タイトルに「教科書」とあるのでついつい手に取ってペラペラめくってみた。ウィスキーの歴史的な押さえどころから始め、蒸留所やウィスキーの銘柄の写真を多く載せていて、読みやすそうである。酒はあまり飲めないけれどウィスキーには関心があるので、どんな「教科書」か楽しんでみることにした。
最初に本書の構成と絡めて少し要点をご紹介する。
<はじめに>
著者はホテルバーテンダーの見習いになったという。「最初はジョニーウォーカー、シーバスしかしらなかった。聞かれてもわかりませんではすまない。だから、本を買いあさった」という。奥書を読むと、バーテンダーとして20年以上の経験があり、現在は会社の経営にも携わるそうである。現場の経験と、酒に関するトータル・アドバイザーとしての活躍が、本書に生かされているようだ。
<WHISKY HISTORY>
「ウィスキーは穀物を大麦麦芽で発酵、蒸留し、さらに樽熟成させた蒸留酒である」という一文から始まり、わずか12ページであるが、ウィスキーの歴史における基礎的知識をまず押さえている。ウィスキーの語源は? 蒸留技術はどこから? 透明のホワイトスピリッツがどうして琥珀色に? ウィスキー論争とは? ウィスキーの広がり方は? 市場の変化? など。基本的な知識を得たい私には良い入門書。
<Part 1 世界のウィスキー事情>
スコットランド、アイルランド、カナダ、アメリカ、日本という地域毎に、スコットランド以外は見開きの2ページで簡潔にまとめられている。スコットランドは6ページである。
<Part 2 ウィスキー蒸溜所ガイド>
アベラワー蒸溜所から始まって、白州蒸溜所まで34箇所が取り上げられている。数ページに及ぶ蒸溜所から1ページ、半ページなどさまざま。蒸溜所の風景写真のないものもあるが、ウィスキーボトルは必ず載っている。スコッチ、バーボンで私の知っているボトルがいくつか載っていたので、ちょっと親近感がわく。
<Part 3 厳選のウィスキーカタログ>
勿論、Part 1 と照応する区分で、ウィスキーの名称、ボトルの写真、簡潔な解説文でまとめらている。1点 38mm×58mm というスペースでズラリと並ぶ。最大1ページに9つのウィスキーボトルが登場する。ウィスキー好きには、垂涎のページかもしれない。
最後のコラムで著者は記す。「各人が自分なりのおいしさを追求する、ということはまず正しい」と。その上で、ウィスキー側の視点に立っての厳選という。「ウィスキーカクテルを楽しみ方のひとつと位置付け、お酒の奥深さがわかるようになってきたら、徐々に飾りを外し、ウィスキーそのものを追求する」「洗練のさきにシンプルな姿があることはたしかだ」と記す。
<Part 4 ウィスキーの知られざる逸話>
ブレンデッドウィスキーにまつわる背景話、ヴィンテージ品の話、ボトルの形や容器の話など多方面にわたり豆知識的にその蘊蓄が綴られていく。
たとえば、バランタインは創業者ジョージ・バランタインの名に由来するブランド。カティーサークは1869年にダンバートン港で進水した帆船の名前に由来し、人間が考えたなかで最も美しい帆船と言われたという。オールドパーは19世紀後半に岩倉具視ら欧米使節団が日本に持ち込んだ酒。キングス・ランサムは1945年のポツダム宣言の会議に出された酒。ボトラーズのこだわりにも触れ、ベストボトラーズ10も写真入りで解説する。ボトルの形の変遷やラベルの魅力、「おもしろボトルコレクション」もある。
<Part 5 ウィスキー造りの秘密>
「CHAPTER 1 ウィスキーの定義」から始め、「CHAPTER 24 ブレンディングとヴァッテイング」まで、基礎知識が見開き2ページで写真やイラスト図を併用しわかりやすく説明されている。真っ先に知りたかったことは、ここでカバーされた。
<Part 6 ウィスキー味わいの秘密>
味わうという意味、味を決める要因、ウィスキーの香りについて、テイスティングの醍醐味とその方法を語り、ウィスキーを「愉しむ」ことに目を向けさせる。「ウィスキーはただ酔っ払うだけの道具ではない」と断言し、ウィスキーを生涯の友とする心得を著者は語る。そして、「嗜好品であるお酒は飲むときのシチュエーションがおいしさにも大きく関わってくる」と述べ、「グラス」並びにマドラーやマドラースタンドへのこだわりを勧めている。
最後に、4ページとわずかであるが、「用語集 KEY WORD」として基礎用語を集めて解説して締めくくっている。
