『仏像のひみつ』は2006年6月、『続 仏像のひみつ』は2008年5月に出版されている。私は、前書(2007年の初版第6刷)を購入して読んでいた。そして後書の出版を知ってはいたが入手していなかった。先般読後印象記として、『仏像 日本仏像史講義』(平凡社)の読了後にそのときの余韻で、後書を購入して読んでみた。
『仏像 日本仏像史講義』を大学の教養課程での仏像についての通史の講義だとすると、今回後書を読み、前書を再読してみて、この2冊は義務教育での仏像授業という感じである。
仏像の写真と仏像の部分図やイラスト図をふんだんに挿入して、個々の仏像を具体的にわかりやすく説明してくれている。仏像のこんなところをこういう風に見ると、仏像がよくわかるよ。仏像とお話ができるよ・・・・というスタンスで書かれているように思う。 川口澄子さんのイラスト図には硬軟が取り混ぜられている。仏像を絵図にした「硬」と漫画風に描かれた「軟」の絵の組み合わせである。イラスト図だけ見ていても楽しい。文章はお話口調であり、絵解き解説というタッチの書に仕上がっている。
ソフト・アプローチから仏像世界に一歩入ってみたい方は、こちらの2冊から読み始めると楽しく学べるだろう。オーソドックスに仏像の日本将来から現在までの仏像について基礎知識と概念を学びたい方、ちょっとハード・アプローチでもよい方は『仏像 日本仏像史講義』をお勧めする。
『仏像のひみつ』を再読して、あらためてなるほどとおもったのは、末尾の「仏像のひみつ顛末」に記されている出版の弁である。著者が東京国立博物館に24年間勤務されていて、最後に企画された展覧会が「親とこのギャラリー 仏像のひみつ」(2005年1-3月開催)だったという。この展示のコンセプトが好評であり、これを元にこの本がまとめられたそうだ。だから、わかりやすい! ともいえるのかもしれない。
「ひみつ」という興味を引きつけるタイトルのこの言葉は、「仏像鑑賞の観点」とも言い換えることができるように思う。それを親しみやすく表現したのだろう。鑑賞の観点という意味でいうと、前書に対して後書『続 仏像のひみつ』が2年後の2008年5月に出版されたのは「むべなるかな」というところ・・・・。
写真とイラストを併用して絵解きでわかりやすく読みやすい。しかし、そこには基本的知識はきっちりと述べられていて、要所・急所は押さえられていると思う。単に子供向きに興味本位、部分的に書かれた本、雑書ではない。個別の仏像鑑賞の入門テキストとして、仏像に楽しく接するための準備書になる。
2冊の目次をご紹介しよう。
『仏像のひみつ』
ひみつ その1 仏像たちにもソシキがある! ←「仏像の種類と大系」
如来、大日如来、菩薩、明王、天のそれぞれについて語られる。そして、例えば
如来の三十二相八十種好の代表例のマンガが楽しい。白毫、螺髪、肉身、水かき
これらがわかりやすい言葉にして語られている。
「その1」がほぼ全体の半分のボリューム(50ページ)である。
ひみつ その2 仏像にもやわらかいのとカタイのいる! ←「造像の素材と制作法」
金銅仏、塑像、乾漆像、木像がこの順でそれぞれ説明される。
その造像のしかたがイラストで示されているのでイメージしやすい。
一木造と寄木造の技法の違いもわかりやすくプロセス図となっている。
「その2」は22ページでまとめられている。
ひみつ その3 仏像もやせたり太ったりする! ←「仏像形状/形態の変遷」
仏像の胴体の輪切り断面と仏像のシルエット、大小で仏像の時代変化を説明する。
このあたり仏像鑑定の専門家の基礎知識部分がわかりやすくまとめられている。
仏像と深く接し対話していくのに必須の知識だろう。
「仏像は、はじめはやせてた」なんて、ご存じでしたか?
