表紙に「人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法」と副題が記されている。これからわかるように、本書は人間関係におけるストレスを回避して己の目指す目的を遂げるための処し方のノウハウ書である。語り口が平易なので読みやすい。
著者は「はじめに」において、本書は「非戦の書」であり、『孫子の兵法』の現代実社会版だと述べている。かなりの自負に溢れている。そこがまずおもしろい。
第1章と第2章が、本書のタイトルに沿った主旨のノウハウ書といえる。
著者は第1章の冒頭で、アホな人物について、以下のように述べている。
「一言で言えば、あなたがわざわざ戦ったり、悩んだりする価値のない人間である。そして不条理な人物である。あなたにとって一見、目障りで邪魔である。時として正当な理由もなくあなたの足を引っ張ってくる当り屋でもある。あなたに体当たりして絡んで、自分の価値を上げようとする人物だ」(p16)と。
その上で、著者はアホと戦う可能性のある人には「正義感が強い/自信にあふれる/責任感が強い/プライドが高い/おせっかい」という特徴が見られるとして、なぜか? を判りやすく説明する。この特徴を否定しているのではない。「自分がコントロールできることだけに時間もエネルギーも集中するべき」(p28)だと言い、アホをコントロール使用とするなという。つまり、アホと戦うなである。己の持つ特徴を向ける方向が間違っているのではないかと言う点を、判りやすく絵解きしてくれている。
著者は己の体験を交えながら、アホと戦わないノウハウを伝授していく。通読し、ナルホドと思った要点を、私なりの覚書にまとめてみよう。誤解があるかもしれないが、これが本書を読む気にさせるトリガーになれば幸いである。おもしろい事例が満載である。
妙なプライドは持つな ⇒ 等身大の自分を見極め、自分の到達点を見失わない
終わったことを蒸し返すな ⇒ 未来への自分の時間価値を考えよ。時間が価値を生む
臆病なコオロギに学べ ⇒ むやみに戦わない方が戦闘的な者により生き残る確率高し
やられたフリをせよ ⇒ 本当に自分のやりたいことにフォーカスせよ
己個人のメンツを気にするな ⇒ 実利本位になれ
生意気さはムダ ⇒ 成功者は時間と知恵を使い、戦わずして勝つやり方を選ぶ
アホには堪えよ ⇒ グッと受け止める忍耐力。すぐにリアクションするな。離脱せよ 己の怒りを解きほぐせ ⇒ 相手の気持ちを読むことが人生を生き抜く最重要なコツ
カッときたら ⇒ 幽体離脱せよ ⇒ 自分を高みから3D映像で客観的に観察せよ
敵意識は持つな ⇒ 仕事の対人関係はせいぜいがライバル。柔軟に付き合え。
当のアホに相談を持ちかけよ ⇒ 「その人から受けている嫌な行為への対処方法」
ほかの人が受けている嫌がらせだとして相談する
しつこく絡むアホ ⇒ 相手にしない。逃げるが勝ち。
こういうアドバイスを語りながら、「それでも一度はアホと戦え!」ともいう。傷が浅いくらいの「一生忘れられない悔しい学び」が、「いつかは戦う価値のある相手と戦うこと」(p69)の可能性への準備運動なのだと。
著者は人を味方にするためには、「相手の気持ちを見抜く力」この能力を一番重視する。天才やエリートなどの頭のいい人ほどこの能力が乏しいとも述べている。「どんな強者でも味方にする”人たらし”の技術」(第3章)において、この能力がその根幹だという。そのために、次の実行を推奨している。
*対象となる人物を徹底的にリサーチせよ。その人のたどってきた歴史が人格になっている。人相は最大の情報発信源・宝庫だと知れ。
*デール・カーネギーの原則に学べ。「非難するな/認めよ/相手の欲しがるものを理解せよ」 つまりどんな相手でもリスペクトし、共通の利害を見つけるアプローチだ。
*「実るほど頭を垂れる稲穂かな」 人間は感情の動物。腰を低くして対応せよ。
*自信があっても困っている顔をして、相手を自分に巻き込んで行き相手の感情に働きかけることも一つの技術。ただし、著者の体験では、その人の実力の1.5倍くらいに困っている事情と思える場合での話。
*物事に一喜一憂せずに淡々と。得意淡然、失意泰然。淡々とこなす者が勝ち残る。
*結果を出したいなら、常に相手の気持ちを知れ。相手の立場に立って相手の思いを常に考えよ。上司目線で、自分を見つめてみる視点をもつこと。
*志が人を動かす。決して原点を忘れず、楽天的姿勢を崩さない。
*ものをシニカルに見る脳の使い方、物の見方を鍛えよ。異なる視点をもつ。
*自分を見失わないように、自分を律することが大事。偉くなっても偉ぶらない。
ここでの助言は、どちらかというと、少し長い時間軸の中で真価を出す「人たらし」技術という印象を受ける。勿論、それは関係の浅い時点から始まることなのだが。
第1章冒頭の「アホ」の定義と結びつけて考えるなら、上記した第3章あたりから、アホという枠組みを離れた、対人関係、組織内での対応へのアドバイスという形に発展していく。つまり、文字通りの副題の趣旨に沿う対応能力へのアドバイスに移行していくということになる。
第4章は「権力と評価の密接な関係」という見出しになる。ここでははっきりとアホへの対処とは次元を変えている。副題がピッタリというところか。
第4章に収録された見出し文を並べてみると、おわかりいただけるだろう。
◎上司があなたを見てくれないのはなぜか?