この用語集の4ページの下端にずらりとボトルの写真が並んでいる。ちょっと壮観である。日本にバーが何軒あるのか知らないが、ここの写真のボトルを全部揃えている店ってないだろうな・・・・と思う。ウィスキー好きというか、ウィスキー通と自称する人でもこの38本のボトルとラベルを一瞥しただけで全部のブランドを指摘できるだろうか・・・・と思う。p210~213を開けて、まずブランド名指摘にチャレンジしてみるのも、おもしろいかも。
最後に、本書からこれだけは少なくとも押さえておきたいと思ったことの一端を要約してみよう。ほんの一部だけだが、本書を開いてみようかと思われる契機にはなると思う。
*スコットランドでウィスキーの木樽熟成が法律で義務づけられたのは1915年。
ウィスキーが琥珀色になったのはウィスキーの歴史としては意外と最近のこと。
*通常の樽熟成の後、仕上げに別の樽で熟成を行うことをウッドフィニッシュという。
バーボンの空き樽がスコッチの熟成樽としてよく使われる。
⇒アメリカンウィスキーは法律で新樽熟成が義務づけられている。
*ウィスキー業界は、マス向けの大資本メーカー(たとえば、ディアジオ社、ペルノ・リカール社)とマニア向けの少量生産のシングル・モルトやボトラーズブランドに二極化
*それぞれの国がウィスキーの分類を定め、法律で規定している。
事例:スコッチウィスキー
5つの分類:シングルモルト、シングルグレーン、ブレンデッドモルト(ヴアンテッドモルト)
ブレンデッドグレーン(ヴァンテッドグレーン)、ブレンデッドウィスキー
6つの法律
・原料は水とイースト菌と大麦麦芽など穀物のみを使う
・糖化から発酵、蒸留をスコットランドにある蒸溜所で行うこと
・蒸溜時のアルコール度数は94.8度以下
・容量700?以下のオーク樽に詰め、スコットランド国内の倉庫で3年以上熟成させる
・瓶詰めする際に認められている添加物は水と、色調整のためのカラメルのみ
・瓶詰めする際のアルコール度数は最低40度
(本書を読み、相対的に日本は法律での規定が一番緩い印象を持った。)
*「ブレンデッドウィスキーにおいて重要なのは、造った人の思い入れである。」p104
*ボトラーズブランドとは、蒸溜所から樽ごと原酒を買い取り、独自の熟成庫で熟成させ瓶詰めして販売する業者をさす。尚、イギリス以外の海外のボトラーズの多くは個人事業に近い。(⇒設備を持たず委託による商品化)
*ボトラーズの有名どころは、ゴードン&マックファイル(G&M)、ウィリアム・ケイデンヘッド、シルヴァーノ・サマローリ。
*ウィスキー 4つの条件
1.原料は穀物 2.糖化は自分の力で 3.蒸留方法は2種類 4.熟成が不可欠
*味を決める6つの要因
1.原料 2.ピート 3.酵母&発酵槽 4.蒸溜器 5.水 6.樽熟成
*単式蒸溜(ポットスチル)生産の代表的な会社はフォーサイス社。エルギンの南15マイル
*テイスティングの4ステップ
1.舌で感じる ⇒2.口中やのどを通過する感覚 ⇒3.フィニシュ ⇒4.アフターフレーバー
こんなところでとどめておきたい。
ご一読ありがとうございます。
本書に関連して、ネットからだと基礎知識の学習という観点でどんな情報が得られるかに関心を向けてみた。検索結果の一端を一覧にしておきたい。
ウイスキー :ウィキペディア
ウィスキー入門 :「SUNTORY」
ウィスキーのできるまで
【保存版】これでウイスキーの基礎知識はOK! 原料/製造法/飲み方/銘柄をまとめて解説! :「GetNaviweb」
ウィスキーの基礎知識 :「たのしいお酒.jp」
ニッカウヰスキーストーリー :「NIKKA WHISKY」
蒸溜の方法 蒸溜方式 :「SUNTORY」
スマートな蒸溜器「iStill」とスピリッツの未来 :「WHISKY Magazine」
サントリー山崎蒸溜所 :「SUNTORY」
サントリー白州蒸溜所 :「SUNTORY」
余市蒸溜所 :「NIKKA WHISKY」
宮城峡蒸溜所 :「NIKKA WHISKY」
安積蒸溜所 :「郡山市観光協会」
プロ監修】オススメのウイスキー28選!初心者必見の飲み方・ペアリング・基礎知識も解説 :「Betters」
ウイスキーのおすすめ人気銘柄59選。初心者向けの基礎知識も解説 :「SAKIDORI」
ウイスキーのテイスティング表現で使われる形容詞 :「BARREL」
テイスティング :「WHISKY Magazine」
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)
