさとにお迎えできるよう、国の責務として全力を尽くしてまいります。
戦後75年、わが国は、一貫して、平和を重んじる国として、歩みを進めてまいりました。世界をより良い場とするため、力の限りを尽くしてまいりました。
戦争の惨禍を、二度と繰り返さない。この決然たる誓いをこれからも貫いてまいります。わが国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携えながら、世界が直面しているさまざまな課題の解決に、これまで以上に役割を果たす決意です。現下の新型コロナウイルス感染症を乗り越え、今を生きる世代、明日を生きる世代のために、この国の未来を切り開いてまいります」。
呑助 安倍総理の言う「積極的平和主義」とは、具体的にどのような事をしていこうということなのでしようね。
侘助 暴力には暴力で抑え込むしか方法がない考え、暴力によって秩序と安定を図ることが安倍総理の言う「積極的平和主義」と言うものなのではないかと思っている。
呑助 江戸時代の岡っ引きと同じようなものですか。
侘助 そうなんじゃないのかな。江戸時代の刑罰は村や町といった共同体から犯罪者を追放し、共同体の平和と安定を取り戻していた。町や村といった公の共同体の外部に追放された無宿者、落伍者や犯罪者の共同体が形成され、その内部社会に通じた者を使わなければ捜査自体が困難だったようだ。だから博徒、エタ、的屋などのやくざ者、親分と呼ばれる地域の顔役が岡っ引になることが多く、両立しえない仕事の「二足のわらじ」を履いた。岡っ引きは奉行所の威光を笠に着て威張り、恐喝まがいの行為で金を強請る者も多かった。
呑助 軍隊という暴力で世界の秩序を守り、平和を築くということですか。
侘助 力で抑え込む。強い力が正義だという考えがあるのではないかと思う。世界最大の軍事強国はアメリカ合衆国だから、アメリカ政府の言う事を聞き、アメリカの指示によって日本の軍隊を派遣することが安倍総理の言う「積極的平和主義」と言うものじゃないかと考えている。
呑助 アメリカが世界の平和を乱すものとして考えているのはどこの国なのでしようかね。
侘助 東アジアでは朝鮮民主主義人民共和国がアメリカの支配する世界の平和を乱すものとして考えているのではないかと思う。
呑助 最近、アメリカのトランプ大統領は中国を名指して批判しているようですけど、アメリカにとって中国は世界の秩序を乱すものと思っているということですかね。
侘助 そうなんじゃないのかな。中国の経済成長が著しく、軍事力が強大化していることに脅威を感じ始めているのかもしれない。
呑助 アメリカは中国と仲良く、経済発展をしていくということにはならないのですかね。
侘助 「積極的平和」とは、貧困、抑圧、差別などが生む暴力を「構造的暴力」と言っている。この「構造的暴力」がない状態のことを「積極的平和」といい、「テロとの戦い」に勝利して、脅威を取り除くことが「積極的平和」ではない。この「積極的平和」を提唱したのは、平和学の第一人者で世界的に「平和学の父」と知られるヨハン・ガルトゥング博士である。安倍総理が「積極的平和主義」を旗印に掲げていることをどう思うかとガルトゥング博士聞くと、私が1958年に考えだした「積極的平和(ポジティブピース)」の盗用で、本来の意味とは真逆だと言ったという。
呑助 世界から戦争をなくすためには貧困、抑圧、差別などを世界からなくすことですか。
侘助 貧困は自己責任だろう。抑圧などは何もない。抑圧と感じるのであるなら、それは足るを自覚できないからじゃないのか。差別などどこにもありゃしない。それは被害者意識が強いからじゃないのか。戦争することが平和だと安倍総理は言う。