◎仕事で評価される人。されない人
◎不本意な人事異動の正しい耐え方
◎無駄な会議を建設的にする方法
◎日本企業は権力闘争が好き?
◎力にすり寄るのは汚いことか
◎権力を握る人の条件
◎飲み会を有意義にする方法
◎不機嫌な職場で、息苦しいあなたへのヒント
つまり、バラエティに富んだケースを設定して、その中でどう対処するのが得策か、著者の所見を述べている。対処法はまあ一般的かつ実利的なアドバイスといえる。一貫しているのは目的志向、「実利」重視という立場である。
「政界を離れて振りかえてみると、相手を持ち上げるために頑張る姿勢は潔いと思えるようになった。やりたいことがあって、やれるチャンスが来たら、他人にどう思われようが、そんなチャンスをくれる人に徹底的に忠誠を誓って権力を手に入れようとするのは、汚いことでも、ずるいことでもなく、潔いことだと思う。そこまでやるのが”本気”ということなのだ。」(p125)、「現実は汚く見えるものだが、そんなものに嫌悪を示すより、自分の目的に集中して、そこで結果を出すことに専念したほうがいい。結果を出すために権力に接近することが必要ならば、その力を活かすことも視野に入れて準備しておくことだ」(p150)、「『人生はそもそも理不尽なもの』という現実感覚を持てば、いかなる職場にいてもステオレスは大きく減らせる」(p158)というような所見からもうかがえるだろう。
第5章は「他人の目を気にするな」である。
この章での主張点は明白である。「人生は自分が主役であるべきだ」(p164)である。そのために、「他人から見た自分を意識する」ことと「他人から見た自分を妄想すしてそれに振り回される」ことは全く別であることを説く。他人の期待に応えようとする人生を生きていないか、それを自問せよと言う。
「他者の気持ちはコントロールしようとすればするほど離れていく。そんなものをこちらの思い通りにしようとするのではなく、確実にコントロールできる自分、そんな自分の目の前にあることに時間とエネルギーを集中すべきなのだ」(p169)という著者の自説に戻る。この主張、考えれば同じ考え方をかつてどこかで読んだ気がする。自己実現への鉄則と言うべきなのだろう。
そして、いくつかのアドバイスを具体例を提示しながら説明している。私なりに読解した要点を列挙してみる。
*自分を主体に、他者をベンチマークするのは有効。自分の居場所を確認するために他者と比べてみる。主体性の意識が大事。
*腹をくくるとストレスがなくなり、行動力を増す。壊れた人間関係は、小さな合意を積み重ねていくことから始まる。
*期待値マネジメントの考え方を取り入れる。己の期待値から相手との合意値へのアプローチも一法。
*人間関係の改善は真摯に向き合う時間を共に持ち、地道に積み上げていくこと。
*相手の感情を揺り動かす本気度、本気の情熱の裏打ちで主張するには、まず準備が重要である。自分の思いを上手に伝えるには、訓練がいる。
*本当に心がポッキリと折れたら、思い切って休め。リフレッシュに専念せよ。本気で徹底的に。それが自信を取り戻すコツである。
*大凡物事の90%以上は自分の責任に帰す。己の想定、準備などの不足。自分の目的をはっきりさせ切れていず、周到な事前準備に欠けていることに思い至れ。
著者の経験を踏まえた例示などが興味深い。
最終章は「アホではなく自分と戦え!」である。著者の持論からすれば、当然至るべき着地点と言える。
著者は自分と向き合う時間を確保せよと助言する。それは、「自分は何が満たされたら納得がいくのか」の自己確認が出発点となるからである。わかっていそうで一番わかっていないのが「自分」だと断定する。この点は著者だけでなく、多くの識者も論じている。