最初に本書の構成と絡めて少し要点をご紹介する。
<はじめに>
著者はホテルバーテンダーの見習いになったという。「最初はジョニーウォーカー、シーバスしかしらなかった。聞かれてもわかりませんではすまない。だから、本を買いあさった」という。奥書を読むと、バーテンダーとして20年以上の経験があり、現在は会社の経営にも携わるそうである。現場の経験と、酒に関するトータル・アドバイザーとしての活躍が、本書に生かされているようだ。
<WHISKY HISTORY>
「ウィスキーは穀物を大麦麦芽で発酵、蒸留し、さらに樽熟成させた蒸留酒である」という一文から始まり、わずか12ページであるが、ウィスキーの歴史における基礎的知識をまず押さえている。ウィスキーの語源は? 蒸留技術はどこから? 透明のホワイトスピリッツがどうして琥珀色に? ウィスキー論争とは? ウィスキーの広がり方は? 市場の変化? など。基本的な知識を得たい私には良い入門書。
<Part 1 世界のウィスキー事情>
スコットランド、アイルランド、カナダ、アメリカ、日本という地域毎に、スコットランド以外は見開きの2ページで簡潔にまとめられている。スコットランドは6ページである。
<Part 2 ウィスキー蒸溜所ガイド>
アベラワー蒸溜所から始まって、白州蒸溜所まで34箇所が取り上げられている。数ページに及ぶ蒸溜所から1ページ、半ページなどさまざま。蒸溜所の風景写真のないものもあるが、ウィスキーボトルは必ず載っている。スコッチ、バーボンで私の知っているボトルがいくつか載っていたので、ちょっと親近感がわく。
<Part 3 厳選のウィスキーカタログ>
勿論、Part 1 と照応する区分で、ウィスキーの名称、ボトルの写真、簡潔な解説文でまとめらている。1点 38mm×58mm というスペースでズラリと並ぶ。最大1ページに9つのウィスキーボトルが登場する。ウィスキー好きには、垂涎のページかもしれない。
最後のコラムで著者は記す。「各人が自分なりのおいしさを追求する、ということはまず正しい」と。その上で、ウィスキー側の視点に立っての厳選という。「ウィスキーカクテルを楽しみ方のひとつと位置付け、お酒の奥深さがわかるようになってきたら、徐々に飾りを外し、ウィスキーそのものを追求する」「洗練のさきにシンプルな姿があることはたしかだ」と記す。
<Part 4 ウィスキーの知られざる逸話>
ブレンデッドウィスキーにまつわる背景話、ヴィンテージ品の話、ボトルの形や容器の話など多方面にわたり豆知識的にその蘊蓄が綴られていく。
たとえば、バランタインは創業者ジョージ・バランタインの名に由来するブランド。カティーサークは1869年にダンバートン港で進水した帆船の名前に由来し、人間が考えたなかで最も美しい帆船と言われたという。オールドパーは19世紀後半に岩倉具視ら欧米使節団が日本に持ち込んだ酒。キングス・ランサムは1945年のポツダム宣言の会議に出された酒。ボトラーズのこだわりにも触れ、ベストボトラーズ10も写真入りで解説する。ボトルの形の変遷やラベルの魅力、「おもしろボトルコレクション」もある。
<Part 5 ウィスキー造りの秘密>
「CHAPTER 1 ウィスキーの定義」から始め、「CHAPTER 24 ブレンディングとヴァッテイング」まで、基礎知識が見開き2ページで写真やイラスト図を併用しわかりやすく説明されている。真っ先に知りたかったことは、ここでカバーされた。
<Part 6 ウィスキー味わいの秘密>
味わうという意味、味を決める要因、ウィスキーの香りについて、テイスティングの醍醐味とその方法を語り、ウィスキーを「愉しむ」ことに目を向けさせる。「ウィスキーはただ酔っ払うだけの道具ではない」と断言し、ウィスキーを生涯の友とする心得を著者は語る。そして、「嗜好品であるお酒は飲むときのシチュエーションがおいしさにも大きく関わってくる」と述べ、「グラス」並びにマドラーやマドラースタンドへのこだわりを勧めている。
最後に、4ページとわずかであるが、「用語集 KEY WORD」として基礎用語を集めて解説して締めくくっている。
この用語集の4ページの下端にずらりとボトルの写真が並んでいる。ちょっと壮観である。日本にバーが何軒あるのか知らないが、ここの写真のボトルを全部揃えている店ってないだろうな・・・・と思う。ウィスキー好きというか、ウィスキー通と自称する人でもこの38本のボトルとラベルを一瞥しただけで全部のブランドを指摘できるだろうか・・・・と思う。p210~213を開けて、まずブランド名指摘にチャレンジしてみるのも、おもしろいかも。
