この小説が文庫化されたのが2009年8月であり、単行本で発刊されたのが2006年7月である。直木賞受賞後の第1作になるという。入手した文庫本の奥書を見ると、2014年2月で第29刷となっている。つまり、加賀恭一郎刑事シリーズは継続して愛読されているということだろう。
この小説の冒頭は、加賀の父・隆正の病室に松宮脩平が訪れている場面から始まる。松宮脩平は隆正の妹・克子の息子である。克子は以前結婚していた相手の姓をそのまま名乗り、脩平は未婚の子として出生した。脩平の父にあたる人は既婚者だったが、家を出て、離婚が成立しないまま克子と夫婦同然の生活をしていて、勤務先での火災に遭い死亡したのである。隆正は妹を援助してきたのだ。そのため、松宮は伯父に恩義を感じている。癌で入院している隆正の見舞いに頻繁に出向く。松宮が迷わず警察官の道を選択したのは、伯父の隆正という最も尊敬する人間が警察官だったことによる。その結果、現在警視庁の捜査一課に所属する刑事となっている。
松宮は従兄弟である恭一郎が隆正の病因を知っていても、病室に見舞いに来ていないことに疑問を抱いている。松宮が病室を訪れていたとき、担当の看護婦・金森登紀子が患者の体温と血圧測定にやって来る。隆正は登紀子と将棋をしているようなのだ。将棋盤があり、隆正は登紀子を強敵だと言う。隆正はこの将棋を楽しんでいるのである。何気なく将棋のことが描写されている。だが、それは副主題に関わる要素でもあったことが、この小説で明らかになる。
恭一郎と父・隆正の関係に何があったのか? この副主題が、私が加賀シリーズを読み続けてきた一つの動因でもあったのだが、それがこの小説で明瞭になった。それは、隆正が遂に癌で死ぬという結末を迎えたからでもあるが・・・・。加賀恭一郎のプロフィールがさらに詳しくなる。副主題に関心を持つ読者としては、哀しみの中にも、明らかになった事実によって、ある種の闇の局面が表に現れ、疑問が解消されるということになる。ここに、加賀家という家族のあり方が底流に流れている。
この作品の本題に移ろう。ここで扱われる主題は、前原昭夫とその家族、親戚の人間関係、あり方がベースになっている。それが深く事件に絡んでいく。昭夫は中央区の茅場町に東京本社がある照明器具メーカーの営業部直納二課で課員二人を統括する立場に居る。夕刻の六時過ぎ、妻の八重子からの電話を昭夫が会社の事務所で携帯電話で受けたことから始まる。電話で話せないこと、とんでもないことになった・・・・としか、妻は語らない。付け加えたのは、夫の妹である春美が家に来る予定を夫の方から断っておいてほしいという事だった。
昭夫が自宅の最寄り駅で下車し、バス停でバス待ちをしているとき、ピンク色のトレーナーを着た7歳の女の子を見ていないかと問い歩く父親らしい男性を目に止める。そして、バスで帰宅すると、妻の八重子は自分が帰宅したとき、庭に知らない小さな女の子が倒れていたのを発見したという。その子は死んでいた。警察には知らせていないという。直巳という息子は自分の部屋に居るが、母親の八重子が呼んでも出て来ないという。少女の死と息子・直巳になんらかの関係があるようなのだ。母親の問いかけに対し、直巳は「うるさいって。どうでもいいだろって」と言うだけで、部屋に閉じこもっているのだと言う。
昭夫は2ヵ月程前に、買い物から帰った妻が、直巳が近所の女の子に酒を飲ませて悪戯をしようとしていたのではないかと思える場面に出くわしたという話を聞いていた。幼女趣味という異常性を持っているのではないかと疑うことになる。しかし、その時は普段の様子では昭夫にはそうは思えなかったのだ。