「自分を知り、自分をいい意味でコントロールすることほど、人生で大切なことはない。自分がわからないと幸せにはなれない」(p195)。この箇所、メーテル・リンクの『青い鳥』の結論に通じるのでは・・・・と連想した。
自分と戦ううえでの助言を体験談を踏まえて述べている。勿論、それは自分を知るという行為の次のステップでのノウハウである。
*人間は環境に左右されやすい。だから、デキる人間に囲まれた環境に飛び込めという。「自分よりデキる人間に囲まれてこそ成長する」「戦うのは自分よりできる人材と」(p198)は著者の実体験に基づいている。
*自分の人生において、自分の基準を持つ。そうすれば、他人の評価や他人の目に影響されなくて、外からのストレスを感じにくくなる。己の基準との戦いだから。
*自分と向き合うには、一度自分を抜け出して、客観的に見ないと、本当の自分と語り合えない。⇒ 自分だけの時間を確保せよ。自分の本音を明らかにするために。
*激変する時代において、今後のリスクを予想し、逆算して準備をおこたらないこと。
*どうせ変化の連続。変化の捉え方次第でピンチをチャンスに変えられる。それを捕らえるには、誰よりも早く変化の兆候に気づくことである。人より3年先を行け。
*やりたいことは今しておくべきである。そのためには、己の肉体のコンディションを重視せよ。
*人生を豊かにするために自分の人生にとって大事な人たちとすごす時間を大事にする。
著者の体験を通したノウハウが縷々語られた書であるが、自分が本当にやりたいことが簡単にみつからないというのも事実と認める。その上で、「それより今、目の前にあることを精一杯やるべきだ」(p215)という助言に着地する。「目の前のことを頑張って見るべきだ。そこから道は開ける」(p216)と。自分探しの行きつくところはやはり古来から述べられてきた真理である。
著者の主張は、人生を謳歌して使い切るという視点に立ち、人生をいかに主体的に生き抜くかにある。自分の目的と基準を持って人生を生きれば、つまらないプライドなどは捨てられる。アホと戦うことも無くなるという次第である。それは今目の前にあることをしっかり頑張って結果を出すことから始まるという。目の前にあることを、主体的にとらえ直して、自分にとっての結果をまず出せということだろう。
ご一読ありがとうございます。
著者は「はじめに」において、本書は「非戦の書」であり、『孫子の兵法』の現代実社会版だと述べている。かなりの自負に溢れている。そこがまずおもしろい。
第1章と第2章が、本書のタイトルに沿った主旨のノウハウ書といえる。
著者は第1章の冒頭で、アホな人物について、以下のように述べている。
「一言で言えば、あなたがわざわざ戦ったり、悩んだりする価値のない人間である。そして不条理な人物である。あなたにとって一見、目障りで邪魔である。時として正当な理由もなくあなたの足を引っ張ってくる当り屋でもある。あなたに体当たりして絡んで、自分の価値を上げようとする人物だ」(p16)と。
その上で、著者はアホと戦う可能性のある人には「正義感が強い/自信にあふれる/責任感が強い/プライドが高い/おせっかい」という特徴が見られるとして、なぜか? を判りやすく説明する。この特徴を否定しているのではない。「自分がコントロールできることだけに時間もエネルギーも集中するべき」(p28)だと言い、アホをコントロール使用とするなという。つまり、アホと戦うなである。己の持つ特徴を向ける方向が間違っているのではないかと言う点を、判りやすく絵解きしてくれている。
著者は己の体験を交えながら、アホと戦わないノウハウを伝授していく。通読し、ナルホドと思った要点を、私なりの覚書にまとめてみよう。誤解があるかもしれないが、これが本書を読む気にさせるトリガーになれば幸いである。おもしろい事例が満載である。