「その3」は9ページであり、実に要点が簡潔だ。
ひみつ その4 仏像の中には何がある! ←「仏像胎内の取り扱い方」
仏像の胎内の意味づけやどのように使われたかが具体例で説明されている。
大日如来像のX線写真図も掲載されていて興味を引きつけることだろう。
「その4」は7ページでのやさしい説明となっている。
そして、4ページの分量で、「作品解説」として、この本に掲載の仏像の基本的データと専門的解説が、簡明にまとめられている。全体構成で本書の内容の質を示している。
「おしまい」からキーセンテンスを引用しておきたい。「仏像のひみつは人間のひみつです。」
この意味を味わいたい方はぜひ本書を手にとってみてください。
『続 仏像のひみつ』
冒頭に前書のダイジェストが3ページでまずまとめられている。前書の急所がわかる。
そして、前書の続きとして、4章構成になっている。
ひみつ その5 仏像ソシキのまわりにも誰かいる! ←「広義の仏像概念」
羅漢、聖徳太子、大師、神仏習合と人格神など、広義の仏像概念に話が及ぶ。
聖徳太子信仰の広がりが「日本の仏教のスーパースター」として説明される。
これはその根強い信仰の広がりや聖徳太子伝承を考えるとわかりやすい評言だ。
「その5」は43ページ分で説明される。やはりそれ位は必要になるだろうと思う。
ひみつ その6 仏像の着物にはソデがない! ←「納衣の着装法と表現様式」
如来像が数枚の布を身にまとっているだけなどと、思いが及ぶ人は少ないのでは。
「偏袒右肩(ヘンダンウケン)」「通肩(ツウケン)」などということば・・・・
仏像鑑賞の基本であるが、滅多に聞くことはないだろう。その絵解きが実に明解!
菩薩や明王の着物の持つ意味もちゃんとやさしく説明されている。
拝見する機会の少ない「はだかの阿弥陀如来立像」の写真まで掲載されている。
勿論、なぜそのような仏像が作られたのかと理由説明もある。
「その6」は20ページでの説明である。どのように布を着装するかの手順がわかる。
ひみつ その7 仏像の眼は光る! ←「仏像の玉眼について-歴史と技法」
仏像も開眼から始まるが、やはりその眼がキーポイントとなる。
なぜ玉眼が生まれてきたのか、その歴史的背景からやさしく説明されている。
この本で初めて、どのように玉眼が制作されるかを知った。実に巧妙!
仏師の創意工夫なのですね!そして、「運慶のなやみ」(p84)がおもしろい。
「その7」の章は10ページの分量。最後の2ページにまたがるコラムがまた興味深い。
ひみつ その8 仏像の色はイロイロ! ←「造像時の仏像の色の意味と技法」
長い歳月を経た現存の仏像を我々は見慣れている。だが、造像当初の諸像の色は?
この最終章では仏像の彩色の意味やその技法について語られている。
仏像の金色にも、鍍金、漆箔(シッパク)、金泥(キンデイ)と区分される。
「ウンゲン」は「コン・タン・リョク・シ」なんだとか。これも中国伝来だとか。
四天王立像の彩色の違いが、中国の東西南北と色の組み合わせに由来するそうだ。
仏像の色と技法について、学ぶことが多かった。
「その8」は28ページと、それなりにウェイトが置かれている。学びは深い。
こちらにも前書同様、5ページの「作品解説」が付されている。
前書が「基本の基本」についての説明とすると、後書は仏像世界へのステップアップと言える。著者によれば、「仏像の世界の奥深いところや、仏像のまわりにひろがる霧の中に、ちょっとだけふみこむ」という試みの書、垣間見るための導入編である。
「おしまい」に記された、末尾の一文を引用して、この読後印象記でのご紹介を終えたい。これがやはり、キーセンテンスだと思う。
「仏像のひみつは、きっと日本や日本人のひみつにもつながっているのでしょう。」
ご一読ありがとうございます。
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本書に関連する事項をいくつか検索してみた。一覧にしておきたい。
日光菩薩踏下像 東京国立博物館蔵
菩薩立像 東京国立博物館蔵
文殊菩薩立像 東京国立博物館蔵
十一面観音菩薩立像 東京国立博物館蔵