昭夫は警察に電話しようとする。だが、八重子は挟みを自分の喉元に当てて、夫が電話をすることを止めるよう懇願する。妻の行動に困惑した昭夫は警察に電話をすることを断念する。そして闇の世界に踏み込んでしまうことになる。夜中の二時近くに、10分位離れている住宅地の真ん中にある銀杏公園まで女の子の死体を運び、公衆トイレ、男子用トイレの中に遺棄するという行動に及ぶ。昭夫は八重子と共謀して隠蔽工作に手を染めていくことになる。
このストーリーは、殺人犯が確定しているところから始まって行く。勿論、事件そのものは公園のトイレで小さな女の子の死体が発見されたことが発端となる。早起きして、公園で煙草を吸うのを楽しみにしている近所の爺さんが公衆便所に行き発見したのだ。
現場検証と初動捜査という手続きから捜査が始まって行く。松宮は捜査一課の刑事としてこの事件に関係し、所轄の刑事として加賀恭一郎も事件捜査に携わっていく。刑事たちにより地元の聞き込み捜査がしらみつぶしに行われていく。勿論、前原家への聞き込みもその一環になっていく。昭夫が死体遺棄した日の午前十時過ぎに、加賀が前原家に聞き込み捜査に訪ねて行くことから、加賀の捜査行動を主体に事件の捜査側は描かれて行く。
このストーリーは、前原昭夫が妻・八重子とともに、息子・直巳の犯行を隠蔽するために、どのように隠蔽工作を深めて行くかという一つの流れと、初動捜査を始め聞き込み捜査などから、事実関係が明らかにされていく流れ、特に前原家の聞き込み捜査を行った加賀刑事が、事件の経緯と収集した情報の累積の中でどこに疑問を抱き、何に気づき、どう推理していくかというもう一つの流れを描き込んでいく。この2つの流れがパラレルに展開されていく。
読者には最初から見えている犯人と時間の経過につれて行われる隠蔽工作が逐次わかっていく。一方、ブラックボックスの中身を捜査活動全体から得た情報と己の捜査行動からの情報を統合し、加賀がどう解明していくかの歩みに併走する感じで読み継いでいくということになる。この構想がおもしろい。
前原家の構成と関連事項に触れておく。
前原昭夫 職業は上記の通り。警察への通報を断念し、隠蔽工作の中心になる。
結婚して18年。上司の紹介から始まった交際を経て結婚。
前原八重子 結婚して3年後に子ができる。直巳という名前も自分で決める。
子育て中心になり、他はなおざりに。離乳食についての考えで姑と対立
前原直巳 中学3年生。ゲーム機に耽溺。幼女趣味から女の子を殺す結果になる。
前原政恵 昭夫の母。夫の死後、高齢で複雑骨折し歩行が不自由になる。
一人暮らしは無理となり、嫁いだ娘が中心に行う世話を受ける立場。
田島春美 昭夫の4歳下の妹。駅前で夫が洋品店を経営。店を手伝う立場。
母の介護のために前原昭夫の住む実家に車で日参している。
母との接触の中で、母親の状態を一番よく認識している人間である。
昭夫は、父親の死後、母が歩行不自由になった時点で、妻を説得し実家に戻り同居する立場になる。八重子の姑・政恵に対する感情的なこじれは尾を引いたままであり、姑の世話は昭夫の妹に大凡投げている。
嫁と姑の価値観の違いからくる確執関係、二人との間で板挟みとなる夫の立場、介護問題が複雑さを加える。娘として親の世話をきっりとしたいという行動と兄夫妻に対する批判的思いと感情、子育ての歪みがもたらす危機状況など、どこにでもありそうな要素が、悪い方向に結合し、進展増幅していく悲劇が描き出されていく。隠蔽工作と嘘の捏造が家庭内での悪のスパイラルを生み始める。
アナロジー的な状況要素が読者側の家庭にも身近にありそうな内容である故に、その悪のスパイラル・プロセスに陥る隠蔽・捏造がリアルさを増す。それを加賀がどのように解明していくのかに一層引き込まれることになる。
この小説のタイトルはどこに関わるのだろうかと思いながら読み進めていたのだが、加賀が語り出すまで気づかなかったという結果になった。「赤い指」に重要な意味が込められていた!
