神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] 時間線を遡って

2011-02-05 19:27:42 | SF
『時間線を遡って』 ロバート・シルヴァーバーグ (創元SF文庫)




タイムパトロールを主人公とした時間SFは数々あるが、タイムパトロールと同じ組織の中に、随伴ガイド部なんてものがあるのを知っているだろうか。これは社会の落伍者になりかけた男が時間旅行随伴ガイドとなり、ご先祖様に恋してドタバタを繰り広げる物語。

こんな旅行会社があったら古代文明の街へ、エジプトでも南米でもどこでもいいから、行ってみたいものだ。しかし、この随伴ガイドはご免だ。こんな面倒なことに巻き込まれたくは無い。


この小説は、シルヴァーバーグがワールドコンNippon2007で来日したときのシルヴァーバーク企画で話題に上がっていた小説だ。タイムトラベルの原理はマジックに過ぎないが、そこから導かれる論理的な設定が非常に興味深い。それはシルヴァーバーグの著作姿勢を特徴的に捕らえているのであろう。

どこまでなら大丈夫、ここから先は大騒ぎという線引きが明確で、読者とも共有されるがゆえに、後半のドタバタの重大さが際立つのだ。時間の流れとはまったく独立な因果関係は存在しうる。ゆえに、たびたび起こるドタバタはパラドックスではなく、れっきとした論理的な帰結なのである。

過去の改変によって存在が消えてしまうという演出も、映画『バックトゥーザフューチャー』のようなお笑いではなく、論理的な帰結として存在の消えるポイントが明確化されていたり、細かいところまで気を配っている。ただ、ラストだけは論理よりもストーリー優先かも知れないけど。

そして、タイムトラベルの論理と並んで、この小説で大きな要素となるのが性行為。未来人である主人公も、過去のビザンチン時代の人々も、滑稽なほどにヤリまくる。

ご先祖様とやったり、子供とやったり、同性愛なんて誰も驚きもしない。一部の人には認められないかもしれないが、現代は性がもっとも抑圧されている社会なのだ。この複雑な時間迷宮の中で繰り広げられる性行為の、どこまでをモラルとアンモラルの境目として認識するのかということは、読者の読み方にゆだねられている。


さて、Nippon2007のシルヴァーバーグ企画に出演していたひかわ玲子氏が、中学生時代にこの小説を読んで大変感動し、ワクワクしたということを繰り返し話していた。その話題の中で、タイトルを何度も「じかんせんを“たどっ”て」と言い間違っていたのは、当時のひかわ氏がそう読み間違っていたということなんじゃないかな、と思っている。

“遡って”も読めないくらいの子供がこんなエロエロ小説を読んで興奮しているなんて、想像すると、ちょっとヤバげなシーンである。




[SF] 四畳半王国見聞録

2011-02-05 18:42:59 | SF
『四畳半王国見聞録』 森見登美彦 (新潮社)




阿呆だ。山本周五郎賞を受賞しようが、SF大賞を受賞しようが、結婚しようが、森見登美彦は愛すべき阿呆なままだった。

そして今明かされる四畳半統括委員会の起源、大日本凡人會の正体。黄色地に紫の水玉模様のブリーフはいったい何を意味するのか!

すべての四畳半は11次元の超紐によって接続され、量子テレポートによる因果律によって阿呆神の気まぐれによって支配されているのだ。

君は憶えているか? 無限に続く4畳半に飲み込まれて消えそうになった男を。陰険なる図書館警察・個人情報企画室長の崇高なる愛を!

いまここに、もうひとりの男が四畳半の内に広大なる宇宙を構築し、新たなる創造主となった。しかし、それもまた阿呆神の掌の中に過ぎず、かれは遂にインナースペースのくびきから解き放たれ、アウタースペースの深部へと旅立つのである。

いやぁ、阿呆ですね。


ただ、この短編集の最初と最後に収録された「四畳半××」の主人公が同一人物なのであれば、それはいわば引きこもりの否定であり、四畳半統治委員会の敗北である。このままでは、われわれの猥雑で混沌で男汁の滴る世界は、まなみ組を筆頭とする実在の黒髪の乙女達が住む、開かれた明るい健全な世界へと引き出されてしまうのではないか。

否。われわれは断固としてこの結末に否を突きつけ、われわれの聖域たる四畳半を死守しなければならないのである!