阿弥陀如来立像 奈良国立博物館 (裸形像)
十一面観音立像 附像内納入品1躯 奈良国立博物館
平安佛所 ホームページ
左端メニューの「廉慧しごと」の項目内に「仏像彫刻の技法」のページがあります。
一木造、割矧造、寄木造、玉眼の説明が載っています。
截金 :ウィキペディア
江里佐代子 :ウィキペディア
佐夜子のしごと :「平安佛所」
トップページ左端のメニューの項目内に「略歴と作歴」「截金について」のページがあります。
仏像 :ウィキペディア
繧繝(うんげん)・暈繝
四神 :ウィキペディア
仏像のひみつ :「東京国立博物館」
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『仏像 日本仏像史講義』を大学の教養課程での仏像についての通史の講義だとすると、今回後書を読み、前書を再読してみて、この2冊は義務教育での仏像授業という感じである。
仏像の写真と仏像の部分図やイラスト図をふんだんに挿入して、個々の仏像を具体的にわかりやすく説明してくれている。仏像のこんなところをこういう風に見ると、仏像がよくわかるよ。仏像とお話ができるよ・・・・というスタンスで書かれているように思う。 川口澄子さんのイラスト図には硬軟が取り混ぜられている。仏像を絵図にした「硬」と漫画風に描かれた「軟」の絵の組み合わせである。イラスト図だけ見ていても楽しい。文章はお話口調であり、絵解き解説というタッチの書に仕上がっている。
ソフト・アプローチから仏像世界に一歩入ってみたい方は、こちらの2冊から読み始めると楽しく学べるだろう。オーソドックスに仏像の日本将来から現在までの仏像について基礎知識と概念を学びたい方、ちょっとハード・アプローチでもよい方は『仏像 日本仏像史講義』をお勧めする。
『仏像のひみつ』を再読して、あらためてなるほどとおもったのは、末尾の「仏像のひみつ顛末」に記されている出版の弁である。著者が東京国立博物館に24年間勤務されていて、最後に企画された展覧会が「親とこのギャラリー 仏像のひみつ」(2005年1-3月開催)だったという。この展示のコンセプトが好評であり、これを元にこの本がまとめられたそうだ。だから、わかりやすい! ともいえるのかもしれない。
「ひみつ」という興味を引きつけるタイトルのこの言葉は、「仏像鑑賞の観点」とも言い換えることができるように思う。それを親しみやすく表現したのだろう。鑑賞の観点という意味でいうと、前書に対して後書『続 仏像のひみつ』が2年後の2008年5月に出版されたのは「むべなるかな」というところ・・・・。
写真とイラストを併用して絵解きでわかりやすく読みやすい。しかし、そこには基本的知識はきっちりと述べられていて、要所・急所は押さえられていると思う。単に子供向きに興味本位、部分的に書かれた本、雑書ではない。個別の仏像鑑賞の入門テキストとして、仏像に楽しく接するための準備書になる。
2冊の目次をご紹介しよう。
『仏像のひみつ』
ひみつ その1 仏像たちにもソシキがある! ←「仏像の種類と大系」
如来、大日如来、菩薩、明王、天のそれぞれについて語られる。そして、例えば
如来の三十二相八十種好の代表例のマンガが楽しい。白毫、螺髪、肉身、水かき
これらがわかりやすい言葉にして語られている。
「その1」がほぼ全体の半分のボリューム(50ページ)である。
ひみつ その2 仏像にもやわらかいのとカタイのいる! ←「造像の素材と制作法」
金銅仏、塑像、乾漆像、木像がこの順でそれぞれ説明される。
その造像のしかたがイラストで示されているのでイメージしやすい。
一木造と寄木造の技法の違いもわかりやすくプロセス図となっている。
「その2」は22ページでまとめられている。
ひみつ その3 仏像もやせたり太ったりする! ←「仏像形状/形態の変遷」
仏像の胴体の輪切り断面と仏像のシルエット、大小で仏像の時代変化を説明する。
このあたり仏像鑑定の専門家の基礎知識部分がわかりやすくまとめられている。
仏像と深く接し対話していくのに必須の知識だろう。
「仏像は、はじめはやせてた」なんて、ご存じでしたか?