この小説、加賀が事件の謎を解明した後に、事件の決着をつけるためにどういう行動をとったのかが読ませどころと言える。そこに加賀の家族観、人間観が反映している。
殺人犯が確定した段階で、捜査一課の小林主任は、松宮刑事に言う。「加賀君の話をよく聞いておくんだ。」「大事なのはこれから先だ」「ある意味、事件よりも大切な事だ」と。それは松宮が加賀恭一郎という人間の有り様を知る機会にもなる。
この小説、最後は副主題に戻る。隆正の死、そして加賀恭一郎の父に対する態度の真意が明かされる。このシリーズの一冊をたまたま手に取って読んだ時に、なぜ?という疑問を抱いた。このストーリーの展開の中に折り込まれた加賀家の家族関係に関わるエピソードとエンディングでの描写で理解できた。更に一歩、加賀恭一郎の実像に迫れた思いである。
この小説、「家族」という問題を考える材料を様々に投げかけている作品である。事件の加害者側の前原家の家族問題が主軸になりながら、刑事の加賀家の家族問題が別次元で展開していく。次元の異なる家族問題の交錯が、「家族」という問題について読者に目を向けさせていく。
ご一読ありがとございます。
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ふと手に取った作品から私の読書領域の対象に加わってきました。
次の本をまずは読み継いできました。お読みいただけるとうれしいです。
『嘘をもうひとつだけ』 講談社文庫
『私が彼を殺した』 講談社文庫
『悪意』 講談社文庫
『どちらかが彼女を殺した』 講談社文庫
『眠りの森』 講談社文庫
『卒業』 講談社文庫
『新参者』 講談社
『麒麟の翼』 講談社
『プラチナデータ』 幻冬舎
『マスカレード・ホテル』 集英社
この小説の冒頭は、加賀の父・隆正の病室に松宮脩平が訪れている場面から始まる。松宮脩平は隆正の妹・克子の息子である。克子は以前結婚していた相手の姓をそのまま名乗り、脩平は未婚の子として出生した。脩平の父にあたる人は既婚者だったが、家を出て、離婚が成立しないまま克子と夫婦同然の生活をしていて、勤務先での火災に遭い死亡したのである。隆正は妹を援助してきたのだ。そのため、松宮は伯父に恩義を感じている。癌で入院している隆正の見舞いに頻繁に出向く。松宮が迷わず警察官の道を選択したのは、伯父の隆正という最も尊敬する人間が警察官だったことによる。その結果、現在警視庁の捜査一課に所属する刑事となっている。
松宮は従兄弟である恭一郎が隆正の病因を知っていても、病室に見舞いに来ていないことに疑問を抱いている。松宮が病室を訪れていたとき、担当の看護婦・金森登紀子が患者の体温と血圧測定にやって来る。隆正は登紀子と将棋をしているようなのだ。将棋盤があり、隆正は登紀子を強敵だと言う。隆正はこの将棋を楽しんでいるのである。何気なく将棋のことが描写されている。だが、それは副主題に関わる要素でもあったことが、この小説で明らかになる。
恭一郎と父・隆正の関係に何があったのか? この副主題が、私が加賀シリーズを読み続けてきた一つの動因でもあったのだが、それがこの小説で明瞭になった。それは、隆正が遂に癌で死ぬという結末を迎えたからでもあるが・・・・。加賀恭一郎のプロフィールがさらに詳しくなる。副主題に関心を持つ読者としては、哀しみの中にも、明らかになった事実によって、ある種の闇の局面が表に現れ、疑問が解消されるということになる。ここに、加賀家という家族のあり方が底流に流れている。