最後に、本書からこれだけは少なくとも押さえておきたいと思ったことの一端を要約してみよう。ほんの一部だけだが、本書を開いてみようかと思われる契機にはなると思う。
*スコットランドでウィスキーの木樽熟成が法律で義務づけられたのは1915年。
ウィスキーが琥珀色になったのはウィスキーの歴史としては意外と最近のこと。
*通常の樽熟成の後、仕上げに別の樽で熟成を行うことをウッドフィニッシュという。
バーボンの空き樽がスコッチの熟成樽としてよく使われる。
⇒アメリカンウィスキーは法律で新樽熟成が義務づけられている。
*ウィスキー業界は、マス向けの大資本メーカー(たとえば、ディアジオ社、ペルノ・リカール社)とマニア向けの少量生産のシングル・モルトやボトラーズブランドに二極化
*それぞれの国がウィスキーの分類を定め、法律で規定している。
事例:スコッチウィスキー
5つの分類:シングルモルト、シングルグレーン、ブレンデッドモルト(ヴアンテッドモルト)
ブレンデッドグレーン(ヴァンテッドグレーン)、ブレンデッドウィスキー
6つの法律
・原料は水とイースト菌と大麦麦芽など穀物のみを使う
・糖化から発酵、蒸留をスコットランドにある蒸溜所で行うこと
・蒸溜時のアルコール度数は94.8度以下
・容量700?以下のオーク樽に詰め、スコットランド国内の倉庫で3年以上熟成させる
・瓶詰めする際に認められている添加物は水と、色調整のためのカラメルのみ
・瓶詰めする際のアルコール度数は最低40度
(本書を読み、相対的に日本は法律での規定が一番緩い印象を持った。)
*「ブレンデッドウィスキーにおいて重要なのは、造った人の思い入れである。」p104
*ボトラーズブランドとは、蒸溜所から樽ごと原酒を買い取り、独自の熟成庫で熟成させ瓶詰めして販売する業者をさす。尚、イギリス以外の海外のボトラーズの多くは個人事業に近い。(⇒設備を持たず委託による商品化)
*ボトラーズの有名どころは、ゴードン&マックファイル(G&M)、ウィリアム・ケイデンヘッド、シルヴァーノ・サマローリ。
*ウィスキー 4つの条件
1.原料は穀物 2.糖化は自分の力で 3.蒸留方法は2種類 4.熟成が不可欠
*味を決める6つの要因
1.原料 2.ピート 3.酵母&発酵槽 4.蒸溜器 5.水 6.樽熟成
*単式蒸溜(ポットスチル)生産の代表的な会社はフォーサイス社。エルギンの南15マイル
*テイスティングの4ステップ
1.舌で感じる ⇒2.口中やのどを通過する感覚 ⇒3.フィニシュ ⇒4.アフターフレーバー
こんなところでとどめておきたい。
ご一読ありがとうございます。
本書に関連して、ネットからだと基礎知識の学習という観点でどんな情報が得られるかに関心を向けてみた。検索結果の一端を一覧にしておきたい。
ウイスキー :ウィキペディア
ウィスキー入門 :「SUNTORY」
ウィスキーのできるまで
【保存版】これでウイスキーの基礎知識はOK! 原料/製造法/飲み方/銘柄をまとめて解説! :「GetNaviweb」
ウィスキーの基礎知識 :「たのしいお酒.jp」
ニッカウヰスキーストーリー :「NIKKA WHISKY」
蒸溜の方法 蒸溜方式 :「SUNTORY」
スマートな蒸溜器「iStill」とスピリッツの未来 :「WHISKY Magazine」
サントリー山崎蒸溜所 :「SUNTORY」
サントリー白州蒸溜所 :「SUNTORY」
余市蒸溜所 :「NIKKA WHISKY」
宮城峡蒸溜所 :「NIKKA WHISKY」
安積蒸溜所 :「郡山市観光協会」
プロ監修】オススメのウイスキー28選!初心者必見の飲み方・ペアリング・基礎知識も解説 :「Betters」
ウイスキーのおすすめ人気銘柄59選。初心者向けの基礎知識も解説 :「SAKIDORI」
ウイスキーのテイスティング表現で使われる形容詞 :「BARREL」
テイスティング :「WHISKY Magazine」
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
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その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)