「その3」は9ページであり、実に要点が簡潔だ。
ひみつ その4 仏像の中には何がある! ←「仏像胎内の取り扱い方」
仏像の胎内の意味づけやどのように使われたかが具体例で説明されている。
大日如来像のX線写真図も掲載されていて興味を引きつけることだろう。
「その4」は7ページでのやさしい説明となっている。
そして、4ページの分量で、「作品解説」として、この本に掲載の仏像の基本的データと専門的解説が、簡明にまとめられている。全体構成で本書の内容の質を示している。
「おしまい」からキーセンテンスを引用しておきたい。「仏像のひみつは人間のひみつです。」
この意味を味わいたい方はぜひ本書を手にとってみてください。
『続 仏像のひみつ』
冒頭に前書のダイジェストが3ページでまずまとめられている。前書の急所がわかる。
そして、前書の続きとして、4章構成になっている。
ひみつ その5 仏像ソシキのまわりにも誰かいる! ←「広義の仏像概念」
羅漢、聖徳太子、大師、神仏習合と人格神など、広義の仏像概念に話が及ぶ。
聖徳太子信仰の広がりが「日本の仏教のスーパースター」として説明される。
これはその根強い信仰の広がりや聖徳太子伝承を考えるとわかりやすい評言だ。
「その5」は43ページ分で説明される。やはりそれ位は必要になるだろうと思う。
ひみつ その6 仏像の着物にはソデがない! ←「納衣の着装法と表現様式」
如来像が数枚の布を身にまとっているだけなどと、思いが及ぶ人は少ないのでは。
「偏袒右肩(ヘンダンウケン)」「通肩(ツウケン)」などということば・・・・
仏像鑑賞の基本であるが、滅多に聞くことはないだろう。その絵解きが実に明解!
菩薩や明王の着物の持つ意味もちゃんとやさしく説明されている。
拝見する機会の少ない「はだかの阿弥陀如来立像」の写真まで掲載されている。
勿論、なぜそのような仏像が作られたのかと理由説明もある。
「その6」は20ページでの説明である。どのように布を着装するかの手順がわかる。
ひみつ その7 仏像の眼は光る! ←「仏像の玉眼について-歴史と技法」
仏像も開眼から始まるが、やはりその眼がキーポイントとなる。
なぜ玉眼が生まれてきたのか、その歴史的背景からやさしく説明されている。
この本で初めて、どのように玉眼が制作されるかを知った。実に巧妙!
仏師の創意工夫なのですね!そして、「運慶のなやみ」(p84)がおもしろい。
「その7」の章は10ページの分量。最後の2ページにまたがるコラムがまた興味深い。
ひみつ その8 仏像の色はイロイロ! ←「造像時の仏像の色の意味と技法」
長い歳月を経た現存の仏像を我々は見慣れている。だが、造像当初の諸像の色は?
この最終章では仏像の彩色の意味やその技法について語られている。
仏像の金色にも、鍍金、漆箔(シッパク)、金泥(キンデイ)と区分される。
「ウンゲン」は「コン・タン・リョク・シ」なんだとか。これも中国伝来だとか。
四天王立像の彩色の違いが、中国の東西南北と色の組み合わせに由来するそうだ。
仏像の色と技法について、学ぶことが多かった。
「その8」は28ページと、それなりにウェイトが置かれている。学びは深い。
こちらにも前書同様、5ページの「作品解説」が付されている。
前書が「基本の基本」についての説明とすると、後書は仏像世界へのステップアップと言える。著者によれば、「仏像の世界の奥深いところや、仏像のまわりにひろがる霧の中に、ちょっとだけふみこむ」という試みの書、垣間見るための導入編である。
「おしまい」に記された、末尾の一文を引用して、この読後印象記でのご紹介を終えたい。これがやはり、キーセンテンスだと思う。
「仏像のひみつは、きっと日本や日本人のひみつにもつながっているのでしょう。」
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日光菩薩踏下像 東京国立博物館蔵
菩薩立像 東京国立博物館蔵
文殊菩薩立像 東京国立博物館蔵
十一面観音菩薩立像 東京国立博物館蔵
阿弥陀如来立像 奈良国立博物館 (裸形像)
十一面観音立像 附像内納入品1躯 奈良国立博物館
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一木造、割矧造、寄木造、玉眼の説明が載っています。
截金 :ウィキペディア
江里佐代子 :ウィキペディア
佐夜子のしごと :「平安佛所」
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仏像 :ウィキペディア
繧繝(うんげん)・暈繝
四神 :ウィキペディア
仏像のひみつ :「東京国立博物館」
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