妙なプライドは持つな ⇒ 等身大の自分を見極め、自分の到達点を見失わない
終わったことを蒸し返すな ⇒ 未来への自分の時間価値を考えよ。時間が価値を生む
臆病なコオロギに学べ ⇒ むやみに戦わない方が戦闘的な者により生き残る確率高し
やられたフリをせよ ⇒ 本当に自分のやりたいことにフォーカスせよ
己個人のメンツを気にするな ⇒ 実利本位になれ
生意気さはムダ ⇒ 成功者は時間と知恵を使い、戦わずして勝つやり方を選ぶ
アホには堪えよ ⇒ グッと受け止める忍耐力。すぐにリアクションするな。離脱せよ 己の怒りを解きほぐせ ⇒ 相手の気持ちを読むことが人生を生き抜く最重要なコツ
カッときたら ⇒ 幽体離脱せよ ⇒ 自分を高みから3D映像で客観的に観察せよ
敵意識は持つな ⇒ 仕事の対人関係はせいぜいがライバル。柔軟に付き合え。
当のアホに相談を持ちかけよ ⇒ 「その人から受けている嫌な行為への対処方法」
ほかの人が受けている嫌がらせだとして相談する
しつこく絡むアホ ⇒ 相手にしない。逃げるが勝ち。
こういうアドバイスを語りながら、「それでも一度はアホと戦え!」ともいう。傷が浅いくらいの「一生忘れられない悔しい学び」が、「いつかは戦う価値のある相手と戦うこと」(p69)の可能性への準備運動なのだと。
著者は人を味方にするためには、「相手の気持ちを見抜く力」この能力を一番重視する。天才やエリートなどの頭のいい人ほどこの能力が乏しいとも述べている。「どんな強者でも味方にする”人たらし”の技術」(第3章)において、この能力がその根幹だという。そのために、次の実行を推奨している。
*対象となる人物を徹底的にリサーチせよ。その人のたどってきた歴史が人格になっている。人相は最大の情報発信源・宝庫だと知れ。
*デール・カーネギーの原則に学べ。「非難するな/認めよ/相手の欲しがるものを理解せよ」 つまりどんな相手でもリスペクトし、共通の利害を見つけるアプローチだ。
*「実るほど頭を垂れる稲穂かな」 人間は感情の動物。腰を低くして対応せよ。
*自信があっても困っている顔をして、相手を自分に巻き込んで行き相手の感情に働きかけることも一つの技術。ただし、著者の体験では、その人の実力の1.5倍くらいに困っている事情と思える場合での話。
*物事に一喜一憂せずに淡々と。得意淡然、失意泰然。淡々とこなす者が勝ち残る。
*結果を出したいなら、常に相手の気持ちを知れ。相手の立場に立って相手の思いを常に考えよ。上司目線で、自分を見つめてみる視点をもつこと。
*志が人を動かす。決して原点を忘れず、楽天的姿勢を崩さない。
*ものをシニカルに見る脳の使い方、物の見方を鍛えよ。異なる視点をもつ。
*自分を見失わないように、自分を律することが大事。偉くなっても偉ぶらない。
ここでの助言は、どちらかというと、少し長い時間軸の中で真価を出す「人たらし」技術という印象を受ける。勿論、それは関係の浅い時点から始まることなのだが。
第1章冒頭の「アホ」の定義と結びつけて考えるなら、上記した第3章あたりから、アホという枠組みを離れた、対人関係、組織内での対応へのアドバイスという形に発展していく。つまり、文字通りの副題の趣旨に沿う対応能力へのアドバイスに移行していくということになる。
第4章は「権力と評価の密接な関係」という見出しになる。ここでははっきりとアホへの対処とは次元を変えている。副題がピッタリというところか。
第4章に収録された見出し文を並べてみると、おわかりいただけるだろう。
◎上司があなたを見てくれないのはなぜか?
◎仕事で評価される人。されない人
◎不本意な人事異動の正しい耐え方
◎無駄な会議を建設的にする方法
◎日本企業は権力闘争が好き?