この作品の本題に移ろう。ここで扱われる主題は、前原昭夫とその家族、親戚の人間関係、あり方がベースになっている。それが深く事件に絡んでいく。昭夫は中央区の茅場町に東京本社がある照明器具メーカーの営業部直納二課で課員二人を統括する立場に居る。夕刻の六時過ぎ、妻の八重子からの電話を昭夫が会社の事務所で携帯電話で受けたことから始まる。電話で話せないこと、とんでもないことになった・・・・としか、妻は語らない。付け加えたのは、夫の妹である春美が家に来る予定を夫の方から断っておいてほしいという事だった。
昭夫が自宅の最寄り駅で下車し、バス停でバス待ちをしているとき、ピンク色のトレーナーを着た7歳の女の子を見ていないかと問い歩く父親らしい男性を目に止める。そして、バスで帰宅すると、妻の八重子は自分が帰宅したとき、庭に知らない小さな女の子が倒れていたのを発見したという。その子は死んでいた。警察には知らせていないという。直巳という息子は自分の部屋に居るが、母親の八重子が呼んでも出て来ないという。少女の死と息子・直巳になんらかの関係があるようなのだ。母親の問いかけに対し、直巳は「うるさいって。どうでもいいだろって」と言うだけで、部屋に閉じこもっているのだと言う。
昭夫は2ヵ月程前に、買い物から帰った妻が、直巳が近所の女の子に酒を飲ませて悪戯をしようとしていたのではないかと思える場面に出くわしたという話を聞いていた。幼女趣味という異常性を持っているのではないかと疑うことになる。しかし、その時は普段の様子では昭夫にはそうは思えなかったのだ。
昭夫は警察に電話しようとする。だが、八重子は挟みを自分の喉元に当てて、夫が電話をすることを止めるよう懇願する。妻の行動に困惑した昭夫は警察に電話をすることを断念する。そして闇の世界に踏み込んでしまうことになる。夜中の二時近くに、10分位離れている住宅地の真ん中にある銀杏公園まで女の子の死体を運び、公衆トイレ、男子用トイレの中に遺棄するという行動に及ぶ。昭夫は八重子と共謀して隠蔽工作に手を染めていくことになる。
このストーリーは、殺人犯が確定しているところから始まって行く。勿論、事件そのものは公園のトイレで小さな女の子の死体が発見されたことが発端となる。早起きして、公園で煙草を吸うのを楽しみにしている近所の爺さんが公衆便所に行き発見したのだ。
現場検証と初動捜査という手続きから捜査が始まって行く。松宮は捜査一課の刑事としてこの事件に関係し、所轄の刑事として加賀恭一郎も事件捜査に携わっていく。刑事たちにより地元の聞き込み捜査がしらみつぶしに行われていく。勿論、前原家への聞き込みもその一環になっていく。昭夫が死体遺棄した日の午前十時過ぎに、加賀が前原家に聞き込み捜査に訪ねて行くことから、加賀の捜査行動を主体に事件の捜査側は描かれて行く。
このストーリーは、前原昭夫が妻・八重子とともに、息子・直巳の犯行を隠蔽するために、どのように隠蔽工作を深めて行くかという一つの流れと、初動捜査を始め聞き込み捜査などから、事実関係が明らかにされていく流れ、特に前原家の聞き込み捜査を行った加賀刑事が、事件の経緯と収集した情報の累積の中でどこに疑問を抱き、何に気づき、どう推理していくかというもう一つの流れを描き込んでいく。この2つの流れがパラレルに展開されていく。
読者には最初から見えている犯人と時間の経過につれて行われる隠蔽工作が逐次わかっていく。一方、ブラックボックスの中身を捜査活動全体から得た情報と己の捜査行動からの情報を統合し、加賀がどう解明していくかの歩みに併走する感じで読み継いでいくということになる。この構想がおもしろい。
前原家の構成と関連事項に触れておく。
