本著者の事実上のデビュー作で、表題を含む五連作のミステリ集。
また本書は【白戸修の事件簿】と改題され文庫化されている。
稀代のお人好し白戸修が、そのお人好しが故に事件に巻き込まれて行く。
しかしそのお人好しこそが、彼の最大の武器でもあった?
◎ツール&ストール
大学の同期で白戸のように留年もせず先に卒業していた八木純矢が、突然アパートに転がり込んできた。
殺人犯として警察に追われているという。
無実を訴え、自分が殺人現場で目撃した手配スリの桑田を、元スリ係の警部補だった山野井大介に頼んで見つけて欲しいという。
お人好しの白戸修は、山野井に会いに中野駅北口に向かうが・・・。
◎サインペインター
大学で親しくなった倉田国夫から電話がかかり、怪我をしたので自分の代わりにバイトに行ってくれと頼まれる。
お人好しの白戸修は、嫌な予感がしながら深夜12時にまたしても中野駅北口へと出向く。
そこに現れたのは「何でも屋」の日比登で、そのバイトというのは「ステ看貼り」だった・・・。
◎セイフティゾーン
既に鬼門ともなった中野駅北口、そこにある銀行のATMでなけなしの金を引き出そうとしたら、銀行側の手違いで残っているはずの一万円が引き出されたことになっていた。
融通のきかぬ銀行側の対応に、お人好しの白戸修はなかなか一万円を下ろすことができず、挙句銀行強盗に巻き込まれてしまう。
そして強盗犯のひとりに殺されそうになるところを、危うく清掃員の芹沢哲夫に救われた。
だがこの清掃員は何やらただ者ではない・・・。
◎トラブルシューター
買ったばかりの携帯電話に間違い電話がかかってきた。
切迫した男の声で、中野駅北口にすぐきて欲しいというようなことを一方的にしゃべって切れた。
こちらからかけ直してみたが通話中だった。
お人好しの白戸修は、間違い電話であることを知らせに、わざわざまたもや中野駅北口へ出向いた。
そこにはストーカーに怯える若い女性杉本恵と、それをボディガードする私立探偵北条隆一がいた・・・。
◎ショップリフター
中野駅の今度は南口にある激安のデパートに、入社式用に買ったスーツを受け取りに出向いたが、手違いで裾上げの長さが違っていた。
直しに二時間程かかるとのことで、時間つぶしにデパート内をぶらついていると、思わぬ万引き容疑をかけられてしまう。
どうやら万引き常習犯に囮として利用されたようで、間もなく容疑は晴れた。
だが保安員の深田重子から協力を要請され、お人好しの白戸修は・・・。
読んでいて白戸修のお人好しぶりにハラハラさせられながらも、次第に噺に引き込まれて行き、お終いはほっと胸を撫で下ろし思わず苦笑する。
本著者は表題作で小説推理新人賞を受賞。
その後、【三人目の幽霊】が「このミステリーがすごい!2002年版」や「本格ミステリ・ベスト10」にランクインされ代表作となる。
これは、「季刊落語」の新米編集者間宮緑と編集長牧大路のコンビのシリーズ初作となる。
公式サイト無法地帯http://www1.odn.ne.jp/okura/