「朝日」5月24日付は、長谷部恭男・早稲田大教授と杉田敦・法政大教授の対談「安保法制 安倍政権の『話法』から考える」を掲載しています。 一部紹介させていただきます。
杉田敦・法政大教授:: 安全保障法制の関連11法案が国会に提出されました。 安倍政権は『平和安全法制』と
銘打っていますが・・・。
長谷部恭男・早稲田大教授:: 『戦争は平和である』」
杉田:: 『新語法(ニュースピーク)』ですね。 ジョージ・オーウェルの小説『1984』で、独裁者が国民に植え付け、
復唱させたスローガンでした」
長谷部:: 安倍政権の語法は、まさにニュースピークです。 『平和への積極的貢献』とは、地球上のどこへでも行
って米軍の軍事作戦を支援すること。 それなのに、日本が米国の戦争の巻き込まれることは『絶対にあり
えない』。 自衛隊の活動範囲を拡大しても、隊員のリスクは高まらない。 自分への批判は『レッテル貼り』
だが、自ら行う批判は『言論の自由』。 国会に法案を提出してもいないのに、米議会で『成立させる』と約束
し、同時に民主主義のすばらしさを熱く語る。 どれもこれもアベコベです」
杉田:: そう言えば、『無知は力である』も独裁者のスローガンの一つでした。 安倍晋三首相は党首討論で、ポツ
ダム宣言を『読んでいない』とし、先の戦争の評価についての質問に応えなかった。 『戦後レジーム』からの
脱却とうなら、大前提の知識ですが」
長谷部:: 読んでもいないものから脱却しようとは、マジシャンそこのけです。 そしてアベコベの集大成とも言える
のが、今回の安保法制です。 そもそも憲法9条は集団的自衛権の行使を認めていません。 行使容認に
基づく法整備も当然認められない。 法制化されれば、憲法9条は変えられたも同然です。 日本を、地球
上どこでも武力行使できる国に変えようというなら、正々堂々と憲法改正するのが筋です」
杉田:: 安倍さんは記者会見で、安保法制が成立したら自衛隊員の危険が増すのではという質問に、『発足以来、
今までにも1800名の自衛隊員が殉職している』と応じました。 しかし、これまで戦闘での死者はゼロです。
かつて著書で軍事同盟を『血の同盟』と表現した安倍さんだけに、犠牲を当然視していないか気がかりです」
長谷部:: 実際に戦場から戦死者の遺体が帰ってき時、1800人プラス1になっただけだとでも言うつもりでしょうか」