前原昭夫 職業は上記の通り。警察への通報を断念し、隠蔽工作の中心になる。
結婚して18年。上司の紹介から始まった交際を経て結婚。
前原八重子 結婚して3年後に子ができる。直巳という名前も自分で決める。
子育て中心になり、他はなおざりに。離乳食についての考えで姑と対立
前原直巳 中学3年生。ゲーム機に耽溺。幼女趣味から女の子を殺す結果になる。
前原政恵 昭夫の母。夫の死後、高齢で複雑骨折し歩行が不自由になる。
一人暮らしは無理となり、嫁いだ娘が中心に行う世話を受ける立場。
田島春美 昭夫の4歳下の妹。駅前で夫が洋品店を経営。店を手伝う立場。
母の介護のために前原昭夫の住む実家に車で日参している。
母との接触の中で、母親の状態を一番よく認識している人間である。
昭夫は、父親の死後、母が歩行不自由になった時点で、妻を説得し実家に戻り同居する立場になる。八重子の姑・政恵に対する感情的なこじれは尾を引いたままであり、姑の世話は昭夫の妹に大凡投げている。
嫁と姑の価値観の違いからくる確執関係、二人との間で板挟みとなる夫の立場、介護問題が複雑さを加える。娘として親の世話をきっりとしたいという行動と兄夫妻に対する批判的思いと感情、子育ての歪みがもたらす危機状況など、どこにでもありそうな要素が、悪い方向に結合し、進展増幅していく悲劇が描き出されていく。隠蔽工作と嘘の捏造が家庭内での悪のスパイラルを生み始める。
アナロジー的な状況要素が読者側の家庭にも身近にありそうな内容である故に、その悪のスパイラル・プロセスに陥る隠蔽・捏造がリアルさを増す。それを加賀がどのように解明していくのかに一層引き込まれることになる。
この小説のタイトルはどこに関わるのだろうかと思いながら読み進めていたのだが、加賀が語り出すまで気づかなかったという結果になった。「赤い指」に重要な意味が込められていた!
この小説、加賀が事件の謎を解明した後に、事件の決着をつけるためにどういう行動をとったのかが読ませどころと言える。そこに加賀の家族観、人間観が反映している。
殺人犯が確定した段階で、捜査一課の小林主任は、松宮刑事に言う。「加賀君の話をよく聞いておくんだ。」「大事なのはこれから先だ」「ある意味、事件よりも大切な事だ」と。それは松宮が加賀恭一郎という人間の有り様を知る機会にもなる。
この小説、最後は副主題に戻る。隆正の死、そして加賀恭一郎の父に対する態度の真意が明かされる。このシリーズの一冊をたまたま手に取って読んだ時に、なぜ?という疑問を抱いた。このストーリーの展開の中に折り込まれた加賀家の家族関係に関わるエピソードとエンディングでの描写で理解できた。更に一歩、加賀恭一郎の実像に迫れた思いである。
この小説、「家族」という問題を考える材料を様々に投げかけている作品である。事件の加害者側の前原家の家族問題が主軸になりながら、刑事の加賀家の家族問題が別次元で展開していく。次元の異なる家族問題の交錯が、「家族」という問題について読者に目を向けさせていく。
ご一読ありがとございます。
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ふと手に取った作品から私の読書領域の対象に加わってきました。
次の本をまずは読み継いできました。お読みいただけるとうれしいです。
『嘘をもうひとつだけ』 講談社文庫
『私が彼を殺した』 講談社文庫
『悪意』 講談社文庫
『どちらかが彼女を殺した』 講談社文庫
『眠りの森』 講談社文庫
『卒業』 講談社文庫
『新参者』 講談社
『麒麟の翼』 講談社
『プラチナデータ』 幻冬舎
『マスカレード・ホテル』 集英社