……俺は四畳半に住んだことがないから知らんけどね。







[SF] セドナ、鎮まりてあれかし

2011-02-05 18:14:55 | SF
『セドナ、鎮まりてあれかし』 泉和良 (ハヤカワ文庫 JA)



戦争の激戦地、今は荒野と化し、生態系も乱れた地で遺骨を回収する話。

戦争で脳に障害を負い、子供のようになってしまった主人公ゴロ。部下を失った将軍。旧式アンドロイドに、戦争の記憶を受け継いだナノマシン群。不思議な動物や植物たちの生態系と、土に埋もれた戦争の跡。

遺骨収集という神妙な仕事とは不釣合いに、無邪気なゴロたちの穏やかな生活が不思議な安らぎを与えてくれる。

紹介文には「癒しと再生の物語」とあり、ゴロが元妻へ向けた手紙は感動的であり、子供に戻ったゴロの再成長の物語として読むことができる。

しかし、ちょっと読めばわかるように、ここは露骨な硫黄島。人工太陽と超質量を備えた準惑星を舞台としているが、戦って死んだご先祖様は日本名だし、自決とか玉砕とか、第二次大戦中の日本軍を意識していないなどとは到底思えない。

結末付近には露骨な愛国思想も見て取れ、なんだか鼻白む。

SFに思想が不要なんてことはまったく思わないけれど、この違和感はなんだろう。思想的なSFは、割とリベラルなものが多いように思うが、そのせいなんだろうか。

未来を見据えるのではなく、過去に留まろうとしているからか。いやそんなことはない。これはこれで、未来への提言なのだ。

この気持ち悪さはうまく説明できない。その右翼的な思想に反対なのか、洗脳的な内容に反発をおぼえるのか。うーん……。



2月4日(金)のつぶやき

2011-02-05 02:25:16 | つぶやき
23:10 from 読書メーター
【四畳半王国見聞録/森見登美彦】続きじゃないといいつつ、樋口師匠とか小津とか出演してる。阿呆神様がどうなのかはよくわからないが、ガタイのいい派手なブリーフ一枚というのは、某芸人を思い出して、完全にキャ... http://bit.ly/dOuSFH #bookmeter
23:15 from Tween
『ソーシャルネットワーク』はFacebookに関係ない人間ドラマだと聞き、『がんつ』は『ですのーと』よりもひどいジャニ映画と聞き、見たい映画が無くなってしまった。『キック明日』もDVD画質デジタル上映問題とかだしね。もう、全部DVDになってからレンタルでいいやと。
23:18 from Tween
実は今やってる映画で一番面白いのは『ゴセイジャーvsシンケンジャー』じゃないのかという疑惑がががが。
23:21 from Tween
自分は4畳半に住んだことが無い。北国で一人暮らしのときは10畳ワンルームで、上京したときは6畳二人部屋だった。ゆえに、四畳半統括委員会には目をつけられずに済んだ。ああ残念だ、残念だ。……あ、『四畳半神話体系』返せよ、板橋区役所のひと!
23:25 from Tween
俺はSFファンであるがゆえに、『ペンギン・ハイウェイ』のガキに感情移入すべきなのだ。そうでなければならないのだ。『四畳半××』の阿呆どもに感情移入してはいけないのだ。黒髪の乙女とか妄想してはいけないのだ。いけないのだ!
23:28 from Tween
そういえば、キャンプは「体力づくり」みたいな話を聞くんだが、たかが1ヶ月でスタミナ付いたり筋力付いたりするんだろうか。そういうのは日々の積み重ねなんじゃないのかと思うんだが、スポーツ科学的にはどうなのですか。
23:32 from Tween
しかし、クシャルダオラの倒し方がさっぱりわからん。youtubeで討伐動画でも探すか。でも今日はもう寝る。皆さんサヨナラ、世界よサヨナラ。アディオス。アデュー。グッド・バイ。
by kats_takami on Twitter