◎力にすり寄るのは汚いことか
◎権力を握る人の条件
◎飲み会を有意義にする方法
◎不機嫌な職場で、息苦しいあなたへのヒント
つまり、バラエティに富んだケースを設定して、その中でどう対処するのが得策か、著者の所見を述べている。対処法はまあ一般的かつ実利的なアドバイスといえる。一貫しているのは目的志向、「実利」重視という立場である。
「政界を離れて振りかえてみると、相手を持ち上げるために頑張る姿勢は潔いと思えるようになった。やりたいことがあって、やれるチャンスが来たら、他人にどう思われようが、そんなチャンスをくれる人に徹底的に忠誠を誓って権力を手に入れようとするのは、汚いことでも、ずるいことでもなく、潔いことだと思う。そこまでやるのが”本気”ということなのだ。」(p125)、「現実は汚く見えるものだが、そんなものに嫌悪を示すより、自分の目的に集中して、そこで結果を出すことに専念したほうがいい。結果を出すために権力に接近することが必要ならば、その力を活かすことも視野に入れて準備しておくことだ」(p150)、「『人生はそもそも理不尽なもの』という現実感覚を持てば、いかなる職場にいてもステオレスは大きく減らせる」(p158)というような所見からもうかがえるだろう。
第5章は「他人の目を気にするな」である。
この章での主張点は明白である。「人生は自分が主役であるべきだ」(p164)である。そのために、「他人から見た自分を意識する」ことと「他人から見た自分を妄想すしてそれに振り回される」ことは全く別であることを説く。他人の期待に応えようとする人生を生きていないか、それを自問せよと言う。
「他者の気持ちはコントロールしようとすればするほど離れていく。そんなものをこちらの思い通りにしようとするのではなく、確実にコントロールできる自分、そんな自分の目の前にあることに時間とエネルギーを集中すべきなのだ」(p169)という著者の自説に戻る。この主張、考えれば同じ考え方をかつてどこかで読んだ気がする。自己実現への鉄則と言うべきなのだろう。
そして、いくつかのアドバイスを具体例を提示しながら説明している。私なりに読解した要点を列挙してみる。
*自分を主体に、他者をベンチマークするのは有効。自分の居場所を確認するために他者と比べてみる。主体性の意識が大事。
*腹をくくるとストレスがなくなり、行動力を増す。壊れた人間関係は、小さな合意を積み重ねていくことから始まる。
*期待値マネジメントの考え方を取り入れる。己の期待値から相手との合意値へのアプローチも一法。
*人間関係の改善は真摯に向き合う時間を共に持ち、地道に積み上げていくこと。
*相手の感情を揺り動かす本気度、本気の情熱の裏打ちで主張するには、まず準備が重要である。自分の思いを上手に伝えるには、訓練がいる。
*本当に心がポッキリと折れたら、思い切って休め。リフレッシュに専念せよ。本気で徹底的に。それが自信を取り戻すコツである。
*大凡物事の90%以上は自分の責任に帰す。己の想定、準備などの不足。自分の目的をはっきりさせ切れていず、周到な事前準備に欠けていることに思い至れ。
著者の経験を踏まえた例示などが興味深い。
最終章は「アホではなく自分と戦え!」である。著者の持論からすれば、当然至るべき着地点と言える。
著者は自分と向き合う時間を確保せよと助言する。それは、「自分は何が満たされたら納得がいくのか」の自己確認が出発点となるからである。わかっていそうで一番わかっていないのが「自分」だと断定する。この点は著者だけでなく、多くの識者も論じている。
「自分を知り、自分をいい意味でコントロールすることほど、人生で大切なことはない。自分がわからないと幸せにはなれない」(p195)。この箇所、メーテル・リンクの『青い鳥』の結論に通じるのでは・・・・と連想した。
自分と戦ううえでの助言を体験談を踏まえて述べている。勿論、それは自分を知るという行為の次のステップでのノウハウである。
*人間は環境に左右されやすい。だから、デキる人間に囲まれた環境に飛び込めという。「自分よりデキる人間に囲まれてこそ成長する」「戦うのは自分よりできる人材と」(p198)は著者の実体験に基づいている。
*自分の人生において、自分の基準を持つ。そうすれば、他人の評価や他人の目に影響されなくて、外からのストレスを感じにくくなる。己の基準との戦いだから。
*自分と向き合うには、一度自分を抜け出して、客観的に見ないと、本当の自分と語り合えない。⇒ 自分だけの時間を確保せよ。自分の本音を明らかにするために。
*激変する時代において、今後のリスクを予想し、逆算して準備をおこたらないこと。
*どうせ変化の連続。変化の捉え方次第でピンチをチャンスに変えられる。それを捕らえるには、誰よりも早く変化の兆候に気づくことである。人より3年先を行け。
*やりたいことは今しておくべきである。そのためには、己の肉体のコンディションを重視せよ。
*人生を豊かにするために自分の人生にとって大事な人たちとすごす時間を大事にする。
著者の体験を通したノウハウが縷々語られた書であるが、自分が本当にやりたいことが簡単にみつからないというのも事実と認める。その上で、「それより今、目の前にあることを精一杯やるべきだ」(p215)という助言に着地する。「目の前のことを頑張って見るべきだ。そこから道は開ける」(p216)と。自分探しの行きつくところはやはり古来から述べられてきた真理である。
著者の主張は、人生を謳歌して使い切るという視点に立ち、人生をいかに主体的に生き抜くかにある。自分の目的と基準を持って人生を生きれば、つまらないプライドなどは捨てられる。アホと戦うことも無くなるという次第である。それは今目の前にあることをしっかり頑張って結果を出すことから始まるという。目の前にあることを、主体的にとらえ直して、自分にとっての結果をまず出せということだろう。
ご一読ありがとうございます。